「昨日のあんたの新聞、面白かったわよ」
不定期発行の文々。新聞を配布し終えて直ぐ翌日。
既に脳内は次の新聞にシフトし、何かネタはないものかと郷内を散策していた時のことだ。
騒動の宝庫たる博麗神社ならば何かあるだろう。そう思い、尋ねた矢先の巫女の発言である。
「あや……それはどうも」
「デバ亀とか関心しないけどね。ああいうのなら読んでもいいわ」
昨日の新聞と言うと、山頂の神や巫女に関して纏めたものだっただろうか。
勿論手を抜いたつもりは無かったが、よもや霊夢の口からそんな言葉を聞けるとは。
それに仮にも商売敵を紹介した内容である。そんな記事が受けると言うのも文にとっては意外だった。
「どうしたのよ、鳩が豆鉄砲食らった様な……いや、あんた烏だっけか」
「あやや。清く正しい烏天狗ですってば」
それでも賽銭の催促もそこそこに、縁側に通されて茶を出された辺り、件の新聞が彼女の上機嫌の一因になっているのは確かな様だ。
そのまま半刻程も世間話に興じた頃だったろうか。挨拶もそこそこに、文は再び記事のネタを探して飛び立った。
むず痒い気恥ずかしさを感じてはいたものの、文がこの事を本心から喜んでいたのは事実であろう。
外面をどの様に取り繕おうとも、文の内に物書きとしての、或いは記者としての欲求があるのは自他共に知る所である。
自分の書いた物を『面白い』と言って貰えればとても嬉しい。それだけの事だ。
また、小説等の創作文とは異なり、新聞と言う媒体は読者に良い方向に品評され難い事も、文の嬉しさを増している要因かもしれない。
『何時』に『何が』あった。
ただそれだけで、既に記事としては成立している。
記者の仕事は、その件に何を思い得るか、そして何が起こり得るかを出来るだけ客観的に、そして解り易く伝えること。
それに共感を得られなければ事実をただ並べただけのつまらない内容になるだろうし、反感を与えれば破り捨てられることもあるだろう。
それで済めば良いが、或いは記者本人が糾弾されることになりかねない。
新聞は、良評価以上でなければ即マイナス印象を与えかねない、難しい情報媒体なのである。
しかも、良い出来だったからと言って絶賛される訳ではない。
事件を伝え、それが迫真の内容だからと言って、不謹慎だ、プライベートを覗くなと糾弾されることはままあることだ。
そんな新聞に「救われた」「助けになった」などと返してくれる者が果たして何人いるだろうか。
いても新聞が事件を伝えることは当然のことであり、それが文自身の耳に届くことなどまずは無い。
だからこそ、たまに褒められた時などは、何とも言えない充実感に満ちるのである。こればかりは、どれ程長く生きても新鮮なものだ。
まして自他共に認める無関心、博麗の巫女からのお褒めの言葉である。
笑顔と言う名のポーカーフェイスを装う文とは言え、今回ばかりは自然と目元が緩んだのも無理からぬ事と言えよう。
「何にやけてんだ?自称幻想郷最速」
何時の間にいたのやら、声の方には縁起でもない黒白魔法使いが併走していた。
「……自称はどちらかと言えば貴方でしょう、魔理沙さん。それより何か御用ですか?無いならこれで」
言いつつスピードを上げるが、向こうは然程の苦も無く着いて来る。
まだまだじゃれ合いの領域なのだから当然とも言えるが。
「……いや、昨日の新聞読んでな」
そう言われ、また文は目を丸くした。
顔を会わせばまたブン屋かと悪態を吐く魔理沙が、自分の新聞について話題にするなど小数点以下の可能性だ。
「何だよ、鳩が豆……いや烏か」
「烏天狗ですよ。天と地ほども違います」
文はそんなやりとりに一抹のデジャヴを感じつつ、魔理沙の言葉に耳を傾ける。
「いや……その。お前が書いたんだよな、あの記事。早苗んとこの」
「そうですよ、当たり前じゃないですか。写真、記事、レイアウトまで、全部私一人でやってるからこその文々。新聞なんですよ?」
勿論、同僚の天狗との情報交換で、自分に有益と思われるものを取り入れたりはするが、最終的な情報の取捨選択は、あくまで文のやっている事である。
「む……ん。そうか、いや、そうだよなあ」
「……?」
対する魔理沙は、新しい魔法でも考えているかの様に難しい顔をしていた。
「何です?」
妙なその態度に、文は怪訝な顔で問い返した。
魔理沙は、もう少しだけその顔を続けた後、自分のクセのあるブロンドを、くしゃくしゃと掻きまわす。
「あー……んー……」
何とも言いにくそうに言葉を詰まらせる。心なしか顔が赤くなっているのは気のせいだろうか。
「面白かった……ぞ?」
ぽそっと。本当に小さく、確かにそう言った。
「……へ?」
「じゃ、な。調子に乗るなよ!」
魔理沙はそう捨て台詞を残し、帽子をくっと被り直すと、あっと言う間に回頭して魔法の森に向けて飛んで行ってしまった。
「ええと……」
はて?あの性格の捻くれた黒白は、今何と言った?
