Coolier - 新生・東方創想話

だってムシなんだもん

2008/12/20 21:41:13
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夏の日ある森の小道、魔理沙、アリス、パチュリー、いつもの魔法使いトリオが集まって何やら話をしている

アリスとパチュリーのムッスリ顔から察するに、仲良くお喋りという訳ではなさそうだ


「じゃ、じゃあこうしようぜ、私がこのコインを投げるから、先に見つけたほうが勝ちって事で・・」
「先に見つけたほうとデートするのね」
「いや、女同士だとデートっていうかなんというか…そうだろ、パチュリー」
「そこに恋があればそれはデートよ」


アリスとパチュリーととで遊ぶ約束をダブルブッキングしてしまった魔理沙

当然二人ともカンカンでこのままでは殺し合いに発展しかねない程の険悪なムード

せっかくだから3人で遊ぼうぜという魔理沙の提案は受け入れて貰えなかった

コイン投げの提案を受け入れてもらうのにもどれだけ苦労したか…


「それじゃあいくぜー、せーのっ!」

 ピーン


魔理沙の弾き飛ばしたコインを必死に目で追う二人、

コインは大きな弧を描くと、森の中へと入っていってしまった

すかさず二人もコインを追って森の中へ

「う~ん、ちょっと遠くに投げすぎたかな… いっそこのまま逃げるか」

中々帰ってこない二人に退屈している魔理沙、

そして10分ぐらいすると森の方から人影が、

アリスにしては背が低いし、パチュリーかと思えばズボンを履いていた


「やあ、魔理沙ー」
「なんだリグルかよ、機嫌が良さそうだが何かいい事でもあったのか?」
「木の上で昼寝してたら空からお金が降ってきてさ、これこれー」
「……え?」

それは紛う事無く魔理沙の投げたコインだった

その証拠にイカサマを防止するために裏面にはマジックインキで書かれていた「ま」の文字が

「これは私のコインだ、ほら、裏に名前が書いてある」
「ほんとだ… チルノも自分のお金に名前を書いてて『バカじゃないのこいつ?』と思ったもんだけど
 けっこうメジャーな方法だったんだ…」

『あいつとだけは一緒にされたくない』と魔理沙は思ったが、それよりも重大な問題が残っていた

この勝負どうしよう… 色々と考えていると、アリスたちが帰ってきてしまった


「全然見つからないわ…このままじゃ日が暮れちゃいそう」
「ホントにあるのかどうか疑わしくなってくるわ」

と汗まみれな二人、よく考えたらコイントスで良かったなと思い返す魔理沙だったが、ここは公平に二人とも諦めてもらう事にした

「なんだ、二人とも見つけられなったのかー、じゃあ今日の予定はお流れってことで…」

いまいち状況が読めない部外者リグル、ついでに空気も読めないため素直に疑問を口にする

「みんなで何やってたの?」
「魔理沙がコインを投げて、拾った人が魔理沙とデートするっていう決闘よ」
「そのコインって、もしかしてコレの事?」

リグルが出したコインは、間違いなく二人が探していた「ま」のコインだった

「そ、それよ!」
「じゃあ、私が魔理沙とデートを!」
「で、デートなんかじゃねぇよ!、ただ二人きりで遊ぶだけだよ!」
「・・・・・・デートかぁ」
「デート」の言葉に少しだけときめいてしまうリグル、しかし納得できないのはパチアリの二人

