これは、世界で二番目に答えにくい問題についての物語である。
とある日の夜半。
室内ではレミリアとフランドールの二人が和気藹々と紅茶を飲んでおり、時間はごく緩やかに流れていた。
咲夜は側にひかえ、空には満月がかかり、まさしく吸血鬼にとっては十全の状況。
レミリアも紅魔館を統べる者として喜びを覚える。
「まさに殺し合いをするのに最適な楽しい夜ね……」
たまにはこういう優雅な夜を楽しむのも良い。
愛する妹であるフランドールも今日はおとなしく行儀よく椅子に座っており、そんな様子を薔薇を愛でるように鑑賞するのもなかなか味わい深いものだ。
と、そこで不意に。
フランドールがミョッとした。
正確な描写は難しい。
いつだって状況が変わるのは突然だ。
フランドールは世紀の大発見を今まさになしとげた科学者のような顔になり、熱狂的な声をあげたのである。
「お姉様!」
「ん。どうしたの?」
ちょっと引き気味のレミリア。
フランドールは立ち上がり、天使のような無垢な笑顔を浮かべながら、机に身を乗り出すようにして聞いた。
「あのね――赤ちゃんってどうやったらできるの?」
ぶっ。
レミリアの紅茶が三メートルほど飛散した。
しかし、咲夜がすぐに時間を止めて対処したため、幸いなことに大事には至らなかった。口元もいつのまにかぬぐわれており、カップには元の量が足されている。
なんとも瀟洒で完璧な仕事である。
――咲夜、グッジョブ。
と黙語する。
咲夜はいつものように静かに微笑みを浮かべるだけだ。
しかしそれにしても、いったいどういうわけだろう。
赤ちゃんのつくりかた――だなんて。
五百年近く生きてきて知らなかったのだろうか。
あ――そうか。
吸血鬼的な増え方を言ってるんじゃないか?
そうだそうだ。
そうに違いない。
レミリアは何度も頷き、それからおもむろに話しだした。
「つまり、我々吸血鬼の増え方を言っているのね」
「違うよ? 血を吸って増えるのぐらいわたしだって知ってるもん。そんなの常識じゃん」
「あ、そう……」
「そうじゃなくてね。赤ちゃんのつくりかたが知りたいの」
吸血鬼の増え方は知っているくせに、なんでそっちは知らないの!?
心の中で絶叫したところで、フランドールには伝わらない。
レミリアはきょろきょろと周りをみわたした。レミリアピンチ。誰も助けてくれない。
レミリアピンチ。
れみりあうーしたい。れみりあうーしちゃいたい。
ああ、でも妹の前でカリスマがなくなるのだけはごめんだ。
しかし――。
この状況。
紅茶を楽しむ優雅な趣味的時間に、急に用事を思い出したといって逃げ出すのは、あまりにも酷い。
時間はたおやかに。紅茶はしとやかに。
ゆっくりと味わうのがたしなみというもの。
それをさすがに、お手洗い等を理由に戦略的撤退をするのもどうかと思うのだ。
それに、もし逃げ出したとしても時間はほとんど無限にあるから、どっちにしろ逃げ場は無い……。
さ、咲夜助けて。あ、てめーこら、口笛吹いてごまかすな。
しかたない――ここは姉であるわたしが妹に真実を教えなければならないのだろう。
レミリアは覚悟した。
まだまだ子どもだと思っていたけれど、
妹の成長をゆっくりと見守りたいと思っていたけれど、
スノーグースのようにいつかは澄空へと飛び立ってしまうものなのね。
「これから話すことは真実よ。こころして聞きなさい」
「うん」
「赤ちゃんはね……」
「うん」
「あか、ちゃんは……」
「うんうん」
「こ、コウノトリが運んでくるの」
「んぅ?」
ちょっぴり疑問顔。
あああああああ、ごめんなさいフラン。
不甲斐ない姉を許して。
咲夜、おま、ちょ、笑うな。笑いこらえるぐらいなら自分が教えなさい。
ふぅ。
でもまぁ、これで、一段落よ。
所詮、フランはまだまだ子ども。真実を知るには少々早すぎる。
我々吸血鬼は個体の成長が遅いのだから、ゆるやかにのびのびと育てばよいのだ。
残酷な真実と社会の荒波にさらされるのはまだ早い。
まだまだ早い。
雛鳥のように庇護のもとに育てる必要がある。
「お姉様、嘘ついてるでしょ?」
あるぇ?
