Coolier - 新生・東方創想話

私、愛されてます

2008/12/28 15:36:54
最終更新
サイズ
8.85KB
ページ数
1
閲覧数
2716
評価数
14/58
POINT
3060
Rate
10.46

分類タグ


「お姉様!」

 レミリアの自室の扉を物凄い勢いで開け、フランドールが入って来た。

「騒がしいわね、フラン。どうしたの? 持病の筋肉痛?」
「私、筋肉痛なりやすいの!? 地味に嫌だよそれ!」

 レミリアはフランドールのツッコミを無視して紅茶を一口飲む。いつの間にか、レミリアの横には咲夜が居た。時を止めてわざわざ紅茶を淹れに来たのだろう。本当に忠実な従者である。

「で、一体何の用なのフラン?」
「弾幕ごっこしよう!」
「却下」

 フランドールのお願いをバッサリと斬り捨てる。レミリアは涼しい顔で紅茶を飲む。

「えー何で?」
「フランと弾幕ごっこなんかしたら紅魔館がボロボロになるでしょ。それに私は忙しいのよ」
「紅茶飲んでるだけじゃん……」
「これも数ある主の役目の内の一つよ」

 フランドールは不満ありありの表情を浮かべながら、レミリアを睨む。
 しかし、フランドールが睨んでも可愛いだけで、全く怖く無い。むしろレミリアは、そんなフランドールを見て、微笑を浮かべる。とても優しく、微笑む。

「な、なに? お姉様気持ち悪いよ?」
「姉に対して気持ち悪いなんて言わないの。私悲しさのあまりに、フランのドロワ被って紅魔館一周するわよ。そしてそれを舐め回すわよ」
「やめてよ! カリスマ以前に威厳ゼロ、いやマイナスだから!」
「はいはい。とにかく私は忙しいから、出て行きなさい」
「うにゅぅ~」

 強制的に追い出されてしまったフランドールは、少し悲しげにトボトボ廊下を渡り何処かへ行った。
 咲夜とレミリアだけが残った部屋。レミリアが溜め息を吐く。

「咲夜、私さっきどんな顔してた?」
「とても優しい穏やかな表情をしていました」

 咲夜の言葉に、また溜め息を吐く。そんなレミリアを見て咲夜は疑問を感じた。

「何故、溜め息を吐くのですか?」
「威厳も何も無くなってしまうでしょう? 気を緩めれば、あの子が笑顔なだけで私も笑顔になってしまう」
「別に良いじゃないですか。それだけ妹様を大切に思っていらっしゃるのでしょう」
「……私のプライドよ」

 レミリアがどれだけフランドールを大切に思っているか、咲夜にもよく伝わった。そして、レミリアがどれだけ素直じゃないということも、よく伝わった。
 そんなレミリアに咲夜は少しクスッと笑う。笑われたことを不快に思ったのか、レミリアが咲夜を睨む。見た目は幼いながらも、フランドールと違い、威圧感がある。

「咲夜」
「すみません」

 素直に謝っておく。主に逆らう従者など、主にふさわしくは無いから。
 ただ、一つだけ言わせてもらうならば――

「お嬢様、それをはぐらかす為とは言え、あの話の逸らし方はどうかと思います」
「良いじゃない、冗談半分なんだから」

 半分本気だったようだ。

「さぁ! 咲夜、私は今日であれを終わらせるわ!」
「そうですね、そろそろ終わりそうですから大丈夫だと思いますよ。私も手伝いますから」

 そんなこんなで、二人は作業に取り掛かった。



◇◇◇



 フランドールは図書館前に来ていた。レミリアに追い出されてから、ふらふらフランフランと歩いて行き着いた先だった。

「パチュリー居る?」
「あら、妹様どうしたの? 持病の失恋?」
「失恋は病気じゃないよ! それに私どれだけ恋してることになるの!?」
「いいえ、恋の病の中では最も辛い病よ」
「そういえば小悪魔は?」

