この作品には所謂『俺設定』的なものが含まれている(気がします)ので、
閲覧の際は十二分にお気をつけ下さい。
「れいむー。またきたわよー。」
確かに「また」来た。
でも、ちょっと語弊があると思う。
「レミリア・・・。」
「何?改まって。
もしかして、愛の告白!?
ちょっと早すぎるけど、霊夢なら・・・、いいよ?」
「ちっがーう!!
あのね。
10日連続できといて「また」って何よ?
確かに前日に続いてかもしれないけどさ、こんなに立て続けにくるんじゃないわよ!」
「れいむ・・・。
私の事、キライ?」
微妙に涙を滲ませて上目遣い。この仕草をされると私もちょっと困る。
・・・流石に「年相応に見える」からだとは言えないが。
「えーと・・・、まあ、嫌いじゃないけど、毎日こうも押しかけられると困るわ。一応神社なんだし。」
「・・・。」
レミリア、熟考。
このところあのメイドを連れてきてないおかげで、あの殺気立った睨みを恐れなくてすむのは正直ありがたい。
「わかったわ霊夢。貴方に会いに来るのは3日に1回にするわ。」
暫くの沈黙の後、レミリアはこうのたまった。
「え・・・?」
今度は私が固まる番。
今まで毎日通ってきていたレミリアが「3日に1回」??
多分私じゃなくても思考停止するような事態だと思う。
魔理沙が「盗みをやめる」って言い出すくらいにはおかしいんじゃないかしら。
「霊夢・・・」
呼びかけられてふと見ると、レミリアが本気で泣きそうな顔をしている。
・・・だからその仕草は本気で洒落になってないんだって。
「いくら私でも反省はしてるのよ?
確かに考えてみれば霊夢の掃除の邪魔をしたことだって一度や二度じゃないし、勝手に宴会なんて言い出して庭先を散らかしたりしたし。
だから、私も3日に1回。我慢するわ。
・・・それに、フランを魔理沙やパチェにまかせっきりにするわけにもいかないしね。」
一応紅魔館の主としての職務もあるしね、なんて言いながらちょっと無理やりに笑顔を作る。
今のはちょっとぐらっと来た。その顔は本当に反則だと思う。
「・・・わかったわ。約束よ?」
「任せなさい。吸血鬼を始めとして妖怪は皆人間との約束事は絶対よ。」
こうして、私・博麗霊夢と博麗神社は束の間の平穏を手にしました。
・・・というのが半月ほど前。
最初こそ半信半疑だったものの、レミリアは本当に3日に1回しか来なくなった。それも、泊り込みも無しだ。
ただ、逆に「3日に1回」の日は何があっても来るつもりらしく、一度は豪雨の中を傘一本で来ることまでした。
流石にボロボロになっていたのでその日は泊めてあげたが。
「で、私の家に来ない日は何をやっているのかしら?」
「あら、気になるのかしら?」
「そりゃあ、また霧を出されたり厄介事起こされちゃ困るもの。」
「失礼ね。あれも運命よ。
まあ、安心なさい。私は暫く『異変』は起こさないわ。」
「・・・含みがあるわね。
『異変』じゃなくて『厄介事』は起こさない、と言って欲しいわ。」
「フフ。それは保障できないわ。
だって、一応『私が此処に来る』事自体が本来なら『厄介事』のはずだもの。」
「むぅ。確かに此処は神社ですけどね・・・。
でも最近は人間も時々参拝に来るようになったのよ?」
「それ、『私の御蔭』って言ったらどうする?」
「どうも何も、あるわけないじゃない。吸血鬼が人間とコミュニケートすること自体おかしいのよ?」
私がそう言うとレミリアは含み笑いを漏らして縁側から飛び降りた。
やっぱり仕草が幼い。いつも思っても口にはしないわけだが。
「まあ、確かにそのとおりだけどさ。
おかしいことが普通に起こるのがココでしょう?」
確かにそうね。まあでもレミリアが人間もどきな眷属を作るとは思えないし、そんな人外だったら私も気がつく。
そう思って別にその発言に深入りはしないことにした。何といっても私は賽銭が増えたことで機嫌が良いのだ。
そんな話をした次の日、空から新聞が降ってきた。
「文々新聞号外でーす!」
号外なのはわかったが、ちょっと殺傷能力が高すぎる新聞はどうかと思う。
「あ、霊夢さん。そういえば霊夢さんにはもう一つ渡すものがありました!」
二弾目。辛うじてかわしたが、ちょっと危ないので撃墜してみた。
「霊夢さん、いくらなんでもいきなり攻撃は反則だと思います・・・。」
「あんたの新聞のほうがよっぽど危険よ!人間の里まで普及させたいと本気で思ってるなら、配り方を変えなさい。せめて空から舞い散らすとか。」
「むう。それでは森などに行ってしまいかねないではないですか。確かに風を調節すればいいのでしょうが、私はそんなにまでして読んでもらおうとは思いませんよ。」
「ならせめて、投げつけるんじゃなくて縁側とかに置いておきなさい。人間には危険すぎるわ。」
「勿論、そのようにして配ってますよ?