溜め込んだ怒りと鬱憤を抑える気は毛頭無いようだ。

「こんなオチで・・・ 納得できると思ってんの?」

どこからか大きな針を持った人形を出すアリス

「ここはもう魔力をもってして解決するしか方法は無いです・・・!」

パチュリーも本を開き、完全に臨戦態勢だ。

これはヤバイ、アリスとパチュリーの本気の魔法戦争に巻き込まれると命に関わると判断した魔理沙は

ボーっとしてたリグルの手を引いてホウキで飛び去ってしまった

「ちょっと待てーー! 」

二人の怒号を尻目に、ホウキ星のように消えていく魔理沙の影


アリス達から全力で逃げ去ると、一休みする為に人間の里に降りた魔理沙とリグル、

隠れるように魔理沙の行き付けのカフェに飛び込む

「ふぃー、一息つけたな、おい、リグル、奢ってやるよ、好きなの頼んでいいぞ」
「・・・じゃあ、これ、」

リグルが指差したのは、一番安い紅茶だった。

遠慮がちな奴だな、まあ安く済んでいいかと自分も同じ物を頼む

「うぇ・・・苦い」

出てきた紅茶を恐る恐る飲むリグル、紅茶を飲むのは初めてのようだ

「バカだな、砂糖入れねぇととても飲めたもんじゃないぞ、ほれ、貸してみろ」

リグルから紅茶を取り上げると、手馴れた手つきで角砂糖2つを入れ、かき回す魔理沙

「ほれ、こんなもんでどうだ?」
「・・・! ・・・おいしいです」
「そうだろそうだろ、ここの店の紅茶は安くて美味いんだぜ
 あんみつとかも中々イケるんだ」

二人でお喋りしながら紅茶をズルズルと啜ってると、魔理沙はリグルがチラチラとカウンターの方を覗いてるのに気付いた

その視線の先のフリーザーの中にある赤や白や茶色の甘くて冷たい不思議なお菓子、アイスクリームである

「リグル、私はアイス頼むんだけどお前も食うか?」
「・・・いいえ、いらないです」
「・・・そうか?」

本当は食べたいのになかなかいじらしい奴だな、と魔理沙は心の中で笑った

そして、普段食べてるサイズより二周りも大きい物を魔理沙は注文する

「・・・ふぅ、ちょっとデカすぎるのを頼んじまった、リグル、半分食べてくれるか?」
「え?、あ、うん、いいよ、しょうがないなぁ」

「しょうがないなあ」そう言いながらもリグルは嬉しそうにニヤニヤ顔だ、

とても微笑ましく、魔理沙も思わず吹き出しそうになってしまう

口をクリームまみれにして美味しそうにアイスを嘗めるリグルを眺めて

ゼリーを嘗めるカブトムシみたいでけっこう可愛いな、と魔理沙は幸せな気分になった

「あ!ちょっと食べ過ぎちゃった、ごめんなさい・・・」

アイスクリームはすでに元のの大きさの3分の1にまで減っていた、
リグルは以前に戦った時にはとても見せなかった申し訳なさそうな顔をしている

「いいっていいって!ちょっと腹の調子が悪くなってきたからもうちょっと食べても構わんぞ!
 あー腹が痛い! 腹が痛い!」

店内で腹が痛いと大声で連呼されて喫茶店のマスターは物凄く迷惑顔だ

そんなマスターの表情にも気付かず魔理沙たちは勘定を済ませて仲良く店を出た。


「結局、私一人でほとんど全部食べちゃったね、」
「気にすんなよ、それより買い物にでも行かないか?今日は市が立つ日なんだ
 なかなか面白いものがあるかもしれんぜ」
「行こう行こう!おいしい水は売ってるかな?」
「ははは、水が好きなのか、水だったらいいのが売ってるぜ
 『薔薇の朝露』って奴とかな、ちょっと値は張るがな」

仲良くお喋りをしながら人混みでリグルがはぐれないよう手をつないで買い物を楽しむ二人、

うさんくさい物を見つけては笑い、美味しそうな屋台物があれば立ち止まって買って食べた、

その姿は、リグルが男の子に見えるような事もあってか、年下の彼氏とお姉さん彼女の仲のよい恋人のようだった。

そしてその夜、それぞれの家の分かれ道に立った二人

リグルのとても口惜しそうな表情が、楽しい一日だった事を窺わせる

「ありがとう、今日はすごく楽しかったよ、
 普段は行かない人間の里に行けたし、アイスクリームは美味しかったし、
 あと、魔理沙と一緒に遊べてとても楽しかった」
「それは光栄だな、私もリグルと一緒に遊べて楽しかったぜ」
「・・・あの ・・・良かったらまた一緒に遊んでくれるかな・・・? 」
「いいぜ、好きなときに来いよ!」
「ありがとう・・・」