 パチュリーの発言をサラッと流し、いつもいる筈の小悪魔の所在を訊いてみる。

「あ、あの子なら今休憩中よ。たまには休ませてあげないと可哀相でしょ?」
「ふぇ~」

 フランドールは、パチュリーの意外な一面を見た、という感じがした。そして、ふと思う。自分は、実はみんなのことを良く理解してないんじゃないかと。気が遠くなる程長い期間、地下に居たのだから当然と言えば当然であるかもしれない。
 でも、やっぱり寂しい。先程も、レミリアに強制的に追い出された。フランドールは、自分が嫌われているんじゃないかと思ったが、嫌われても当然な存在だと思い出した。ただ、破壊するだけの問題児。そんな存在が好かれる筈が無い、と。最近は、幸せだから忘れていた。

「ちょ、妹様!? 何で泣いてるの!?」
「――え?」

 フランドールは頬を伝う涙に、今気付いた。パチュリーは珍しく慌てている。

「まさか本当に失恋!? よし、今からそいつをこれからそいつを殴りに行こうか!」
「ち、違うの。ただ――」

 一度流れ出た涙は、止まることを知らない。少しずつだけれど、パチュリーに理由を言う。ヤーヤー言ってたパチュリーは静かになって、ちゃんとフランドールの言葉を聴いている。
 自分が嫌われているんじゃないか、寂しいのが嫌だった、こんなことで心挫けそうな弱い自分自身が嫌だったなど。
 フランドールは溜め込んでいたものを、全て話した。パチュリーはその間、一言も発しなかった。それ程、集中し真面目に聴いていたのだろう。
 そして、しばしの沈黙が訪れた。それを先に破ったのは、パチュリーからだった。

「妹様は、レミィのことを信じられない?」
「そんな、ことない……けど!」
「不安になるのね」
「あっ……」

 パチュリーがそっと手を伸ばして、フランドールを抱き寄せる。決して強くは無い、パチュリーの華奢な体にふわりと包まれる。良い匂いと程よい温かさが、心ごと包んでいるようで、フランドールを落ち着かせてくれる。

「不安なら、吐き出せば良い」
「……うん」
「レミィに言いにくい場合は、私や咲夜、美鈴に小悪魔だってみんな聴いてくれるわよ」
「……うん」
「みんな、妹様のことが大好きだから協力するのよ」

 普段と違う、優しい声。子どもをあやすように、ゆっくりと語り掛ける。

「ありがとう! パチュリー!」

 晴れた様な笑顔を浮かべて、フランドールはお礼を言う。パチュリーは、微笑を浮かべたが、すぐにいつもの無表情になった。

「さぁ、妹様。レミィの所へ行ってくれば?」
「え?」
「多分レミィが妹様を追い出した理由が分かる頃よ」
「え、パチュリー何か知ってるの?」
「素直じゃない親友を持つと大変なのよ。いいから行きなさい」
「う、うん!」

 図書館から走って出て行くフランドールを見送った後、パチュリーはまたいつも通り読書を開始した。ただ、親友の計画が成功する場面を想像し、少しだけ微笑んでいた。



◇◇◇



 フランドールは再び、レミリアの自室前に来ていた。
 パチュリーに元気づけられたけれど、いざ目の前まで来ると、また拒否されるのではないかという不安が押し寄せて来る。
 でも、パチュリーが最後に言ったことが気になっていた。理由があるのなら、それを確かめたかった。だって、フランドールにとって一番大好きな人だから。
 意を決して扉をノック――

「どうしました妹様?」
「ひゃうっ!?」

 フランドールの隣りに咲夜が居た。先程まで居なかったのに。時間を止めて現れたのだろう。

「さ、咲夜?」
「はい? あ、もうお嬢様の用事は終わりましたから入って大丈夫ですよ」
「いいの?」
「むしろ私が今から妹様を呼びに行く予定だったので手間が省けて良かったです。それでは、私は仕事を残してますので失礼します」
「あ、うん」

