紅魔館の門番はザルだザルだいやサルの方がまだマシだとか言われているが、起きている時はそれなりに仕事をする。
昼寝をしているのなら、無断で上がらせてもらうつもりであった霊夢だが、美鈴はばっちり起きていた。
「ちょっと図書館寄らせてもらうわよ?」
門を飛び越え際にそう話しかけたが、美鈴は一瞬霊夢の方を見ただけで、首を傾げてあくびをかますだけだった。
やはりザルかもしれない。入るのが楽なので構いやしないが。
今日はふと、趣向を凝らした洋食を夕飯にしたくなった。だが何を作るかまでは決めていない。適当なお料理本でも眺めて、決めてしまおうかと考えている。
そういうわけで図書館だ。
迷宮のように本棚ばかりが整然と並び続ける。こうして歩いていると、本当に迷ってしまいそうだ。そうなったところで、飛ぶだけの話だが。
「なんだ、地面に咲く睡蓮でも見た気分だぜ」
「あら魔理沙、奇遇ね」
「そいつぁこっちのセリフだな」
開いた魔導書からは目を離さず、魔理沙は霊夢の傍に寄ってきて、床に座った。
「何か探している本があるなら、教えてやらないぜ」
「別にいいわよ。そこらへん歩いていたらきっとそのうち見つかるわ」
「その方式で当たると人間の寿命なら尽きかねないくらいの蔵書があるんだがな……」
「嘘ばっかついていると、休日出張に来ている閻魔様に舌引っこ抜かれるわよ?」
「いやマジなんだが」
魔理沙が嘘つきなのは毎度のことなので実に平和なことであるが、時折こういう意味の無い嘘を曲げず真面目に主張し続けることがある。意図不明だ。
現に、魔理沙と別れてから幾許もなく、洋食関係の本を霊夢は見つけることができた。
魔理沙と違って霊夢は泥棒でもなんでもないので、パチュリーに一声かけて行くことにする。
「パチュリー、本借りてくわよ」
「わっ」
パチュリーは握っていた羽根ペンを取り落としかけ、フォローしようと伸ばした左手でインク入れを引っくり返してしまった。書きかけていた本がみるみるうちに真っ黒に染まり、パチュリーの顔から血の気が引いていく。
貧血を起こしたのか、パチュリーは椅子にもたれかかったままうなだれ、返事をしなかった。
「……悪いことしちゃったかしら?」
さて、せっかく紅魔館に来たのでレミリアと会うことにした。しょっちゅう神社に遊びに来ているのでわざわざ顔を会わせる必要もないのだが、出向いたのだからたまにはお茶をご馳走してもらう側に回るのもいいだろう。レミリアが来たって別にお茶を出したりはしないが。
テラスに出ると、レミリアが一人で庭を眺めていた。珍しいこともあるものである。
「咲夜はどうしたの?」
「あら霊夢。あいかわらず来る時はいいタイミングで来るものね」
「お嬢様、お茶が入りました」
言っていると、咲夜がテーブルの上にティーセットを置いて現れた。
レミリアの表情が綻び、テーブルの上に視線を移す。とたんに頬を膨らませ、従者に向かって舌っ足らずな叱責を浴びせかける。
「霊夢の分がないじゃない。全く使えないわね」
「え? あ、いたの霊夢」
「ついさっき」
「失礼しました。霊夢の分もただ今持ってきますので」
一礼を残し、咲夜は立ち去ってゆく。その背中を見送った霊夢は、頭から沸騰したヤカンみたいに湯気でも出しそうなレミリアに一声かけた。
「咲夜いないうちに私が来たんだから、私の分持ってくるのはさすがに無理じゃない?」
「それでも持ってくるのがメイドよ。他は良くても私のメイドはそうでないとダメ」
「死んでもこんな所で働きたくないわね……お給金無いし」
「あら、咲夜は『死んでもオンボロ神社の巫女になんかなりたくありませんわ』とか言ってたわよ」
「まあなれるもんならなってみなさいって話ね」
「右に同じよ」
咲夜が霊夢の前にカップを置く。一口啜って、紅茶もたまには悪くないとうなずいた。
杯に花びらが浮かんだ。
桜の香りをすっ、と吸い込み、霊夢は杯を傾ける。芳醇な香りと旨みが口の中いっぱいに広がり、熱さが喉を通り抜けた。
つまみがないのがちと寂しいけれど、昼間から一人で本格的に酒盛りを始めるという方がよほど寂しい。
今年も滞りなく春は訪れた。またぞろ博麗神社には人間の参拝客はろくに訪れず、妖怪ばかりが花火で騒ぐ宴会場となるだろう。そうなれば一人でゆっくり桜だけをつまみに酒を飲むこともできない。
杯に残っていた酒を一息に飲み干す。もう一杯いただこうかどうか徳利を見ながら悩んでいると、頭上からかしましい声を投げかけられた。
「おい、霊夢! 何そんな寂しく一人で呑んでいるんだ。乗り遅れるぜ」
「魔理沙、たまにはちょっとくらい静かにしたらどう?」
返答ついでに、いつのまにかもう一杯注いでしまっていた。まぁいっか、と口につける。魔理沙は天を仰ぎ、さも面倒臭そうに境内へ降り立った。
「今日は守矢神社でアレだろう?」
「あれれ?」
「宴会だろうが……特別に妖怪の山に入る許可も出してくれたっていうありがたい話だぜ。まあ許可なんかなくても私は――」
「聞いちゃないわよ。魔理沙、行く日間違えてない?」