・・・貴方と某白黒以外には、ですけど。」
とりあえず陰陽玉を10発ほどお見舞いして放置しておく。
『この屈辱、新聞を使って10倍にして返してやるから覚悟しろ』って声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
・・・というか、性格とか変わりすぎ。
しかも、『ペンは剣よりも強し』って、そういう意味じゃないんじゃないかな?
まあ置いといて、食事をしながらあの天狗の新聞に目を通す。
何々、『紅魔館主催のパーティーが大盛況!』??
私の家に来ないときはこんなことしてたのか・・・。
ふと箸に意識を向けた拍子に、天狗が投げた二弾目が目に入る。
・・・『招待状』??
それを開いた私は、食事もそこそこに天狗の遺品二品を持って紅魔館へ向かった。
道中で天狗の遺品群を読み直す。問題はこの一面記事と手紙の関係性だ。
・・・まあ、持ち前の勘が警鐘を鳴らしているからすでに動き出してるわけだけど。
『紅魔館主催のパーティーが大盛況!』
「夕方日没から約2時間に渡って行われる宴会がある」と聞いて私・射命丸文が真相を究明しに向かったところ、宴会の会場は神社ではなく、湖畔の異質な洋館・紅魔館であった。
当然新聞記者としては、週に2回は開かれるというこの宴会の原因などをつきとめる必要がある、という思いで潜入捜査を試みた。
門前にて受付を行っていたのは紅魔館の門番・紅美鈴氏だ。曰く、「入場制限はございませんが、本名と持参物を記帳下さい。」との事。
潜入捜査である以上、本名をさらすことは憚られたが、仕方ないので記帳をする。
「持参物」というのは、記帳歴を見る限りでも酒、軽食などの宴会用品を始め、野菜、果物等多岐にわたっており、美鈴氏曰く、「宴会に参加する対価として見合う物」だと自分で判断すればなんでもいいのだという。
中には「本」などという奇怪な持参物もあったが、私は無難に天狗の中で一般的に嗜まれている銘酒『華厳』を渡して入場させていただいた。
中に入ると、結構な参加者が既に紅魔館の庭園で思い思いにくつろいでいた。
偶然発見した紅魔館のメイド長・十六夜咲夜氏によれば、このパーティーの発案は館主のレミリア・スカーレット氏で、「人間と妖怪の完全なる共存」という目的で開催されているという。
しかし、妖怪の主催するこのようなイベントに、人間が参加するなどということがあるのだろうか。
そんなことを考えている間に日没を迎え、上弦の月が中天に差し掛かると、レミリア氏とその友人・パチュリー・ノーレッジ氏が館から姿を現し、同時に庭園各所に灯がともった。
(二面に続く)
・・・幻想郷にそうそうネタがないのはわかった。
だからって紅い館の小さなパーティーをこんなに取り上げるくらいなら、私の仕事を記事にして欲しいものだ、と思い、いらついたのでぐちゃぐちゃに丸めて飛んでいた蛍に投げつけてみる。
「イタッ!」
・・・命中した。しかもあの小さな頭に。
私のコントロールもやっぱり大したものね、と⑨的な自己満足に浸っていると、なんか蛍が怒ったらしく飛んできた。
「ちょっと!博麗の巫女だからっていきなりこの仕打ちはないんじゃない?
