「真水を飲んでお魚掴む~♪鱗に包まれた王子様~♪」
今日も夜道で屋台を営業。
ちょっとだけ強い風が、木々を揺らして葉っぱ達の囀りを響かせる。
「邪魔するよ」
「あ、いらっしゃ~い♪」
最初のお客は真っ赤な髪に、大きな鎌をもった三途の川の死神さん。
ちょくちょくここに来てくれる常連さん。
「さて、まずはお酒と・・・後、何か適当にくれるかい」
「はいは~い♪」
死神さんはおっきな鎌を横において、私に注文してきた。
・・・それにしてもいつも思うんだけど、あの鎌あんなにぐねぐねしていて、ちゃんと役に立つのかなぁ?
まぁ、本人は死神っぽく見せるだけのアイテムとか言っていたから、どうでもいいのかな?
「ふぅ~、仕事の後の酒は格別だねぇ~」
「お疲れさまぁ~♪」
死神さんはお酒を飲みながら、すごく幸せそうに息をつく。
そんなに仕事がきついのかな?でも、前見たときは仕事をしていなかったように見えてたけど・・・?
「そういえば最近、川を渡れない人達が増えているんだよね~。特に外の人間に」
「へぇ~?」
死神さんはしばらく静かに飲んでいると、急にそんなことを言い出してきた。
「まぁ、増えてるって言っても、ちらほらいるだけでそんなに多くは無いんだけどさ」
死神さんはそういいながら、コップの酒をあおる。
「ただねぇ、少し前まではそんな人なんて殆どいなかったんだよね。それより遡ると逆に増えるけど、それは単純に貧しかったせいみたいだし・・・なんでだろうねぇ~?」
そんなことを私に聞かれてもわかんないんだけどぉ~。
「すっごい悪人ってわけでもなさそうなのに、渡れない奴がちょこちょこいるんだよねぇ~。逆に悪人っぽい奴の方が早く渡れることもあるし」
「ふ~ん?」
「あれかね、最近の外の人間は他人との付き合いとかしなくなっているのかね?そうだとしたら・・・ちょっと悲しいことだね」
「・・・~♪」
死神さんは少しだけ遠い目をしながらそう呟いた。
なんとなく私は歌の音量を下げる。
死神さんはそのまま物思いにふけるように中空を見つめている。私はそのコップに静かに酒を足しておいた。
「こんばんは~」
「いらっしゃ~い♪」
次のお客さんは紅いお屋敷の門番さん。
お屋敷と同じ赤い髪がトレードマークの妖怪さん。
「あれ?先客がいましたか」
「どうも~」
門番さんは死神さんを見て、軽く会釈をしてから椅子に座った。
そういえば、死神さんも同じく紅い髪をしているから、なんとなく親戚みたい・・・?