あれぇ?
なにか、変だぞう。
どこでまちがったのだろう。
レミリアはびっくりするというよりも、むしろ冬眠明けの熊のように鈍い反応しか返せなかった。
普段のフランは、レミリアの言うことはわりと素直に聞く子どもだったのだ。
それがこんなにもあっさりと嘘を看破されるとは。
なんという成長。なんという進化。
いや――ブラフだ。
引っ掛け問題だ。
適当に嘘だとカマをかけているだけだ。
レミリアは平静を装う。きわめてフラットな声で
「なにが嘘なもんですか。本当のことよ」
「だって、パチュリーが貸してくれた本にはケッコンしたら子どもができるって書いてたよ」
「フラン。結婚ってなんなのか知ってるの?」
「んー。それがよくわかんないの。だから教えて欲しいの」
「どうして、そんなことが知りたくなったの?」
「だってね……。結婚したら仲良くなれるって書いてあったんだもん」
「仲良くなりたいから結婚する――か。なんとも斬新な発想ね」
レミリアは小声でつぶやく。
フランドールは身長が届かないせいか、机から足を離してぷらぷらと遊んでいる。瞳はあくまでも澄み切っており、濁りは一切見られない。
このフクロウのような綺麗なまんまるの目をどうやって傷つけないかが問題である。
「要するにフランは誰かは知らないけど、仲良くなりたいから、結婚したいというわけね」
まさか男じゃないだろう――。
となるとほとんど決まっているようなものだが、わざわざ藪をつつきたくはない。
フランはお日様のように明るく答える。
「うん。そうだよー」
「それで、結婚すると赤ちゃんができるらしいから。逆に考えたわけね。赤ちゃんができると結婚できるんだと」
「そうそう。さすがお姉様。以心伝心だ」
なぜ以心伝心というわりと難しい言葉を知っておきながら――
いや、子どもというのは思わぬところで難解な言葉を聞いているものである。
「肝心なところは伝わりにくいものよね。というか――よく考えなさい。逆は真ならずでしょう。赤ちゃんができると結婚できるわけじゃあないのよ」
そりゃ、世の中にはそういうパターンもあるだろうが。
実のところ生殖と結婚はそんなに因果関係はない。
愛というともし火をかかげることによって、人間は結婚がまるで聖なる行為であるかのように勘違いしているだけだ――
などと考えはした。
しかし、そんな残酷すぎる真実を愛妹に伝えるほどの勇気は持てない。
「でもお姉様。赤ちゃんができると幸せになれるんだって……書いてたの」
ちょっと不安そうな瞳。
レミリアの胸中は穏やかではない。
この瞳を裏切ることはできない。
「ま。まあ確かにそうね。赤ちゃんができると母親は幸せな気分になれるものよ」
「そうなんだ。じゃあ、わたし、おかあさんになりたいな」
「ぶッ……」
「赤ちゃん欲しいな」
「ぼふッ!」
何度も何度も紅い飛沫が飛ぶが、そのたびに咲夜の手によって迅速に処理された。
まさに完璧かつ瀟洒である。
ちなみに瀟洒瀟洒と使ってはいるが、いったいどれほどの人間が瀟洒の意味を知っているのだろう。
はぁ――思考がまとまらない。
赤ちゃんが欲しい。だから赤ちゃんの作り方を教えてという単純すぎる思考か。
わかっている。
これは女の子なら一度は考える質問。
この質問への答え方は主に三通り考えられるだろう。
1、かわいいレミリアは突如として素敵なアイディアがひらめく。
2、完璧で瀟洒な咲夜が助けてくれる。
3、どうしようもない。現実は非情である。
って――なんだこりゃ。
レミリアの思考は混濁の極みを見せており、なにか変なことを考えていた。
