※タイトル通り魔理沙の話ですが、自己設定が多いです。苦手な方はご了承ください
あと、ほんのちょっぴり、香り立つ程度にはマリアリだと主張したい
夢を見ていた。古い記憶を。
それは私の一番綺麗な思い出。闇を切り裂く一筋の光。
「わぁ~… キレーだぁ… みま様!スゴ~イ!!!」
「そうだろう?これは私のとっておきなんだ」
「ホントにスゴイ!それに、とってもカッコ良かったよ!」
「そ、そうかい?なんだか照れるね」
「ねぇねぇみま様!」
「ん?どうした?魔理沙」
「わたしもいつかみま様みたいになれる?」
「う~ん… そいつはちょっと難しいかもなぁ」
「わたし… みま様みたいになれないの?」
「そうじゃない。難しいだけでなれないわけじゃないさ。努力すればきっと大丈夫さ」
「ホント!?」
「本当だとも。
大丈夫。魔理沙が今のまま頑張っていけばきっと大丈夫さ」
「やったぁ!私、みま様みたいになれるんだ!」
「おいおい、まだそうと決まったわけじゃない。お前が努力しないとなれないんだぞ?」
「大丈夫だよ!わたし、がんばるから!」
「…そうかい。だったら大丈夫だね」
「うん!」
「だけどね、魔理沙。これだけは覚えておいておくれ」
「なにを?」
「それはね、……………………………
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そんなところで目が覚めた。
私はまだ全然あの夢に追いついてなんかない。努力はしてるのになぁ…
「そういえば、そろそろ調合が終わってる頃だな。今度の出来はどうかな?」
私はいつものように、自宅で新しい魔法薬の調合を試みていた。その間にとった仮眠で今の夢を見たということだ。
「魅魔様が私にもっと頑張れって言ってるのかもな」
そう言って、私は実験結果に目をやった。
だけど、どうも調合比率に問題があったようで、できた物は何の役にも立たない粗悪品だった。
「あー…。失敗しちまったかぁ…。クソッ、今回ので材料が切れちまった」
私は今、マスタースパークの威力を底上げできるような新薬の研究をしている。
なんたって早いとこあの人に追いつかないといけないからな。
…まぁこのところ失敗続きではあるが。
最近は茸だけを使うことに限界を感じ、茸と別の素材を組み合わせることをしているが、それがどうもうまくいかない。
今回の実験に使った素材は、魔法の森で採取した『魔石』と呼ばれる特殊な石なのだが、滅多に採れるものでもなく、まして今から探すにしては夜も更けてしまっていて些か面倒だ。
「でもこんなところで打ち切るのは気分が悪いな…。どうしたもんかなぁ」
そこまで言って、私はあることを思いつく。
「そうだ、確かアリスが持ってたな。よし、そうと決まればまたあいつから頂くとするぜ。あいつだって数少ない友人の頼みなら、快諾してくれるだろ」
また、というのは、私がちょくちょくアリスから実験器具や材料を分けてもらっていることから出た言葉だ。
「それに、断られたら借りてけばいいだけのことだしな」
そんな事を考えながら、私は箒を引っ掴んでアリスの家を目指すことにした。
そして夜空を飛ぶこと凡そ数分、私はアリスの家を発見した。
「っと、行き過ぎるところだったぜ。相変わらず地味な家に住んでるな」
私の家が派手かと言われればそんなことはない。まぁ、普通というやつだ。
なんにせよ、都会派とか言ってる割にはせせこましい生活してるやつ、というのが私のアリスに対する評価だ。
あと、友達いない。
「おーい!アリス!いるんだろー?魔理沙さんが来てやったぜー!」
ドアを叩きながら大声でアリスを呼ぶが、返事は無い。最近、あいつはこれくらいじゃあ平気で居留守を使おうとするからな。
面倒なやつだぜ。
こっちはさっさと実験再開したいんだ。だから急がせてもらうぜ?