しかも、護符で攻撃ならまだしも、新聞?
いくらなんでも私の事なめすぎよ?」
「ああ、だって、新聞紙って暖かいじゃない?
だから、あんたの冬眠には丁度良いと思って」
「・・・。
呆れた。博麗の巫女がそんなことを言い出すなんて。
悪いものでも食べた?
・・・いや、そういえば博麗の巫女は食べるものが無くて年中餓えてるんだっけ」
「・・・そんな馬鹿なことを抜かしてるのはどこのどいつかしら?」
「ちょっっ、私じゃないからちょっとタンマ!
だから、この記事にも書いてあったはずよ?
・・・見たから私に八つ当たりしたんじゃないの?」
驚きと怒り半々で蛍から新聞をひったくる。二面、と呟くこの蛍は案外お人好しなのかも知れない。
「何々・・・、パチュリー氏の演説の後、自由な雰囲気になったので参加者にも話を聞いてみた? なんだ、鶏と・・・里の人間?
何で人間が参加してるのよ?
普通こんなの敬遠するでしょ・・・」
「本当に読んでないのね・・・。
なら今から行って話を聞けば良いじゃない、主催者本人に。
どうせあの夜の王とは仲良いんでしょ?
あと、ミスチーは音が一緒でも変換は違うよ?」
「別に仲良くはないんだけどね・・・。
あと、『鶏』のほうが躊躇なく捕食できる気がするでしょ?
まあ、あんたの言うとおりにさせてもらうわ。確かにその方が手っ取り早い」
食べないであげてよ、という呟きは聞かなかったことにして、当初の目的通り紅魔館に向かう。
「・・・なんでついてくるのかしら?」
「だって私もいくんだもの。文句ある?」
だって、人間達に虫の大切さを直接知らせる良いチャンスなのよ?などとぬかす蛍はとりあえずおいといて。
「ほんとに人間まで参加してるの?」
「一応あの天狗の記事はほとんど真実よ?
妖怪やあの館の住人より人間のほうが多いくらいだと思うわよ?」
「あんたも行ってるの?」
「そりゃあもう、人間を襲わない、食べない、の二つさえ守れば快適なひと時を約束してくれるのよ?
・・・あんた、私の話を聞くより一応主催者コメントも載ってるからそっち見なさい。」
「何々、主催者挨拶?
『私、紅魔館主・レミリア・スカーレットは、この宴の間並びに宴からの帰路において、参加者諸君の生命の安全を保障いたします。
ただし、この私の保障にも関わらず、参加者に手を出したモノがあれば、人妖問わず私が直々に制裁を下させていただくのでご了承下さい。』?
・・・あいつ、普通で堅苦しい貴族流の挨拶も出来るんだ・・・。
じゃなくて。どういう意味よ、これ?」
「いや、だからそれを本人に聞くんでしょ?私に聞かないで」
確かに蛍の言うとおりだ。
仕方が無いので飛びながら記事の続きを読むことにした。
里の人間・S氏のコメント
『このまえ慧音先生がいきなり拉致されたときは驚きましたがね、帰ってきたら先生が『あのパーティなら参加しても大丈夫そうだ』なんて言うもんだから、恐る恐るではあるけど来てみたんだがね。いやいや、なかなか人間にとって素晴らしいパーティだったもんだから、初参加以来は皆勤賞だよ』
八目鰻屋店主・ミスティア・ローレライ氏のコメント
『最初に話をされたときは驚いたわよ。私とここの主の接点なんてあの永い夜の時くらいだし。でも、案外面白そうだし、人数さえ集まれば森の中でやってるより売れるしね。何より、盛り上がるし、私をステージの上で歌わせてくれる、って言うのがいいわね。まあ、人間を鳥目にして遊べないのがちょっと難点といえなくもないんだけど』
と、このように、皆さんがそれぞれに楽しんだ様子で、人妖入り混じっての宴会であった。
