作品集53にある「めーりんといっしょ!」の続編です。
前作を読んだほうが内容を理解できると思われますが、特に気にせずとも読める物には仕上がっていると思います。
「――美鈴、その気を失っている娘は誰?」
「あっ、レミリア様おはようございます。この子はスカーレットの恩人に当たる魔女の系統の使い魔ですよ」
「記憶に無いわね、どういった間柄なのかしら?」
「先代の新生の際にお知恵を貸して――」
「捨ててきなさい」
「これまた極端ですね」
「そいつ等さえいなければ、私達はこんな不完全な形にならなかったのでしょう。正当な恨みだと思うのだけど?」
「ふぅ、私がここで猫撫で声を出して、自分で自分の事を不完全だなんて言わないで下さい、とか理由も無く言うと思ってます? 足りない事を自覚しているなら、足りるまで努力して下さいよ」
「優しくないのね」
「えっ、甘やかして欲しかったんですか!?」
「いいえ、それで、その子は如何いった用件で紅魔館を訪ねて来たの?」
「はい、悪い魔法使いに囚われているお姫様を助けて欲しいとの事です」
「それはまた、二十世紀にもなって古風ね」
「ええ、でも、知識の樹形図が継続され続けていたのは幸運ですよ、これは……フフッ」
「…………あー、めーりんの目付きが鋭くなったわ! これはめーりんのインスピレーションが働いた印! この特徴から私は“美鈴の腹の中は真っ黒”と確信してしまう!」
「……えっと、それじゃあ、レミリア様の言葉にショックを受けたので四日ほどお暇を頂きますね。細々な用事はこの娘に頼んでください、では!」
「えっ、ちょっと、美鈴!?」
突き刺すような太陽光が肌を焼いてくる七月の半ば――。
周囲の風景が歪んで見えた昼の時間帯が終わり、妖怪の山の向こうに夕日が沈んでいく。
それを見て、畑仕事に精を出していた女は額の汗を手で拭い、周囲に媚びるために美しく形創れた柳眉を僅かに弛めた。
基本的に放置していても勝手に実るサツマイモは今年も問題無し。紅魔館外の島地を開墾して作った農園の一部、鳴門金時な芋畑は今日もすくすくと育っている。
――西瓜や桃の実りも良かった事だし、この分ならば予想以上の収穫量が見込めるはず。うん、売り払えばメイド全員の食料位は買えるかな。
本当に嬉しそうに女は笑った。
その姿を見れば、誰もが彼女の事を腕利きの農業家だと思うだろうそんな笑み――。
しかし、西暦一九九〇年代に幻想郷入りした女は農業家ではない。
有機農法と現代農法を組み合わせ、更に龍脈まで利用した独自の農法スタイルを開発したというのに、女は専業農家ではなく唯の趣味人なのである。
実に勿体無い話だ。
女の育てるサツマイモやその他の作物は長年の品種改良が施された上物であり、唯の趣味の産物と言うには完成度が高すぎた。それらの収穫物は同じ重さの金と同等という訳ではないが――人里に持っていけば高値で取引されるし、お願いされて分け与えたサツマイモの品種の一つである紅赤改の種芋は幻想郷でも広がり、妖怪達の気分で起こされる自然災害時に重宝されている。
女としては自分の作る鳴門金時と比較して、値段を吊り上げようと思っていたのに……。
食うか食われるかの幻想郷の食糧事情を舐めていた。
――芋の人じゃぁ! 芋の人がご降臨なされたぁ!
――芋の人! 芋の人!
――感謝されても名前を呼んではくれないんですね……。ええ、解っていました、解っていましたとも!
この世界には豊穣を司る芋神なんて素晴らしい者も居るので、かぶっている“芋の人”の呼び名は土下座をして止めてもらったが、去年の大寒波時、豊穣を司る彼女が出向くまでの間の事を思い出されては、美味しい種芋をばら撒いた良い妖怪は人間達に感謝されている。
全ては記憶に新しい出来事だ。
そのおかげで、外の世界では吸血鬼としての脅威ではなく企業買収や株式操作で恐れられ、ゴルゴな殺し屋やら吸血鬼狩人を投入され続けたレミリア・スカーレット――彼女の人間不信の緩和にも役立ったのだから、世の中なにが幸いするか解らない。
最近はメイド長が人里に買い物に行っても露骨に嫌な目をされなくなったらしいし、只の趣味が興じて妙な感じになっている。そのような自覚は有るけれど趣味なので自重はしない。それが女の女たる由縁なのだ。
「よし! 今日のお仕事終了、でいいかな?」
「はい、それではお面作りに戻ります」
「私は綿飴製造機の修理でもしとくッス。何か合ったら地下の物置に居るんで……」
「うん、他の準備共々よろしくね」
花の管理の名目で扱き使っている門番隊の面々に呼び掛け、ふにゃっと人好きしそうな雰囲気を身にまとった女の名前は紅美鈴。日中の最もきつい時間帯に門番シフトを入れている彼女であるが、基本的に門前に居る時間は少ない。
氷精の住まう湖の向こうの気配まで読めるので、畑仕事に精を出したり、昼寝をしたり、子供と遊んだり、午後一時のメイド長の見回りタイムを含めて誰かが門前に来ない限り、かなりフリーダムな仕事の仕方をしているのだ。
だからだろうか。
――いえ、門番長、その理屈はおかしいですから。
――私達の身体のことを考えて……。
――泣けた。
身体をほぐす為に太極拳をし始めた美鈴の脳裏に過去の情景が過ぎる。
二週間ほど前、朝から日中の時間帯に働く“門番悶死シフト”を希望すると、勤続五年目以下の部下達から尊敬の眼差しを向けられてしまった。
その事を思い出すと、少しだけ美鈴の心に罪悪感が募る。
まだ若い部類に入る部下達は知らないのだ。実のところ遊びに来る氷精と宵闇の妖怪のおかげで涼がとれるという事実を……。
今日は黒白魔砲使いの突貫にあって直ぐに帰って貰ったが、何時もならこの時間帯までチルノ達とは一緒に遊んでいる。というか言葉巧みに誘導して雑用をさせている。
その事実を知っている古参の部下達からは――。
そんな事ができるのは美鈴様だけですから。
呆れた眼差しを向けられてしまった。
利用できるものなら子供の心も巧みに利用する自分は、かなりの悪党という意味だろうか。解りきった事を美鈴が考えていると、湖ではなく紅魔館の方から複数の気配が門前に近付いてきた。
キリキリキリ――。
コオロギの鳴き声を頭の中から追い出し、耳を澄ます。
一つだけトテトテという可愛らしい足音が聞こえるのは気のせいではなかろう。
身体をゆらりと動かした美鈴は地面を蹴って走り出し、木々の中を音もなく移動する。
そして、三秒程度で門前の定位置に到着。自分の五感を疑う事はないけれど、一応の確認のために紅魔館正門に視線を向けて見た。
すると、丁度いいタイミングでギリギリと音を鳴らして門が開き、同一のメイド服を着た集団と小さな女の子の姿が目の前に現れる。
「めーりんおはよー」
「おはよう御座いますフランドール様、今日は早起きなんですね」
「ううん、今日は魔理沙が来たから昼に起きたのよ」
「そうですか、遊んで貰えて良かったですね」
「うん! ドカーンッて感じだったわ」
小さな女の子は宝枝のような翼をパタパタと動かし、美鈴の側に駆け寄って来た。
彼女、いや、幼女の名前はフランドール・スカーレット。この館の主であるレミリア・スカーレットの妹君である。
その金髪と紅眼は夜に栄え美しく、幼くとも解る顔の造形はとても可愛らしい。
腰に抱き付いてきたフランドールのニパッと笑う姿に美鈴は表情を弛め――。数人の部下達がゴチャゴチャとしょうもないやり取りを始めていたので、口元を引き攣らせる。
右から「やはりロリペド、自分に無いものを求めてるんですね」とか、「実は隠し子とかじゃネ?」とか、「仲良き事は美しきかな!!」とか、かなり好き勝手な内容に上司として頭が痛い。
「……今日はシフトA。お嬢様は巫女の家に泊まりに行っているから、お客様以外は全力で無力化しちゃってね。あっ、やばいと思ったら狼煙を上げるように」
「はーい」
「それじゃあ、お疲れ」
「お疲れッした!」
両手を上げて何かを期待しているフランドールを抱っこし、美鈴は紅魔館正門をくぐる。
横目に見る、互いに「ばいばーい」と手を振り合う部下と幼女の姿は風流であろうさ。
門番隊の面々はあまりフランドールを怖がらない。というか、むしろ可愛がっている。
きっと馬鹿、ではなく大らかな気質が部下達には有るのだろう。そのように門番隊の面々を評価している美鈴は、彼女達は一体誰に似たのだろうかと考え込む。
逃げるときには逃げるし、怖いモノは怖い自分では無い筈だ。
ならば、消去法で導き出される答えは一つであろう。