「え? いや待て。そんなはずはないが……ないんだが……」
言っている内に自信がなくなったのか、魔理沙は勝手に神社へあがり込んで日めくりカレンダーを確認しに行った。
一方霊夢も出かける準備を始める。いずれにせよ、魔理沙にだけ連絡をよこしてこちらに音沙汰無しというのは、なんとも腹立たしい所業だ。一度話を聞かずにはいられない。
魔理沙と連れ立って、妖怪の山へと入った。山一面が桜色に染まり、陽気な春風が霊夢たちを豪快に出迎えた。風に飛ばされないよう、低空飛行に入ると天狗や河童たちの騒ぎ声が足下から聞こえてくる有様である。
「おっ、河童の川流れ」
「酔い潰れたんでしょうねぇ」
酒と水に溺れた河童は川下で厄神に引き上げられていた。
と、霊夢は空気を切り裂いて飛ぶ何かを感じ取り、川下から視線を外した。さらに暴風が吹き荒れる上空をものともせずに、霊夢とは比べ物にならない高速飛行を行う人影が太陽を隠している。
「魔理沙、あれ、天狗じゃないわよね?」
「んあ? ……ああ、そうだな。翼もなけりゃ高下駄も履いてないし帽子もないな」
「もしかして――」
袖中からお札を取り出し、投げた。
吸い込まれるようにお札は上空を飛ぶ人影に着弾。ひるんだように人影は止まり、一気にそのシルエットが拡大されはっきりとしてくる。どうやらこちらに気づいて降りてきた模様である。
「何するんですか! 痛いじゃありませんか!」
ものすごい勢いで降りてきた衝撃を一気に殺したため、爆風が広がり足下の桜たちは軒並み枝をたわませた。その桜吹雪が散る中、涙目で早苗は霊夢を睨みつける。
「だってあんたんとこの神社魔理沙には連絡よこしといて私にはだんまりだったじゃない。気に入らないから今から殴りこみに行こうと」
「それを今さっき気づいたから、こうして迎えに来たんじゃないですか!」
「やっぱり忘れてたのね」
「そ、そのことについては……」
「まぁ招待されてたんならいいわ。早苗、案内お願い」
「はぁい……」
さすがに風祝というだけあって、早苗が前方を飛ぶと今まで荒れ狂っていた春風がぴたりと凪ぎ、快適に飛行できるようになった。
風で帽子が飛ばされないよう必死だった魔理沙も余裕が出来たのか、霊夢の傍に箒を寄せて話しかけてくる。
「しかし霊夢、私を覚えていてお前を忘れるなんて、妙な話じゃないか? そりゃ紅魔館や白玉楼に永遠亭ならあるだろうが、相手は同業者だぜ?」
「でも本当に忘れてたんでしょ? じゃなきゃ迎えになんて来ないわ」
「そりゃそうなんだがな。陰謀めいたものを感じるぜ……」
「なんにも企んでなんかいません」
早苗は片頬を膨らませて抗議するが、魔理沙はやれやれと肩をすくめてみせる。
「お前に話は行ってないだけで、お前んとこの神様はどうだかわからないからな」
「八坂様を侮辱するとバチを当てますよ!」
「悪かったよ。つかなんだ。正直な話、香霖も最近おかしいんだ。そう思わないか霊夢?」
身に覚えがないわけではない。
これから暖かくなるので服を新しく仕立て上げてくれと依頼したのだが、霖之助が言い出した期日にも関わらず、その日に霊夢が訪れると彼はすっかり忘れて外界の本なんぞを読んでいた。
それを理由に代金を値切ったのでどっこいどっこいだろうが。
「年じゃない? 物忘れひどいわよね」
「いや相変わらずいらんことは覚えているぞ。飯の炊き方とか」
「魔理沙の言うことだもんねぇ……」
「あぁ、確かに魔理沙の言うことですからねぇ……」
「私ほど正直に生きている奴はいないぜ」
「自分にね」
「ええ、自分にですね」
「やっぱり霊夢と来て正解だったな」
「そう?」
篭いっぱいのタケノコに魔理沙はほくほく顔である。
あいかわらずこの竹林は深い。だがそれ故にかタケノコも見つけやすく、瞬く間にある程度の収穫は済ませてしまった。
帰ったら刺身にして一杯というのも悪くない。そう思うと魔理沙につられて霊夢の顔も綻ぶ。
「悔しいけどほとんど霊夢が見つけたもんだからな」
「そうだっけ?」
「それに竹林で迷うこともないから助かる」
「こんなところで誰も迷わないでしょ? あ、そうだ魔理沙。どうせあんたの方が足速いんだから、竹林抜けたら先に帰ってアク抜いておいてよ」
「人使いの荒いやっちゃな」
言いつつも表情はやる気である。おそらく、先につまみ喰いしてやろうという算段だろう。
と、がさりと笹の葉を鳴らして一羽の妖怪兎が霊夢たちの前に現れた。彼女は魔理沙の手元にある篭を見たとたん「あー」と呟く。
「だめよだめよ。勝手にウチの竹林から盗ってっちゃ」
「盗ってないぜ。獲っただけだ」
「はいはい。ともかく、持ってくからには出すもの出してもらわなきゃ」
「いくらだよ」
「このくらい?」
どこからか引っ張り出してきた算盤を弾く。霊夢は横から見てみたが、そもそも相場の値段を知らなかったので意味がなかった。
魔理沙は首を振る。
「話にならないぜ。時は金なりタケノコは湯を沸かしてから掘れってな。むしろこっちが賠償金を払ってもらいたいくらいだぜ」