余りに想定外な事態に、文の良く回る頭をもってしても、事態を処理するのに結構かかってしまった。
「……『面白かった』?」
あの全く素直と言う言葉からは程遠い、自らの努力の跡を人に見せようとしない魔法使いが。
あの魔理沙が!
「………………ひゃっほう!」
自然と文の体は上へ上へ。雲を衝き抜け天蓋に届かんばかりに、文字通り舞い上がる。
その時の文の気持ちは恐らく、自分の子が賞賛された、母親の気持ちに近いものがあったのだろう。
生みの苦しみ、そして認められる喜び。
それこそ有頂天に達さんばかりの喜びである。
だからこそ。
本来老獪にして大妖の域にも届くであろう彼女が、気がつかなかったのも仕方の無いことだったのかも知れない。
明らかに、日頃と異なる評価の違和に。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
自宅に帰った後も、文は舞い上がったままだった。
何時もならとっくに湯浴みを終えて、一日に集めた事件のチェックに頭を捻っているところだが、今日はと言えば鼻歌混じりにようやく風呂から上がって来たところである。
勿論、湯船の中でも随分と気分の盛り上がる歌を口ずさんたりしていた訳だが。
元来慢心しがちな天狗ではあるが、今日のことを考えれば無理からぬ事。
魔理沙と別れた後も、新聞を配達している知人友人から、態度の差異はあれ極めて好意的な反応を得られたのだから。
タオルでややクセのある髪を拭き、文は居間に並べた本日の事件及び写真に向か……おうとしながら顔を緩めた。
「……あやゃ~♪」
中々どうして、他妖他人に見せられない顔となっていた。
果たしてそれは、紅白巫女が一番茶とお茶請けを脇に置き、ぽかぽかとした陽気の昼下がりに見せる顔であり、はたまた紅魔館の完璧で瀟洒なメイドが、己が主人を影から眺める時に見せるものと同じだった。
誰かが玄関をコツコツとノックしたのは、そんな時である。
「文さ~ん。今大丈夫っスか~?」
「あや~♪……あやっ!?あ、椛!?開いてるわよっ」
「お邪魔しまーす」
入ってきたのは哨戒用の制服に身を包んだ、白狼天狗の犬走椛だった。
管轄や自宅が近いこともあり、偶に雑用を頼んでいたら、何時の間にか懐いてしまい今に至る。
最近はネタ探しに奔走することが多く、記者としての顔で他者に接することの方が多い中、気を抜いて話せる数少ない存在と言える。
だからと言って、流石にこんな無防備なダラケ顔を晒す訳にもいかない。文は途端にキリっと、先輩風の空気を纏うのだった。
「いらっしゃい。警備の方はどう?」
「さっき交代してきましたけど平和なもんスよ~。たまに雛さんがくるくる回ってるのを見かけるくらいですね」
「平和なのは良いんだけどねぇ……まあ、そういう時はそういう時なりの記事の書き方はあるけれど」
地下及び地霊殿を舞台とした異変を霊夢が解決してから、特に異変らしい異変は起きていない。せいぜい個人個人のドタバタした小競り合いが関の山だ。
勿論そう言ったものも書き方次第で十分に面白くなるが、インパクトに欠けるのは否めない。
そんな状況が続いた中、降って沸いた様な今回の評価である。
「良い事あったみたいっスね~」
「あやっ!?」
「顔が緩んでますよ~。昨日の新聞ですよね」
「こ、こら、椛。あんまり茶化さない様に」
と言いつつも、満更でも無い文の反応を見れば、見た目以上に喜んでいることは隠し様が無い。
「でも、実際同僚の間でも評判良いんスよ?文さんのはいっつも高評価の常連ですけど、今回のは『更に一味違う』って評判で」
白狼天狗も山の妖怪の一員である以上、烏天狗の発行する多様な新聞に目を通す事は多い。
面と向かって上司に言う訳ではないが、同僚間での品評はままある事の様だ。
「あやや……直接言われると照れると言うか……」
前述した通り、ブーイングには慣れているものの、裏の無い好意には弱い文である。両の人差し指をくるくるさせたり、頬をポリポリと掻いたり忙しい。
その様子にやはり頬を緩めている椛は、畳み掛ける様に言葉を続ける。
幻想郷随一の不敵なブン屋、射命丸文のこんな表情を拝めるなどめったに無いチャンスだ。
「でもほら、メイン記事の最後に載せたあの文、あれがやっぱり決め手ですよ」
そう言われて更に文の顔が緩む。〆の文章は毎回気を遣う部分ではあるが、今回の記事においては特に吟味し、しかも自分でも気にいっている言い回しだ。
「いや、自分も校正手伝わせて貰いましたけど、あの後更に追加したんスよね?良く間に合いましたね」
「あや~褒めても何も……ん?」
ぴくりと。
不意に会話に感じた、小さな違和。
(……あれ?校正の……後?)