「天然?」
見上げれば、完全に太陽の沈んだ空が見える。
暗夜の中で輝く星には手が届かず、鋭く尖った三日月は誰に食われた訳でもない。
美鈴が発生した大昔よりそういうものはそういうものであった。
一人で納得し、門番屯所へと向かう。
周りをキョロキョロ見回し始めたフランドールが小首を傾げ、「図書館はそっちじゃないよ」と言ったので、長年の経験によりあみ出した微笑みを美鈴は浮かべ、空いている左手の指先をプラプラと動かした。
「すみません。借りていた本を返却しようと思うので、寄り道しちゃっても良いですか?」
「うーん、それじゃあ、エスコートしてみて」
「はぁ、では、私の部屋までご一緒して頂けませんかフランドール姫?」
「よきにはからえー!」
「姫、元気良すぎでしょ、それ」
「うーま、うーま!」
「従者と馬を平行してやれとは……ヒヒーン!」
リクエストに従順に答え、パッカラパッカラと馬は走り出す。
肩にしがみ付いてキャキャッキャキャッと喜んでいるフランドールの精神年齢は幼子のそれであろう。四百数十年間もの幽閉生活で精神を病んでしまった彼女は、五歳程度の精神と四百数十年間の間に狂い果てた精神、二つの心を小さな身体に内封している。
そう言った人間や人外を少なからず知っている美鈴としては、フランドールの精神の均衡が取れるようになるのは幽閉された時間以上の時が必要、経験則からそのように理解していた。
――本当に、狂っている方の相手をするレミリア・スカーレットはさぞや大変であろう。
幼いフランドールとは積極的に交流を持つ美鈴であるが、狂ったフランドールの相手をしようとは夢にも思わない。
その前段階ならば、狂気の流れを口八丁で操作して押さえ込む事も可能だが。
筋力、敏捷性、反応速度、魔力、その他諸々の“単純な力”が純血の吸血鬼と只の妖怪では違い過ぎるのだ。身を捨てるような英雄的行為を馬鹿の一言で切り捨てる美鈴としては、“自分が破壊された後、正気に戻った小さな女の子がどう思うんだ”とかいう言い訳を心にして、偶に地下室で狂うフランドールの“遊び相手”を回避している。
大人として情け無いとは思う。
しかし、紅美鈴は英雄壇に登場する勇者ではなく只の妖怪だ。
長き年月を生き、己の限界点を理解している只の妖怪だ。
物語の主人公にはなれない。
だから、今も只の馬であり只の従者であり只の道化なのだ。
自身の経験が結晶化した頑強で冷徹な精神の一部、何度も何度も倒れ誘拐を実質的に諦めた時から心に停滞する重石――フランドールが門に着てから、この前に花見をしてから、偶に疼く何かを確認した美鈴は馬役に徹する。
「魔理沙より……はやーい」
「その発言は姫的にまずい、ではなく地面と近いですからね」
「ふーん、はいよーめーりん」
「はひ、ひひーん!」
パッカラパッカラ、お馬とお姫様が道を行く。
その前方に見慣れた建築物が現れて――。門番屯所入り口をくぐり、ドアを開いてお部屋に入り、お馬は目的の物を鞄に詰めて回収した。そして、机の上に広げっ放しにしていた織物を突付いているお姫様を背負って、再び図書館に向かって走り出す。
廊下で擦れ違った部下が「門番長ご乱心!?」とか言っていたけど、馬は気にしない。
ニンジンみたな紅い目を輝かす幼児が喜んでいるのだから、全く持って気にしないのだ。
紅魔館地下にある図書館へと急ぐ。
二週間ほど前から夏の風物詩を開発している図書館は涼しいし、マッタリするには最高の施設であるというのは言うまでも無い事であろう。
なんせ、あそこの図書館長は――。
「どうも始めまして、ノーレッジの盟友たる紅魔館の使いの者です。お姫様を掻っ攫いに来た次第ですが、あなたがパチュリー様で宜しいですか?」
「…………」
「うん? 念話ではなく喋って欲しいんですけど……」
「……なんで?」
「念話とかテレパスの通じ難い体質なんですよねぇ、私」
「そっちじゃないわ。バカ話をするためだけに大英図書館地下に侵入して来たわけではないでしょ?」
「ああ、攫いに来た理由ですね。少しばかり貴女の知識が必要なんですよ。ここの貴重文献は読みきったって話ですし紅魔館にご足労願えません? 結界の穴を教えてくれた使い魔さんも保護してますし」
「そう、小悪魔、ゴホッ、ね。余計な事をせず自分の居場所に帰れば良かったものを……」
「ふーん、まあ、あれですよ、あなたの元が彼女の居場所だったとか?」
「もしそうなら迷惑な話ね、ゴホゴホッ、私がッ」
「失礼しますねぇ」
「ゴホッゴホ、ふぅ、はぁ、気持ちが良いわ。力の流れからして気孔整体というやつね?」
「はい、王室御用達の整体師として国を一つ滅ぼした経験が役に立ちました。ほんと、なにが役に立つか解りませんね、今の世の中」
「世の移り変わりは書物の中でしか知らないけれど、そうかもしれないわね」
「ええ、では話がまとまったところで掻っ攫いますね」
「待ちなさい。まだ私は――」
「何を言っても掻っ攫いますから今更グタグタ言わないで下さい。あー、あと館の地下には貴重な文献が床の肥やしに――」
「直ぐに行きましょう、むきゅっ!?」
「はやッ!? そして、倒れた!」
「地球の重力は私には重過ぎるわ……」
「いや、そんなシリアス顔をされても……。まあ、一人で脱出できない理由はよく判りました」
「抱っこして」
「変なところで可愛さ全開ですね」
「魔女だから当然ね」
この世の中で全力疾走し続けている生物はマグロぐらいのものである。
紅魔館内に入った馬こと紅美鈴は貴人の如き佇まいで歩き、隣を懸命に歩くお姫様を生暖かい瞳で見守っていた。
背筋を伸ばして只歩くだけ――。
洗練された動きというものは真似したくなるらしく、フランドールは偶に此方の動きを真似てくる。美鈴としては、四百数十年間も地下室に居たフランドールに礼儀作法が云々等とは言わない。
その仕事はメイド長やレミリア・スカーレットのものだと考えているからだ。
だから、歩き方が上達すれば褒めるし、何もなければ生暖かい視線で見守るだけ。
これについて今のメイド長は、「普通に躾けられた時より、ある意味で厳しかった」という謎のコメントを残していたけれど、彼女にある程度の教育を施した美鈴には意味が解らない。
だが、きっと悪い意味では無いのだろう。
静かに頷く。
「やっぱり身体操作能力が抜群なんですよね、お嬢様方は」
「うん?」
「かなり歩き方が洗練されてきましたよ。本物のお姫様みたいでした」
「むふー、でしょ」
誰かを褒めるのは気持ちが良いものだ。
鼻息荒く胸を張ったフランドールに何も考えずに微笑みかけ、美鈴は前方の図書館入り口に意識を飛ばした。
紅魔館図書館とは――。
元々、妙な骨董品や魔道書を好んだ先代当主が世界中より珍品珍書を収集したまでは良いが、集め過ぎたそれらの置き場に困った挙句に、地下室の五割程度を改築して保存部屋にしたのが事の始まりである。そこに八十年程前に掻っ攫ってきた存在そのものが図書館のような魔女が住み着いてしまった事から、現在の館の主をして“もう、図書館でいいわよ”と放置を決め込み、外の世界でも紅魔館の地下図書館等と言われるようになった。
当時も世界最大級の稀少本安置所ではあったが――。
最近、ヴワル図書館なんて名前で呼ばれる事もあるらしいけれど、その辺の情報は未確認なため、紅魔館に従う最古参の妖怪である美鈴としては、“現在、館より巨大かもしれない図書館”と言う認識しかない。数年前、レミリアの始めてのメイド長である十六夜咲夜の力を借りる事によって、世界最大規模の本の集積所と化した“巨大図書館”、幻想入りする前に世界中の書籍と言う書籍を集めまくったのは、今はいい思い出だ。
当時は本当に強引な事もした。
だから、今さらながら天罰を受けているのかもしれない。
図書館の大きな扉越しに、元気な魔砲使いの声と憐れな使い魔の声が交錯していた。
今現在、目の前の扉を開くのは非常に危険――。扉を開ける前に気配を読む癖、要人警護の基本を身に付けておいて良かったと美鈴は胸を撫で下ろす。
――くそっ、なんか楽しそうな事を内輪だけでするなんてずっこいぜ! やさぐれた私はこの本を死ぬまで借りてやる!
――訳解んない理由で本を盗まないで下さい! あー、もう! パチュリー様も何とか言ってくださいよ!
――……むきゅ?
――くそっ、役に立たねぇ紫モヤシだな、おい! 炒め物にもなりゃしねぇ!
――えっ、あれ、その、じゃあな!
――まてぇー!