「賠償金代わりにコレを鍋にしたらどうかしら」
「霊夢は食い意地が張ってるぜ」
「ちょっとちょっと、嘘つき大会はいいけど空気と話すのはやめてもらえない?」
妖怪兎てゐは魔理沙の顔を覗き込む。霊夢は魔理沙と顔を合わせ、何言ってんだコイツという視線をてゐに送った。
しかし彼女はいっこうにひるむ気配を見せない。霊夢はもうなんだかばかばかしくなって、てゐを脇にどけて先を急ごうとした。
「あら?」
てゐの小さな肩を掴もうとした霊夢の右手はなぜだか空を切った。何か妙な術でもかけられたのかと、てゐを振り返るが彼女は一向に霊夢を気にした様子もなく、あいかわらず魔理沙にホラを吹き続けている。
「魔理沙、今の見た?」
「ああ……お前なんかヤバいものでも食ったのか? あ、私はさわることできるな」
魔理沙はてゐの耳をふにふにと握った。そして、今来た道を引き返す。霊夢も何も言わず魔理沙の後を追った。
耳をいじられて逃げ回っていたてゐはあれ? と魔理沙の横まで走り寄ってきた。
「ちょっと、出る方向はそっちじゃないわよ?」
「なんかお前が妙だからな。こっちに何かあるんじゃないかと睨んだってわけだ」
「こっちにあるのは永遠亭よー」
嘘つき同士の会話ともなると、逆に真実しか言わなくなるものなのだろうか。いつのまにやら竹薮の奥にひっそりと佇む屋敷が見えてきた。
そして堂々と上がり込む。てゐはもう諦めたのか、何が起こるか楽しみといわんばかりの顔で黙って魔理沙にくっついていた。
しかし廊下の向こうからやってくる銀髪の兎を見たとたん、さっと魔理沙の後ろに隠れた。
「なんだ、どうした?」
「あ! てゐそんなところで油売ってたのね!」
鈴仙はものすごい速さでこちらに駆け寄ってくる。衝突することも考えていないその勢いに圧され、霊夢は思わず鈴仙を避けた。魔理沙の後ろに回った鈴仙はてゐの耳を引っ掴み、ようやく気づいたかのように黒白の帽子を指差す。
「墓泥棒っ」
「ハンターだぜ」
「タケノコ専門のね」
「てゐを連れ帰ってきてくれたのはいいけど、なんか用? 用事がないなら帰ってほしいんだけど」
「こっちはタケノコ不味くなるの覚悟のうえでやってきたんだぜ。なあ霊夢」
「まあタケノコなんて帰りにまた掘ってもいいんだけど」
「ちょ、ちょっと大気と会話しないでよ……私まだ狂わせてなんかないし」
魔理沙が霊夢に声をかけたとたん、鈴仙は身を退いた。心なしか冷や汗まで出ている。
霊夢は好奇心に駆られ、鈴仙の頬をつねってみることにした。だが、どういうわけかやはり霊夢の手は鈴仙の顔をすり抜け、空をむなしく掴むのみである。
ちなみに魔理沙の頬はきちんと突っつくことができた。
「なんじゃこりゃ。永遠亭の兎ども、なんか揃って妙な実験でも受けたか?」
「うちの師匠をマッドサイエンティストみたいに言うのはやめてください」
「あらイナバ、お客様?」
「姫様」
後ろを振り向くと、輝夜がきょとんと首を傾げていた。そして霊夢の顔を見たとたん、表情を綻ばせる。
「久しぶりじゃない。神社潰れそうなんですって?」
「いつの話よそれ。去年にその騒動は終わったわよ」
「あらそうなの? まあいいわ。せっかく来たのだから、ゆっくりお話でもしましょう。イナバ、お茶の……イナバ?」
見ると、鈴仙(と彼女に抱きつかれて泡を吹いているてゐ)は怯えきった表情で霊夢たち三人から距離を置き始めていた。
三人で顔を見合わせる。魔理沙が口火を切った。
「これなんだよ。さっきからお前んとこの兎、全く霊夢が見えないどころかさわれもしない始末なんだ」
「それはおかしいわね。他のイナバはともかくとして、波長を操る鈴仙が感知できないものなんてないはずよ。それなのに私の方が見えてるなんて」
「一度医者に診てもらったら?」
「そうね、霊夢。せっかくここまで来たのだから、永琳に一度診てもらいなさいな」
「私が?」
輝夜は神妙にうなずく。
「今さっき、あなたたち二人の背中を見て、黒白い方は魔理沙だってすぐにわかったんだけれど、紅白の方は、どんな名前だったか一瞬思い出せなかったのよ」
「今日の朝飯覚えているか?」
「忘れたわ。どうでもいいもの。それで、振り向いて顔を見て、なんとか思い出したの。だから、別にイナバたちだけが霊夢を認識できなくなっているわけじゃないと思うわ」
「だからと言ってなぁ。永遠亭全部が健忘症にかかってるって可能性あるぜ」
「ともかく、一度永琳と会ってみなさいな。お代は取らないよう、私から言っておいてあげるから」
そこまで言うのなら、と霊夢は永琳の待つ部屋に行ってみた。
魔理沙の予言は当たっていた。
永琳もまた、霊夢を見ることも触れることもできなくなっていたのである。
「それにしても、全くなんなんだ? 永遠亭も先は長くないなこりゃ」
「魔理沙、お醤油服に垂れるわよ」
「おっとっと」
二人してタケノコをつまみ始める。やはりタケノコと言えば旬。お酒も進むというものである。
「霊夢、いるー?」