確か、相当忙しなかった時である。椛に頼んだ後、更に自分でも内容を確認し、いざ河童の印刷所へ向かおうとして……
(……その後、どうしたんだっけ?)
記憶が、はっきりしない。
はっきりと思い出せるのは、刷り上った後に、印刷所で河童に起こしてもらった時ではなかろうか。
その間は?
その間に、何をしていた?
「時間も少なかったのにそれでも変更して、良いものに仕上げるなんて、流石幻想郷最速っスよ!」
「……あや、や、そんなことないってば」
いや、そうだ。更に内容を吟味して、文章を変更したんだ。
それが今回の好評価に繋がったんじゃないか。
気分が昂じて集中していると、前後の記憶が飛ぶことは結構あることだ。
そうに違いない。
……本当に?
「それと、ここの比喩も上手いですね。良く思いついたな、って」
「いや、本当に煽てても何も……ん?」
また、違和感。
椛が、懐から取り出した最新の文々。新聞の中の一文を指し示す。
(……こんな表現、使ったっけ?)
紙面に載っているのだから、使っていないとおかしいし、実際使っている筈だ。
そもそも自分でもお気に入りの部分じゃないか。
なのに。
上手く運用されている筈のその文を、客観的な、第三者の目で見ている自分がいた。
本当にこれは、自分が書いた物か?本当に、射命丸文が手がけた記事なのか?
(……いや、何を馬鹿な)
鎌首を擡げた疑念を、頭の隅に追いやる。
そんな筈は無いのだ。これで決定して、印刷したんだから。
「あ、そうだ」
「ん、何?」
「今回の記事の推敲段階のメモとか、見せて下さいよ!手伝いに来てた時はそんな時間無かったし」
「椛も妙な物が好きよね……そんな面白いものでもないと思うけど」
「何言ってるんスか。記事の出来ていく過程が拝めるんスよ!?毎回見せて貰う度に文さんの後輩で良かったなぁ~って……」
「はいはい、今持ってくるからあんまり大袈裟にしない」
やれやれと言った調子で文は席を立つ。
居間の隣はデスクが設置された作業部屋になっていた。前回の新聞を作成した様々な情報が散乱している。
見回して、まず一番上に置いた、印刷に使用した完成原稿を手に取った。
そしてその下に折り重なっている、大量の紙を揃えて再び居間に戻る。
完成原稿は丁重に、もう一つの纏めた大量の紙は乱暴という程でもないが、音が出る程度の扱いでドサリと机に置いた。
それはチラシの裏や、安い藁半紙に箇条書きにされた、清書に至るまでの叩き台。
絵に例えればラフの段階、試行錯誤の過程と言える。
完成原稿が、仮に400字詰めの原稿用紙30枚程度の文章量だとすると、その数倍か、或いは桁が一つ繰り上がるかもしれない。
事件の収集とはまた別の、記者をやる上で無くてはならない作業工程だ。
「相変わらず多いっスねぇ」
口調とは裏腹に、山と詰まれたその紙を、目を輝かせて見つめる椛。早速手にとって読み始めている。
「どんな凄い事件に遭遇して、どんな良い写真が撮れても、文章が駄目じゃ話にならないもの。妥協は出来ないわ、妥協は……」
チリ、と。チリチリ、と。
再び、脳の隅から這い上がる漠然とした違和感。
妥協……妥協をしたつもりは無い。毎回変わらず力を注いでいる。
変わらず……?そう、変わらない。毎回変わらぬ努力を……
(……ん?)