「初めて見る方ですね、私は紅魔館というところで門番をやっている紅美鈴といいます」
「あたいは小野塚小町、三途の川で船頭をやってるよ」
「へぇ、つまり死神ですか」
「そういうこと」
「そういえば、咲夜さんが前に死神に会ったとか言っていたわねぇ」
「あぁ、多分それあたしの事だね」
「あ、そうなんですか?」
「それって、ちょっと前に花が咲き乱れてた時のことだろう?そん時にそんな名前の奴と会った記憶があるからね」
私も死神さんと初めて会ったのは、あの花の咲き乱れた時だったなぁ。
「あぁ、じゃあ間違いないですね。そういえば・・・あの異変の原因はその死神とか言っていたような気が・・・」
「!?あ、あれはあたいだけのせいじゃなくてだね!外からの霊魂が沢山来たからそれで仕事が追いつかなくて!そ、それにあんまり沢山霊魂を送ると、あたいの上司が大変になるし・・・!」
「え、でも、その上司がさぼっていた死神を叱っていたのも見たとか行っていましたが?」
「あ・・・いや・・・あはははは」
あ~、死神さんがなんか妙な汗をかきながら笑ってるのを、門番さんが妙な顔で見てる。
「・・・まぁ、深くは追求しませんけど。結局元に戻ったわけですし」
「ま、あれも六十年毎の恒例行事みたいなものだからねぇ。もともと大して影響がある訳じゃないから、ほっといたって大丈夫なのさ」
「サボりを正当化するための言い訳にしか聞こえませんねぇ・・・あ、鰻をお願いします」
「は~い♪」
門番さんは死神さんの言葉に苦笑しながら、私に注文してきた。
私はすぐさま鰻を捌きにかかる。
「しかし、よくそれで上司の人が何にも言わないね?」
「いや、まぁ、見つかったら説教は食らうんだけどさ。あたいの上司って職業柄か説教好きでね」
「いいじゃない好きなのが説教なら。うちのお嬢様なんて人をからかうのが好きだから、私とかいろいろ大変な目に遭うんですよ?」
「あんたは四季様の説教を知らないから・・・」
「だったら、暇だからって無理難題言われる気持ちはわかりますか?」
「・・・」
「・・・」
あ、なんか雰囲気が良くない。
どうしよ~?喧嘩とかされてもこまるし。
「・・・やめましょう。ここで愚痴ったところで現状は変わりませんし。お酒が不味くなるだけです」
「そうだね」
「「はぁ・・・」」
・・・なんとか険悪な雰囲気が無くなったけど、今度は別の意味で雰囲気が良くないな~。
仕方ない、とりあえずここは景気のいい歌を歌って盛り上げよう~♪
三組目のお客さんは亡霊とその付き人さん。この屋台の常連さん。
「お邪魔します」
「失礼するわね~」
「あ、いらっしゃ~い♪」
「あれ、あんたは白玉楼の・・・」
「あらあら、貴方は死神ね」
「どうも、三途の川で船頭をやっている小野塚よ」
「そういえば、妖夢が前に貴方に会った事を話していたわね」
「あ~、そんなこともあったね」
「その時は妖夢がお世話になったそうね」
「いや、それほどでも」
「全く・・・説教が仕事の閻魔様だけではなく貴方にまで説教を貰ってくるなんて、あの時は妖夢もまだまだよねぇと思ったものだわ」
「・・・」
あらら~、幽々子さんがくすくすと笑っている傍らで、妖夢さんが恥ずかしそうに縮こまってる。
「まぁまぁ、そんなに虐めてはだめですよ」
「まぁ、虐めているわけじゃあないのだけど?」
「妖夢さんはまだ若いんだから、未熟で当たり前。失敗を何度も蒸し返すものではないですよ」
「まぁそれもそうね。さ、妖夢いつまでも立ってないで座りましょう。あ、何か適当なものをくださいな」
「は~い♪」
幽々子さんはそういって妖夢と共に座り、私に注文してきた。
その後四人ともしばらく自分達の近況について話していたけど、門番さんがふと思い出したように妖夢さんに近づいていった。
「ところで妖夢さん」
「はい、何でしょう?」
「あなたは確か剣士よね?」
「え、えぇ」
「やっぱり近接戦とかの方が得意よね?」