下らない会話を交わしていると、障子を通り越して甲高い叫び声が家中に轟いた。耳を抑えて外に出る。
案の定と言うべきか、常識知らずの訪問者は幻想郷に名を響かせる我侭王、レミリア・スカーレットだった。
レミリアは霊夢の顔を見るや否や、瞬間移動と見紛うばかりの速度で霊夢の腕を掴み、傍らに控えた従者に見せつける。
「ほら、咲夜! しっかりなさい! これが霊夢よ!」
「ちょっと、人がせっかくのんびりお酌してるところに乱入して、何……」
顔を上げた霊夢は咲夜と視線が合い、思わず文句を飲み込んでしまった。
いや、視線が合ったとは言えない。咲夜は眉に皺を寄せて、決して瀟洒とは言えないほどの必死な表情で『霊夢がいる空間』を眺めている。
もしや、と霊夢は手を伸ばす。
「わっ、透けた!」
「お嬢様、突然大声を出さないでください。びっくりしたじゃないですか」
「びっくりしたのはこっちよ咲夜。あなたの手品、凝っているのはいいけど悪ノリしすぎだわ。いい加減やめないと怒るわよ?」
咲夜は弱り果てたのか、珍しく黙ってレミリアの文句を聞き続けていた。
何が起こっているのか、霊夢自身よくわからなかった。ただ、薄気味悪いものが背筋を這い登ってくる。
咲夜に無視されるようなことは今までだってよくあったので、別に良い。だが、永遠亭の事もあって、妙に不安を覚えてしまう。
「レミリア、何があったのよ?」
「咲夜が霊夢のこと忘れたのよ。綺麗さっぱり! おかしいったらないわ!」
「だからって怒ってばかりじゃなんにも確認できないぜ。じゃあ咲夜、数年前レミリアが紅い霧で幻想郷覆ったことあっただろ? あれでレミリアしばき倒しに来た奴、誰か覚えているか?」
魔理沙が顔を出し、平行線になりつつあった主人と従者の会話に鋭い質問を切り込んだ。
霊夢たちにとってはクイズにすらならない質問だが、咲夜にとってはどうだろうか。
てっきりそれも『忘れた』という答えが返ってくるかと思いきや、咲夜は平然と即答する。
「そりゃここの巫女でしょ?」
「おい待てよ。じゃあここの巫女の名前は?」
「巫女は巫女でしょうに。紅白の」
「ふざけるのもいい加減になさい! 咲夜!」
「落ち着けレミリア、こりゃ咲夜は悪くないぜ。試しに帰ってお前ん家の他の連中に、霊夢のこと聞いてみろ」
どうやら魔理沙は咲夜の意味不明な返答に、感づくところがあったようだ。だがレミリアは「面倒臭い」と吐き捨てる。咲夜がため息をついた。
「ちょっと、美鈴つれてきます」
「すぐにね」
「はい、ただいま連れて参りました」
咲夜が頭を下げるまで、彼女の傍には誰もいなかったのに、頭を上げたとたん、大きなあくびをかます紅魔館の門番が立っていた。
美鈴はあくびを終えて、周囲を見渡し、固まる。
「あ、ありのまま今起こったことをry」
「美鈴、そこにいるの、見える?」
うろたえる美鈴を睨みつけ、レミリアは霊夢を指差した。
美鈴の表情がみるみるうちに情けないものへと変わってゆく。彼女は咲夜に視線を送った。咲夜はまるで太陽に見られたかのように、無視を決め込んでいた。
「え、えと……見えません」
「咲夜! パチェとフランここに――」
「お嬢様、失礼ですが先ほどからおっしゃられている『霊夢』という方は誰なんですか?」
咲夜の素朴極まりない、という表情で発せられた質問に、レミリアは声すらなくしてしまった様子だった。
霊夢自身、多少なりとも傷つかずにはいられない。これでも数年来の付き合いの友人だ。皮肉にも元から薄情なのが救いではあるが。
「ここでいっつもお茶飲んでいる巫女じゃないの……」
「そう……なんですか?」
咲夜は美鈴と顔を合わせてお互いに首を傾げている。さしものレミリアも毒気を抜かれ、霊夢自身に視線をやった。
永遠亭でもこんなものだった。
異変、なのだろうか。ならそろそろ動いてみてもいいかもしれない。
しかし霊夢は動こうという気にはあまりなれなかった。起きていることそのものについては不気味で言いようの無い感情を覚えるというのに。
魔理沙は「仮説なんだがな」と前置きした。
「認識できなくなっている奴と認識できている奴との違いはわかってきたぜ」
「なんなの?」
「霊夢とどれだけ親しいか、じゃないか?」
兎たちより輝夜の方が、咲夜よりレミリアの方が、霊夢と親しい。
そう言われるとそうかもしれないし、違うかもしれない。
魔理沙は腕を組んで頭を捻る。
「……阿求はどうなんだろうな」
彼女は一度見た物を忘れないという特技を持つ。しかし霊夢とはそれほど親しくない。良い目安になるかもしれない。
魔理沙は帽子を被り、箒を手にしていた。逆に霊夢は家の中に戻る。
袖を引っ張られた。
「おい、里に行くんじゃないのか?」
「ちょっと疲れたわ。悪いけど、行くなら魔理沙一人で行ってきて」
「……わかったよ」
空へと飛び立ち、衝撃波で木々を薙ぎ倒すほどの速度で駆け抜けて行った魔理沙を見送る。
霊夢はため息をつき、レミリアに声をかけた。
「タケノコ食べてく?」
最近萃香が神社に降りてこなくなった。