リグルはカブトムシのような羽音を立てて夜の空に飛び去っていった

魔理沙はまたいい友達ができたな、とアリス達の事も忘れて嬉しく思った


ふたりはたびたび会う約束をし、そして二人きりで遊んだ

芝居も見に行ったし、白玉楼や地霊殿に肝試しに行ったりもした

魔理沙は自分に対するリグルの態度がちょっと変わってきてるのに気付いたが

元来がさつな性格ゆえ、特に気にせず一緒に遊び続けた


夏も終わろうとするある日、魔理沙は青い顔をして博麗神社に飛び込んできた


「霊夢ーっ! 助けてくれーー!!」
「今度は何やったの魔理沙、ここは懺悔室でも駆け込み寺じゃないのよ」

冷たいほどに淡々と接する霊夢、どうせマトモな話じゃないのは目に見えていた

「リグルが、リグルが私にプロポーズしてきた!」

・・・なるほど、なかなか衝撃的な話だ、今お茶を飲んでいたら間違いなく吹き出していただろう

「・・・・・・そっち関係の話か ・・・最近仲良かったもんね
 アリスといいパチュリーといいどれだけ幻想境に気色悪い問題を起こせば気が済むのよ!」
「私だって好きで起こしてんじゃねぇよ! あ、霊夢、お前は大丈夫だよな?!」
「フザけた事言ってんじゃないわよ!!!誰がアンタなんかと!! ・・・で、断ったの?」

こういう時にすごくどうでもいい事を言ってしまうのはコイツの習性なんだろうか
しかしさすがに困り事の核心については冷静に話し始める

「それがさ・・・なんつーか、今まで私が受けた告白とは何か違うんだ・・・
 なんかこう、全身全霊っていうか命賭けてるって言うか・・・
 とてもその場では断れなかったんだ・・・
「だったら諦めておとなしくさっさと夫になりなさいよ」
「駄目だよ!!つーか私が夫なのかよ!見た目的にはリグルの方だろ!」
「あっちは見た目が男の子、あんたは中身が男の子で釣り合いが取れてるんじゃないの?」

自分でもとても相談に乗れてるとは思えない霊夢だった、というか私にどうしろというのかというのが本音だ

「そういう問題じゃねーだろうが!! いい断り方考えてくれよ!!」


「断り」という言葉に反応するように神社の影からガタンという音がする、二人が振り返るとリグルが立っていた

魔理沙の顔を避けるように俯き、小さな拳を握りしめ、足元には涙が落ちる、その細い身体はフルフルと震えている

「魔理沙 ・・・・・・どうせ ・・・どうせ私の事なんて ・・・うわぁぁぁぁぁん!!!」

言葉から逃げるように泣きながら飛んでいくリグル、呆然として立ち尽くす二人

「リグル・・・ ?」
「 ・・・・・・ありゃあ自殺しかねないわね、追うわよ、魔理沙」
「あ、ああ」

リグルを探して飛び回る二人、しかし結局リグルは見つからなかった。

リグルが行きそうな所は全て行った、リグルの巣、かぐや姫騒動の時戦った森、二人で行った喫茶店

「くそ・・・どこに行ったんだ・・・ まさか本当に・・・」


魔理沙の目から不安と罪悪感の涙がポロポロと落ちる、そんな魔理沙の心境を表すかのように周りを黒い闇が覆う

闇の正体は宵闇の妖怪ルーミア、夜雀のミスティアも一緒に居る、

夜の妖怪同士なのでリグルとも仲が良かったりもするのだ


「魔理沙、あんたに話があるの、リグルの事だよー」

ルーミアがいつになく真面目そうに話しかける、真面目そうでも舌足らずなのは変わらないのだが

もしかして居場所を教えてくれるのではないか、

すがるように聞いてみる、もちろんそんな都合のいい話はあるはずがない

「違うわ、リグルの生い立ちの話よ」

ミスティアが語り出す、魔理沙はそういえばリグルの過去に何があったか、自分は何も知らないと気付く
もしかしたら捜索の手掛かりなるかもしれない・・・ 聞く価値はありそうだ、