「アリスー!居るのはわかってるんだ、早く出てこないとマスパで家ごと吹っ飛ばすぞー?」
ミニ八卦炉に魔力を装填し、本気で発射準備してみる。
もしかしたら本当に居ない可能性もあるけど、居ないあいつが悪いんだ。
さようなら、アリスの家とその他もろもろの人形たち。恨むならアリスを恨むといいぜ。
「待ちなさい!なに本気で撃とうとしてるの!?あなた私を殺すつもりなの!?」
「おっ、ようやく出てきた。都会派ってのはのんびりしすぎてる気がするぜ」
案の定、焦った様子のアリスが息を荒くして出てきた。
最初から素直に出てくればいいのに、居留守なんか使おうとするからこうなるんだ。
うん、私は悪くないな。悪いのはこいつだ。
「大体、いきなり人の家に来て、吹っ飛ばしてどうするのよ!!あなた私と戦争でもしに来たの!?」
「なんだって私がそんな面倒なことしなきゃならないんだ?それに、私がお前を叩きのめしたって、何の得にもならないぜ」
「それならさっさと構えを解きなさい!!」
「おおっ、すっかり忘れてたぜ」
そう言われて、自分が魔力を装填したままだったことに気づき、解いてやることにした。
…ちょっともったいなかったかな?
「はぁ… もしかしたら寝てるかも、とかは考えないの?あなた最近どんどん物騒になってない?」
「寝てるにしても、あれだけ威嚇すればのんびりのお前でも飛び起きるだろ?」
「あれを威嚇で済ませる神経が信じられないわ…」
「そもそも、いつも温厚な魔理沙さんが本気でそんなことするわけないぜ」
「そうだったらどれだけいいことか…」
「失礼なやつだな。私が本気でそんなことすると思ってるのか?」
「少なくとも冗談には聞こえなかったわね」
それもそうだろう。出てくるのがあと数秒遅かったら撃ってたとこだ。
なにせこっちは急いでいるのだ。これくらいは大目に見てほしいもんだ。
「まぁ、あれくらいしないとお前には効果が無いってことだ。半端な脅しは通用しないからな。止むを得ず、だぜ」
「はぁ… それで、私の家を吹っ飛ばした後はどうするつもりだったの?」
「そりゃもちろん、残骸からめぼしいマジックアイテムを回収するつもりだったぜ」
「…あなた本当に何しに来たの?私と事を構えるつもりなら、相応のもてなしをさせてもらうわよ…」
いつの間にかこいつの誘導尋問に引っかかってしまった。私としたことが迂闊だったぜ。
「落ちつけよ。現にお前の家は壊れてないし、私だってもうミニ八卦炉は仕舞ってるだろ?それで良しとしようじゃないか」
「…今後、今日みたいな真似を少しでもしたら、あなたを容赦なく敵とみなすわよ?」
「もうやるつもりも無いからな。それで構わないぜ」
これ以上無駄な問答したくないし、ここは素直に従っておくとするか。
「そんなことより実験の材料が切れちまって、お前に分けてもらおうと思って来たんだ」
「そんなことって… それに、私の生活は実験材料との両天秤だったわけ…?」
呆れたような、沈んだような声でアリスが言うが、そんなこと気にしてられない。
「私にしたら死活問題だぜ。ぐずぐずしてると勝手に探検させてもらうぜ?」
「ま、待ちなさい!大体、何を探してるっていうのよ?」
「魔石だよ。今やってる研究にどうしても必要なんだ」
押し入ろうとしたところを止められた。こっちは少しでも時間が惜しいというのに、細かい奴だな。
「魔石?確かに持ってはいるけど… 茸ばっかり使ってたあなたが、一体どんな心境の変化よ?」
「どうでもいいだろ?お前には関係のないことだぜ」
「あなたねぇ… 関係ないことないでしょ。私の物を持って行こうとしてるのだから、それぐらい知る権利あるわ」
やっぱり細かいやつだ。友達なんだから、それぐらい笑ってすませてくれたらいいのに。
「それに… あなたが材料欲しさで家に来ることは何回もあったけど、それでも最近の頻度は異常よ?持って行く物も毎回違うし、一体何を研究しているというの?」
「あんまりしつこいと嫌われるぜ?それに、聞いたところでお前の役には立たないぜ」
「確かにあなたの研究は私の役に立たないけど、そうじゃなくて、もしかしたら私だって手伝えることがあるかもしれないって言ってるの。
それに、たまには人の意見を聞くことも大切なことなのよ?」
正直驚いた。まさかこいつがここまで積極的に私に関わろうとするなんて思ってなかった。
「こいつは驚いた。まさかおまえがそんなこと言うなんてな。それこそどういう心境の変化だ?」
「別に、たいしたことじゃないわ。
ただ、最近のあなたがあまりに見るに堪えないから、少し助言してやろうと思っただけよ」
「なんだよそれ。どういう意味だ?」
「言葉通りの意味よ。最近のあなたは見るに堪えない」
なんだこいつは。一体何を言い出すんだ?