ここのところ花見の宴会続きでずっと妖怪の山に滞在していたためであろう。
ということは、宴会の準備や後片付けで今頃早苗は忙殺されて、霊夢を忘殺したところだろう。
花見の季節にはうるさいくらい集まる妖怪たちは、めっきり博麗神社に訪問しなくなってしまった。信じられないくらい静かで穏やかな日差しを浴びながら霊夢はお茶を啜る。
縁側からはうっすらと紅色に染まった妖怪の山が見える。ふと、喧騒がここまで届いてきたような気がした。
「霊夢、呑気に茶ぁ飲んでいる場合じゃないぞ」
「あら魔理沙、いらっしゃい」
あくまでものんびりしている霊夢と正反対に、箒から飛び降りた魔理沙は一気にまくしたてた。
「アリスと香霖までお前のこと忘れやがった。どこ行ってもどの妖怪捉まえても今代の博麗の巫女の名前言えないんだぞ。おかしくないか?」
「困ったわよねぇ……。阿求ですら忘れたってんだから、徹底してるわ」
阿求が書き記した幻想郷縁起にすらその影響は出ている。
咲夜などが幻想郷縁起を開くと、博麗神社の項は読めるのに霊夢の頁は指がすり抜け見ることすらできないのである。
魔理沙やレミリアが霊夢の項を開いて見せてやっても、次の頁を透視する始末だ。
「とりあえずこういうことが出来そうなハクタクぶちのめしてから全身くすぐってみて吐かせてみたが、霊夢に関する歴史を喰った様子はなかったな」
「いい迷惑でしょうに」
「あと怪しいのは紫だが、必要な時はいらんことするために出てくるし、必要でない時も邪魔するために現れるような奴だからな……」
「まだ冬眠しているんじゃないの?」
「今朝起きましたわ」
「うおっ!」
石畳に暗黒空間の口がぱっくりと開かれ、日傘を差した金髪の美少女が顔を出した。
霊夢は囲炉裏にかけていた鉄瓶を取ってきた。魔理沙に渡す。
魔理沙は無言でスキマめがけて熱湯を注いだ。
「や、やめてーっ! 私はカップラーメンじゃないわ! 食べても美味しくない妖怪です!」
「ああお前ほど人を食った妖怪はいないな」
「これでちょっとは男らしくなると面白いんだけど」
「ああ、初対面でひどいことされたわ」
上空の空間から紫のスカートが飛び出した。石畳に開かれたスキマが口を閉じ、紫は地に足をつける。
彼女は魔理沙を振り返り、「で」と霊夢を指差した。
「誰かしら、この娘?」
思わず、二人して頭をがっくり下げてしまう。
「お前までかよ……嘘ついててもお前自体嘘みたいな奴だからわからんしなぁ」
「そもそも紫をアテにする時点で間違っているわよね。で、私を忘れているのにこんな所に何しに来たの?」
「こんな所なんて言っちゃダメよ。お嬢さんは巫女みたいな格好しているのにおばかさんね。ここは神社。巫女のいない神社なんて、お箸のついてない膳みたいなものですわ」
「何言ってるのよ。巫女は私じゃない」
「あなたこそ何言ってるの。博麗の巫女がそんな存在感希薄で勤まるわけないでしょう? いや、びっくりしたんだから。春になったから起きてみれば結界が薄くなってるじゃない。巫女が不在なら当たり前よね。早く新しい巫女を見つけないと」
どーしよっかなー、などと紫は首を捻っている。魔理沙は目を丸くしているし、霊夢もなんと言っていいのかわからなかった。
特に力を失っているつもりはない。確かに結界なんて神社に居座っていりゃ維持されるものだろうとタカをくくってはいたが……。いつのまにか巫女をクビにされていたなどとは、にわかに信じがたかった。
湯呑に走る緑の波紋を、霊夢はなんとなしに眺めた。
「紫、お前にこんなことを言うのは酷だろうがな。しっかりしてくれ」
「女の子は掴み所の無いところが魅力になるのよ?」
魔理沙はいつになく真面目な声色で、紫に訴え始めた。
ここにいる紅白の少女は霊夢といって、今代の博麗の巫女である。最近霊夢の身の回りの人々が霊夢を認識できなくなったばかりか、霊夢に関する記憶、記録まで失われている。そしてそれは紫自身すら例外ではなく、紫は認識することができるだけの状況だ、ということを。
いつのまにか杯を手にして話を聞いていた紫は、霊夢に視線を投げかけた。
「あなた、特技は?」
「特に無いわ。強いて言うなら、空を飛ぶ程度かしら」
「ああそれね。原因それですわ。それじゃあ、お話も終わったみたいですし、お暇させていただいてもいいかしら?」
「あ、コラ待てスキマ!」
魔理沙はとっさに立ち上がり紫の袖を引っ張ろうとしたが、遅かった。床下に開いたスキマに呑まれた紫は手を振って別れを告げる。
おそらく、今生の別れとなるだろう。霊夢は手を振り返した。
「改めて紫の使えなさを痛感したぜ……」
「それにしても、巫女クビになったのね。それじゃあやっぱりここから引き上げなくちゃならないのかしら」
霊夢は神社の鳥居を見上げた。長く住んできたのでそれなりに愛着もある。やはり出て行くとなると寂しい。
そんな落ち込んだ霊夢の肩を、魔理沙は軽く叩いた。
「それじゃあ、私の家に来いよ」
「あんたのウチ、散らかってるけど……まあこの際贅沢言えないわね」
「もっぺん言ってみろ」