「生い立ち・・・? 聞かせてくれ」

ミスティアが静かに、ゆっくりと語り始める

「ホタルっていう生き物はね、夏の一週間の間に恋をして、恋が終わって卵を産むとすぐに死んでしまう

 その中でリグルは一匹、恋をする事ができず仲間達が満足そうに死んでいく中で生き永らえてしまったの
 今年こそは恋ができる、今年こそは恋ができる相手がいると思って何年も生き続けた
 でもある日、うっかり放射能を浴びた水を飲んじゃって、今の妖怪の姿になってしまったのよ」

意外な話だ、あの子供のように無邪気だったリグルにそんな切ない過去があったとは、
ミスティアの語りに続けるように、今度はルーミアが語り始める

「妖怪の姿になった事で『もう恋なんかできない』と思い込み、あいつは深く深く悲しんだのだ
 その悲しみを忘れるように夜の虫達と遊び、人間をからかったりもしたのだ
 そしてあの日、永い事待ち望んでいた初恋ができたんだ、
 その相手が魔理沙、あんただったのだー」
「私が・・・アイツの・・・初恋の人・・・」
「ホタルの恋ってのはね、すごくすごく重いの、自分の命、夢、人生すべてに匹敵するぐらいね・・・    
 それをアンタは弄んだ、ただただ自分が楽しいからって・・・・・・!」


ミスティアの眉間に怒りの筋が浮かぶ、当然だ、何も知らぬ遊び人に友の一生を踏みにじられたのだから


「私は・・・・そんな事も知らずに・・・!」


魔理沙は自分の拳を血が出る程に握り締め、悔いた、リグルの事を何も知らなかった自分の無知に、

リグルは命を賭けて自分の事を想ってくれていた、しかし自分はそれに応えるどころか無下にして誤魔化そうとした

自分はなんて器の小さい人間なんだ、それこそ一寸の虫にも劣るぐらいに

でも放射能を浴びた水の所はなんかウソくせぇなと思った


「・・・・・・私は後悔なんかしたくない、リグルの所へ行く」

拳を解くと、魔理沙は吹っ切れた顔で言い放った

「同情でとってつけたような愛情なんて、ますますの不幸を生むだけなのだー」

ルーミアが珍しく正論を言う、痛いほどに真理だ、しかし今の魔理沙の決意の前には通用しない

「自分の本当の気持ちがわかった、もう何も迷う事はない
 女の子同士だってなんだ! それを承知であいつは告白してくれた
 全てを賭けた大事な大事な恋を!
 今すぐあいつにこの気持ちを伝えたい・・・あいつに会いたい
 私は・・・ 私はリグルが大好きだ!!!」

腹の底から飛び出した真っ直ぐな言葉、その表情、その声、

ルーミア達は感動した、人間はここまで格好良くなれるものなのかー、と…

「こ、こ、こりゃぁー本物なのだー!!」
「今すぐにそれを本人の目の前で言ってあげなさい!」

今までとは打って変わっての妖怪の激励でさらに自信が付き力が湧いてくる
すぐにでも飛び出したい、一直線にアイツの所に飛んで行きたい

魔理沙の気持ちを読んでいたかのようにタイミングよく霊夢が現れた
リグルの居場所が分かったそうだ、都合のいい話もあるもんだな



ところ変わってこちらはリグル、恋に破れた乙女の例に漏れず自暴自棄になっている

「恋に破れた夏の虫は、蜘蛛の巣に抱かれてその命を終えるの・・・」

リグルはヤマメの家の入り口の蜘蛛の巣に引っかかり、グズりながら横たわっていた・・・

「あのねえ! 何度も言うけどね、私は土蜘蛛だから空飛ぶホタルは管轄外なの!
 だからさっさと出てってちょうだい!」
「ああ、蜘蛛にさえも見捨てられ、このまま干からびて死んでいくのね・・・」
「ひとんちで干からびるなー!!!」