よく知っている声だ。
期待に胸を膨らましているフランドールの手を握り、美鈴は壁端に一歩だけ退く。
その瞬間、重厚な図書館の扉が爆弾で吹き飛ばされたかのように開き、箒に跨った黒い影が高速で廊下側に飛び出してきた。
腕が引かれる。だから離す。
箒に跨っている魔法使いの限界速度は幻想郷でも三本の指に入るけれど、人外の反応速度を持つ吸血鬼の初速には僅かに劣る。斜め四十五度の角度で体当たりをくらわされた影がフランドールと共に廊下を転がり、無骨な石壁にゴツンッ頭からぶつかった。
「あっ、美鈴さん! 泥棒魔法使いを捕まえてくれたんですね!!」
「いえ、それは、フランドール様が……捕獲した?」
「あー、なるほど」
扉から顔を出してきた赤毛の少女に向かって首を横に振り、美鈴はゆるりと事故現場に近付く。
酷い状況だ。
目を回している少女の肩を掴んで、フランドールがガクガクと揺らしていた。
もう少し続けさせれば首の骨が折れるかもしれない。
「フランドール様、そのままだと霧雨魔理沙が壊れちゃいますよ」
「ん、私は何もしてないよ?」
「ええ、判ります」
おそらく、動かないので揺り動かしていた程度の感覚なのだろう。
可愛らしく小首を傾げたフランドールの動きが止まったので、白目を剥いている魔法使いの背中側に回った美鈴は背筋に向かって気を放った。
対象の身体中を駆け巡っていくのは生命エネルギーのそれ――。
外側にも内側にも損傷は無いので、気付け薬代わりのこれで問題は無いだろう。
こういうとき、自身の能力の汎用性を感じるが、高度な事をするには力が不足しているので空しくもなる。
触れていた魔法使いの背中がビクッと動いた。
そして、三秒の空白の後、バネ人形のように意識が跳ね起きる。
ちょっと面白い。
「うおッ!? 一体なにがあった、首が痛いぜ!?」
「魔理沙ぁ!」
「おっと、フランに門番?」
目をパチクリさせている黒白魔砲使いの名前は霧雨魔理沙と言い、美鈴に出来なかった事をあっさりとやってのけた剛の者である。
「ええ、こんばんは魔理沙。飛び出しちゃったフランドール様を受け止めてくれて本当にありがとう御座います。さすがは霧雨魔理沙、人間としての器が並とは違いますね!」
「な、なんだ、いきなり、門番が私を褒めるなんて不気味だぜ……」
「いえいえ、今は職務から離れているので本音丸出しキャンペーン中なんです。日頃は会話なんて出来ませんけど、私はあなたのことを尊敬しているんですよ」
「そうなのか? でも正面から褒められると照れるぜ」
「……いえ、本当に尊敬、いや、感謝してるんです、私がフランドール様に会えたのはあなたのおかげですから。今は何も無いですけど……そうですね、とりあえずこの飴玉でも貰って上げてください」
「えっ、あ、アムっ」
「自家製です、美味しいでしょ?」
「う、うん」
ちょこっとだけ頬を染めた魔理沙は飴玉をモゴモゴし始めた。
この間に、極自然な動作で彼女の足元に落ちていた本を回収し、ぼんやりと此方を見詰めている赤毛の少女に渡して置く。
魔理沙の片眉がピクリと動いたけれど気にしない。
本が落ちていたので司書に渡しました、そんな態度で微笑み掛ける。
すると、フランドールの拘束を抜け出し、ゆっくりと立ち上がった魔理沙はどこか居心地悪そうだった。
だから、畳み掛けるように美鈴は微笑む。
業務用だが。
「あー、それじゃあ、私は帰らせて貰うぜ。……またな!」
「帰り道で門番隊に襲われても、それは訓練ですから手を抜いて下さいね!」
「ッ、判った!」
魔法の箒に跨り、逃げるように霧雨魔理沙は廊下を飛んでいく。
チョイチョイと服の裾を引っ張られた。
「めーりんめーりん、あーん」
「れでぃでは無いんですか?」
「今は子供なの」
「なるほど、では」
魔理沙から離れたフランドールが口をあーんしていたので、ポケットから取り出した飴玉をヒョイッと投げ入れる。
対おこちゃま用決戦お菓子・飴玉――。氷精や宵闇の妖怪等のお子様を沈静化させる門番隊の特殊兵装は万能であり、肉体的な疲れから精神の高揚まで一瞬で中和させる効果があったりなかったり。
「――流石です美鈴さん!」
それゆえに、この場で本当に飴玉が必要なのは赤毛の少女であろう。
両手で本を抱えている赤毛の少女こと小悪魔の目が、それはそれは嬉しそうに光り輝いていた。
なんだか鼻息とかが荒くてちょっと怖い。
美鈴は恐る恐る小さくても悪魔に話し掛ける。
「その、興奮し過ぎると身体に悪いよ、小ちゃん?」
「はい、これは、えっと、少しだけはしゃぎ過ぎたようですね。あの魔理沙さんから実質何もせずに盗品を取り返しちゃうなんて、うん、並の悪魔でも出来そうに無い事ですから……」
「うーん、魔理沙は唯我独尊に見えるけど、よく観察してみれば誰かに認められたいって気持ちが人一倍強いタイプなのは解るし、その辺を刺激してやれば意外と操作し易いと思うよ」
「うわっ、それは凄く悪魔的な思考ですね! 暗黒面が見え隠れするところに正直濡れます!」
「なにが、と言うか、それは褒めてるの?」
「凄く!」
「うーん、誰でも思いつきそうなもんだけど」
「そんな事無いですよ!」
小悪魔が元気良く万歳三唱をし始める。
昔から彼女に気に入られている美鈴であるが、他者を物の様に扱う姿に憧れるとか、精神的に追い詰める程度の能力ではないんですかとか、褒められているのか貶されているのかが解らない悪魔的な感覚には付いて行けないときがある。
苦笑いを浮かべ、美鈴は頬を掻いた。
また、服の裾が引っ張られる。
「めーりん、はやくはやく!」
むしろ、図書館入り口へ引き摺られていると表現した方が良いのだろうか。
片方の頬を飴玉で膨らましたフランドールは吸血鬼であり、天然の地力で美鈴を圧倒出来る。
あと一歩ほどで図書館内――。
馬鹿でかい棚には本が敷き詰められ、自家発電によって電力を得ている中央廊下の照明群が薄暗い室内をぼんやりと照らしていた。本が傷まないよう配慮した明るさらしいが、魔女の病的な白さはこの辺りが原因しているのであろう。
本に埋もれている図書館長の姿を見据えながら、美鈴はフランドールに引っ張られるままに館内に突入した。
「ふぅ、此処は涼しいですね」
誰にも聞こえない程度の呟きを洩らし、美鈴は自分の腕を擦る。
正直、涼しいと言うより“寒気が走った”と言った方が良いのかもしれない。
火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力。精霊を手足のように操り、知覚した空間を完全に操作する魔女。ある種の反則じみた力を持っている知識と日陰の少女は、“本を読む”と言う行為にだけその力を全力で行使する。
彼女が魔法という名の触手を伸ばしている空間は独特だ。
そう、なんと表現すれば良いのか、何か巨大生物の口中のような感覚。
徐々に順応していく身体には快適さだけが残るのだが、パチュリー・ノーレッジの図書館世界に入り込んだときの感覚は、付き合いが何十年目に入っても慣れないものがある。死んでいるかのように読書をしている魔女を観察しながら、彼女と真逆の能力を保有している美鈴は顎を擦った。
「……攫ってきた時からそっち方面にばかりに技術体系が進歩しているのは、さすがはノーレッジと言ったところでしょうか?」
「ん? まあ、パチェだからね」
「おお、その一言は全ての理不尽を無に帰す魔法の言葉ですね」
「そうだねー、パチェだからねー」
フランドールも納得の不思議っ娘。
安楽椅子に座っているパチュリーの周りには複数の本が飛び回っており、その全ての本がパラパラと自動的に開かれていた。目の動きからして、知識と日陰の少女は指先一つ動かす事無く読書に勤しんでいるのが経験則で解る。
彼女の前方の机にはカップが一つだけ、おそらく魔理沙の分の紅茶であろう。
幻想郷における能力の無駄使いランキングがあったならば、確実に上位入賞ができるであろう紫モヤシが欲する栄養は知識のみ。彼女は図書館に入った時から此方を捕捉している筈なのに、目の前の本から視線を外す事は無い。
まあ、それも仕方が無いことだ。
ノーレッジを名乗る者の主な生態は本に埋まる事にあり、本人達も何でそうなのかが解らないほどの本中毒なのだ。彼女達は死ぬまでそのような生活を送り、自分の死期を覚ると収集した知識を賢者の石に変換して、次世代のノーレッジに託して逝く。
その行為に特に意味は無い。
ただ延々と知識を蒐集し、なんに使うでもない存在。
それがノーレッジのノーレッジたる由縁であり、歴代の何人かを知っている美鈴としては、まだ年若いパチュリーは話し掛け易い部類に入る。
なんと言っても手足があって顔があって胴体もあるのだ。
そして、人を好きになる心もある。
「おーい、パチュリー様……。魔理沙が好きだァッ!!」
「む、むきゅ!?」
美鈴が叫ぶと、体をびくつかせたパチュリーの頭に広辞苑並に分厚い本が落下していった。
おそらく脳に嬉し恥かしニャンニャンノイズが走り、魔力制御が甘くなったのだろう。
目測で四歩の距離、手が届くか届かないかが微妙な距離だ。だから、助ける事無く静観する事にした美鈴は目を細める。
ドスッという鈍い音――。
重量にして四キログラムはありそうな本は一個の凶器と化した。
そんな凶器な本に押し潰されたパチュリーは額を前方の机に衝突させ、「本に殺されるなら、わが生に一片の悔い無し……」と言う長い台詞を残してピクリとも動かなくなる。
しかし、空中に浮かんでいた他の本は机の上に積み重なっていく奇跡――それを起こした彼女の死を美鈴は後の世に伝えていく事であろう。
そう、彼女は死して永遠の存在となったのだ。
さよなら、パチュリー……。
「魔理沙が好き過ぎて発情死したノーレッジの魔女。私はあなたの事を忘れませんから……」
「勝手に殺さないで……。それに、発情死って何なの?」
頭の上の本を魔力によって撤去し、パチュリーは顔をゆっくりと上げる。
その眠たげな視線の先あるのは、読書の邪魔をしてきた馬鹿者の姿であろうか、意外と復活の早かった魔女は「ふん」と不満気に鼻も鳴らした。
でも、馬鹿者である美鈴にはそんなの関係ねぇ。何も考えてなさそうな笑顔で彼女の質問に答えておく。
「うーん、発情しながら死ぬことじゃないですかね?」
「……そのままじゃない、面白みのない答えを聞かされたわ」
「これ以上の答えは私には無理ですよ。パチュリー様はどんな答えを期待されてたんですか?」