正直、この期に及んでも霊夢は寂しいと思ったが、危機感までは覚えていなかった。
巫女をやめたとしても、やれる仕事はたくさんある。二度と皆の記憶が戻らなかったとしても、一件が終わってもう一度仲良くなれば同じことだ。
そう考えていた。
魔理沙の家は香霖堂が完全に商売と生活を諦めて五年くらいたったような有様だった。
仕方がないので霊夢は三角巾を被り、お祓い棒のかわりにはたきを左手に、お札のかわりに雑巾を右手に、霧雨邸の大掃除を始めることにした。
魔理沙の悲鳴もなんのその。霊夢が直感でゴミと判断したものは捨て、入るなと言われた部屋も押し入り、ありとあらゆるものをぴかぴかにしてやった。
三日ほどたつと魔理沙は口から霊魂を出し、一週間ほどもたつと霧雨邸は人間の居住に耐えうる環境となった。我ながら良い仕事をしたものである。
一方魔理沙は霊夢が香霖堂の店先まで捨てに行ったゴミを、思い出したかのようにちょくちょくと取り戻していた。当面は面倒なので放っておくが、我慢できなくなったら再度捨てるつもりでいる。
魔理沙との同居生活は、思ったよりも霊夢に馴染んだ。というか、よくよく考えれば元から魔理沙は神社に入り浸りだった。住む場所が変わっただけで、あとは何一つ変わらない。
春が終わり、初夏を迎えた。日中は暖かいを通り越して暑いとすら感じるほどになったこの季節に。
魔理沙にも、変化が訪れた。
「……あれ?」
今日の食事当番は魔理沙である。当初は三度の食事それぞれで分担するか、隔日で交替するか、それとも常に共同で炊事するかで揉めたが、結局朝じゃんけん(もしくは弾幕)で決めることになった。ちなみに勝って食事当番になるか、負けて食事当番になるかはその日のお互いの気分で決まる。
魔理沙は焼き魚を見て、頭を捻っていた。どうかしたのかと霊夢が寄ってきたとたん、笑みを浮かべる。
「いや、鱗落としたっけって思ってな」
「見りゃわかるでしょうに……」
その時はわからなかったが、研究室にこもって出てきたとたん霊夢の顔を見て目を丸くしたり、食事の用意を時々一人分にしようとしていたりすれば、いかな霊夢でも感づく。
魔理沙に変化が見られてから三日目。
霊夢の眠るベッドに魔理沙が潜り込んで来た。
眠る時はお互い別々の部屋で、と決めていた。霊夢は魔理沙が、魔理沙は霊夢が『お前の寝相が悪いせいでひどい目に遭う』と主張し合うためである。
なので追い出してやろうかと思ったが、なんとなくやめた。
翌朝、魔理沙は夜も遅かったので寝ぼけていたのだと力説した。どうでもいいので放っておいた。
気がつけば、魔理沙の外出はひどく少なくなっていた。
出たとしてもせいぜい食糧や生活に必要な品を仕入れるためだけ。そのうえでさらに霊夢を誘う。
たまに入ってきた仕事も「気が乗らない」の一言で追い返し、ベッドに潜り込んで来るのはもう日常だ。
互いに、口には出さなかった。
けれどわかっていた。
そして、梅雨のある日。
じとじとと雨が降り続け、時には肌寒さすら覚える季節。
霊夢が目覚めると、傍らにいた魔理沙も目を開き――飛び退いた。
「な、ど、どこから入ってきた!?」
「……魔理沙」
なぜだか自然に微笑みを浮かべてしまった。
霊夢はうろたえる魔理沙の横をすり抜け、寝間着から着替え始めた。魔理沙の服はサイズが微妙に合わないので、あいかわらず普段着は巫女服だ。
紅白の衣装をまとった霊夢を見て、魔理沙は震えた声を漏らした。
「なあ、良かったらここにいても――」
「十分お世話になったわ。ありがとう」
玄関へと向かう。最初はこの寝室は天井までゴミで埋まり、廊下は足の踏み場もなかった。まるで密林を掻き分けるように来たものである。それが今は五秒もあれば往復できる距離となった。
扉を開ける。湿気が家の中に吹き込み、冷気が肌を撫でた。水飛沫を頬に浴びながら、霊夢は友人に振り返る。
「さようなら」
「れ――」
魔理沙は自分が口にしようとした単語を最後まで紡げなかった。霊夢は地を蹴る。ふわりと身体は宙に浮いた。
さて、勢い余って飛び出してしまったけれど、これからどうしよう。
幸いあまりお腹は空いていないので朝食はなくても平気そうだ。
ただ、雨が冷たい。一度雲上まで出て、下界が晴れてから行動を起こしてみよう。
頬に流れる雨粒は妙に暖かかった。
試しに白玉楼へ行ってみた。
幽々子にも無視されたので、腹ごなしと腹いせに彼女が食べていた草餅を失敬してやった。
昼間になると雲に切れ目ができていたので霊夢は下界に戻った。あてもないので、とりあえず我が家に帰ってみる。
紅白の衣装に身を包んだ幼い少女が、縁側の柱にもたれかかって船を漕いでいた。風邪を引きそうだったので、押入れから毛布を引っ張り出してかけておいてやった。
紅魔館も人里も永遠亭も妖怪の山も、全ては滞りなくのんびりとした日常を送っている。
その全てを確認してしまうと、本当に行き場がなくなってしまった。
色々考えた末、一度魔理沙の家を覗くことにした。
