Coolier - 新生・東方創想話

夢は消えない

2008/12/22 00:39:17
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 幻想郷も冬真っ盛り。人里でも、雪合戦などで元気に遊ぶ子ども達の姿が見受けられる季節になった。
間欠泉から怨霊達が沸いて出てくるスペシャルな異変の熱りも冷め、誰もが平和な日常を取り戻したであろうと安堵した頃。
再び、スペシャルな異変が幻想郷を襲ったのだ。それはもう、とてつもなくスペシャルな異変が。



「……という訳なのよ、何か心当たりあるかしら?」

 紅魔館の主であるレミリア・スカーレットが、蜜柑の皮を剥きながら問いかけた。

「心当たりも何も……。私、その日は元旦に向けて色々と準備してたし」

 ここ、博麗神社の巫女。博麗霊夢が頬杖をつきながら答える。

「……そう。じゃあ何なのかしら?」

 昨晩のこと。レミリアが目を覚ますと、枕の隣に綺麗な包装が成された箱があったというのだ。
レミリアの従者である十六夜咲夜や、門番を務める紅美鈴。妹のフランドール・スカーレット、友人のパチュリー・ノーレッジ。その司書である小悪魔。
挙句の果てに、雇っている妖精メイド達にも直々に聞いて回ったが、誰一人として覚えが無いとの答えが返ってきたという。

「外から入って来た奴とかは……いなかったの?」

 霊夢は顎に手を当てて、レミリアにそう尋ねてみた。館内にいる者が全てではない、外部から侵入してきた可能性もある。そう霊夢は考えたのだ。

「いる訳がないわ。間違っても日光が差し込まないようにって、咲夜が空間を弄って窓を取り払ってくれたのだもの」

 レミリアやフランドール。吸血鬼達は、日光に当たると体が灰と化してしまう。
自らの部屋にある時計で時間を見て、日が落ちていることを確認する。その後に、レミリアは廊下へ出るようにしているのだ。

「……となると館内にいた誰かね。部屋の扉は開いてたんでしょう?」

「えぇ……。だから私は館内にいる者、全員に確認を取ったの。他の場所から侵入してきたとしても、騒ぎが起こるし……。ちょっと鈍感な私でも目は覚めるわ」

 館内で雑務を請け負う妖精メイド達は、時間帯を調節して24時間。常に館内を見回りしている。
門前も、美鈴や門番隊が24時間態勢で見張ってくれているので、侵入者など有り得ないのだ。

「もしかしたら、屋根を破ってドシンと部屋に直接やって来たのかも知れないわよ?」

「屋根を破られて気付かない馬鹿が何処にいるのよ。それだと今頃、私は日光で灰塵と化してるわ。真面目に考えて欲しいわね、全く……」

 霊夢は冗談を交えてみたが、どうもレミリアは本気で悩んでいるらしく、愛想の無い言葉が返ってきた。

「そう言えば、その箱の中身は何だったのよ? 開けたの?」

 そう、誰が置いたか解らない箱。当然の如く中身が気になる。不用心にホイホイ開けてしまうのもアレだが、やはり確認はしておきたいのだ。

「中身……ね。実は、ここに来る少し前に咲夜と美鈴に外で慎重に開けてもらったのよ。そしたら……」

 レミリアは懐から何かを取り出す。霊夢が見る限り、それは金色の美しい髪飾りであった。

「この通り、随分と綺麗な髪飾りが入ってた訳。誰がくれたのか、それさえ解れば喜んでつけてやるくらい気に入ってるんだけど……」

 やはり、誰からの贈り物なのか解らない者を身につけるのは抵抗がある様子であった。何らかの呪術が施された悪意ある品かも知れない。幻想郷では日常的に有り得る話なのだ。

「取り敢えず、もう暫く待ってて頂戴。私も頑張って調べてみるわ。何か解ったら連絡するから、それまで下手な行動には出ないこと。……いいわね?」

「わ、解ったわ。流石に博麗の巫女が直々に出向くんですもの。おとなしく報告を待つわ」

 レミリアは、様々な問題に首を突っ込む性格と周りには知られている。別に怖い物なんて無い、そんな考えを持ってレミリアは生きている。
そんな野次馬魂も、得体の知れない何か。それが自分のもとへと巡ってきたのなら尚更である。流石に首を突っ込む気にはなれないのだろう。