「そうね。例えば、魔理沙の匂いや行動によって引き起こされた興奮状態が、彼女の持つ性的シンボルでもある箒を引き金にして――」
「すごい、もしかして、ついに魔理沙を押し倒しました? 興奮した事実は認めるなんて、仲良しこよしで一歩前進なんてもんじゃないですよ」
「ん? あっ、ゴホッ」
「無理が祟ったんですね、大丈夫?」
「ゴホッゴホッ、クゥ――」
激しく咳き込む魔女の背中を撫で、美鈴は彼女の体内の気脈を整えていく。
パチュリーの身体は弱い。外部を完全操作できるくせに、自分自身の身体には全く言っても良い程に干渉が出来ないのだ。
気孔整体を極めていた美鈴がそんな面白い実験台を放っておく訳が無い。己の奥義という奥義を駆使して、パチュリー・ノーレッジの喘息を治そうとしたのだが、未だにどんな手段を講じても無駄の一言で終わっている。
「既に呪いの領域ですね、この喘息」
「ハァハァ、ン、クゥ」
治療中、白い肌がほんの少しだけ赤く染まる。艶やかだ。
この姿、幼児的感性の持主であるフランドールに見せていいものか、美鈴は僅かに悩む。しかし、視線を向けてみた幼児は本棚にもたれ掛かって何かを考え中らしく、此方の様子には余り関心がないように見えた。
パチュリーの呼吸が徐々に整っていく。
「……フゥ、誰が誰を押し倒すのよ、変なこと言わないでちょうだい。それに、図書館に入っての第一声が、好きだとは何よ」
「はいはい、分っています、分っていますとも。遊びに来た魔理沙を相手にモヤモヤしていたんでしょう? 目下の者として心の声を代弁してみたんです」
「なによそれ、全自動処刑台?」
「サクサク逝きましょう、アウッ」
魔女は礼を言わない、門番も気にしない。昔からそういう関係――。
ゴンッと広辞苑並の分厚さを誇る本が米神に衝突し、よろよろと後退した美鈴は無駄に頑丈なので膝を付く事はなかった。けれど、同時に腕を取られて引き摺り倒されれば、図書館の床に片手くらいは付いてしまうものだ。
空いているもう片方の手で帽子を押さえ、美鈴は自分を引きずり倒した相手を視覚で確認する。見上げる形となった視線の先、そこにはフランドール・スカーレットの姿があり、彼女の表情が何所となく不安そうに見えるのは気のせいであろうか。
「……めーりんも魔理沙が好きなの?」
「へ?」
唐突な内容の質問をしてきたフランドールに向かって首を傾げ、「……ふむ」と呟いた美鈴は僅かに驚いていた。情緒面で成長してきているとは言え、フランドールが他人が他人に向ける感情に興味を持つなんて想像外の出来事であったのだ。
失礼な話ではある。この調子で成長し続ければ、生死の観念も近い内に理解できるかもしれない。しかし、特別な“魔理沙”が関係しているからと言う可能性も考え、期待のし過ぎも良くないと考える。
「……まあ、そうですねぇ。みんな仲良くするのが一番ですからね」
「ふーん……」
薬にも毒にもならない答えを美鈴は返し、「……仲良く」と呟いたフランドールは小さく頷く。
実際の話、霧雨魔理沙について思うところはない。
感謝している、尊敬もしている、マスタースパークを何度か撃ち込まれている。だが、それだけだ。フランドールにとってのパチュリーになってくれれば、そんな期待もなくもないけれど、彼女は人間のまま人間として死ぬだろう。
そんな気がする。
もって百年――それは化け物にとって短過ぎる時間だ。
立ち上がった美鈴はフランドールの頭を慈しむように撫でた。
なんかモゾモゾしている魔女は敢えて放って置く。
「どうしたの、めーりん?」
「どうしたんでしょうか。私にも判りません」
「へんな、めーりんね」
嫌がる素振りを見せないので、美鈴は撫で撫でをし続けた。
観察するようなパチュリーの視線が痛い。彼女の興味深げな「へぇ」と言う呟きは図書館内に響き渡り、その声にはきっと魔力が込められていたのだ――。
美鈴は急に自分の行動が恥かしくなってきた。
「そ、それでは、パチュリー様が設計図を出してくれた事だし、夏の風物詩の作成を再開しますか」
「え、あっ、うん!」
柔らかい金髪から手を除ける。
何時の間にか用意されていた丸机はサービスだろうか。
非常にご機嫌な様子でフランドールが椅子に座り、其れを確認した美鈴は肩掛けから一冊の本を取り出す。
「コホンッ、それが例の物ね?」
「はい、ご指導の対価にどうぞ」
パチュリーの手元にある数枚の紙切れ。弾幕遊戯においては役に立たないであろうスペルの設計図と、意外と重厚な作りになっている本を交換する。
物品の蒐集や回収のプロとしては恥かしい事だが――。
本来ならば持主の下に返却されるべき本、いや、日記は、とある窃盗犯の家から回収部隊が間違って持ってきたものであり、盗難の被害者であるパチュリーだからこそ取引に使っちゃった一品である。
その本に名前を付けるならば“魔理沙の乙女ダイアリー”と言った所か、記述されている内容は美鈴も知らない。けれども、プライバシーの侵害とかに興味の無いパチュリーは両手を使い、とても嬉しそうに日記に目を通し始めた。
そんな魔女を横目に、美鈴は問題点が指摘されている設計図を視界に映し、前回見た時よりも枚数が足りていない事に気がつく。
指導をしてくれているパチュリーが手直ししてくれたのだろうか――。
美鈴は在り得る予想に頷いた。
「はい、お嬢様に喜んで頂けるように頑張りましょうね」
「うん、がんばる!」
手渡された紙の束を机に広げ、フランドールは書き込まれている術式に好き勝手に文字やら絵を書き足していく。参考資料として、花やら鳥やら自然の風景が載った図鑑を持ってきた方が良いだろう。
見上げるほどの高さがある本棚の間に一歩踏み出し、美鈴は図書館内を進む。
魔女に検索と取り出しを頼むのが一番手っ取り早いが、含み笑いを浮かべている少女に話し掛けるのには結構な勇気がいるのだ。
「ん?」
妙な気配がしたので振り向くと、小悪魔が紅茶とお菓子を用意していた。
ポリポリと固めのクッキーを齧る音――。美鈴は図鑑を探す作業に戻った。
子供は飽きっぽいと言うが、お菓子を片手に作業に没頭しているフランドールを見ていると、夏の風物詩作りを途中で投げ出す可能性は低そうに見える。
――良いことだ。
悪くなる要素が無いので希望的観測をしていると、魔女の小さな笑い声が図書館内に反響していた。
小悪魔がいるとは言え、あんな環境に子供を一人置いておく訳にはいかない。
美鈴は早足で歩き出す。
だって不気味だし――。
「美鈴、あの不気味な魔女は何で家に住み着いているのかしら?」
「うーん、住み心地が良いからじゃないですか?」
「そういう話では無いの、私はアレらを“捨てて来なさい”とあなたに命じた筈よ」
「そうでしたっけ?」
「そうよ」
「まあ、実害が在るわけでもないし、良いじゃないですか」
「……良くない」
「ん、レミリア様?」
「だって、あの魔女、私をたくさん殺す。今まで会ってきた人妖問わず、一番私を殺す運命を持っているわ」
「はぁ、まあ、殺されないように注意してください」
「私は、そんな奴を近くに置きたくないと言っているの!!」
「ふぅん、うっかり自分が殺してしまうからですか? そのときは、生涯の友を殺した未熟を恥じて精進してください」
「……どうして、あの魔女の話をしている時に“友”なんて言葉が出てくるのかしら?」
「気が合いそう?」
「殺すわよ」
「貫き手で腹を抉ってから言わないで下さい」
「自重しない美鈴が悪い」
「……ふぅ、自重しないがてら言わして貰いますが、レミリア様を殺す運命を多数保有しているという事は、それだけの関係性、うーん、紅魔館と同じで運命的な縁が強いんじゃないですか?」
「……それで」
「本当は自分でも解っていらっしゃるんでしょ?」
「……その理屈だと美鈴と私の縁は無いに等しいと言う事になる」
「そうですね、下っ端妖怪の縁なんてたかが知れています。だから、私を安心させるためにも色々と頑張って下さいよぉ」
「フンッ、昔から思っていたのだけど、あなたの言葉は全部正しいように聞こえて根本的な部分で間違っているわ」
「ならば、何時か正してやってください。自分の間違いは自分では解り難いものですから……」
「馬鹿なだけでしょ」
「かもしれません」
図鑑を重ね持ち、作業中のフランドールの元へと戻る。
現在、図書館内にいるのは四人だけ。静寂に満たされた空間を美鈴は足音一つ立てず歩き、とても珍しいものを見てしまった。
それは天変地異の始まりか、あのパチュリーが慌てていた。
誰にも解らないほどのレヴェルでパチュリー・ノーレッジが慌てていた。
恐ろしい、本当に恐ろしいことだ。かなり年食ったせいで“驚く”といった感情が鈍くなっている美鈴であるが、白い顔を僅かに青くしたパチュリーの姿を見ていると世界の終わりが近付いているのでは、そんな漠然とした不安に襲われる。
「いやいや、日記に自分の事が書かれていなかったとか、そんなところでしょう」
仰々しく首を振り、美鈴は自らの不安を掻き消した。
そう、きっと、何時もお馴染みのしょうもない理由で魔女は慌てているのだ。
一歩、また一歩。ゆっくりとフランドールに近付き、図鑑を机上に置く。何やら、「お姉様はお猿さんに似てるし――」等という恐ろしい呟きが聞こえたのは気のせいであろう。
「ん、めーりんありがとー」
「いえ、がんばって下さい」
「うん、パチェが修正してくれてる術の打ち上げ部分を組み合わせれば、今日中にスペルとしては完成すると思うの」
「さようですか」
ニコニコしているフランドールが可愛かったので、美鈴は世界の終わりにも立ち向かえそうな、そんな損な気分になってきた。
視線を泳がせているパチュリーと目を合わす。
そして、一瞬で自分自身の判断ミスを呪った。
美鈴は元弱小妖怪である。
結構な数の大妖に仕え、無駄な経験を積んで来た弱小妖怪である。
例えば、七万の軍勢を四十で足留めしろとか、月人が地上に送り込んできた化け物と戦って魅せよとか、原初の吸血鬼を討って来いとか、そんな無茶な命令をその他壱としてこなしてきた弱小妖怪なのだ。
だから、やばい事を聞かされる時の雰囲気というものを知っている。
今のパチュリーがそうだ。
「美鈴、少し良いかしら……」
「はぁ、なんでしょう?」
「少し、拙い事になったわ」
彼女の語った言葉は、一部の者に対して絶望的なダメージを与える物であった。
そして、そのダメージを受ける者の中にフランドールが入っていたので、紅魔館門番長である紅美鈴は動かざるを得なかったのだ。
地下施設で作業中であった門番隊二名を率いて、夜の帳が落ちた幻想郷を走る。