魔理沙は窓ガラスを滑り落ちる雨滴をいつまでも眺めていた。その向こうにいる霊夢に気づいた様子はない。
とうとう、この幻想郷に霊夢の姿を確認し、霊夢のことを覚えている者はいなくなったということだ。
まるで最初から、そんな者は存在しなかったように。
「……なんだったんだろうなぁ」
今まで出会ってきた人妖を思い返す。
ぶちのめしたり酒を飲んだり叩きのめしたりお茶をしたり退治したり仲良くなったりを繰り返してきたわけだが、そんなことはもう霊夢自身しか覚えていない。
頬を熱いものがくすぐった。
一度気づくと止まらなかった。顔を覆って、身を縮込ませる。
寒い。夏も近いというのに、なんて寒いんだろう。いつのまにか雨はまた降り始めていた。全身ずぶ濡れだ。誰からも見止められないというのに、雨だけはこうして霊夢を打ち続ける。ひどい話もあったものだ。
そう意識したとたん
「……あ」
全身から、水滴が残らず地面に落ちた。
手の平を広げれば、雨滴は霊夢を透き通って地面を打つ。
背骨から怖気が体中に走る。べしゃりっ、と足下に濡れたものが叩きつけられる音。
「あぁ……」
洗濯桶に突っ込んだかのようにずぶ濡れた紅白の衣装が、魔法の森の真っ黒な腐葉土に落ち、汚れていた。
自身の腕を眺める。それすら輪郭は曖昧だ。考える。博麗霊夢の髪の色は? 肌の色は? 瞳の色は? 何が好きで何が嫌いだった? ぼやける。
今さらになって紫の言葉の意味がわかった。
霊夢は無重力だ。何ものからも浮いている。この能力が発現してから今まで、人の形を保ってきた方がおかしかったのかもしれない。地に足をつけていないのだから。
このまま何もかもぼやけてしまえば、やがては意識もなくなるだろうか。
それならそれでいい。まどろむように目を閉じる。ここはもう暖かくも寒くもない。
気配がした。
「……そこに誰かいるのか?」
色々考えて、私は実家に少しだけ帰ることにした。
とはいえ親父と話をするつもりはない。未だに奴とは反りが合わない。香霖が色々と口添えしてくれたが、嫌なものは嫌だ。実家へは人里に移住することへの報告を済ませるためだけに行くのである。こっそりいつのまにか住んでいました、なんていう方が耐えられない。
魔法の森に建てた屋敷は、少しもったいないが森に還すことにした。認めたくないが、私はもうあそこで生きてゆくだけの力――というより、意志がない。そんな状態で長居していれば、森に食われて死んでしまうと香霖に脅されたのだ。
そういうわけで、親父との喧嘩の末に実家を飛び出てまで続けたかった私の魔法研究は、早くも十代の内に終わってしまった。いざやめてしまえばなんの未練も残らないのだから不思議である。
今思えばどうしてそこまでして魔法を究めたかったのか。若気の至りと言ってしまえばそこまでなのだろうが、なんだか大切なことを忘れている気がする。
誰かに負けたくなかったような記憶がある。アリスだろうか。だが奴は魔法使いというより人形遣いだ。私とまるで分野が違う。
ともあれ、私は青春を費やして得た力を使い、妖怪退治屋を始めた。左団扇には程遠いが、喰うに困るほどのものではない。まあそこそこに上手くやっている。
これで男さえ見つければ、と早苗などは言う。うるさい。私は私より強い男以外に惚れない。いや本当はそういうわけではないのだが、早苗どころか神様亡霊鬼に妖怪宇宙人と知り合いみんなに話しても誰も信じやしないので、黙ることにしたのだ。
私の傍に、ずっと誰か居るような気がするのだ。
なんというか、こいつがいる限り……いや、こいつがいるから、もういいのか? 自分でもよくわからない。
考えてみれば恐ろしい話だが、私は将来添い遂げる男を求めるより、傍にいるような気がする奴の方がよほど大事だと思っているらしい。神様亡霊鬼に妖怪宇宙人と知り合いみんなに「そんな奴いない」と言われても。
今年も春が来る。私は酒を土産に、博麗神社へ花見に行く。
あいかわらずひっそりとした神社だが、桜の美しさに於いては白玉楼にすら勝るとも劣らない。
ここの巫女は私が来るたび首を傾げる。私も同じ気分だ。だが、まあこの時分は旧友たちもよく集まるので、別に構いやしないだろう。
スキマを作り、冬眠から目覚めた紫がやって来た。私は酒瓶を見せ、彼女の元に寄る。
そして訪ねるのだ。恒例となった再会の挨拶。霧雨魔理沙生涯最大の謎。
『私たちは何をきっかけに出会ったか?』
答えは春風の中に融けて消える。
降りしきる桜吹雪の中『あいつ』が微笑んでいるような気がして、私は周囲を見渡した。
>八坂様を侮辱するとバチを当てますよ
諏訪子様はそんな事しないと言いたいか、忘れていたか
それが問題だ
紫が忘れるのがちょっと早い気がする
最初の紅美鈴の行動からして、物語は既に始まっていたんですね。
普通の人間なら慌てふためく状況なのに、この作品の霊夢ときたら……。
魔理沙の家をでるときの霊夢の別れの言葉で、ちょっと泣きそうになった;;
この作品を見た人は思うはずだ。
いかに霊夢の存在が東方というものを支えているか!