そうだ、毎回変わらぬ労力を割いて作業していた。前回より手を抜いたと言うことは無い。
無い、が……
果たしてそれは、今回の評価に至る程のものであったか?
質も、量も、共に以前の物よりも優れていると断言出来るのか?
(……注いだ情熱に区別をつけられるものでも…………いや。いや違う!)
如何に心血を注いだか。それを一番に理解しているのが、本人以外である筈が無い。
自分を誤魔化せても、自分の心に嘘は吐けないのだ。
確かに出来上がった作品は、多数の評価を受ける程に素晴らしいものだった。
しかし、その作品に比べて、自らの努力への評価をつけるとすれば?
良心的に考えても「いつもよりやや力を入れた」程度ではなかっただろうか。
心の中でまで自らを過小評価する者がどれ程いるものか。これは、冷静に己への診断だった。
対象にした事柄によっても、受けに差はある。
しかし、今回の事件性の欠片も無い、素朴な内容を記した記事に、そこまでインパクトがあっただろうか?
(……あれ?…………あれ?)
冷静に、客観的に考えれば、あの空白の時間がここまでの評価を与えたとしか思えない。
なのにその間の記憶が、すぽりと完全に抜け落ちているのは、どうしたことだろう。
「ふわ~。やっぱりこの段階だと全然印象違いますね」
目を輝かせる椛の声に、文はその何とも言い難い思考の連鎖から現実に引き戻される。
だが、今度はそれを振り払う事が出来なかった。
椛の言葉に苦く微笑みながら、適当に頷く事しか出来ない。
「あ、これが決定稿っスね。内容も大分近づいてきてますけど、やっぱり紙面に比べると未完成って印象っスねえ」
文の変化にも気づかず、言葉を続けた椛が手にしたのは、赤字で「決定稿」と記された紙。
言わば推敲での最終段階であり、紙面のレイアウトなどにあわせて字数の調整などは行うが、その内容が大きく紙面と異なることは無い。
今回の様に、紙面が決まってから、内容が大きく変わる事は例外と言える。
(例外?)
果たしてこれは、本当に『例外』か?
本当に、紙面の内容は自分が思いついたものだったのか?
「椛……ちょっとそれを」
「へ?あ、どぞっス」
きょとんとした顔を見せる椛。その表情からして、どう言う意図でそれを確認しようと思ったのか図りかねているのだろう。
解る筈が無い。文自身も図りかねていたのだから。
何故こんな事を?
この記事は自分が書いた物だ。
それは確かな筈なのに、漠然とした疑念が堆積する程「記事は、自分が書いたものである」と言う実感が薄れて霧散して行く。
まるで、そんな実感は始めから無かったかの様に。
文はそれら全てを振り払うと、意を決して決定稿に目を向けた。
完成原稿でのメインの記事は四段に渡っており、それと本来の決定稿を比較する。
内容、文章の配置は、一段目においては殆ど変化が見られなかった。
しかし、二段、三段と読み進めるに連れ、文脈が徐々に変化しているのが解る。
最後の四段目においては、同じ事を述べているにもかかわらず、まるで表現が違った。
しかも、そこに至るまで変化した文脈は、実に自然にその〆の文章に集約し、最後のほんの数行を引き立てている。
文は改めて確信した。
一読しただけでも解る程に、その改変された内容は面白い。
二つの差は歴然としていた。
何も知らされず、この二つが並べば確実に改変された方に軍配を上げるだろう。
伝える内容は全く変わらないのに、ほんのちょっとした句読点の位置の違いで、読み易さや印象に圧倒的な違いが生まれている。
並べられれば、確実に紙面の方を選ぶ。
だと言うのに。
文の意識はどうしても、推敲段階の文章に向かってしまう。
明らかに見劣りするその内容。
だが、イレギュラーが無ければ、こちらを選んでいたと確信出来るのだ。
否、確かにこれは一度、紙面に載せた内容。
本来であれば、これがそのま紙面に発表されていたのだ。
(でも、あの空白の時間に、現在の紙面を思いついて改変した……)
それで納得出来れば、どれ程楽か。
確かに清書の段階で別の内容が思いつき、慌てて更正する事が無い訳ではない。
しかし、いくら意識が集中していたからと言え……
(あそこまでぽっかりと、この記事を書いた過程を忘れてるなんて)
そう、冷静にこの新聞の事を考えてみれば、おかしいのだ。不自然なのだ。
いつもより、印象に残る程に特別に力を入れた訳では無かった。
あの空白が無ければ、あの『面白い記事』が発表されることは無かった。
明らかに不自然な、あの『空白の時間』が無ければ!