「それじゃあ、霊夢。私は帰るけど……お願いね?」

「解ったわ、送り主を何としても見つけてあげるから。安心してなさいな」

 一先ず、霊夢は例の髪飾りを預かることとなった。レミリアの近くに置いておけば、色々と考えてしまうだろうという霊夢の配慮である。
髪飾りを念入りに調べてみたが、大して問題は無かった。正真正銘、普通の髪飾りである。この件は明日、更に詳しく調べてみようと考えながら、霊夢は眠りに就いた。



 朝の日差しが、襖の隙間を通して部屋へと差し込む。霊夢は、早朝に起床した後、いつも通り境内の掃除を始める。
仕事を終えた霊夢は、昨日レミリアから預かった髪飾りを箪笥から取り出し、御茶を啜りながら再び調べ始める。

「うん……。やっぱり、呪いの類いではないようだし。普通の髪飾りとしか思えないわね……」

 結局、昨日と同じ結論に至った。霊夢は何としても、この髪飾りの送り主を突き止めたかったのだが、糸口の見えない問題に迷走してしまう。
そんな霊夢のもとへ、新たな相談が持ち込まれた。一人の魔法使いの手、口によって。

「霊夢! これ、お前が置いてったりとかしたか?」

 帚に跨がって境内に降り立ったのは、魔法の森に住居を構える魔法使いである霧雨魔理沙だ。その手には、薔薇の蔓を象った銀色のブレスレットがあった。

「今日さ、起きたら枕元に置いてあったんだ。これくらいの小さな箱に包まれて。アリスかなって思ったんだけど、知らないって言うし……」

 魔理沙と同じく、魔法の森に住む人形師であるアリス・マーガトロイド。魔理沙とはライバル的な関係にあるが、嘘を吐くような理由は無いだろう。
霊夢は、魔理沙に昨日の出来事を事細かに説明した。魔理沙の家は、レミリアの住む館とは違って誰でも侵入し放題な構造をしてるが、しっかりと戸締まりはしていたという。
勿論、朝になって扉や窓が開いていた様子は無かったという。霊夢は、昨日のレミリアの件と今日の魔理沙の件。この二つの出来事は同一犯によるものではないか、と考えてみた。

「そうだな。確かに、大まかな条件は一致するぜ。私もレミリアも、送られた物は違えど、それ以外の状況はまるで同じだからな」

そう、そして送られてきたアクセサリー。レミリアの髪飾りにも、魔理沙のブレスレットにも。目立った問題は何一つ無く、何の為に送りつけたのか。霊夢には全く理解できなかった。

「取り敢えず魔理沙、このブレスレットは私が預かっておくわ。もう少し詳しく調べてみる、何か解ったら連絡するわ」

 昨日も同じ様な言葉を発した気がするが、これしか方法が無いのだから仕方がない。
そして、夜。霊夢は、昨日と同じ様に呪術的な何かが付与されていないか調べてみたが、結局アクセサリー自体に問題は見つからなかった。

「このままじゃ……迷宮入りになっちゃうわね……。どうにかして手がかりを見つけないと」

 そう決心した霊夢は、二つのアクセサリーを箪笥に保管して、普段と同じく静かに眠りに就いた。



 どうだろうか。それからというものの、霊夢の神社には毎日に渡って「誰か知らない人から箱が送られていた」という被害が届けられていた。
迷いの竹林に佇む永遠亭の主である蓬莱山輝夜のもとには、艶やかな簪が送られていた。調べてみたが、何一つとして怪しい点は無し。身につけたら呪われるなんてことは無かった。
人里で幻想郷縁起を執筆している稗田阿求のもとには、高級な材質で作られた筆が送られていた。調べてみたが、これで名前を書かれた者は死ぬなんて縁起の悪いことは無かった。
妖怪の山に住む河童の河城にとりのもとには、ピカピカと眩しい新品のスパナが送られていた。これで頭を殴れば人は死ぬが、別に普通のスパナだった。

「う~ん……。どうも犯人の意図が掴めないわね。何の理由でこんなことをしてるのかしら……」

 危険物を届けて不意打ち、なんて魂胆ではない。それは、贈り物が届けられても被害は無いということから百も承知だ。
時間をかけて体内から蝕んでゆく呪いの贈呈品だろうか。それも有り得ない。それなら、届けられてから既に二週間は経過している、最初の被害者(?)であるレミリアの身に何か起こっている筈だからだ。