「ま、まぁどちらかといえば・・・」
「誰かと手合わせとかしている?」
「い、いえ。師匠がいなくなってからは専ら一人で・・・」
「それはよかった」
「・・・えっと、もしかして私と手合わせをしたいんですか?」
「あたり。偶には違ったこともしてみたいしね。無理かな?」
「え~と、私としては願ったりなんですが・・・」
妖夢さんが恐る恐る幽々子さんの方を見る。やっぱり主の許しが必要みたい。
それに気付いた幽々子さんはにっこりと笑った。
「あら、別に構わないわよ。他人と手合わせするというのも重要でしょうし」
「あ、ありがとうございます」
「別に妖夢の仕事に支障が出るようなことは無いのでしょう?それぐらいのことはいちいち私の了承をとらなくてもいいわよ。声を掛けるだけで十分よ」
「ですが、私は幽々子様にお仕えする者。主の許しなしに勝手なことは出来ません」
妖夢さんの態度に幽々子さんは軽くため息をついた。
「・・・剣術だけでなく、柔軟さも向上して欲しいわねぇ」
それは私もそう思う~♪
「まぁ、それも妖夢さんの持ち味でしょう」
「それはそうなんだけどねぇ」
「どうしようと今更大して変わらんだろ。三つ子の魂百までって言うしさ」
「はぁ・・・」
「・・・・・・」
あ、妖夢さんがなんか憮然としている。
五人目のお客さんはチンドン屋の白い人。いくつか楽器を浮かせながらやってきた。
「おじゃまするわよ~」
「いらっしゃ~い♪」
「あれあれ?白玉楼のお得意さん?」
「あ、どうもいつもお世話になっています」
「あら~、貴方はプリズムリバーの。今日は一人なのね」
「今日は墓場でのソロライブの帰りなの。その時は大体ここでご飯食べてから帰るのよ」
「あんたはいつかの騒霊の後ろにいた・・・」
「あ、あの時の死神ね。その節は妹がお世話になったわね~。そっちにいるのは紅いお屋敷の門番さんね~」
「あ、どうも」
メルランさんは皆と顔見知りみたい。
まぁ、彼女達はいろんなところで演奏するから当たり前なのかな?
私もそういうのやってみようかな~?
「墓場でライブとか言ってましたね。これらの楽器でやったんですか?」
「そうよ~」
「へぇ、いろいろあるもんだね」
「えぇ、トランペットの他にチューバやホルン、トロンボーンにスーザフォン」
「・・・あれ?これは法螺貝?」
「そうよ~」
「なんか違和感が無いですか?」
「そんなことないわよ~。これだって他の楽器と一緒で十分にぐるぐるしているもの」
「ぐるぐるしていればいいのかい・・・まぁ、これもラッパみたいなものか」
「そうそう、だから全然問題なし!あ、店主さん。蒲焼とご飯頂戴」
「はいは~い♪」
私はすぐさま調理にかかる。
それにしても、いつも思うんだけどあんだけ沢山の楽器をいっぺんに演奏して、混乱しないのかなぁ?
「しっかし墓場で演奏ねぇ。あんたの曲が幽霊に人気なのはわかるが、あんまりやりすぎるとそれを聞きたいがために自縛霊とかになったりしないかねぇ」
「さぁ?そこまでは責任取れないもの。私はただ単に演奏を楽しんでもらいたいだけ」
「無責任だねぇ」
「まぁいいんじゃないかしら。それに彼女の演奏はとても気分が高揚するから、逆に自縛霊みたいにじっとしているなんて出来なくなりそうだもの」
「そんなもんかね?ま、あたいはこいつの演奏を殆ど聴いたことがないから、何とも言えんが」
「まぁ、メルランさん一人での演奏を聴くのは、あんまりお勧めしませんよ。お姉さんのルナサさんのもそうですが」
「あら、ひど~い」
「そうよ妖夢。本人の前ではそんなことを言ってはいけないわよ」
「あ、すみませんメルランさん」
「・・・本人の前じゃなければいいのかい」
「彼女の演奏はただ単に物凄い躁状態になるだけで、せいぜい暴れるくらいだもの。そんなに危険じゃないわ」
・・・幽々子さん、それは十分危険じゃないかしら?というか、それはメルランさんへのフォローのつもりなのかなぁ?