あぁ、霊夢……。
主に空を飛ぶ程度の能力、実際にはどんな意味を持っているんでしょうね。
冷静に哀しむ霊夢に泣いた。
・・・もしかして信仰心が足りなかったのか?
いや、霊夢は人間だし関係ないか。
でも凡百の百合話よりも深く心に残る作品でした。
大事なのは百合云々じゃなくて呼んだ人の心に残る作品を書けるかどうかだと思うんだ。
程よい分量のなかに東方の魅力がぎゅっと凝縮された名作だったと思います。ごちそうさまでした。
少し悲しいながらも感動できる作品はすばらしかったです。
無重力だからこそ自由
しかし、その自由さは人や妖怪の記憶に囚われることなく抜け落ちていく。
そんな解釈をした日が私にもありました。何かで表現することはできなかったけど!
おまえの儚さに俺が泣いた。
取り乱すのでもなく、静かにそれを見つめる
霊夢の姿に泣きました
重力からも人間関係からも自由になり
最後は自分自身からさえ自由なってしまったんでしょうか。
霊夢にも救いがあることを祈ります
・゚・(ノД`;)・゚・儚いことこの上ないですね
泣くから。
と決めている私です
でも読んでしまいました
泣きました。儚いのぅ…
読んでてONEを思い出した俺は間違いなくエロゲ厨。
霊夢は閻魔様に会えたのかが、気になるところです。
某鍵のLBの魚シナリオとか、その前身が製作したONEとか、そう言うの思い出して泣いた。
最後の魔理沙の格好良さに泣いた。
気が付けば続編、というか救済ルートを探している俺が居た
淡々とした描写が物語をなお引き立てています。面白かったです。
魔理沙ならば最後まで・・・とも思いましたが、やっぱりダメだったか・・・
こういった結末の話は嫌いですが、しかし上手いものは上手いとしか言いようがない
お見事でした
霊夢の何にも縛られない生き方だとか、能力だとかが切ないです。
他人に認識されなくなる話は多いですけど、東方と合わせるとこうなるのか……
幽霊のようで、夢のようで、そんな霊夢の最後?をありがとうございます
心をかき乱すというのではなくしんみりとした悲しさでした
なんだかそこが幻想郷らしいなと感じました、どうにも言葉足らずですが
よかったです
素晴らしかった。とてもとても良かったです。
切なくて暖かい。すれきった心にすとんと落ちて、柔らかく広がる感じ。癒されました。
何か助言ができれば良いのですが、粗探しなんてとてもできません。一次創作もされているようなので、そちらの方も拝読したい気持ちになってしまいました。
切ないにもほどがあると思うんだぜ……。
こういうのが、真綿で首を締められるっていうんですか。
時間を忘れて読み入ってしまいました。
ありがとうございます!
すっげー切ない・・・
もしそんな作品だったなら、多分俺はレスもせずに次の作品に目移りしてたはず
この霊夢はまだ死んでいないと思う。
……完全には、という意味合いではあるけれど。
「時には昔の話を」みたいに濃密に書かれてると、
多分涙腺崩壊したんだろうけど淡々としたこの描写も捨てがたい
魔理沙がべッドに潜り込むシーン辺りの情感を想像すると切なすぎる
楽しかったです
ある程度予測できる着地点が、見るのが怖いのに気になる。そんな気持ちで一気に読めた。
話自体は霊夢消えちゃったーでもそれを知ってるのは読者だけ、という悲しいお話だけど
見ようによっては解脱のお話にも考えられる。
霊夢の能力が究極の形で発現し、全ての事象から切り離される。これは修行をしても得られるかわからない境地。
しかしそれを受け止めるには霊夢は幼く結局魔理沙という繋がりに固執してしまい、完全な無重力には至らなかった。
この話自体はハッピーもバッドもないのかも。
読んでいる最中の落ち行く感覚、なかなかの物だった。
あと紫に手を振ったという一文がすごく好き。
同棲中の魔理沙の兆候を見て、霊夢は何を考えたんだろう?
あるがままを受け入れようとする霊夢もだけど、必死に霊夢を忘れまいとする魔理沙がもう……