「うぎぎ……何がしたいのよ、このミステリアス飛脚戦士は……!」

 霊夢が唸りながら、眉間を押さえて自身の頭をフル稼働させていた時である。上空から聞き慣れたであろう声がした。

「号外、号外~! 謎のデリバリーマンの正体は何と、紅白衣装に身を包んだ噂のあの人! これはもう大スクープですよ~!」

 鴉天狗の射命丸文が、頼んでもいない新聞を幻想郷中へとバラ撒いていた。しかし、霊夢が気になったのは新聞をバラ撒いていたことではない。

「紅白衣装……? ちょっと、それ。まるで私が犯人みたいじゃないの!」

 霊夢からすればいい迷惑である。今まで散々捜してきた犯人が、実は身近な人物。身近どころか、調査していた本人でしたなんて馬鹿げた話だ。捏造もいいところである。
そんな新聞を幻想郷中にバラ撒かれては大変なことになってしまう。考える間も無く霊夢は神社の境内から飛び立ち、正に天狗の如く、鼻高々と新聞を西へ東へと空から投げ入れる文のもとへと急いだ。

「そこ! そう、文。あんた! 何そんな出鱈目な記事を書いてバラ撒いてるのよ!」

 既に何百枚と宙を舞う新聞を見て霊夢は卒倒しそうになったが、辛うじて意識を保ち、文へと苦情を漏らす。文の手にある新聞の枚数は残り少なく、既に両手の指で数えることができる程であった。

「あやややや! これは霊夢さん、あなたも見ますか? 噂の紅白デリバリー戦士、ミステリアスマンの写真」

 もう色々と混じって訳が解らない名前になってしまっていたが、今の霊夢にとってはどうでもいいことである。

「ちょっと、その新聞。何を根拠にそんなこと!」

 霊夢は、文の持っている新聞を勢い良く引ったくる。その瞬間、霊夢の目に入ってきたのは確かに紅白衣装に身を包んだ何者かの姿であった。

「う、嘘よ。どういうこと……?」

 頭を抱えて状況を整理する霊夢を見て、文は注釈を付け加える形でこう告げた。

「霊夢さん、落ち着いてください。じっくり見れば解りますって! ほら、ここ……」

 そう、注意して見れば霊夢ではない。女性にしては体格が良過ぎるのだ。それどころか、巫女服姿でもないし帽子まで被っている。どう見ても霊夢には見えなかった。

「こっ……このゴシップ天狗! 何で噂のあの人とか、明らかに疑われそうな言い回しでバラ撒くのよ!」

「か、勘違いしないでくださいよ! 噂のあの人っていうのはっ……ですね……! あっ……あやややや! そんなに振らないでください!」

 霊夢は、文の胸ぐらを掴んで前後へ激しく揺らしながら問いつめる。文は「説明しますから落ち着いてください!」と豪語するも中々霊夢のパニックは治まらず、神社で二人向かい合って座るのに数十分も要してしまった。



「つまり、早苗さんから聞いた話によるとです。外の世界にいる"さんたくろーす"という人間ではないか! ……という訳なのです」

 どうも文は、守矢神社の風祝である東風谷早苗に色々と話を聞き、独自で"さんたくろーす"について調べていたらしい。
"さんたくろーす"は、対象が寝ている隙を見計らって、何処からともなく現れた後に置き土産を残していくのだという。

「……ということは、今回の騒動の原因は"さんたくろーす"という外来人の仕業という訳ね?」

「そういうことになりますですねえ……」

 ペンをくるくると器用に回しながら文は、更に早苗から聞いた情報を詳しく霊夢に伝える。

「それと、どうも悪い行いをする者のところには来ないらしいですよ?」

 つまり、悪い行いをすれば不気味なデリバリーを受けなくて済むということだろうか。霊夢は、事情を上手く把握することができず困惑していた。

「それって、あれ? あの……悪い子はいねえか~って奴?」

「それはなまはげですよ、霊夢さん。人間や妖怪、種族に関係無く置き土産を残していくところ、霊夢さんのところにも来るんじゃないでしょうか?」

 そんな悠長に待ってはいられない。既に、欺瞞の塊である憎き文々。新聞号外は幻想郷中に出回ってしまったのだ。
大体の者は霊夢でないことに気付くだろうが、万が一ということもある。霊夢は一刻も早く、この異変を解決してしまいたかった。