行き先は森。
彼の地に住まう魔法使いは全く持って――。
「――とんでもない難物ね。未来予知の亜種と完全破壊能力を有した魔眼なんて、抑制方法は目を潰す位しかないんじゃないかしら?」
「潰しても再生しちゃいますけどね」
「吸血鬼なんて反則よ」
「そうなんですか? 先代様の能力養成方法を考えて下さったというノーレッジなら、こんな応用問題は簡単だと思っていたんですけど……」
「安い挑発。前のノーレッジと私は別物だし関係無いわ」
「なるほど、理解できない知識を応用する事なんて出来ませんもんね。無理を言って申し訳御座いませんでした。ああ、地下の本はお好きなだけお読みになって下さい……。ついでに掃除とかもしてくれると有り難いです」
「遠まわしな挑発ばかりするのね、あなた」
「ええ!? そんな、違いますよ。ただ年末の大掃除とかがたいへんだし、今の内に保管庫の掃除を誰かがやってくれればと」
「小悪魔にやらせましょう」
「それではパチュリー様は?」
「知識を理解できないと言われて黙っていられるほどパチュリー・ノーレッジは年老いていないわよ。面倒くさいけど、久しぶりに動体の観察をさせて貰うわ」
「はぁ、考えて下さるなら何でも良いですけど」
「ええ、あなたの観察も楽しそうだしね」
「は?」
「自分と真逆の存在に興味が湧かないの、紅美鈴?」
「ああ、真逆なら答えが解るでしょ、パチュリー様」
「それもそうね、先ずは念話が通じるようにしましょう。マッサージでわざわざ呼び出しに行かせるのも面倒だし」
「あれ、会話になってない?」
「魔女だから当然ね」
「いや、意味が判りませんから、それ」
「我が侭ってことよ」
「あー、なるほど」
幻想郷で森といえば魔法の森の事を指す。
人間に害な瘴気に満たされ、妖怪も二の足を踏む森――。そこに住まう者は少なく、化け物茸の胞子を目当てに住まう魔法使いを始めに、妙な感性をした者達しか居座らない。
七色の人形遣いことアリス・マーガトロイドもその中の一人だ。
彼女はマーガトロイド邸を森の中に構え、今日も今日とて工房内で人形作りに励む。
完全自立思考する人形の制作――彼女の現時点での目標はそれだ。
上海人形、蓬莱人形、たくさんの人形を創り続けても、未だに果てが見えないのだから、遣り甲斐のある目標で有る事は間違いない。長い寿命を誇る魔法使いとしての生涯の目標になるのでは、漠然とそのようにも思い始めている。
そんな思考をしながらもアリス・マーガトロイドの腕は止まる事を知らず、幻想郷でも随一の器用さを誇る指先は恐ろしい速度で人型を創り上げていく。
しかし、不意に作業を中断した彼女は窓の向こうに視線を向けた。
癇に障る感覚――。森中に張り巡らせている警戒網に妙な気配が引っ掛ったのだ。
自分の領域の外だと思っているところより、数歩だけ離れた場所からの感覚であったが、魔法使いとしての第六感が警報を鳴らす。
創り掛けの人形を脇に置いた。
「如何して、こんな時間に?」
如何するべきかアリスは考える。
気配を感じた方向にあるのは彼女の知り合いの家、霧雨魔理沙の住まう霧雨魔法店だ。今日もマーガトロイド邸でお茶を飲んでから自宅に帰った人間、火力だけなら幻想郷一の魔法使いの霧雨魔理沙――。彼女は相手の素性を勘違いしているのではなかろうか、そう思わざるを得ない行動をしてアリスの胆を縮ませる。
――パチュリーの新しい弾幕を先に開発してやろうと思ってな。あいつの机からメモ用紙を拝借してきたんだ。
――それは、さすがに拙くない?
――大丈夫だって! あいつの悔しがる顔が目に浮かぶぜ!
――はぁ……。
達筆な文字ではあったが、どこか拙いスペルを思い出してアリスは首を傾げた。
おそらく、魔力弾を目視できないほどの遠方から放ち、敵の目前で炸裂させる術式であったのだろうパチュリー・ノーレッジの新弾幕。だが、そんな術は、スペルカードの提示が義務付けられた弾幕遊戯においては何の役にも立たない。
それならば、あれは一体なんだったのだろうか?――。
僅かな間に考えを巡らし、魔弾による超遠方からの狙撃と答えを出した瞬間、アリスは背筋に冷たいものを感じた。
そうだ、彼女達は最近になって幻想郷入りした集団だ。
近代化の果てに洗練した戦い方の出来る様になった人間達と戦い続け、全く持って問題の無かった集団である。
今のところは弾幕遊戯なんて遊びに付き合ってはいるが、その鍛え抜かれた牙を僅か数年で衰えさせるだろうか、幻想郷を単騎で襲撃した力を放棄するだろうか――そんなことは考えなくても解る。
否だ。
彼女達は今でも幻想郷において最強クラスの戦闘集団であり、極秘に完全殺傷用の魔法を開発していても不思議ではない。
そして、それを知った者を……。
「……馬鹿なことを、三流小説じゃあるまいし」
呟き声は夜闇に消えていき、くだらないことを考えてしまった自らを嘲笑う。
あの館で一番親しい間柄のパチュリー・ノーレッジは、静かにしていれば図書館内の本を読んでも特に何も言わないし、一声掛ければ世界的に見て稀少な本以外は気前良く貸してくれる。
それは、アリス・マーガトロイドが後に残すであろう魔道書が目当てであるという事は理解しているし、書いたならば写しぐらいは自ら寄贈するのが最低限の礼儀というものであろう。
彼等は話せば解る存在だし、物品を奪還するのも魔理沙がいない時を――。
チリチリとした視線を感じた。
瞬時に視覚を幻視に変える。
窓の先に広がる森の中には誰もいない。
しかし、鋭い視線を森の中から感じる。
――監視されている?
焦燥感が募っていく。
ろくに運動をしていない足を動かし、部屋から出る。
自分が何をしているのか、思考を武器とする魔法使いだと言うのに解らない。
洋館から出ると頬に生温い夜風を感じた。
正面に広がるのは見慣れた森であり、何も無い。
そう何も無い筈なのだ。
瘴気のせいで霞んで見える月、風に揺れる草木、何時も通りの光景だ。
カサカサ――トカゲの腹部が地面を擦る音と言えばいいのだろうか、後方から微かな音がしたのでアリスは振り向き、自らが住まう洋館の屋根付近を視界に入れる。
全身をどす黒い緑色に染めた何かが居た。
「ひっ」
驚いた拍子に指先が動き、魔力糸を通して屋根に設置して置いた人形を起動させる。
指に掛かる僅かな重圧――。交差するように複数の弾幕が発生し、緑色の何かの身体を吹き飛ばした、いや、吹き飛ばしたかのように見えた。
落下した音は聞こえない。
目を凝らしても誰も居ない。
幻覚だったのだろうか。
ヒタヒタという足音が聞こえた。
居る、やはり何かが居る。
「誰! 誰か居るの!?」
声は森の中に染み渡っていくだけで、誰も答えを返してはくれない。
家にある人形達全てに魔法の糸をつけた。
そして、全ての人形の視界と糸の警戒網を全開にする。
目の前に誰かが居た。
「なんでッ!?」
もうスペルカードが如何したとか、そんな事は考えられなかった。
全力で起動させた六体の剣人形が懐より飛び出し、目の前の何かを串刺しにする。
手応えは無かった。
残ったのはどす黒い緑色に染められた繊維だけであり、中身は無い。
六体の人形を空中に設置し、アリスは周囲を観察する。
草木が重たげに揺れていた。
付着しているのは血か。
「あのー、すみません。何か勘違いされてるみたいですけど、私はアリスさんに危害を加えるつもりは有りません。用があるのは霧雨魔理沙だけですので」
「魔理沙?」
「はい、だからお家の方に戻って頂ければ、たいへん嬉しいです」
四方八方から声は聞こえてくる。
この相手は危険だ。
アリス・マーガトロイドの戦いは、ほんの少しだけ相手の実力を上回って勝利することにある。
それゆえに、全く実力が測れない相手と相対したくはない。
負けてしまって後が無いのは嫌なのだ。
だから、ゆっくりと口を開く。
「いやよ!」『解ったわ。あまり大きな騒ぎにはしないでね』
「ん?」
「と、とも、友達の危機に、黙っていられないわ」『それじゃ、お休みなさい』
予想を上回る言葉が彼女の口から紡がれた。
今までの過程は大体が予想通りだったというのに、妖しい影は“アリス・マーガトロイドの情報不足”を嘆く。
彼女が取り出したスペルカードは、戦操「ドールズウォー」。
恐るべき数の人形による絨毯爆撃と予測――洋館が震えた。
熾烈な攻撃をされる前に踏み込む。
「意外と友情に厚い方なんですね」
「紅魔館の門番!?」
「謝罪は後日改めて、フゥッ」
丹田より気を送り込んだ。
日頃から魔女の身体に接していて良かった。
操作し易い。
気脈の流れを緩め、脳を停止状態に持っていく。
睡眠を誘発させる気孔整体の一種だ。
睡眠を必要としない魔法使いは意外とあっさり倒れてくれた。
寝る習慣を止めていなかったのだろう、助かる。
腕の中の少女魔法使い、その身体は軽い。
「パチュリー様、彼女は見捨てませんでしたよ」
――意外な結果ね。でも、様子を見に来て良かったでしょ。
「それは……作業中に乱入されて、ライバル関係の魔法使い二人が手を取り合う。なんてヒロイックサーガの王道をされたら泣けますけど……」
瘴気溢れる魔法の森の中、人形のような容姿の女の子を小脇に抱えた怪しげな影。
夜の空気から抜け出すように姿を現すのは紅魔館門番たる紅美鈴であり、彼女は水晶による遠視を行っている魔女と会話をしつつ、小脇の魔法使いの処遇に悩む。
魔力を送り込まれた人形溢れる洋館内に入りたくない。しかし、友情に厚い魔女を地面に放って置くのは美鈴としても嫌だ。
ぼんやりと考える。
――それにしても、相変わらずあなたの行動予測は普通じゃないわ。
「うん? それは、相手に気を遣うのが本来の私の能力ですからね。対象の体内の気脈から行動予測するのは意外と簡単ですよ」
――それ、武術の類では無いのよね……。
「ええ、生活の知恵みたいなもんです。予想の範囲外の罠とかめっぽう弱いのが弱点ですけどね」
美鈴は大袈裟に肩を竦めた。
急いでいたとは言え、アリス・マーガトロイドの警戒網に足が引っ掛ったのは痛恨のミスだ。「出て来られると面倒」とパチュリーに言われて、余り面識の無いマーガトロイド邸の様子を見に来たのだが、館の主人の戦意の充実ぶりに視線が強くなり過ぎて、無用な戦闘を行ってしまった。
幻想郷に来て、この身は鈍っているのかもしれない。
小さく溜息を吐く。
「アリスさんには悪い事をしました」
――そうなの? 最初からやる気満々のように見えたのだけど、あれは私の気のせいかしら?