ミスティア氏とプリズムリバー楽団のステージの最中、レミリア氏への突撃取材を試みると、『全く、音楽に聞き入ってるときくらいは静かにしてもらえないかしら?』と言われたものの、このパーティの経緯について少し語ってもらえた。
『このパーティはね、どうせ門番にでも趣旨は聞いてるでしょうけど、幻想郷における人間と妖怪の完全なる共存をめざしてるのよ。
確かに八雲の結界は重要な役割を果たしたし、博麗はシステムの管理者として存在しているわ。
でもね、それは人間と妖怪の対立の中での均衡を求めてるだけでしょ?貴方や私がそれで良いと思うのは当然。それは、強いもの。でもね、弱い妖怪や人間はやっぱりそうじゃないと思うのよ。いや、これは美鈴に言われたんだけどね。あの子、『捕食者として人間を襲うより、門番として人間の前に立ちふさがるより、友人として人間と会話してるほうが楽しいんですよね、技の磨き合いもできますし』なんていいだしたのよ?私がこの企画を話した後、だけどね。
まあ、そんなこんなだから、里からは守護者を自称してる半獣を引っ張り出してきて、このパーティについて語りながら一回参加させてみたわけよ。で、結果はこのとおりよ。お山の大将が何かやってるみたいだけど、そんなに内輪で固まってるくらいならうちに来なさい、と伝えておきな』
レミリア氏にしては詳しく語っていただけた方だが、運命操作を持ち出すと『その手もあったか』と非常に悔しげにしていた。その様子からするに、恐らくこのパーティには本当に他意はないらしい。私も安心して飲み比べ大会に参加させて頂いた。(文責・射命丸文 3、22面に関連記事)
「読み終わったかどうかは知らないけど、もうすぐよ?」
結局私が新聞に目を通してる間、私が落ちたり道を間違えないか心配してくれていたらしい。案外律儀な蛍だ。
「なんか失礼なことを考えられてる気もするけど、で、何か持参品の一つや二つくらい持ってきたの?」
「そこはほら、顔パスで」
「・・・ああ、そういえば門番が吹き飛ばされてる、っていう記事も時々見たな・・・。
なるほど、あの方には悪いけどご愁傷様。
でも、周りの人妖に迷惑かけないでよ?流れ弾とか」
「あら、察しがいいのね。まあ、そこは神力よ。妖怪にしか当たらないわ」
私は巻き込まないでね、なんて言ってる弱気な蛍は放置して、門番の下に急降下する。案外早くついたものだ。霧の異変の時はやっぱり最短距離じゃなかったのだろう。
「あら紅白。今日は貴方といえどもただで通すわけにはいかないのよ。
なんといってもお嬢様にとってたいせつな・・・」
「あら、私と殺る気なのかしら?白黒の魔砲ほどじゃないけど、結構破壊力には自信あるのよ?」
「まったまったー!」
「あら蛍」「あらリグル」
「ああ、そういう名前だったわね確か」
「今まで蛍呼ばわりだったのはやっぱりそういう理由か・・・
美鈴さん、私の持参物で巫女も一緒に入れてあげてもらえないかな?
ほら、巫女と言えば、幻想郷一餓えに苦しんでいる・・・」
「ああ・・・、そうね。確かに可哀想になってきたわ。
仕方ないわね紅白、今回は特別措置よ」
途中からひそひそと何を話していたのか、非常に内容が腹立たしいものだった気もするのだが、とりあえず労せずして入れるなら深くは追求するまい、と思った。
「・・・って巫女。
その手紙はお嬢様の使うやつだわ。見せてもらおうかしら」
・・・門番は意外と観察力があるらしい。
っていうか、下っ端の分際で主人の使う便箋の種類までわかるのか?