「自分ではわかってない様ね。だったら教えてあげるわ。
魔理沙、あなたは今、焦っているわ」
「焦ってる?この私が?」
「そうよ。もともと忙しい人間だったけど、一緒にいて疲れることはあっても決して不快ではなかった。
だけど今のあなたは、一緒にいて疲れるし、話していて気分が悪いわ」
「…なんだって?」
「大方研究がうまくいってないんでしょうけど、それだけでその焦り様はおかしいわ。
ねぇ、あなたは一体何をそんなに焦ってるの?」
「おまえが何を言ってるのかわからないし、まして話す必要だってないぜ」
「そう、だったら『魔石』との交換条件にしましょう。あなたが話してくれたら渡してあげる。
話さないでこの家に踏み入ろうとすれば、全力で攻撃を仕掛けるわ。今のあなたを家に入れたくはないもの」
なんでこんな物騒な話になったんだ?こいつはどう見ても本気だし…
…仕方ないか。
「わかったよ。話せばいいんだろ?」
「それでいいのよ。そういうことだったら家に入りましょう。お茶くらい淹れてあげるわよ」
「なんだよ。やけにあっさりじゃないか」
「話してくれる客人ならもてなしだってするわよ。それとも立ち話がいいの?」
「そいつはさすがに勘弁だぜ」
そう言って私たちは家に入った。
通された客間でしばらくアリスを待っていたが、する事がなくて困る。
「しっかし、相変わらず人形だらけの家だぜ。吹っ飛ばしてたらこいつら全部瓦礫の下だったわけか。
…さすがに呪われてたかもしれないな」
「ここにいる子たちにそんな物騒な力は持たせてないわよ」
「お、ようやく来たな、って紅茶はどうしたんだよ?」
「今あの子たちが持ってくるわよ」
「シャンハーイ」 「ホラーイ」
すると向こうから、愛らしい見た目の2体の人形が、紅茶とお茶受けを持ってやってきた。
「おお、上海と蓬莱だったっけ?相変わらず便利だな」
「そうでしょうとも。私の自慢の娘たちだもの」
「シャンハーイ」 「ホラーイ」
二人(?)は、照れた様子で頭を掻く仕草をする。顔も緩んでいるが、それがまた可愛らしい。
…欲しいな。
「さて、お茶も入ったところで、そろそろ話して貰おうかしら? …魔理沙?」
「えっ! あ、あぁ、そうだな、話だな」
いけない、上海と蓬莱に気を取られてたぜ。目的を忘れちゃダメだな。
…でもやっぱり欲しいな。
「どうしたの?心ここにあらず、って感じだけど?」
「いや、何でもないぜ。
それより話だろ?でも一体何を話したらいいんだ」
「そういえば自覚が無いんだったわね。それだったら私の質問に答えてくれたらそれでいいわ」
「それで構わないが、ちゃんと魔石はくれよ?」
「約束は守るわよ。
さて、まずは何を研究していたのかを教えてくれる?」
「あぁ、私は今マスタースパークの威力を上げるための研究をしてるんだ」
「ふ~ん、何だってそんなことしようと思ったのよ」
「今までもやってなかったわけじゃないぜ。ただ、最近は茸だけじゃ限界を感じたから、いろんな素材に手を出してるんだ」
「そう、それでその実験がうまくいってない、ということね?」
「…悔しいが、その通りだぜ」
「はぁ… はっきり言って呆れるわね。なんであれを更に強くする必要があるのよ?