「ありえませんね、私は平和主義者ですし」
――屋根から不意打ちを仕掛けようとしていたのに?
「パチュリー様、馬鹿と煙は高いところが好きいう格言を知らないんですか?」
――身近に一人居るような気がするわ、良い意味で。
時計台の上に意味もなく登る誰かを二人で思い出す。
うん、何故かガタガタと揺れているマーガトロイド邸は無視だ。
現実から視線を逸らしていると、霧雨魔法店に向かわせた部下その一とその二の気配が近付いて来た。地下施設で綿菓子製造機を修理していた彼女達は、外の世界でも本の蒐集を担当していた窃盗のプロである。
此方の世界でも霧雨魔理沙の盗難品回収に腕を振う彼女達は音もなく姿を現し、何か非常に複雑そうな表情をしていた。
「何かあったの?」
「えーっと、霧雨魔理沙は家から飛び出して行ったッス」
「……えっ、設計図と魔力の結晶体は?」
「本人を含めて……」
「拙いかもしれないね、それは」
友情のために動こうとしたアリス・マーガトロイドに視線を落とす。
寝言で「待ってて魔理沙…私が……」等と言う彼女の姿に妙な苛立ちを覚えた。
風の噂に聞く彼女は無駄な事はしないように思えたのに――。
とりあえず、寝ているアリスを霧雨魔法店のベッドに運ぶよう部下に指示を出し、美鈴は気を感知する全センサーを開いて走り出す。
アリスの件を大反対すると思われたパチュリーも自分の失態なので静かだった。
魔理沙が盗んでいった物は、スペルの設計図とフランドールの魔力結晶体だ。
設計図の方は知識があるならば意味が解るだろう。しかし、賢者の石の精製方を使用し、ある一定の行動をしなければ只の石同然の魔力結晶体、あれの恐ろしさを普通の魔法使いは理解していない可能性が高い。
まったく人間と言う種族は――。
「――人間と交渉なんて無駄な事をするのね」
「パチュリー様、それは元女王相談役の言葉じゃないですよ」
「聞かれたから答えていただけ、好きでやっていた訳では無いわ。それに、交渉するより人祓いの霧を強化した方が良いんじゃない?」
「それじゃあ、強化して置いてください」
「使用人の仕事でしょ」
「いや、実は正式な雇用契約は結んでいないんですよね」
「……なんで掃除洗濯家事育児をしてるのよ」
「心の契約書にはサインしてるんです」
「意味が解らないわ、忠誠心と言うやつ?」
「切ないまでに」
「……フフフッ」
「が、顔面神経痛?」
「い、いえ、笑いのツボに、ゴホゴホッ、嵌りかけたの」
「息が上がっていますよ、本当に大丈夫ですか?」
「ええ、死には、フゥ、しないわ、魔女だもの」
「万能ですか、魔女」
「それに近付く方法は知って、むきゅッ」
「いきなり倒れた!?」
「重力に負けた……私は地球に愛されてない」
「名言のようで情けないですね、それ」
赤髪が闇夜に舞う。
地面を駆ける美鈴は気配の残り香とも言うべき、霧雨魔理沙の残滓を追って走っていた。しかし、幻想郷で三本の指に入る魔理沙の空を駆ける速度は普通では無い。
飛ぶよりも陸を駆ける方が速い美鈴が地を蹴り、魔法の森を駆け抜けて、まッ平らな平原に出て、大雑把に彼女の向かう地が絞られてきても、そのシルエットすら確認出来ず、ただ後を追う事しか出来なかった。
「――紅魔館を目指していますね、彼女」
――そのようね。目的は図書館への再度の強襲と言った所かしら。
「褒め殺しも利かないなんてどれだけ捻くれてるんです、あの子……」
――そこが可愛いんじゃない。
「いい趣味してますね、ほんと」
遠ざかって行く風景の一部、草叢から虫の鳴き声が聞こえたような気がした。
口元に吊り上がる。風の精霊を使っての念話をしている自分は、それらの自然な音とは違ってなんと不自然で不気味な存在であろうか。自身の冷徹で頑強な部分が現状を分析して鼻で笑う。
やれやれ――。
全てはフランドール・スカーレットの“夏は嫌い”の一言から始まったのだ。
暑いし、蚊は発生するし、流水を弱点とする吸血鬼は水遊びも出来ないし、頬を膨らませた幼女を地下室に引きこもらせない為に、門番隊の独断で“夏祭り”と言う概念を計画した。
そこで、花火を~という話になり、色のバリエーションが豊富な極彩色の妖力を持つ美鈴は図書館に通い始め、当たり前の如くフランドールも着いて来た。
『めーりんは何してるの?』
『うーん、ちょっと、弾幕を花火風に改造しようと思いまして……』
『ハナビって何なの?』
『えっと、ですね、それは――』
自分もやりたい! そのように幼女に言わせるのも計画の内であった。
祭りなんて準備期間が一番楽しいという美鈴の経験上、主役であるフランドールも計画に練り込み、その有り余り過ぎているエネルギーの有効活用方を考えた結果、行き着いた答えが“花火風の弾幕”である。
『――と言う訳でお願いします』
『なんで、私が』
『魔理沙の秘密日記を対価に――』
『任せなさい』
教師は簡単に釣れた。
経験先行型の美鈴が白羽の矢を立てたのは、紅魔館一の知識人と思われるパチュリーだった。元よりフランドールの勉強を見ていたのは彼女であるが、知識先行型の魔女は教師としては不出来である。
しかし、生徒の方に目標が有るならばデータベースとして非常に優秀であり、天然で力の使い方を知っている吸血鬼は魔女の指導に良く答えた。
『なるほど、知識の継続はレミィより上手くいってないようだけど、感覚的なものの引継ぎは妹様の方が上なのね』
『なに言ってるの、パチェ?』
『気にしないで、あなたの方がレミィより賢いという話だから』
『んん?』
『まあ、だから地下に、イタッ、なんで拳骨、いえ、うん、怖い顔しないで美鈴……二秒で反省した?』
元より有ったものを補完するようにフランドールは知識を付けていき、錬金術が苦手なパチュリー本人も完璧には創れないノーレッジの秘奥でたる賢者の石、その基礎部分を真似る程度の事も出来るようになったのだ。
知識と魔力では難易度に天と地ほどの差があるが、有り得ない成長速度である。
生前の彼女が最後に覚えた術理ではあるが――。
現状では関係有るまい。
今問題なのは、そこで出来上がった高圧縮の魔力結晶である。
パチュリーの持つ賢者の石は、同系統の魔女の意識が触れると歴代ノーレッジの知識を流出させる魔法媒体であるが、フランドール製造の賢者の石、いや、花火玉は他の者の魔力に反応して爆発的なエネルギーを放出させる爆弾に近い代物なのだ。
『いきなり爆発したりしません?』
『これは試作品だから起動に……そうね、魔理沙のマスタースパーク一発分のエネルギーが必要よ』
『それは、安心していいのやら悪いのやら……』
『……ほら、鉄鎚で叩いても傷一つ、むきゅぅッ、腕が攣った』
『はいはい、撫で撫でしましょうね』
苛烈な安全試験を潜り抜けた花火玉。
もし暴発すれば、最低でも爆心地から三百m圏内の物体を消し飛ばす可能性もある。
人間である霧雨魔理沙がそれに耐えられる筈は――。
その気配を探知した。
夜空を見る。
居た。
雲は静かに動き、月は世界を優しく照らし、星の海には影一つ。
霧の湖の前で足を止めた美鈴は妖怪らしい視力の良さで、湖の向こうの紅魔館門前にて地上からの攻撃を回避している影を確認。目を細めると、魔法の箒に三角帽子のシルエットが霧雨魔理沙その人である事が解った。
――門番隊と交戦中のようね……。
「あれは、早く止めないと拙い――」
――あっ、ちょっと、妹様?
