オリジナルのキャラクターが一名登場します。
苦手な方は避けた方が良いと思いますが、本音では読んで欲しいです。
では、前書きから失礼しました。
故・博麗霊夢について
博麗の巫女。
跡継ぎの成長を見届け、博麗の巫女を譲った翌朝、蒲団の中で死亡が確認される。
娘を授かり、その娘が一人前の巫女になるよう成長を促し、娘が十五となって充分に成長したと見ると、博麗の巫女という役を娘に譲り渡す。そしてその日に床に就くと、二度と目を覚まさなかった。
病気でもなく、毒でもなく、老衰でもない。死因は不明。
博麗の巫女という役を娘に譲り渡す際に、力や魂も譲り渡したからではないかとも言われているが、真相は未だ判っていない。
余談だが、娘を産んだ際に博麗霊夢に夫はなく、誰の子かは不明。
故・霧雨魔理沙について
人間の魔法使い。
博麗霊夢の没した翌年、自宅にて実験の事故により死亡する。
魔法の森にある自宅で突如巨大な爆発があり、霧雨魔理沙はそれに巻き込まれ死亡が確認された。
霧雨魔理沙は死亡する前日に、不要な道具全てを香霖堂に、魔法の研究成果をパチュリー=ノーレッジとアリス=マーガトロイドの両名に渡していたことが判明。
当初、博麗霊夢の後追い自殺ではないかと噂されたが、後に実験の失敗による爆発と判明し、前日の行動は虫の知らせによる無意識の行動ではないかと推測される。受け取った三人によると、渡す際の霧雨魔理沙が、何故自分はこんなことをしているのだろうと首を傾げていたとの証言がある。
故・十六夜咲夜について
人間でありながら、紅魔館のメイド長。
老衰により、紅魔館の自室にて死亡する。
前述の二人と比べ、四十年以上生きた。
また、その死は紅魔館に働く者や親しい者たち看取られ、死後には大きな葬儀が行われた。大往生であったと伝えられている。
死の間際、一番大事にしていたナイフを主のレミリア=スカーレットに、愛用の時計を紅美鈴に渡した。時計を預けられた紅美鈴は、現在メイド長代理を務めている。
薬を嫌い、老化も死も受け入れ、最期まで紅魔館のメイドとして、けれど最期まで人間として生きたと記されている。
それらの死からも時は流れる。無情なほど、さしたる変化もなく。
夏。
死者も茹だるお盆の季節。風物詩は墓参り。
そんな暑苦しい昼間の道を、見た目が暑苦しいほど珍妙な一同が歩いていた。
日傘を差したスカーレット姉妹。そして魔法で飛んでいるパチュリーと、そんな三人に続くように大荷物を背負って歩く美鈴。
この四人は、白玉楼を目指して歩を進めている。
「お姉さま……暑い」
「その言葉なら、数え始めてからもう十五回目よ」
「数えないでよぉ……」
不意に「そんなに暑がっていると腐乱するわよ」と口にしそうになったが、それはこの暑い場を冷やすという効能と共に大量のカリスマを消費してしまう魔法だとギリギリで気付き踏み止まった。
踏み止まってから、ならばいっそと知的に振る舞おうと良い言葉を探る。
「神道滅却すれば、紐俣鈴氏というでしょう」
パチェが墜落して美鈴に激突した。
「……れ、レミィ。誰? その紐俣鈴って」
あえて前半は気にしない。言った本人が吸血鬼なので。
「昔パチェから聞いた言葉だけど?」
「お嬢様。今のはお嬢様の言葉が間違っているから、パチュリー様がやんわりと正そうとなさっているのだと思います」
「……間違ってた?」
「むしろその言葉の意味を問い掛けたいほど。でも、不思議と音は全部合っていたわ。それなのに誤解できるあなたは天才ね」
「褒められたわよ美鈴」
どうだ、と言わんばかりのカリスマの消費者に対して、美鈴はホロリと涙を浮かべる。
「お嬢様、そんなにない胸を無理に張られ……ぐはっ!」
額にナイフが突き刺さる。これが、今際の際に咲夜から渡されたナイフの主な使い方だった。元の持ち主の扱いに酷似しているが、まさか死ぬ間際の咲夜もそう使われることになるとは思わなかったことだろう。
「慎ましやかといいなさい」
「そんなお嬢様が素敵です。あとナイフお返しします」
自分の額に刺さったナイフを引き抜いてレミリアに手渡す。嫌な音と共に引き抜かれるナイフ、防波堤がなくなって噴き出す血。美鈴でなければ致命傷であっただろう。
手渡されたナイフを受け取ってからレミリアがナイフについた美鈴の血を舐めている。と同時に、美鈴の頭部にへばり付くようにして、フランドールが美鈴の額から流れる血を舐めていた。おやつ扱いである。