「違う……」
「ん?どしたんスか、文さ……」
「違う!」
とぐろを巻いていた疑念は成長し、言葉にする程にはっきりとした確信へと変わる。
「これは……違う……『これ』は、私の書いた記事じゃない」
「文……さん?」
何の根拠も、証拠も無い。裏も取れていない事なのに、はっきりと言葉にする度、その確信は強まる。
紙面に載っている記事は、自分の物ではない。
自分の作品では、子供ではない。
そう文が完全に認めた時。
ふと。
視界の隅で、うぞりと。
「…………っ!?」
脇に置かれていた完成原稿。
その上に、もぞもぞと。
「……ひ……い!?」
釣られて視線を動かした椛の口から、か細い悲鳴が上がる。
「……あれ……何……スか……?」
文字だ。
紙面に記された文字が、まるで蟲の様に蠢動している。
それは一定の法則と共に、離合と集散を繰り返し――――繰り返し――――繰り返し――――
形造られたのは、性別も、否、輪郭すらも判然しない、顔。
目、鼻、口の位置が辛うじて解る程度の、細かな文字で更正されたその、顔
びくりびくりと、音はせずともそんな音が聞こえて来そうな脈動を繰り返すその、顔。
その虚ろとすら言えない空虚な瞳が、平面の世界から二人を見つめる。
背骨に直接、生寒い風を吹き付けられた様な、悪寒。
そして。
その蠢く口元を、ニィと歪め。
「!?」
文字は僅かな瞬きの間に、ただの文章に戻っていた。
まるで、何も無かったかの様に。
「……」
窓も開いていないのに、木々のザワザワと揺れる音が室内に届く。
二人は動くことも出来ず、暫くその、紙面を見つめていた。
流れる様な文脈も素晴らしい、完璧な原稿を。
先程まてと同じく、人を引き付ける魅力を放つ、その『面白い新聞』を。
ゆかりんの仕業と言う線も濃いですね。
でも。
それ以外の何かと言う可能性は、少なくはないのでしょう。
しかし、霊夢に気づかれないなんて恐ろしい奴。
自分の考えとは違う考えが、紙面を通して広まって、
人々にはそっちが文の考えとして周知されてしまう、みたいな。
貴重なホラーものですね。
せっかくなら+から-に心境が転化してからのますます不気味な感じを書いてほしかったな
という期待をこめて
二つの差は暦前としていた→歴然としていた
良いホラーでした。突然怪奇現象が起こる恐怖も幻想入りしてしまったんですね。
でも※19さんと同じく、
もうちょっと追い詰められていく「間」があると面白かったかな、
という気がしたのでこの点数で。
しかしこの妖怪(?)いて欲しいなぁ、PCの中にでも、と思う自分がいるw
こういう不確定要素の妖怪がいると思うとまた面白いですね
千年近く続けてきた、新聞を作るという行為と思いが生み出した、新しい妖怪。
能力は「言霊を操る程度の能力」とか。
あと誤字報告。
あっと言う間に櫂等して→回頭して
早苗さんと神様二柱について書かれた『面白い新聞』を読んでみたいとも思う
>35さん
素で間違えておりました……!
場所によっては不快過ぎる勘違いですよね……猛省します。
同時に新参ということがバレバレですねorz
>20さん 27さん
二つの差は暦前としていた→歴然としていた
あっと言う間に櫂等して→回頭して
各々修正しました。ありがとうございます。
キャラ名を勘違いしてるなんて基本以前の問題ですね……
以後、決して無いように注意します。
展開が読めず面白かったです。
話は纏まってるけど読み手は色々な想像ができて面白かったと思います。
>先程まてと
先程までと でしょうか。
背筋が薄ら寒くなりました。
面白かったです。
ただ、キャラの性格に納得がいきませんでした。