 次の瞬きしている刹那に咲夜の姿は消えていた。便利な力だとフランドールは思う。少なくとも、破壊しか出来ない自分には出来ない芸当だと感じた。

「お姉様入っていい?」

 恐る恐る尋ねると、中からレミリアの機嫌の良さそうな返事が返ってきた。

「いいわよ。むしろ早く入ってらっしゃい」
「え、うん」

 レミリアの部屋に入る。今日、初めに来た時と同じで、特に変わった様子は無かった。ただ、レミリアがじっとフランドールを見つめていたが。

「な、なに?」
「おいで、私の愛しいフラン」

 穏やかな笑みを浮かべて、フランドールを近くに誘う。フランドールはいつもと違うレミリアに、少し戸惑いながらもゆっくり歩み寄る。
 二人の距離が縮まって、ほぼゼロに近くなった時、レミリアはフランドールを抱き締めた。突然のことにうろたえるフランドールをよそに、レミリアはしばらくすると、そっと離れる。

「これ――?」
「私が作ったから下手かもしれないけど」

 離れた時、フランドールの首には赤いマフラーが巻かれていた。暖かくて、ちょっと長い。

「分からないトコは咲夜に訊いたりしたから、ちゃんと形にはなったけど……フラン?」

 無言で俯いたまま、何も反応をしないフランドールを心配して顔を覗きこもうとするが――

「お姉様っ!」
「え、ちょ、フラン?」

 フランドールが抱き付いてきた。レミリアの胸に顔を押し付けて、フランドールの表情は伺えない。

「ありがとう……ありがとうお姉様」

 肩が震え、涙声のフランドールが今言える、精一杯の言葉だった。パチュリーの言っていたことも理解出来た。これを作っているのを知られたく無かったのだろう。今日だけで作ったわけでも無く、恐らく前から作っていたのだと、フランドールは分かった。
 全てが分かった瞬間、フランドールは涙が止まらなかった。自分が本当に愛されているということが、ただただ嬉しかった。でも、自分も素直じゃないから、こんな顔を隠そうとレミリアに抱き付いた。
 そんなフランドールの背に手を回し、同じように抱き締める。右手は頭に手を置いて、幼子を扱うかの如く優しく包む。
 その光景は、ただ純粋に優しくて温かい雰囲気を醸し出していた。



◇◇◇



「どうかな? お姉様」

 泣きやんだフランドールは今、マフラーを着けて、目の前でくるりと一回転している。とても笑顔で上機嫌なフランドールを見るだけで、レミリアは幸せな気持ちになれる。いや、この笑顔は見た者全てを幸せな気持ちにしてくれる程かもしれない。