「樹液と虫」
ぼそりと呟くパチェリー。深く同意したいけど首を動かせない美鈴。妹の下着が見えないように傘を動かす姉。その全てを気にしないで思うさま血を舐める妹。実に統一感のない集団である。
しばらくすると血も止まり、フランドールの唾液でべっとべとの顔をした美鈴が、頭部にフランドールを乗せたまま涼しげな表情になっていた。むしろ奇怪だった。
「だけど、美鈴は変なところが咲夜に似てきたみたいね」
「そうですか?」
「たまに主を主と思っていないような所とかそっくりよ」
「そんなことないですよ、私も咲夜さんも」
「どうだか」
機嫌は悪くないようだが、呆れた顔をしてレミリアは肩をすくめた。
と、前方に見慣れた二人の背中があった。それを見て、レミリアが不満そうに口を尖らせる。
「あら、今日は私たちが一番に白玉楼へ行くつもりだったのに」
「だったら合流しましょうか?」
「さんせー」
口にしたと思うやいなや、フランドールは美鈴の肩を蹴ると、傘を上手い具合に操りながら二人の傍へと飛んでいった。
「きゃっ! って、あら、フランじゃない」
「えへ。こんにちは、アリス。こーりん」
紅魔館一同の前を歩いていたのは、魔法の森の入り口に立つ道具屋の店主と、魔法の森の奥にある人形屋敷の主だった。
「こんにちは、フラン。あと、その他三名」
「そのぞんざいな挨拶は何よ」
「こんにちは、アリスさん。霖之助さん」
「あぁ、こんにちは」
「二人とも、こんにちは」
この魔法の森の妖怪コンビは、最近になってから紅魔館と交流が深くなった。というのも、この二人が臨時の従者として紅魔館に働きに訪れるからである。敏腕メイド長の穴は大きく、美鈴や数体の小悪魔たちでは到底埋めきれなかったので、急遽ヘルプを求めた結果、この二人が臨時で手伝うこととなったのだ。
その報酬は、アリスには図書館の閲覧と本の貸し出し。霖之助には上等な酒である。
「ところで、そろそろ専属でメイドをやる気になったかしら?」
レミリアは思い出したように訊ねる。顔を見る度にこう訊かれるので、もう挨拶の一環となっているが、レミリアにとっては極めて本気な勧誘である。
「御免だね。僕は香霖堂の店主だ」
「客なんて居ないじゃない」
「店に必要なのは、売り物と売る人物だけだ」
それは店という概念を無視した形だけの最低限であって、そもそもの店であるという要素を欠片も満たしていない。
「それにだ。僕がメイドになったら、あれを着せる気だろう」
「もちろん」
ちなみにメイド服を指す。
「あれは女性用だ」
「あれしかないのだから仕方ないでしょう」
「それに、外の世界では男性も着るそうよ。外の世界の本に書いてあったわ。挿絵付きで」
「君がどんな書物を読んだか知らないが、それはきっと良くない書物だ。即刻焼きなさい。あるいは僕に寄こしなさい」
言ってて蒐集家の血が騒いだらしい。
「アリスは?」
今度はフランドールが、ふわふわと綿毛のようにアリスに絡まりながら問う。
「私もパス。私はもっと魔法の研究を続けたいから」
「そっか」
そんな会話をわいわいと繰り広げつつ、六人は白玉楼へと続く階段を上っていた。そこまでくると、不思議と夏だというのにひんやりとしている。それは濃密な死が熱を奪っているのか、あるいは肝試し的な涼しさなのか区別は難しい。
その道中、背後から飛んできた巫女が六人を追い抜いていた。それは霊夢の孫娘の孫娘に当たる、当代の博麗の巫女。
「お先に行きますよ、のろまさんの吸血鬼」
そう無邪気に笑いながら口にすると、ビュンと加速して白玉楼へと向かう。
「あ、あいつまた!」
毎度毎度、あの巫女は常に何かあると常に一番に到着する。六人で和んでいた所為で、レミリアはそれをすっかり忘れていたのだ。
「先に行くから!」
「私も行く!」
吸血鬼の姉妹が、巧みに傘を操り、日差しを避けつつ巫女を追う。が、今更追っても間に合うまいと、口には出さずに全員が思う。
「行ってらっしゃい」
そんな義務感に満ちたメイド長代理の言葉は、恐らく二名に届かなかっただろう。
スカーレット姉妹が抜けた四人は、それから特に急ぐこともなく階段を上っていった。
すると、上から賑やかな声が聞こえてくる。
「ちょっと、見てないで手伝ってくださいよ! あぁ、こんなところで暴れないで! 準備がはかどらないじゃないですか!」
悲哀を誘う妖夢の悲鳴が、春先の風のように心を温かくさせる。