私に言わせたら、十分馬鹿げた威力を持ってるわよ」
「私は全然十分じゃないんだよ。目標にしてる人はまだ遠いからな」
「目標にしてる人って、もしかしてあの花の妖怪?」
「違うぜ。私の恩人にあたる人だ」
「それって、あなたに魔法を教えたっていう…」
「その人で合ってるぜ。ともかく、私はその人に追いつきたいんだ」
「あなたの威力で全然だなんて… 一体どんな化け物よ」
「魅魔様は化け物なんかじゃないぜ。お化けだけど」
「それはどうでもいいわ。今はあなたの話よ」
「おまえが脱線させたんだぜ?」
「細かいことは気にしないの。
そんなことより、今の話を聞いてわかった事があるわ」
「なんだよ、急に」
あんな短い話でこいつは何がわかったってんだ?
「要は、あなたは研究が進まないことを焦ってるんじゃない。
そこに自分の限界を感じてしまって、たどり着けないことを恐れているんだわ」
「恐れてる…?この私が?」
「そうとしか考えられないわ。わかってしまえば簡単なことだったわ。
そうね、あなたもちゃんとした『人間』だものね。時々忘れそうになるけど」
「………………」
こいつの言葉が正しいのかはわからないが、私はただ押し黙るしかなかった。
「ついでに言ってあげるとするわ。
もうその人に追いつこうとするのは止めなさい」
「…何だと?」
「聞こえなかった?
あなたはその人になれないわ。だから追いつくのは早く諦めなさい」
「ふざけるな!」
テーブルを強く叩いて、私は激昂した。
「冗談じゃない!なんでお前にそこまで言われないといけないんだ!」
「落ち着きなさいよ。上海も蓬莱も怯えちゃってるわ。
ただ、誰かに言われないとわからないみたいだから、私が言ってあげたのよ」
「余計なお世話だ!大体どうしてそんなことがわかるってんだ!?」
「はぁ… 本当にわかってないようね。
あなたは『人間』でしょう?あなたの目標の人は『妖怪』。
だったら追いつくなんてできるわけがないわ」
「そんなことない!努力すれば…」
「努力しても人間は人間の壁を越えられないわ」
「っ!」
「こんな風に普通に話が出来ちゃうから勘違いしちゃうのかしらね。
あなたがどれだけ努力しても、私たち妖怪の魔法使いには及ばないわ。
あなたは人間で、普通の魔法使いなのだから」
「でも!私が勝つことだってあるじゃないか!」
「それは弾幕ごっこでしょう?生き残りを賭けた血みどろの戦いで、妖怪が人間に後れを取ることは本来あり得ないわ。
…まぁ、霊夢みたいな人間は別なのかもしれないけど」
「そ、それはそうかも知れないけど!
だからって追いつけないなんてどうして言えるんだよ!?」
「まだわからないの?
あなたが目標とした人は、気の遠くなるほどの長い時間をかけてそこに至ったのでしょう?
それを、数十年しか生きられないあなたが、追いつけるとでも思うの?」
「それは…」
「それにね、その人はそこいらの人間が、たかだか数十年で追いつける程度の人なのかしら?」
「そんなことない!魅魔様は、あの人はそんなに底の浅い人じゃ…ない…」
自分で言って気づいてしまった。そして、認めてしまった。
私では魅魔様に追いつけない、という事実を。
「ようやく理解したようね。人間の限界を」
「そんな… だったらどうしてあの時、魅魔様はあんなことを…」
「ねぇ、魔理沙。あなたが尊敬するほどの人が、このことを見越さなかったわけがないわ。
その人の言葉をよく思い出して。その人はなんて言ったの?」
「…努力すれば、そうすればきっと私みたいになれるって…」
「それでいいじゃない」
「えっ?」
「だから、その人は始めから『自分になれる』なんて言ってないじゃないの。
努力すれば、『自分みたいになれる』って言ったのでしょう?」
「あぁ…」
「だったら、それが答えよ。
あなたの言う魅魔様は、あなたが自分になることなんて望んでないってことじゃない」
そう…なのか?あの人はここまで考えて言ってくれていたのか?
…だめだ。あの人の考えなんて到底理解できない。
「…まだ、納得できてないようね。
でも、これ以上私が言えることはないわ。後はゆっくり自分で考えることね」
そう言って、アリスは魔石を手渡してくれた。
「…いいのか?」
「いいも何も、元々そういう約束だったでしょう?