どこまでも迷惑な客である、ヤマメもいっそのこと食ってしまおうかとも思ったが、ホタルの体液はとってもマズいのだ

呆れ顔でふと空を見上げると、超高速で魔女が飛んでくる、

「リグルー!! 居るかー!!」
「魔理沙っ!!」

突然の想い人の来訪に、一瞬嬉しそうな顔をするリグル
魔理沙も一瞬安心した表情をしたが、すぐに憤怒の表情で無実の捕食者を睨みつける

「クモ女っ! 今すぐリグルを放しやがれ! 」
「あっ、うん」

思わず普通に受け答えしてしまうヤマメ

ヤマメが蜘蛛の巣からリグルを剥がすと、魔理沙はリグルを力いっぱい抱きしめた


「リグル・・・ ごめんな、ごめんな・・・」
「放して魔理沙・・・恋に破れたホタルは、死ウグッ・・・」

リグルの言葉が終わるのを待たずに、魔理沙は情熱的にその唇を塞いだ

数秒の沈黙の後、2つの唇は剥がれ、その間に光る糸が走る

「リグル・・・ 大好きだぜ」
「魔理沙・・・ 本当・・・?」
「何ならもう一度やってみるか・・・?」


遅れて集まってくる仲間たち、本気を出した魔理沙のスピードに追いつける者は居なかった


「間に合ってよかったのだー!」
「幸せにね、二人とも・・・」
「何かよくわかんないけど久しぶりに結婚式の仕事にありつけそうね」

こんな時にも商売を忘れない霊夢、だがさすがにこんな場ではただの照れ隠しにしか聞こえない


情熱的な口付けは更に長く続く

唇を重ねたまま、近くにあったベットに倒れこむ二人

「リグル、本当にいいのか・・・?私なんかが恋の相手で」
「駄目なハズないじゃない・・・ 魔理沙・・・ 全身全霊で愛させて・・・」


何百年も待ち続けた心からの恋、嬉しい、それが実を結ばぬ徒花の愛であっても

幾星霜の季節を超え、辿り着いた本当の恋、ああ、まさかその相手が人間の女の子なんて、

もしかしたら私は、あなたと恋をする為にこの姿になったのか、

そうならば この悲しみだらけの数百年、何も後悔はない・・・


魔理沙に覆いかぶさるリグル、リグルの全て愛を受け入れようとする魔理沙

ひとんちのベットで何やってんだとブチ切れるヤマメ、まあまあとそれを抑える3人

「魔理沙・・・」
「リグル・・・来いよ」


リグルの服のボタンが全部外れようとしたその時、紫色の人影が窓から飛び込む


「そこまでよ!!」



どこから見てたのか突如乱入してきたパチュリーが二人に向かって巨大な銀色の歯車を飛ばす

オータムブレード・・・そう呼ばれる魔法だった

リグルの背中は無残に切り裂かれる、まるで恋人を庇ったかのように

魔理沙の胸の上に黄色い液体が垂れる、人間のものではない体液

「リグ・・・ ル?」

力なく魔理沙に倒れこんでいくリグルの身体、背中の傷から止め処なく流れ出るリグルの体液

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」

やっと恋ができたのに、やっと好きな人と結ばれたのに、こんな無残な最後、許される筈が無い、

知識と日陰の少女・・・そう呼ばれた無知な邪魔者は残酷に悪態を放つ

「私というものがありながらそんな虫なんぞと遊… うわっ! 」

外野の4人が怒り(約一人八つ当たり)の表情で一斉にパチュリーに飛び掛かる

蜘蛛の糸で縛られ、夜雀の爪で眼を刺され、ルーミアに齧られ、最後に霊夢に空の彼方へ蹴り飛ばされてしまった


「リグル、おい、リグル! 目を覚ましてくれ!! リグルーーッ!!! 」


錯乱する魔理沙を落ち着かせ、霊夢たちは速やかにリグルを病院まで運んだ、

幸い命だけは助かったが、夏が終わり、秋の半ばに差し掛かるまでリグルの意識は戻らなかった




そして、退院の日、魔理沙は霊夢とともにリグルを迎えに来ていた

二つのリングを懐に忍ばせて

「魔理沙っ、出てきたわよ、ほら、」