「ねえ。お姉様。赤ちゃんってどうやったらできるの? 本当のこと教えてよ」
「うううう。うーっ」
ついにレミリアはカリスマを投げ捨ててその場で、例のポーズをとった。どうしようもない。
どうしようもない。
敗北宣言だ。
しかし、フランドールの詰問は止まらない。
「ねえねえ。お姉様。知っているんでしょ?」
「ぱ、パチェなら知ってるかもしれないわね」
「あ、なーんだ。お姉様も知らなかったんだー。わかった。聞いてくるねー」
ばいばーいと元気よく手を振ってフランドールは図書館へと向かった。
ドっと疲れがでた、レミリアは椅子の上にへたりこむ。
「はぁ……。パチェ……あとはまかせたわ」
「無責任ですね。お嬢様」と咲夜。
「あなただってそうじゃない」
「ねぇ、教えて」
フランドールは開口一番に言った。パチュリーは本から少しだけ視線をはずしてフランドールを視界にいれる。
狂態も狂乱も狂気も見られない。
よし……。今日は大丈夫。
まるで生理日のように精神が不安定なフランドールは、一見したところ何をするかわからない怖さがあるので、こういうチェックはかかせない。
「で、なにを教えればいいの?」
パチュリーは自身の知識に自信があるので、すぐさま答えた。
「うん。あのね――どうやったら赤ちゃんできるの?」
「む。むきゅ!?」
びっくりしすぎて喘息の発作がでた。
ごほっ。ごほっ。ごほおぉぉっ。
小悪魔がゆっくりと背中をさすること五分。
ようやく回復。
その場で、フランドールは退屈そうに待っていた。
「ねえねえ。お姉様も知らないっていうんだよ。パチュリーなら知ってるでしょ?」
「レミィ。恨むわ……」
パチュリーは上に視線を向けた。
いまごろレミリアはどういうことを思っているのだろう。
丸投げもいいところではないか。
地球的な間抜けボケをなんとか救ってみせろと言われているようなものだった。
無理というものである。
「あ、あのね……コウノトリさんが」
「あ、それお姉様も同じ嘘ついてた」
「むきゅう」
パチュリーは喘息の発作がまた出そうになって、胸のあたりを手で押さえた。
涙目。
三十秒ほどインターバルをおいて、次の手を繰り出す。手数の多さでは吸血鬼にひけをとらない。
それが魔女のたしなみというもの。
「あのね。これは少しばかりあなたには早いと思ったから言わなかったのだけど……本当は、ね」
「本当は?」
「キャベツよ」
「キャベツ?」
「キャベツ畑から生まれるの。キャベツをかきわけて、中には、小さな赤ちゃんが入っていることがあるのよ。そうやって赤ちゃんは生まれるの」
「嘘でしょ?」
「な。ごほっ。なぜ。嘘。ごほっ。ごほっ……」
喘息の発作がぶり返し、呼吸困難に陥るパチュリー。
またしばらくの間、小悪魔がゆっくりと背中をさすって、五分ほど休憩した。
「はぁ……はぁ……。今日はちょっと喘息の調子がよくないわね。それで、なぜ嘘だと思ったのかしら」
「だって、それじゃあケッコンとかいうのがどこにもからまないじゃん」
「結婚ね……」
「うん。パチュリーが貸してくれた本に書いてあったよ。結婚して赤ちゃんが生まれて二人は幸せに暮らしました。めでたしめでたし」
「あの絵本はちょっと早かったのかしら」
とはいえ――。
つまりこれは幼児に対して、いかに夢のある解答ができるかという問題なのだろう。
答えを教える――、そりゃ可能だ。
当然のこと。
経験はちょっと……ごにょごにょだが、ふむ、知識としては知っている。それをそのまま伝えることも可能であるが、それでは幼子を傷つけてしまうだろう。
――サンタさんはいるの?