「私、一応一連のパーティの通知役だから、直接の招待客には手紙を届けに行くのよ」
「私の心を読むな。あと、あんたやっぱりパシリだったのね」
「口に出してたくせに何を言うか。あと、私はれっきとした門番よ・・・、って、この手紙読んだ?」
「全然」
「リグル、貴方の気遣いは結局この巫女の怠慢のせいで消えることになったわ。
紅白、この招待状に『持参物はなしでも通すこと』って私宛に言付あるじゃない。危うくお嬢様に怒られる所だったわ」
「あら、それはそれは。で、その『お嬢様』に会いたいんだけれども?」
「あら失礼。お客様、しかもVIP待遇ならそれもありね、伝令!」
伝令、って昔の戦場での連絡役の呼称じゃなかったかな、と思った瞬間、目の前にメイドが現れた。
「これはこれは、博麗の巫女様。お嬢様がテラスでお待ちですわ。」
・・・滅茶苦茶殺気立った咲夜だった。
「わかったからとりあえずナイフは仕舞って」
「ちっ」
「あら、主人直々に招いた客にそういう扱いでいいのかしら?」
・・・あんまりからかうと本気で『道中で何者かに殺されていたようですわ』なんて扱いにされかねない目だ・・・。
とりあえず渋々ながらナイフを仕舞った咲夜(門番が全力で間に入ってくれたおかげ、なのだが。ちなみに彼女は今咲夜専用のナイフ置き場にされている)の案内でレミリアの元へ向かう。
「ねえ、咲夜。こんなパーティを開いていて紅魔館は大丈夫なの?」
「あら、巫女の方から話しかけていただけるとは光栄ですわ。
しかし、懐事情の心配ならこちらの台詞ですからお気遣い無く」
・・・私を徹底的に『幻想郷の重鎮の博麗の巫女』扱いすることで自我を保ってるらしい。だが、この規模でパーティを何度も開いて実際大丈夫なのだろうか?
「まあ、うちには門番兼雑用兼庭園管理者兼農園経営者がいますのでね。
それに、持参物の山には食材も相当にありますので」
「でも、こんなに頻繁に「あら、つきましたわ。これ以上のお話はお嬢様とお願いいたします」
そう言うと彼女は音も無く消えた。
正直本気で怖いから勘弁して欲しい。
「あら霊夢。来てくれてうれしいわ」
扉を開けると、紅茶を飲んでいるレミリアと、向かいで本を読んでいるパチュリーがいた。
「とりあえず、このパーティそのものをいきなりやめろとはいわないから、本当の理由を教えてもらえないかしら?」
「あら霊夢。ちょっと焦りすぎよ。何の理由かしら?
まだ求婚はしてないはずだけど・・・?」
「そうじゃなくて、パーティを開いて『人間と妖怪の完全な共存』を目指してるとか言ってるらしいけど、そういう表じゃなくて裏の理由よ」
霊夢はちょっとばかりせっかちだと思う。
あまりにせっかちだから、妖怪が何か人間に有利な行動をするとその裏を探りたがる。
幻想郷の妖怪は(私を含めて)確かに単純だから、表と裏だけで大抵はなんとかなる。
だが、八雲や西行寺の様な「裏の裏の裏」まで考えて動いているような連中がこの先増えたらちょっと面倒なことになるんじゃないだろうか。
と、まあそれは今の問題じゃない。
「霊夢、あれは本当の理由よ。表も裏も、あの理由が表面に出るの」
「・・じゃあ、水面下はどうなのよ?」
ここから先はちょっと勇気が要る。しかも、自分の事で運命を視たりいじったりは絶対にしないから、失敗したときが怖い。でも、ここからは直球じゃないと曲がりくねった霊夢の心には届かない。
「・・・霊夢、私のこと好き?」
「何をいきなり「大事なの。確かに貴方は中立を保たなければいけない博麗の巫女かもしれない。でもね、私は、一人の『博麗霊夢』に質問してるのよ?」
レミリアの雰囲気は本気だった。
いつの間にか本を読んでいたはずのパチュリーも居ない。
でも、私の、『博麗霊夢』の意思、なんて言われても困るのだ。
「・・・わからない。
だって、そんなこと考えてもみなかったもの。
私は博麗。幻想郷の規律であり、全てに中立であるものだから」
「そう・・・」
そう。此処までは予想通りなのだ。
パチュリーにも相談したが、霊夢は自分がシステムに組み込まれていることにそこまで疑問を抱いてない。
だから、私はこの行動に出ているのだ。
「霊夢、貴女の答えに不満を持つものが、少なくとも二人、居るわ」
「一人は勿論、この私。当然よね。問いかけたのは私だもの。
で、もう一人は・・・」
「霧雨 魔理沙よ」
「・・・え?」
魔理沙?