「……そうよ。私は異変を手っ取り早く解決してしまいたいの。文、私はこれから"さんたくろーす"を捜索しに出るわ!」

「あやややや、本気ですか?」

 悠長に待っていられないのなら霊夢から出向いてやればいい。いくら"さんたくろーす"という特殊な力を持った外来人であろうと、冥界や地底等には出向けまいと霊夢は考えたのだ。
幻想郷は広いようで意外と狭い。何日か空を見回っていれば、直ぐに遭遇できるのでは無いか。行動に移すのに時間はかからなかった。

「行ってくるわ! 文、私がいない間は神社に賽銭泥棒が来ないか見張ってるのよ! いいわね!?」

 そう言って、霊夢は遥か彼方へと全速力で飛び立ってしまった。文は「行ってしまいましたか……」と一人ごちながら、炬燵の上の蜜柑の皮を剥き始める。

「"さんたくろーす"は二匹の"となかい"と言う妖怪に雪車を引かせる外来人って言ってなかったんですけどねえ……。まあ、霊夢さんなら大丈夫でしょう」



 飛んでも飛んでも"さんたくろーす"を見つけることができなかった。今日で丸二日、霊夢は寝ずに飛び続けている。

「"さんたくろーす"……! 幻想郷の皆を不安の渦に陥れた罪は重いわよ!」

 飛んでる最中、「犯人は霊夢だったのね! あたいは最初から解ってたけど、見逃しててあげたのよ!」と氷精が絡んできたり、「無意識の内にあなたのところに来てた。貴女を犯人です!」と地霊殿の主の妹君が絡んできたりしたが、霊夢は"さんたくろーす"退治に専念していたので、構う事無く飛ぶ速度を上げて無理矢理引き離した。



 そして、三日目の夜のことである。寝ずに飛び続けていた霊夢は、疲労を取り除く為に木陰で仮眠を摂っていた。すると、案外近くからシャンシャンと鈴の音が響き渡り、霊夢の耳へと入り込んでくるではないか。
その不思議な音色に心奪われ、霊夢は静かに空を見上げる。そこには雄々しい角が生えた妖怪を二匹従え、空中を移動する何者かの姿があった。

「遂に来たわね……。待ちわびたわよ、"さんたくろーす"……!」

 "さんたくろーす"を捜索中、霊夢は自ら手がかりを求めて守矢神社へと向かったのである。
早苗に「"さんたくろーす"が現れる時の様子を詳しく教えて欲しい」と尋ねたところ、鈴の音を響かせてやって来るとの答えを貰った。
そして今、その鈴の音を響かせながら諸悪の根源が霊夢の前に姿を現したのだ。

「逃がしてなるものか……! ――二重結界!」

 "さんたくろーす"の周囲に二重に組まれた結界が展開される。突然の弾幕の包囲網に"さんたくろーす"も不意を突かれたのだろう。"さんたくろーす"はふらふらと結界中で周回し、空を辿って逃げることは出来ないと観念したのか人里付近の地へと降り立った。

(まさか……その足で直接、里人に置き土産を残していくつもり……!? させない! 絶対に……!)

 その置き土産に一体どのような効果があるのかは詳しく解らない。だが、レミリアや魔理沙の様に不安に追われる日々が暫くの間は続くに違いないのだ。
里の人間達を守る。その一心で霊夢は"さんたくろーす"のもとへと向かった。妖怪を従える外来人。恐らく、かなり強い力を持っているのだろう。だが、負ける訳にはいかないのだ。