でも、実際二人の演奏は単独で聴くと大変だものねぇ♪
「千の川に万の山、砕けた岩には鳥が住む~♪」
現在屋台には幽々子さんと妖夢さんの二人だけ。
死神さんと門番さんは、あの後しばらくしたら帰ちゃった。
メルランさんも、ご飯を食べて少し飲んでから帰ちゃった。
「す~、す~」
「・・・・・・・」
幽々子さんは寝てしまった妖夢さんを膝枕しながら、軽く飲んでいる。
この二人は大体夜明けまでこうしていることが多い。
そうして、目が覚めて物凄く恐縮する妖夢さんをつれて帰っていく。
「す~、す~」
「・・・こうして寝顔を見ていると可愛いものね」
「そりゃぁ子供の寝顔は可愛いものよ♪」
「私の子供じゃないんだけど・・・」
幽々子さんは苦笑しながらも、片手で妖夢さんの頭を撫でている。
「・・・桜を見上げて我が子を名づけ、向日葵眺めて我が子を抱きしめ」
「秋桜見つめて我が子と話し、山茶花目にして我が子を呼ぼう」
「あら?」
幽々子さんが歌いだした歌の続きを私が引き継ぐと、幽々子さんは驚いたようにこっちを見てきた。
「お客さん、その子が寝るといっつも歌っているでしょう?だから覚えちゃった♪」
「あらあら」
幽々子さんはそれを聞いて微かに笑った。
そしてまた二人で歌いだす。
「「春、夏、秋、冬、この子の未来に幸在れと、あらゆるものに願いましょう。この子の瞳に映るのものは、全てが美しいものであろうように」」
静かに流れる子守唄。ただ一人の少女の為に、二人が優しく歌い続ける。
夜明けまでにはまだ少し・・・
これは良いですね
次回は再登場の人もいるんですか。楽しみにしてます。
美鈴、君は小町の事を言えるのか・・?w
無理に書くより好きな時にごゆっくりと感謝の意味でこの点数。
膝枕で寝る妖夢とそれみて微笑む幽々様と
みすちー想像したらものすごい和みました。
ご馳走様です。次も楽しみにしてます。
美鈴…貴女はこまっちゃんのこと言えないと思うよw
楸さんは前に2次創作をあまり持ち込まないって言っていたんで、そのせいかと。
新作、きましたね~
今回、生きてる人少ないですね~。
逆にみすちーが際立っていて、特徴的でした。
今回は四季ですか。
どこぞの山田さんみたいな感じですが・・・
確かに、春夏秋冬を楽しめるのは日本と幻想郷ぐらいですからね~
海外に行って聞いてみたら、定義としてはあっても、意識としては少ないみたいです。
まあ、ガラパゴス諸島なんて対して関係ありませんが;
・・・・山茶花(さざんか)って冬の花だったんですね~
あまり花は詳しくないので・・・;
子守唄って、いいですよね~
大きくなると、聞く機会なんてなくなってきますからね~
私は寝るときには東方のBGM流してますがw
そろそろ眠れそうなときに「東の国の眠れない夜」が流れてビックリした経験もありますがwww
・・・・なんか最近言うことがよく脱線するなあ;
次回作、待ってますね~
とても和みます。
なんという母性。かつてないゆゆ様像です。
大体ゆゆ×みすと言えば捕食ネタですが、これはいい。
幽々子様と妖夢の膝枕は良いモノだぜぇフゥハハハァ!
透き通った詩で気に入りました。
みすちーが本当に良いキャラで癒されてます。
次回作を楽しみにしている方々がいるというのは、大変励みになります。
>みすちーとゆゆ様
まぁ、これはてるるさんがおっしゃっている通り、二次設定を殆ど使わないという宣言に基づいています。
まぁ、そんな宣言していなくても、大好きなみすちーが喰われるような内容を書いたかどうかはわかりませんけどね(苦笑)
>小町と美鈴
あ~、まぁ、美鈴はそれなりに仕事はしていると思うんですよ?多分・・・。
例え居眠りはしてても・・・(汗)
>歌
気に入ってくれている方がいてとても嬉しいのですが・・・いいのかな?そんな言葉を貰って。
え~これは、リズムをつけてかな~り適当に頭に思い浮かんだことを書いているだけですよね(苦笑)
みすちーの歌詞なんて、その最たるものですし。
まぁ、作ってて楽しいといえば楽しいのですが(笑)
ぎくっ