病院からトコトコと出てきたリグル、魔理沙を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた

「やっほー!魔理沙、久しぶりー!」

なんか妙に軽いな、と霊夢は思った、

あんな事があったんだからもうちょっと感動的な再開でもいいじゃないかと

魔理沙はそれでも気にせずリグルに決意を伝えようとする

「リグル・・・!」
「あーお腹減った、スタミナ付くもの食べたいな、カワニナとか、
 こんどみんなでご飯でも食べにいこーよ!、それじゃね!」


リグルは笑いながらカブトムシのような元気な羽音を出し、飛び去ってしまった

あまりの事態に呆然とする魔理沙、もしかしたらこっちが振られたのでは?

「ホタルの繁殖期は夏、夏が終わったら恋も冷めちゃったみたいね、まあしょうがないか、虫だし」

つい暴言を吐いてしまう霊夢、だが我ながら上手い分析だと感心した・・・が、魔理沙の様子を見てその発言を後悔した

「・・・・・・・こんなの・・・グズッ・・・こんなのって無いぜ・・・」

顔をくしゃくしゃにした魔理沙の目からポトポト涙が零れ落ちる、霊夢は悪友の本気の泣き顔を見るのは初めてだった

「婚礼衣装も予約したのに・・・ グスッ・・ 家の改築もしたのに・・・ お揃いの茶碗と歯ブラシ買ったのに・・・
 ・・・・・・ひどいぜ・・・ひどいぜ・・・グスッ」
「そ、そこまで本気だったの・・・」
「うぁ、うあ、うわぁぁぁぁ~~~~ん!!!! 」

失恋で大泣きするあたりはこいつも女の子だな・・・と魔理沙を慰める霊夢

しかしそのせいで事もあろうに「霊夢って本当はあったかい所あるんだな」と魔理沙に惚れられてしまい、

アリスパチュリーを交えた不本意すぎる四角関係に霊夢が巻き込まれたのはまた別のお話。
勇気を持って初投稿です
リグルの設定がよくわからずかなり想像が入っちゃったのでご注意を
ヤマメとキスメをなぜかよく間違えたぜ
あとパチュリーごめんなさい
ベアリングジッポ漬け
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コメント



0.540簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
こんな最後はあんまりだー(棒読み
でも面白かったです。
2.無評価名前が無い程度の能力削除
>アリスとパチュリーととで遊ぶ約束をダブルブッキングしてしまった魔理沙

なんでアリスとパチュリーが魔理沙を好きなことになってんの?
3.70名前が無い程度の能力削除
 うん、なかなかほのぼのしてていいと思いました。
 そうかー、リグマリかー……意外にも……
 
「・・・」は「…」のほうがいいんじゃないかと。「てん」で変換して「三点リーダ」
を選べば出ます。
4.90名前が無い程度の能力削除
うん!とても面白かったです。
リグマリは初めて読んだけど、予想以上に楽しめました^^
5.20名前が無い程度の能力削除
読者を納得させる前に次の場面に移りすぎ。
9.60名前が無い程度の能力削除
物語り自体はとても良い、良いのだが…妖怪化した理由が酷すぎる。

なんだ、放射能入りの水って。
11.80煉獄削除
ほのぼのとした感じがして面白かったんですけど、
ちょっと展開が早すぎるかな~……と。
あと妖怪化したのがちょっと無理があるような……
基本的には歳を経て妖怪化するものだと思っていますが。
話は面白かったので次回などでLvアップした作品を期待してます。
17.20名前が無い程度の能力削除
個々の台詞回しで作者の東方への理解がどの程度なのかよく判りました。
20.100名前が無い程度の能力削除
最後の結末がちょっと悲しい…けどそれもタイトル通り!
文章も読みやすく、内容も面白かったです。