「見つけたわ! 観念しなさい……"さんたくろーす"!」

 霊夢の目の前に飛び込んできたのは……。



「ユ、許シテクダサ~イ! 何カ悪イ事シタノナラ謝リマ~ス!」

 喋り方が随分と特徴的な白髪の老人と、普通の馬に角が生えただけの動物が二頭。

「あ……あんたが、その。……"さんたくろーす"?」



「私、雪国デ仕事シテマシタ……。私、子ドモ達の憧レ。夢ヲ与エル仕事ニ誇リ、持ッテマシタ」

 思ったよりも貧弱そうな姿だったので、取り敢えず霊夢は神社に"さんたくろーす"を呼び(連行とも言う)、話を聞くことにした。

「デモ、最近ノ子ドモ達サンタクロース嘘ダッテ言ウ。サンタクロース、親ガ変装シテル言ウ……」

 徐々に"さんたくろーす"は涙目になり、まるで自分の半生を思い返す様に語り続ける。

「仕事モ少ナクナッテ私、悲シカッタ。デモ、子ドモ達ニ夢ヲ与エラレナクナッタ事ノ方ガモット悲シカッタ……。ソシタラ、目ノ前ニ綺麗ナ女ノ人ガ出テキタ」

 そこで霊夢の思考が繋がる。外の世界に干渉できる奴なんて殆どいないだろう。もし、いるとすれば……。

「ソノ女ノ人、スキーマーッテ言ッタ。スキーマー、私ニ夢ヲ与エル仕事ヲ辞メナイデ欲シイッテ言ッテクレタ」

 予想通りである。そう、八雲紫だ。恐らく、外の世界で忘れられる運命にあった"さんたくろーす"。彼を幻想郷へと誘ったのだろう。

「変ナ穴ヲ通ッテ私、ココニ来タ。ココノ子ドモ達、驚ク人達モイタ。……デモ、喜ンデクレル人達モ一杯イタ。私、嬉シカッタ」

「……もう、いいわ」

 霊夢は、大きな勘違いをしていたのだ。"サンタクロース"は、思い描いていた人物とは遠くかけ離れた存在だった。
置き土産を残していた訳なんかじゃない。彼は夢を残していた、配っていたのだ。幻想郷に住む者達を笑顔にする、素晴らしい夢を。

「"サンタクロース"さん。……ごめんなさいね。私、とんでもない勘違いしてたわ」

 彼は夢を与える仕事に誇りを持っていた。外の世界で忘れられても、誇りだけは捨てなかった。だから幻想郷にまで来て、夢を与え続けてこれたんだ。

「謝ラナイデクダサイ。私、ココノ人達トテモ大好キ。笑顔ガ溢レテテ、楽シイ場所。ココニ来テ、本当ニ良カッタ。私、モウ一度頑張ッテミマス。マタ、夢配リニ来マス。アリガトウ」

 "サンタクロース"の体が淡い光に包まれていく。彼はまだ、外の世界で必要とされている。いや、必要とされていなくても彼は夢を与え続けるのだ。
それが彼の仕事であり、誇りであり、そして生き甲斐なのだから。

「"サンタクロース"さん、今度は私も……手伝ってもいいわよね……?」

 霊夢は、涙を流しながら"サンタクロース"に尋ねる。目の前には既に"サンタクロース"はいない。外の世界へと帰ってしまったのだから。

 でも。



 それでも。



 霊夢の耳に「また今度……」と、微かに聞こえた様な気がした。



「また……今度……」
一足早いクリスマスネタ。
最近の子ども達は背伸びばかりしてしまって、夢を見ていない気がしてならないのです。
小さい頃に感じた高揚感は今でも確かに覚えています。
サンタクロースに手紙を書いた時もありました、サンタクロースにお返ししようと自分で一生懸命作ったジグソーパズルを用意した時もありました。
サンタクロースに会おうと小さい体で頑張って起きてようとしたけど、やっぱり深夜前には眠っちゃって。
それでも朝、起きてプレゼントが置いてあった時の嬉しさは忘れることができません。
たまには、そんな夢を見てもいいんじゃないかな~と。
私のサンタ像は煙突を通って暖炉から家の中へと入ってくる笑顔の可愛いお爺さんです。
全国のサンタクロースさん、頑張ってください。
読んでくれた方々、ありがとうございました。
Ph
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コメント



0.1310簡易評価
17.70煉獄削除
サンタですかぁ……。
本当に小さい頃は信じてたんでしょうけどね。
今の子供たちってどうなんでしょ……。

なんだかこの話のサンタの言葉も解るような気がします。
幻想になるほどサンタが忘れられて、でも
最後にはまた希望を持って外に戻っていくのは良かったです。
19.100名前が無い程度の能力削除
凄く暖かい気持ちになりました。
あれ、目から涙が……
何でだろ……。
23.80名前が無い程度の能力削除
え、と…レミリアがよい「子」…

「れみ☆りあ☆う~」

うん、良い子ですね。
29.90名前が無い程度の能力削除
霊夢のくだりが若干うっとおしく感じたけど、でも中々面白くてよかったです。