「何の関係性があるのよ?」
私じゃなくてもそう思うんじゃなかろうか。
早苗だとか、神奈子だとか、私の巫女としての有り様に不満を持ってる奴ならわかる。
紫の名前が出てきてもここまで驚きはしなかっただろう。
何故?何故魔理沙が?
「霊夢。貴女はわかってない。魔理沙がなんで貴女の傍にいるのか」
「それは、私の傍に居るのが一番退屈しないし楽だって・・・」
「それは『表』よ、霊夢?
普段は裏ばかり読もうとするくせに、魔理沙相手だと違うのね。
まあ、あの子の性格を考えれば仕方ないかもしれないけどね」
じゃあ何故だと言うのか。
「冷静に考えてみなさいな。ウチのパチェやアリスと魔法談義をしているのが一番あの子らしいと思わない?
いや、『あの子』らしいんじゃなくて、人間のまま魔法使いを名乗るあの子にとって最も重要な事。
そして、退屈したら二人と弾幕ごっこだろうが、フランを呼んできて腕試しだろうが、『魔法使い』としてのあの子にはそうやって魔法を研究する方が短い寿命的にも正解。
でもあの子はそうしない。
その理由はね、霊夢。私と同じなのよ」
「貴女に『博麗』じゃなく『霊夢』で居て欲しい、ってこと」
そう。パチュリーと魔理沙の事について話していたときに気がついた。
「魔理沙は『博麗』にこだわらずとも幻想郷の規律を守ることが出来る、と行動で示して見せてるのよ。
少なくとも私はそう思う。パチェも納得するだけの理由付けよ?」
「そんな・・・、そんな馬鹿みたいな理由で危険に身を晒してるの?」
「それこそ馬鹿ね、霊夢。
あの子の行動基準はきっともっと単純よ?
『楽しめてない人間がいる。だったら私が変えてあげなくちゃ』位なもんね、多分」
「そんな・・・。
じゃあ、貴方はどうなのよ?
どんな・・・」
「わかってるでしょ?霊夢。
というより、全てのコマは出揃った。あとは貴女がそれを構成するだけ」
そう。最初からレミリアは言っている。
『幻想郷において、人間と妖怪の完全なる共存を目指す』と。
そして、『私に『博麗』じゃなく『霊夢』で居て欲しい』とも言った。
そして、開かれるパーティ。
「私はね、霊夢。
『『博麗』という均衡を保つ存在が不要な幻想郷の新秩序』を作ろうとしているのよ。
鴉天狗には言ったけど、今の幻想郷は『捕食する妖怪』と『退治する人間』の対立の均衡の中で成立しているわ。その均衡を維持するのが『博麗』であり、全てを俯瞰しているのが『八雲』だと思ってる。
じゃあ、『妖怪』と『人間』が、対立なしで調和すればどうなる?
少なくとも、今みたいに常に中立で均衡を視続ける『博麗』は要らなくなる、と思わない?
そうすれば、貴女は『博麗』の鎖から放され『霊夢』で居られる。私はそう思っているの」
混乱していた。かつて無いほどに。
博麗の存在が不要な新しい幻想郷の新秩序?
妖怪と人間の調和?
馬鹿げてる。そんなことが出来たら、本当に『博麗』なんて無意味じゃないか。
「馬鹿げてる、って思うわよね。
でも、私も一応見た目通りに夢を見てみたいのよ。
一応力は持ってる。だから、夢みたいな事でも、実現してみせるわ」
本当に馬鹿だと思う。
しかも、他人の為?
でも、何故か腹は立たない。
それがなんとなく悔しくて、押されっぱなしのこの会話をなんとかしたくて、聞き返す。
「わかったわよ。好きにしなさいな。
で、あんたのその運命の先には、そんな幻想郷が視えてるの?」
黙りこんだ。今まで視てなかったんだろうか。
「・・・そうね。まだ、すぐにはダメみたい。
でも、私が貴女を迎えても何も変わらない運命が視えたら、すぐにでも迎えに行くわ」
来たときよりはらしくない面持ちで出て行く霊夢。
私は、それを落ち着いた挙措で見送る。
扉が閉じた瞬間、脱力するようにしてくずおれた。
「ま、レミィにしては良くやったんじゃない?」
「パチェ、盗み聞きは品格を落とすよ?」
「あら、誇り高き魔女がそんな薄汚い真似なんかするかしら?」
・・・魔女はどんな御伽話でも薄汚い存在と相場が決まってるじゃないか、とは言わないでおく。
「で、レミィ。やっぱり、本気なの?」
「何が?」
「だから、幻想郷新秩序計画よ。
わかってる?紅白自身を敵に回しかねないのよ?」
「言わないでパチェ。もう私は後ろには引けないの。
人間の言い伝えにあるでしょ?