といった類の問題のアナロジーである。
人の出す問題というのはどのような形であれ恣意性を有するものであり、数学的な問題とは違って、真実を答えればよいというものでもない。
パチュリーの頭の中では冷静に問題構造が見えていた。見えているなかでいかに答えを提出するかというのもまたひとつの解答のありかたなのである。
身体をいたわるように、おもむろに口を開く。
「二人が結婚するという物語だったわね」
「うん」
「つまり、好き同士の二人が結婚するわけね。この場合、結婚というのはいっしょに暮らすって意味なのよ」
パチュリーの心のなかでは、もちろん社会的最小単位とか、法律婚と内縁関係は微妙に異なるとか、様々な概念が飛び交った。
しかし、究極的には――好き同士がいっしょに暮らす――これだ。
これならフランドールにも過不足なく概念を伝達できるであろうという考えである。
「んー。そっか。結婚って好きどうしがいっしょに暮らすことだったのか」
なるほどなるほどとフランは頷き、
「じゃあ、お姉様とパチュリーって結婚してるの?」
と不意打ち気味に聞いてきた。
「ご。ごほぉ! ごほぉぉぉぉぉっ! ごほ! それ!! ごへっ! ちがっ!」
喘息は止まらなかった。
小悪魔にバトンタッチ。
「パチュリー様に代わってお答えします。そうですね。だいたいはパチュリー様が言ってることであっているんですよ。ニュートン物理学が近似真実としては正解という程度にはあっているのです。ですが、それでは先ほどのように齟齬が生じてしまいますね。パチュリー様とレミリア様は結婚しているわけではありませんから」
「じゃあ結婚ってどうするの? というか、わたしが聞きたいのは赤ちゃんのつくりかたなんだけど」
「まず結婚については、いっしょに暮らすことが多いですね。一時的に離れている場合もありますけれど、少なくとも長期間いっしょに暮らすことを互いに了承していなければ、事実上婚姻は破綻しているといえます。なので、結婚というのはいっしょに暮らすことであるというパチュリー様の説明はまちがっているわけではないのです」
「ふーん」
「ですが足りません。それだけでは結婚の玄妙なる概念を定義できていないのです。つまり――結婚は――赤ちゃんをつくるためにおこなうものなのですよ」
「おー」
これはうまい説明である。
少なくとも、フランドールの問題が二重化しそうだったのを一元化することには成功していた。
債務だろうがなんだろうがとりあえず一本にまとめてしまえば解決はしやすい。
パチュリーはごほんごほんと涙目になりながらも、親指をたててGJした。
「いっしょに住んで赤ちゃんをつくることが結婚することなのかー。じゃあ、ますます聞きたくなっちゃった。赤ちゃんってどうやってつくるの」
「……それはですね」
小悪魔はしばし迷い
「難しいですね。実はパチュリー様が教えてくれないものでして……ふふ」
「んーっ! んーーーーーーーーっ!」
口を開くとぶり返しそうなので、パチュリーは口に手をあてながら猛烈に首を振った。
「やっぱりパチュリーが知ってるんだね」
「うん。そうですねぇ。パチュリー様ももちろん、通り一遍の答えはおっしゃることができると思いますよ。ですけれども、赤ちゃんのつくり方に関しては微妙すぎる問題が絡むと思うのですよね。パチュリー様は属性魔法が専門、わたしの場合は人心幻惑術。なので生命創作法については専門外の事柄です。ここは専門家にお聞きしたほうがよろしいのではないでしょうか」
「専門家って?」
「ちょうど永遠亭からお越しいただいているのですよ」
そう。
八意永琳である。
彼女は薬師であるが、月一の薬箱の回収と補給のために紅魔館にやってくることがあるのだ。
フランはここでも同じ質問をした。
「赤ちゃんのつくりかた教えて」
「赤ちゃんのつくりかた?」
「うん」
「どういうことが知りたいのかいまいちはっきりしないわね。方法論が知りたいの?」
「方法論ってなに?」
「どうやって事に及ぶかということが知りたいのかしら?」
「んー?」
フランは永琳が何を言っているのかさっぱりわからないといった表情である。
永琳はしばし逡巡する。
別に説明してしまっても、それほど問題はないとは考えた。
怜悧で冷徹な頭脳を持つ彼女にしてみれば、子どもの夢や希望や願望が消えようが真実の前に屈服すべきであるという思考の持ち主である。
サンタ?
なにそれおいしいの?