「ちょっと長かったかしらね」

 フランドールの膝部分まであるマフラーは、確かに長かったかもしれない。

「う~ん、あ、そうだ!」
「どうしたのフラン?」
「お姉様、私の横に来て」

 無邪気な笑顔を浮かべるフランドールに逆らう気も何も無く、言われるがままに横に並ぶ。すると――

「えへへ~こうすれば丁度良いよ?」

 長く垂れていたマフラーをレミリアの首にも巻く。そうすると、レミリアとフランドールの顔がほぼゼロ距離になるが、気にしてはいないようだ。

「これで、私もお姉様も暖かいし、長さも丁度だよ」
「……そうね。ありがとうフラン」

 互いに笑顔。寄り添う二人。それは、とても仲の良い姉妹そのもの。

「ねぇお姉様」
「ん?」
「来年は、私がお姉様に作ってあげるからね!」
「それは、楽しみにしているわね」
「うんっ!」

 暖かいのは、きっとマフラーだけじゃない。
 二人は、互いの心音や温もりを、確かに感じていた。
こちらでは4度目です。元、喉飴と嶺上開花です。
少しでもほんわかぬくぬくしてくだされば幸いです。
喉飴
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1900点簡易評価
2.70点修行 削除
最初の「どろわを舐め舐め」で一瞬不安になったけど割と綺麗なお嬢様でよかったw
ラストのダブルマフラーで死ねる
4.50点名前が無い程度の能力 削除
妹様?
咲夜さんがフランドールの事を侮蔑(?)して言ってる様に聞こえる。
「お前は姉であるレミリアお嬢様の付属品でしかないんだ。」みたいな。
あとパチュリーはレミリアは対等な関係なんだから、
その妹に様をつけて呼ぶなんて嫌味以外の何物でもない気がする。
6.80点コメ10 削除
件のドロワでギャグかと思ったけどいい話だったです。
にしてもやっぱり喉飴さんのパチュリーはどこかアグレッシブでバイオレンスだw
11.70点竜宮城 削除
見たことある二次創作はだいたいみんな妹様でよんでるけどな

キャラの人間味がコロコロあったり無くなったりするのをどっちに評価するか、だと思うけどオレは好き


ただ、勝手に咲夜ファンの俺は他キャラの方が使い方が上手かったから無駄に点引いてしまたw
13.80点名前が無い程度の能力 削除
こういうパチュリーもありかとw
自分は楽しめました
14.80点敬称略の人 削除
 いやあ和みました。うむ。やはりの(ryさんの
フランちゃんは最高ですね。なによりチラリとしか登場
しないパチェもいい味を出しているのが好きです。
17.80点こうが 削除
和んだわあ。

>>「あら、妹様どうしたの? 持病の失恋?」

最近思ったんすけどパチュリーはこのような情報をどこで仕入れてるんでしょうかね。図書館にそんな本が混じってるとか?
20.80点煉獄 削除
和むなぁ……。
今日も紅魔館は平穏ですね。
レミリアとフランの二人のやりとりが微笑まし……いや、
最初のドロワ云々は抜かして微笑ましかったです。
紅魔館はいつでも平穏であって欲しいものですね。
24.無評価5 削除
よくよく考えたらパチュリー、妹様って言ってたぜ。
すっかり忘れてた。
28.90点名前が無い程度の能力 削除
やっぱり、こう言う紅魔館はいいなぁ
31.90点KCZ 削除
和んでしまうなあ…
そしてチャゲアスに吹いたwww
37.無評価喉飴 削除
>>修行様
ありがとうございます。

>>5様
パチュリーの件、気付いて下さってなによりです。

>>コメ10様
私の書くパチュリーは変な特徴を持っていますww

>>龍宮城様
ありがとうございます。

>>14様
楽しんでいただき、嬉しいです。

>>敬称略の人様
私どこまで名前省略ww?

>>こうが様
和んでいただいてありがたやありがたや。

>>煉獄様
平和なのが一番ですよね。争いはダメなのです。

>>29様
気に入って下さって嬉しい限りです。

>>KCZ様
わふっ! あなた様からコメとは! いやはや気に入って下さって嬉しい限りです。
チャゲアスに気付いて下さってさらに歓喜ですww

読んで下さった全ての方に感謝を!
41.無評価名前が無い程度の能力 削除
ダブルマフラーとはなんという必殺技。残機がぁ...

>5
普通に紅魔郷のEXでも「妹様」って言ってたような気がする。
45.90点名前が無い程度の能力 削除
持病シリーズが坪になりそうですww

>>4
「妹様」は公式設定なのぜ
48.100点名前が無い程度の能力 削除
>今からそいつをこれからそいつを殴りに行こうか!」
だけで十分笑わせてもらったつもりだったが、畳み掛けるように
>ヤーヤー言ってたパチュリーは
を見る事になって堪えられなかったwww
アンタ最高だよ!!
53.100点名前が無い程度の能力 削除
パチュリーさん落ち着いてくださいwww
61.100点星ネズミ 削除
「ふらふらフランフラン」がかわいすぎ。
こういうほのぼのとした姉妹愛は読んでて心が安らぐなあ