それとも何?必要ないの?」
「い、いや。ありがたく貰うとするぜ」
「そう、だったらそうしなさい。
…紅茶が冷めちゃったわね。淹れなおす?」
「いや… 今日はもう帰るとするぜ」
なんだか疲れたし、もう帰って休みたい気分だ。
「魔理沙」
帰ろうとする私に、アリスから声がかかった。
「なんでその人を目指そうと思ったのか、それをよく考えなさい。
あなたの答えはきっとそこにあると思うから」
「…邪魔したな」
アリスの言葉を背に、私は夜空へ飛び立った。
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家に帰ったものの、研究に手をつける気分にもならず、私はベッドで横になっている。
「私は魅魔様にはなれない…
言われてみれば当然のことだけど、こんなに重いなんて…」
疲れた頭では何も考えることができずボーっとしていたら、ふと眠気が私を襲った。
「私はどうしたらいいんだろう…? わからないよ、魅魔様…」
そう言って、私は眠りに落ちた。
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そうして、私はまた夢を見た。
さっき見た夢と一緒だけど、今回は続きがあった。
「……魔理沙。これだけは覚えておいておくれ」
「なにを?」
「それはね、魔理沙は魔理沙だってことさ」
「わたしがわたし?」
「そう。お前がどれだけ頑張っても、私と同じ力は使えない。
魔理沙は私じゃないからね」
「わたしはみま様じゃないよ?」
「そうだね、それが当たり前なんだ。
だけど、お前は本当に真っ直ぐな性格だから、きっと躓くのはそんな当たり前のことなんだろうね」
「?」
「いいかい?私を目指すなら、私になろうと思ったら駄目だ。
魔理沙は魔理沙のまま、私を目指しな」
「よくわかんないよ…」
「今はわからなくてもいいさ。
ただ、覚えておいてくれ、ってことだけだよ」
「う~… 難しい話キライ。
でも、わかった!わたしはわたしなんだね?」
「そう、それでいい。本当にいい子だね、魔理沙は」
「えへへ…
ねぇ、みま様」
「どうした?魔理沙」
「もういちど、今の見せて?」
「そんなことか。お安いご用さ」
…そうして夢の中で見た光は、やっぱりどこまでも綺麗だった。
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夢から覚めた私は、なぜか涙を流していた。
きっとあの光が、今の私にとってあまりにも綺麗だったから。
「あれは魅魔様が長い時を経て培ったもの…
やっぱり私がなれるものじゃあないのか…」
私があの人から教わったことは、魔法にはいくつも種類があること。
わかりやすいのは、自然に働きかけ、その力を行使するもの。
私が習ったのは、自分の想いを魔法として打ち出すというもの。マスタースパークはその最たるもの。
…魅魔様のあの光も同じだ。
「あの綺麗な光は、この世界で魅魔様しか出せない。
どんなに凄い魔法使いがいたとしても、それは別の光になる…」
あの人の想いはあの人しか持てない。
だから、きっとあの光はあの人の想いの集大成。
魅魔様は魅魔様だから綺麗だったんだ。
そして私は、そんな姿に憧れたんだ…
「私は私…
ごめんなさい、魅魔様。私、魅魔様の言葉わかってなかった…」
『魔理沙は魔理沙のまま、私を目指しな』
夢の中の魅魔様の言葉が甦る。
私は私、そのまま生きて、自分の想いを大切にしていけばいい。
その集大成は、やっぱりあの人とは違うけど、決して見劣りしないはずだから。
だからそれがきっと、魅魔様を目指すということ。
「結局はそんなことだったんだな。
私はこのまま生きていけばいいんだ。簡単じゃないか」
よし、そうと決まったら!
「アリスに謝らないとな。迷惑かけたみたいだし。
それにお礼も言わないと!」
私は大急ぎで着替えを済ませると、箒を引っ掴んで家を出ようとする。
「じゃあ、行ってきます!」
誰に言うでもなく放った言葉だったのだが…
『はいはい。相変わらずまっすぐだねぇ』
そんな声を、聞いた気がした。