『引いてダメなら押してみろ』って」
「色々と間違いね・・・。
まあ、頑張りなさい。そろそろ始まるわよ?
最近、八目鰻屋の好評に肖ろうとする輩が増えてて困ってるんだから、少しくらい会場の管理を手伝ってくれてもいいでしょ?」
「何を言ってるのさ。私が手を出すと『配置が斬新過ぎるから却下』って言うのは誰?」
「だってレミィ、流石に人間の屋台を空中に配置するのは無理だわ。そもそも人間は飛べないのよ?」
「色々飛んでるじゃないか。君のご友人とか」
「あの紅白黒の連中は例外」
「わかったよ、善処する」
紅い悪魔は日没と共に宴を開く。
願わくば、鎖に縛られた姫を救わんと。
でも、今宵は、ただ美酒に酔うだけにする。
求める者は、すぐ傍にいるのだから。
ただ、一つ
センター試験が終わってもまだ試験は終わりじゃないよ!
霊夢への愛が感じられます。
ただ、霊夢・レミリア・パチュリーの3人が揃ったシーンからの文章構成に多少の違和感が。
全体として霊夢視点、最後ではレミリア視点で描かれていますが
>霊夢はちょっとばかりせっかちだと思う。
からはじまるくだりは、この前後は霊夢視点であるにも拘らず、レミリア、もしくはそれ以外の第三者の視点にいきなり変わっています。
登場人物視点で描く場合は場面転換を明確に、客観視点で描くならそれを統一した方が、全体として読みやすいものに仕上がると思います。
物書きではない一介の読者ですが、その点は多少気になりました。
今後に期待しています。
あと一つ。
二次試験がんばって!
>文々新聞
文々。新聞
さて、お話は楽しく読ませていただきました。特に前半のキャラ同士の掛け合いや、何気ない行動などが楽しかったです。
ただ、一部の表記にやや問題がありましたので、この場を借りて、私のわかる範囲で指摘させていただきます。
まず三点リーダを多用されていますが、こちらは通常、「……」と二つ並べて使うのが正しい使用法です。
また、「」内のセリフを改行していますが、「」のセリフは途中改行はしない方が一般的です。
また、閉じ括弧( 」 )時に句読点を入れるのは誤りです。(例 ×:「~した。」 ○:「~した」)
今のところ気になったのは以上です。文学部を目指しておられるとのことなので、
やはり最低限の文法は気をつけられたほうが良いと思います。
これからも良い作品を期待しております。長文失礼しました。
ほとんどは後書きで書いてしまったので最後にこちらで一つ(単にコメント機能の使い方がわかってなかっただけ)。
>Seji Murasame 様
問題点のご指摘、ありがとうございます。
やはり普段からの偏食傾向(勿論読書的な意味で)の影響か、会話や無言部分(三点リーダ)の使い方に問題がありましたか。
やはり第三者的な目で見てもらうのは良い経験になる、と痛感いたしました。
今回は(会話もあまりに多いので)会話中の改行、三点リーダ共にこのままとさせていただきます(「作風」ということにしておいてください)が、次回以降修正していきたいな、と思います。
今後とも御指導御鞭撻の程、よろしくお願いします(ちょっと硬すぎますか?)。
レミリアの思いが叶いますように。
あと、コメント内の文法に関するやり取りも参考になりました。
>早苗だとか、加奈子だとか、
神奈子は普通出ないので、これからも投稿されるなら登録した方が良いと思います。
>だが、この
>
>規模でパーティを
変なところで改行が二回入っちゃってます。
では、二次試験頑張って下さい。