しばらくしてから、ギャーギャーと騒ぐ声が響く白玉楼に四人はようやく辿り着いた。
その四人の目に映った光景は。
「いつもいつも無駄にはりきって一番を盗んで!」
「のろまさんが悪いんです。今日は折角私より前にいたのに」
「何ぃ!」
空中で戦いを繰り広げる吸血鬼と巫女。
「あ、これ美味しい」
「あら本当」
「つまみ食いしないでください!」
用意する端から料理が食べられて泣きそうな、やや成長した妖夢。そして、摘み食いの常習犯である吸血鬼の妹とここの主。
そして……
「あぁ、妖夢泣かないの。二人とも、もう少し待ってなさい」
妖夢を手伝う十六夜咲夜。
「いいぞ、もっと派手に戦え!」
戦う二人を囃す霧雨魔理沙。
「……ズズズ」
そして、我関せずで茶を啜る博麗霊夢。
かつて最も輝いていた時代の姿のまま、彼女たちはここに亡霊として留まっていた。
「フラン! この巫女を懲らしめるの手伝いなさい!」
「はぁい」
「よっし、なら私はこっちにつくぜ!」
「あ、あれっ魔理沙さん? お祖母さまじゃなくて?」
てっきり自分の援護に来ると思っていた先祖を探すと、相変わらず同じ位置で茶を啜っている。戦意ゼロ。
「お祖母さまぁ! 曾々孫のピンチですよぉ!」
「死なない程度にしときなさいよぉ」
「あぅ、人でなし!?」
「気付くの遅いわよ」
霊夢やる気なし。
空では娯楽の為の激闘。地上では準備をする者と妨害する者との死闘。実に賑やかである。
そんな賑やかさに誘われるように、後から次々と知り合いが集まっていく。お盆を口実とした、宴の為に。
誰も欠けず、むしろ新たな顔も増え、ここに集っていく。
騒がしいばかりで落ち着きのない日が、また今日も繰り返される。
それはあの頃から、何も変わらぬ日々。
なんとなくお察しはしますが、オリキャラ、未来の話しという点で、既に自分の趣味嗜好には合わない。とか、そんな感じなのでしょう。
でも、まあうちは普通に楽しめました。
ただ一つだけ言うとすれば、いきなり魔理沙と霊夢が出てきたことで、あれ?なんで?と思ってしまったこと。
よくよく考えると白玉楼じゃんw
ただ、死後の霊夢と魔理沙の設定が薄くて、理解できない状態。
ああ、居るんだ、その程度で受け止めることにしました。
無理に不老になったりするより、流れのまま移り変わりつつも変わらぬ日常というのはいいですね
本編は、どたばたしつつも少ししんみりとした墓参のお話かと思いきや、こういうオチですか。
正直なところ、死んでいる人たちは登場しない方が良かったと思います。
そもそも、なんで彼女たちは彼岸に行かず、白玉楼に留まっている(?)のでしょう?
オリキャラに未来って、よくよく考えれば地雷コンボでもありましたね。
改めて読み返して、霊夢&魔理沙の描写が少ないことに気付きました。
……伏線張っておけば良かったです。
>>14:07:24
そのまま時が流れて、いつか三人が転生をして消えてしまうことがあるでしょうから、変わらぬ間の日々は温かいと良いと思いました。
>>21:58:03さん
……あー、そういう話もいいですねぇ……好みです。
ちなみに本作の設定ですと、彼岸に言って裁きを受けた後、三人は転生待ちで留まっている設定です。
お読みいただき、ありがとうございました♪
起承転結の起だけ読んだ感じです。
特に当代の巫女と霊夢の絡みをもっと見たかったり。
本当は霊夢と当代の巫女との絡み合ったんですけど、消しちゃいました。
……でもそう言われると改めて書きたくなりますね。
オリジナルキャラクターが出張るものになるので書ききれるかどうか判りませんが、試しに書き進めてみようかと思いました。
……あぁ、ネタの誘惑に弱いなぁ……
お読みいただき、ありがとうございました♪
欲を言えば読み足らなかった。
場所を「白玉楼」ではなく
彼女達の思い出の場所で話を展開すれば
オリキャラの味が引き立つと思います。
巫女の間の代はどうしているのでしょう?それだけが気になります。
あ、良いアイディアですね。参考にします。
短かったですかぁ……オリキャラの扱いに困ったのが短い理由なのだと思います。
>>12:25:30さん
えっと、他の方は亡霊にならず普通の霊になって転生を……
……すみません、その程度の設定で実はあまり深く考えています。
深く考えるともっとオリキャラが増えるので、ビクビクして避けてしまいました。