そんなの聖職者の名前のひとつだろ、と斬って捨てるようなタイプである。
ただ医者として、説明に遺漏はだしたくない。
フランドールがいったいどのレベルにおいての解答を求めているのか、まずはそれを知らなければならないと考えた。動機から聞くのが良いだろう。どんなにアホでバカでまるきゅーのような人間からでも少なくとも理由を聞けば根源を辿ることは可能である。なぜなら人間とは無意識にしろ意識的にしろ数理の集合体であるから。
つまり、思考とは数理に他ならないから。
展開すれば解を得ることは可能だ。
「つまり――赤ちゃんのつくりかたをあなたは知りたい。ここまではいいわけね」
「うん。そうだよ」
「で、なんのために知りたいのかしら」
「えーっと。仲良くなるためだよ」
「仲良くね。誰と仲良くなりたいの?」
「魔理沙」
「ああ。あのいけすかない魔法使いね……。それで、それがどうして赤ちゃんをつくることと関係するのかしら」
「だからね。わたし、赤ちゃんが欲しいなって……魔理沙と仲良くするために結婚したいなと思ったの」
ここでのフランドールの言葉はあくまで偶然生じたものである。
彼女は自分の中の言葉がどういう繋がりをして、どういう定義がなされているのかあまり知らない。
ふわふわとたゆたう言葉を単に羅列してみただけとも言える。
その結果がたまたま、上記のような言葉になっただけだ。
永琳は勘違いした。
勘違いしたまま、大きく頷き、委細承知といった感じで話しはじめる。
「技術論的には可能よ。まず原則的に女性同士では赤ちゃんを作ることはできない。そのことから話しましょう。どんな事柄も原則を知らなければ例外的事象を捉えることはできないでしょうからね。原則的に女同士が子どもを作ることはできない。これは言うまでもないことだけど女の身体には精子がないからよ。精子がなければ当然のことながら受精することはできない。当たり前すぎて説明するまでもないことだけど、幻想郷ではあまり知られてないことなのよね。嘆かわしいわ」
「ん……ん?」
フランドールは永琳が言っていることの一割も理解できていない。
しかし、永琳にとって説明に熱が入ってきたのか、フランが疑問をはりつけたままの謎顔になっていることに気づいていなかった。
「さて、ここでどうやって精子を作るのか。これが論点になるわけだけど、人間の身体にはES細胞と呼ばれている万能細胞が存在するわ。受精卵が分化してある程度の段階になったときに、胚盤胞という球状の形態をとるの。まるで壷中の天のようにね。そのときの細胞は培養と電気的刺激によってどのような細胞にも分化することが可能なわけ。これがES細胞。このES細胞を使えば、女性であっても精子を作ることが可能よ」
「具体的にはこんな感じになるかしらね。女性同士のカップルの場合。まず魔理沙とフランのどちらか一方から卵子と体細胞を得る。卵子の方を除核し、体細胞内から取り出した核と融合させる。人クローン胚となるわけね。この人クローン胚を分化させていくと先述したES細胞が樹立する。これを、精巣に分化させ、最後に精子を得る。あとはこの精子を使って体外的に受精させ、それをどちらか一方の身体に戻せば……」
「?????」
まったく意味は伝わらなかった。
魔理沙が紅魔館にやってきた。
フランドールは待ってましたとばかりに自室へ呼んだ。
「妙に元気だなー」
魔理沙は帽子をベッドに放り投げる。
「ねえ? 魔理沙」
「ん。なんだ?」
フランドールはごろんとベッドにねっころがり、まくらをぎゅっと抱きしめながら、上目遣いに魔理沙を見ている。
「赤ちゃんってどうやったらできるのか知ってる?」
ごんと壁に頭をたたきつけた。
フランはよくわからないといった表情のまま、もう一度聞く。
「みんなそんなふうに変になっちゃうんだけど。わたし変なこと聞いてるのかな」
「いや、へ、変じゃないと思うぜ。みんな一度は当然考えることだ」
「そっかー。普通のことなんだ。よかった」
「そうだ。普通のことだぜ……」
額からたまのような汗を浮かべ、魔理沙はどこかに逃げ道はないかと探した。