念話が中途半端な所で切れ、静寂だけが世界を包む。
一度だけ深呼吸した美鈴は大きく後ろに飛び退き、大地を踏み締めた。
向かうのは紅魔館が建つ島――。妖力によって肉体を活性化させ、大地の気の流れを体内に流していく。
ミシミシと全身の筋肉が悲痛な歌を歌い始めた。
音を掻き消すように地面を粉砕し、跳ぶ。
水上に着地すると沈む前に飛ぶ。
湖を飛び石のよう跳ね飛び、直線で水柱を上げ続けた。
そして、徐々に近付いてくる湖の辺には氷精の姿が見える。
何故か、怯えた調子で「あ、あたいってばさいきょーだぞ!」と叫んでいたので、こんな状況でも微笑ましい気分を提供してくれる彼女は最強かもしれない、そのように美鈴は思い、門が突破されても戦闘継続中の紅魔館前へ急ぐ。
知っている声がたくさん聞こえた。
――だから、フランの物だったから返しに来たんだって!
――黙れ! 一日に何度も何度も吹き飛ばされてたまるか!
――うおっ!? 明らかに門番より強いぜ、お前ら!
――ッ、門番長を馬鹿にするなぁ!
龍脈によるドーピングで足が痙攣し、気による治療によって無理矢理に動かす。
只の妖怪である美鈴は自分の限界をよく理解している。
だから、身体が壊れる前に通常速度に戻って現場に向かう。
後少しで――。
――あー、もう鬱陶しいぜ!
箒に乗った霧雨魔理沙がエプロンドレスからミニ八卦炉を取り出し、必殺のスペルを発動し掛けていた。
危険だ、あれは危険だ。
逃げるときには逃げる腹つもりの美鈴の足は止まった。
ミニ八卦炉を媒介にした魔理沙から爆発的な魔力の波を感じる。
恋符「マスタースパーク」.
数人の門番隊が屈み込み、魔理沙は不敵に笑っていた。
そう、それは暴力的な光の射線になる筈だったのだ。しかし、幻想郷に存在するあらゆるスペルの中でも最大級の火力を誇る壱符は不発に終わり、三日月に照らされる誰もが首を傾げた。
バタンッ、扉が開く音だけが世界を震わせる。
距離にして三百m弱――。逃げようと思っていた美鈴の目に二つの影が映った。
フヨフヨと浮いているのはパチュリ-とフランドールか。
背中を向けられない。
「熱ッ!?」
そして、天より落ちてくるのは普通の魔法使いと罅の入った赤色の石。真っ赤に煮え滾ったマグマ色のそれは、マスタースパークと魔理沙その者の魔力を吸ったのだろう。
門番隊が、フランドールが、落下してくる普通の魔法使いをぼんやりと見ている。
行動したのは二人だけであった。
真逆な二人だ。
――任せた。
「ッ、援護をお願いし――」
飛ぶのが苦手な龍は地を這う。
紅美鈴は英雄壇に登場する勇者ではなく只の妖怪だ。
長き年月を生き、己の限界点を理解している只の妖怪だ。
物語の主人公にはなれない。けれども、我が侭な魔女が魔法を唱えてくれるなら、地下から救出されたお姫様とその王子様の手助け位は出来る。
久しぶりに重力に負けたパチュリーが地面に落ちていく。
それと同時に世界の全てが追い風となっていく感触を肌で感じた。
星に愛されていない魔女の魔法は、世界の全てを操る魔法。パチュリーに操作された世界では全てが都合良く動く。
だから、誰よりも早く、何よりも早く、距離を距離とも思わない神馬のように大地を駆けた。
目の前に障害物を確認――。拳の一撃で門の残骸を駆逐し、何人かの門番隊を吹き飛ばすと魔理沙の落下地点に到着する。
そして、誰よりも完璧に、何よりも完璧に、呪いで眠りについた王子様を瀟洒な従者は左手一本で抱き止めた。
軽いものだ。
吹き飛ばした部下に魔理沙を投げ渡す。
熱い、痛い、全くもって理に適っていない。
皮膚を焼き焦がしていく紅い石は右手に掴んでいた。
ああ、解る。アリス・マーガトロイドに苛立った理由が今なら解る。
理を感情によって超えられた彼女が羨ましかったのだ。
両手を使って紅い石を天にかざす。
「このままだとフランが泣いちゃうでしょ!!」
圧倒的な魔力が弾け、爪が全て弾け飛んだ。
この場でこれを暴発させれば霧雨魔理沙は死ぬだろう。
今の紅美鈴は、神馬であり瀟洒な従者であり最高の道化なのだ。
誰かを泣かしてはいけない。
「――マスターァァァスパァァクッ!!!!」
極彩色の光の柱が紅魔館前に顕現化した。
その光によって雲が切裂かれ、轟々とした音は空気中で暴れ狂い、単純な熱エネルギーと化した魔力は天上へと直射され続ける。 その月を落とさんとばかりのエネルギーは凶悪の一言に尽き、制御していた美鈴の両腕の指先が解け落ちた。
所詮は中級妖怪の器である。背骨が悲鳴を上げ、両足が泣き叫び、足の裏を接触させていた大地が放射線状に砕け散った。
それでも、歯を食い縛った美鈴は倒れない、倒れる事は許されない。
マスタースパークは、大容量の“力”を直射させるだけの単純で強固なスペルだ。
大妖怪である風見幽香は無限を思わせる妖力を撃ち放ち、霧雨魔理沙はミニ八卦炉の尋常では無い火力を制御するために使用するスペル――。効率の悪いエネルギー変換法を無視すれば割りと簡単に真似出来るスペルだが、その術者が倒れれば意味は無くなる。
腕が蒸発した。
――何かで支えないと……。
理不尽を理不尽としないパチュリーの世界では腕の生え変わる速度も速いらしい。
白い毛に鱗がびっしり生えた両手がエネルギー塊を掴み掛け、重圧に屈したらしい両足がぶっ壊れた。
倒れてはダメだ、倒れたら全てが終わりだ。
解っているのに身体は地面に落ちていく。
「――いいぜ! もう寝てろよ門番!!」
ミニ八卦炉を構え、普通の魔法使いは颯爽と現れた。
迸る火力が大気を焦がし、彼女はそのスペルを口に出す。
魔砲「ファイナルスパーク」.
マスタースパークの数倍の火力があるだろうスペルが火を吹き、起動していた魔力結晶体を天上の彼方へと吹き飛ばした。
不自然に空間が歪む。
すっ飛んで来ていたフランドールが“ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”を使ったのだろう。成層圏近くに到達した瞬間、エネルギー塊は爆散し無数の流星群となって天に散る。
無限を思わせる火花を散らす花火。明らかに三百m以上の爆発力があった。
あのまま逃げていても皆まとめて粉微塵になっていた可能性が高い。
――ほんと、格好つけて良かった……。
身体は動かないし、生えたと思った腕は無くなっているし、徐々に全身が痛み始めるけど 運良く死にはしなかった。
でも、誰かが泣いている声が聞こえる。
こんなに頑張ったのに誰かを泣かしてしまうなんて――。
何時の間にか閉じていた眼、それを開くとフランドールとパチュリーの姿が見えた。
泣かないでよ、ほんとに……。
「――酷い姿ね、美鈴」
「これはパチュリー様、あー、そうですね、無様な姿を見せて申し訳御座いません」
「……腕が千切れそうじゃない、あなたらしく無いわよ、それ」
「ああ、軍で開発中のアンチマテリアルライフルとか言うもので撃たれちゃったんですよ。鉄皮功で全身防御してたんですけど……人間は怖いですね」
「私はあなたが一番怖いわ」
「は?」
「妖怪としての誇りも無く人間に尻尾を振り、そのくせ騙され、挙句に貶され、最後に傷付けられ、何もかも切り売りしてあなたに何が残るのかしら?」
「愛が」
「フフッ、アハハハハ、ハァ、ハハハハハハ――」
「えっ、ちょ、パチュリー様!?」
「フフフッ、ダメ、ツボに入った、ククッ」
「いや、もう魔女の笑いのツボが解りません」
「はぁ、ふぅ、ククッ、あなたのような妖怪にそこまで言わすスカーレット、ゴホゴホッ、かなり興味が湧いてきた、わ」
「あれ、本気で大丈夫ですよね、主に命とか」
「フフッ、大丈夫よ、ゴホッ、美鈴……。私は、既に、風の精霊を使役し、重力中和をすることで星に勝っ、て」
「え、セルフサービスで天に召されてる? 飛んでかないで! 飛んでかないで下さいパチュリー様ぁ!!」
「桜の前、お嬢様に似ている誰かが、手招きしてる」
「逝った!?」
暦の上では夏の終わりが近付いて来ているというのに、未だに暑い幻想郷。
その日、その時、その場所で、誰かにとって始めての夏祭りは開催され、門前から紅魔館前の十字路には出店がひしめき合っていた。
内勤メイドを客として、外勤メイドが出店をするだけの小規模祭りを企画していたのだが――。レミリアとメイド長が計画に途中参加した結果、無数の堤燈の明かりに照らされている紅魔館敷地内、賑やかな祭りの会場には風の噂に聞く顔が幾らか見える。
例えば、小悪魔の作る冷やしうどんを貪り食っている紅白巫女、九尾の狐に狐のお面をねだっている猫又、ウサ耳の集団を引き連れた制服姿のウサ耳は金っ払いが良く、なかなかの上客かもしれない。
工作員にもなり得る彼女達を館の敷地内に入れても良いのか、という疑問も無くも無いが皆楽しそうなので問題は無かろう。
だから、半霊の少女剣士が主人の無茶食いに涙している姿は哀愁を誘うけれど、御約束なので気にしない。はしゃぎ回っている氷精と宵闇の妖怪を追い駆けている大妖精の疲れた顔、それすらも何所と無く楽しそうなので気にしない。
――お姉様、こっちこっち!
――フラン、お祭りだからといって淑女らしさを忘れてはダメよ。
――お嬢様、綿菓子を購入してきましたが……。
――あむっ、んー、甘い。
そんな中には浴衣姿の吸血鬼姉妹とメイド長の姿もある。
紅魔館関係者と紅白巫女、それに氷精達に配付しておいた食い物関係無料券を使って、姉妹で焼きうどんやら綿飴を購入している姿には和まされた。
視点を横に向けて見ると、焼きうどんを食べ終わった魔法使いの口元、ソースで汚れた口元を人形師がツンツンデレデレしながらハンカチで拭いている。
その姿を目で追っていると――。
遠視用の水晶玉にヒビが入った。
魔力って怖いネ。
「パチュリー様、そろそろ時間なので花火の準備を」
「華麗にスルーするのね、美鈴……」
「愛が、愛が負けています」
「……くっ、私があの場に居れば」
「貧血で倒れますね」
「……くっ」
霧の湖に浮かぶ二艘の小船に二人きり。
寝転がっている美鈴と水晶玉を眼力で砕いたパチュリー、二入は花火打ち上げ班をレミリア・スカーレットに命じられていた。
それもこれも花火が暴発した日、神社から凄まじい速度で戻って来た館の主人は“妹が泣いている”光景を目撃し、殆んど肉塊であった美鈴が意識を取り戻すと“妹を泣かした罰”を百通り伝えてきて、パチュリー・ノーレッジ、霧雨魔理沙、紅美鈴にどれが良いかを選択させたのだ。
あれはとても怖かった。
特に、夏祭りの情報を伝えていなかったレミリアの怒りは凄まじく、妹の社交デビューを姉に通さないとは何事か、と何度も怒鳴られた。
「まあ、私達が裏方にまわされたのは、お嬢様の私怨によるところが大きいですからね。あそこに行っても全世界ナイトメアですよ」
「はぁ、私怨ね……。さすがエロゲ体質の妖怪の言う事は一味違うわ」
「なんです、それ?」
「鈍いんじゃないの、あなた」
「ふぅ、私を気を遣う程度の能力を持った妖怪ですよ。私以上に他者の感情に鋭い者なんてそうはいません……なんです、その心底呆れた顔は」
「別に、何でもないから気にしないでちょうだい」
ゴソゴソと船の上でパチュリーが動き、縄を足に巻きつけた美鈴は後方の小船を脚力だけで引き寄せる。その無人の小船に乗っている花火玉は全部で百発近く、大きい四つ以外はパチュリーの手作りだ。
罰として、魔力を搾り取られたり、フランドールの遊び相手をしたり、紅魔館で雑用をさせられていた魔理沙分も多量に含まれているが、普通の魔法使いである彼女では賢者の石は創れなかった。
そう考えるとフランドールの成長率の凄まじさは――。
上半身を少しだけ上げると内臓が痛んだ。
「フラン玉から発射ですよ?」
「解ってる。痛いなら横になっていなさいよ、役に立たないし」
「すみません」
「別に、あなたは周りに“紅美鈴は不死身の超生物みたいなもの”と思わせる無駄な努力をしているけど、今回は単純に運が良かっただけでしょ?」
「まあ、龍脈と接続していなかったら、そうですね、十年近くは昏睡していたかもしれません」
「馬鹿ね、弱いくせに……。三日で腕生やして歩き回るなんて龍脈云々補正が合っても無理があり過ぎるのよ、どうせ、内臓の方は手付かずなんでしょ」
「ふぅ、あのとき頼って来たのはパチュリーさまじゃないですか」
「魔女は理不尽なのよ、解るでしょ?」
「それは酷い」
「酷いのも魔女なのよ」
魔女は万能ですか、そうですか、と言う美鈴の呟きは花火の発射音の中に消え、宝石みたいな花火玉を制御するパチュリーは湖の上で肩を竦めるだけであった。
上空に咲き誇るフランドールの花は千変万化――赤しかないと思った色は複雑に変化していき実に美しい。最初に作った物が誰かを殺す兵器にならず、こういった誰かを楽しませる物になって本当に良かった。
ギャクキャラ特性と思わせるため、無理矢理に治した身体が痛い。
外観は誤魔化せても内臓はズタボロだし、腕なんて飾りだ。
「暫らく寝ます、誰か着たら、起こして――」
「断る。私一人だと暇だから起きて相手をしなさいよ」
「本は?」
「水っ気が怖いから持ってきてないわ、それに美鈴と一緒だから暇は無いと思っていたもの」
「そんな、魔女な」
冷淡に、「それはつまらないわ」と言ったパチュリー・ノーレッジは不気味に微笑む。
上空で変化し続けていたフラン玉が最後の仕上げとばかりに、おねえさまスキー、サルみたいだからー、という字に変化したのが落ちであろう。
紅美鈴には魔女な知り合いが一人いる。
腐れ縁に近い彼女は我が道を往き、誰に対しても冷淡だ。
「三食全部抜かれたら図書館に来なさい、お茶くらい飲ましてあげるわよ」
「わー、それは有り難いです」
けれども偶に優しい。
湖波に揺られながら二人で肩を竦めた。
夏祭りはまだ始まったばかり――。
これはいい狂言廻しな美鈴ですね.物語のちょっと冗長な感じがこ
の美鈴の雰囲気にマッチしていて前回の作品よりも楽しめました.
この美鈴は自らの能力を使いこなし,道化を演じることに関しては
幻想郷でもトップクラス間違いないですね!
エロゲ体質っていうか,本命にはなれないけど2号さんとしてはフ
ラグ立ちまくりですね!なんていうかハーレムというより爛れた失
楽園が,この作品の美鈴が皆に提供できる場のようなww
PSここまで咲夜さんと絡まない美鈴を見るのは珍しいかも…
咲夜さんは本命として美鈴を狙っているけど,正直報われそうにな
いのがまた珍しいですねwww
五寸釘がみえないってことは直径が15cm以上のおはぎwww
あと子悪魔ではなく小悪魔なんじゃないかと
次も楽しみに待ってるぜ!
まぁそんなこたぁ置いといて。
今回も中々に独自設定が盛り沢山でかなり楽しませて頂きました。
しっかしパッチュさんは何か美鈴と倦怠期の夫婦みたい。(超自分視点)
個人的には最終的にフラ様よりもくっついて欲しいなぁと思ったり。
次の機会をぜひとも。
今度はこの限界を知っている美鈴と努力の人な魔理沙のお話なんかも見てみたいです
足りない実力をどうにかこうにかこね繰り回してミッションを完遂するような、
そんな美鈴がとっても魅力的。
それでいてしっかり妖怪らしい「どっか外れた感じ」を残しているのがまた素晴らしい。
小悪魔ひでえw
身体張ってるめーりんに惚れてしまいそうです。
弱キャラが愛と勇気と知恵で頑張る話は浪漫ですね。
美鈴とパチュリーの友情モノ(?)って珍しいですね。ステキでした。
次回作も楽しみに待ってます。
あとごっすん釘ふいたwww
>フランドールにとってのパチュリーになってくれれば、
妹様とパッチェさんの関係になってくれればという意味でとらえれば良いのでしょうか?
今後も是非是非氏の書いたフラめーやパチュめーが見てみたいです
運命インサイダーだなんて超チートw
……いいぞ、もっとやれwww
すいません、これ小悪魔のことなんて呼んでるんでしょうか?
文脈から読み取ることはできますが、自称ROM専である以上は多少の配慮をしていただけるとありがたく。
まぁ、そんじょそこらの同人作家なんかよりは確実に文章構成が上手いですが、特上ではないですし。
…あれ、特上ではないけど下でもないってそれなんてこのさくひんのめーりん?(←これがいいたかっただけですすいませんw
いや半分は冗談ですが。
>「このままだとフランが泣いちゃうでしょ!!」
それだけの理由で今までこねていた理屈を放り出し命を張っちゃうようなのは「只の妖怪」とは言わないぞ、美鈴。
これだけ活躍してるのにびみょんな実力の美鈴は始めて見ました。
このシリーズ、まだまだ続きそうですね、次も楽しみにしています。
責任取って続きを書いてください。
とか言ってみましたが、ホントの話この作品(前作含む)のおかげで美フラに目覚めてしまいました。
魔理沙やパチュリー、小悪魔なども良い味を出していると思います。
咲夜さんやレミリア様の活躍にも期待しつつ次回をお待ちしています。
あなたの文章が純粋に好きだあ!
何というか、この美鈴からは兄貴の匂いがするぜ(クーガー的な意味で)
普段は飄々としてるけど、いざとなったらボロボロになるまで戦う、そんなキャラが大好きです。
現実主義で、エロゲ体質な美鈴いいなぁ。
あ、パチェさんも好きですよ?
とにかく、良い作品をありがとうございました。
この褒め言葉は新しいw
感想じゃなくて申し訳ありません
これは幻想郷の宝だ!!
あと幽香に鉈とか笑えないですね・・・
いつまでも続きを待っています。秋とか冬とかまた巡った春の話を。
何だかんだで美鈴を大切にして熱い門番隊が大好きですw