「あのね。じゃあ、教えてくれてもいいよね。赤ちゃんってどうやったらできるの?」
「そ、それはだな。そうそう。キスとかしたらできるんだよ。キスキス。わかるよな。ぶっちゅーと熱いやつをすればできるんだ」
「なーんだ。そんなことなんだー」
フランドールは幼い手のひらを指折り数えていく。
「まず、いっしょに住んでー、次にキスしてー、赤ちゃんできてー、仲良しになれるんだね」
「ま、まあまちがってないと思う。過程はいろいろ省略してるが」
フランは楽しそうにごろごろと転がって、魔理沙のそばまで来た。
ちょうどひざまくら的な微妙な位置関係。
「ねぇ」フランは甘い声をだす。「魔理沙」
からみつくような視線が魔理沙の姿を捉えて離さない。
魔理沙は覚悟した。
おそらく次の一言は、最強で究極で至高の、世界で一番目に答えにくい問題が繰り出されるのだろう。
それを避けることができるのか。生き残れるのだろうか。朝はまだ来ないのか。
わたし、明日になったら……。
なぜか死亡フラグ的なセリフが頭に浮かび――
数え切れない者たちを人生の墓場へといざなった、あの言葉がついに放たれる。
「魔理沙と結婚したいな」
永琳「対処不可ね・・・・・・無力な私を許して頂戴」
それはそうとGJ!!
確かにこれは答えづらいww
や、ヤバイ……。俺にもうつったじゃないか!!
こうなったら俺が赤ちゃんの作り方を手取り足t(スキマ
フランちゃんの無邪気な好奇心はなかなか怖いものです。
俺も病気みたいだ。すまない。
しかもあんなに純粋に聞いてくるとなれば尚更……。
いつかはその意味を理解するときも来るでしょうね。
フランには純粋でいて欲しいところですけど。
無理です無理です無理無理無理無理無理無理無理むr・・・・・・・・・・・・・・・
まあ、結論として、永琳先生は偉大だ、と言うことで。
妹様かわいいよ妹様。
自力で本(子供向け)を読んで知った俺は異端か?
病気なら仕方ないね
ところでこの座薬をみてくれ、こいつをどう思う?
フランドールが本当の作り方を知ることができる日は来るのでしょうかww
あーでも霊夢あたりならズバッと答えてくれそうだな。
改行っていうのは、話の区切りごとにするのもです。
>フランドールは永琳が言っていることの九割も理解できていない。
とありますが普通このような表現方法だと90%は理解していないけど85%位は理解してる、みたいな意味になってしまうと思うので
永琳が言っていることの一割も理解できていない
永琳が言っていることの10%も理解できていない と言うのが正しいのではないでしょうか?
日本語の曖昧な部分なんで捕らえ方によっては「九割も」の「も」の意味は強調としても取れるのですが・・・
まぁあくまで習慣的な話ですので参考程度に
幻想郷にiPS細胞はまだ伝わって無いみたいですね。
フランの無邪気な問いかけに本気で答える永琳の空回りや、パチェ、レミィの慌てふためく様も楽しませていただきました。
魔理沙なら結婚は人生の墓場入りだと考えていそうだなw
全力で空回りする永琳先生が素敵です。
って、感じましたw
実際に女性から「結婚してくれる?」と聞かれたら、答えに窮する気はしますけど……
いやいや、この場合はそういう問題じゃないですねw
私的には読みにくい事はありませんでしたが、色々試されているそうで。
自分にベストな文章が見つかります事を草葉の陰から応援いたします~。
いろいろ試してます。横に伸びた文章を見やすく書くのってかなり難しそうですー
いや、医者の永琳はそれでいーんだろうけど、そこまで科学的に説明しちゃ駄目だろwww
つか、お父さんを筆頭に永遠の命題ですよね。
つっこめよ自分。そこはつっこみどころだろ。
と思うところですが、当時の自分はアホでした。今はバカです。
「どうやって作るの?」
「卵産んであっためるッス」
なんて事になりかねん。
そして咲夜さんは飛び散る紅茶を止まった時の中で一体どう処理したのだろうか。
『なんでも吸い込む~♪』 ……まさか、な。