巫女が、何か読んでいる。
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霊夢が神社の居間で煎餅を食べていると、縁側に面した障子が開いた。
「お邪魔するぜ、霊夢! お、なんか美味そうな煎餅食ってんな、確か最近、美味い店が人里にできたとか……」
「うるさい」
「え?」
「そのままの意味だけど」
「……なんか私、したか?」
魔理沙は縁側で立ち尽くしており、表情はこわばっている。
「どっか行ってくれるかしら。あんたの声、無駄に大きくて不快なの。もうここには来ないで」
「な……」
魔理沙はがっくりと肩を落とし、神社を後にした。
──次の日──
秋の風が、物寂しく境内に吹いていた。霧雨魔理沙は、玄関に周り、土間の方から人を呼ぶように声を発した。
「霊夢、居るか? 今日はな、おまえに良いもんを持ってきたぜ」
「……」
「れいむ? 開けてもいいか?」
土間と居間とを隔てるのは薄い木製の板戸だった。それを隔てた先に、霊夢が居ないはずがない。
魔理沙は、そっと戸を開こうとした。
「どっか行ってよ!」
「……!」
魔理沙は霊夢の顔を見ることすらできず、扉越しで怒鳴られた。
「昨日はっきりと言ったでしょ。来ないでって」
「……なんだよ霊夢! 私が何かしたか? 何か気に食わないことがあったら言ってくれよ。この美味い酒でも飲みながら話そうぜ?」
「あー。そういうこと」
「鯢吞亭の目が飛び出るほど高い清酒を持ってきたんだぜ。霊夢、入っていいか?」
「物とかじゃないの。もう存在が嫌いなの。だからここにはもう二度と来ないでね」
「…………。あー……。じゃ、酒はここに置いておくからさ、私は帰るぜ」
「それも持って帰って!」
「……。」
風が、吹いている。空をとろとろと飛んでいた魔女は、箒にぶら下げた風呂敷の中の酒瓶を意識し、速度を上げた。
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「ねえ。これ読んでよ」
「ん?」
霊夢は一枚の紙を魔理沙に手渡した。魔理沙は紙面を目で追った。そこには魔理沙が理不尽に霊夢に拒絶され、何の理由もなく絶交される話が書いてあった。
「……なんだこれ。私達の話……か?」
「……そう。気付いたらちゃぶ台の上に置かれてたの」
「誰の仕業だろうな」
「……こんなことするやつは一人しかいない」
「紫だな」
「本当にしょうもないわねえ」
「かまってちゃんなんだよ。あいつは」
二人はくすくすと笑った。
* *
幻想郷の外れの古びた屋敷の一室で、隙間妖怪は、はたから見れば奇妙な姿勢を取っていた。親指と人差し指でわっかを作り、それを眼鏡のジェスチャーのように目に当てているのだ。
ふかふかのクッションに座りながらそんなことをしていると、藍が傍のテーブルに湯呑を置いて言った。
「紫さまは相変わらず趣味が悪いですね」
「……藍は相変わらず尻尾がモフモフね」
「触るの止めてくださいよ。それに話をそらさないでください」
「そうね、お茶を淹れてくれてありがとう」
「そうじゃなくて……。もういいです」
藍は自分の分の茶も淹れると、紫の傍のカーペットの上に足を崩して坐った。
「はあ、人の生活を覗き見て、性格がお悪い……」
「その話は終わったんじゃないの? いま良いところだから、静かにね」
藍はため息をつき、茶を啜った。
* *
「……なあ霊夢」
「どうしたの?」
「おまえはさ、この小説みたいなことにならないよな?」
「なるわけない。何を言ってるのよ」
「そっか、そうだよな。うん、霊夢はそうじゃないよな」
霊夢は、目の前の親友が最悪の想像をして不安になっていることに気付いた。
「もしかして……不安?」
「…………ちょっとだけな。いつかおまえが私を突き放したりしないかって、たまに思うんだよ」
「そんなことしないってば」
「だって! 霊夢の足手まといになってる気がするんだ! 私は霊夢みたいにできないよ……」
堰を切ったように感情が溢れた。酔えどもその発露に自覚的な魔理沙は、酒の影響だけでなく顔を赤らめながら、顔をそむけた。
「ね、魔理沙。こっちをみて」
「う……うん」
霊夢は魔理沙に微笑みかけた。
「ほら、大丈夫」
「うん……」
二人は目を見合わせて、不意に接吻した。
初めは唇と唇とを重ね合わせるだけの愛らしいキスだったはずのその行為が、すぐに熱を帯びていく。
「っ……ちゅ♡……っちゅ♡♡」
互いの存在を溶け合わせて一つにするように、舌を絡め、求め合う。
二人は、日本酒の甘みが幽かに残る唾液を絶えず交換しながら蕩けていった。
* *
「……あらら」
魔法使いが巫女を押し倒したのを見て、隙間妖怪は見るのを止めた。
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霊夢が神社の居間で煎餅を食べていると、縁側に面した障子が開いた。
「お邪魔するぜ、霊夢! お、なんか美味そうな煎餅食ってんな、確か最近、美味い店が人里にできたとか……」
「うるさい」
「え?」
「そのままの意味だけど」
「……なんか私、したか?」
魔理沙は縁側で立ち尽くしており、表情はこわばっている。
「どっか行ってくれるかしら。あんたの声、無駄に大きくて不快なの。もうここには来ないで」
「な……」
魔理沙はがっくりと肩を落とし、神社を後にした。
──次の日──
秋の風が、物寂しく境内に吹いていた。霧雨魔理沙は、玄関に周り、土間の方から人を呼ぶように声を発した。
「霊夢、居るか? 今日はな、おまえに良いもんを持ってきたぜ」
「……」
「れいむ? 開けてもいいか?」
土間と居間とを隔てるのは薄い木製の板戸だった。それを隔てた先に、霊夢が居ないはずがない。
魔理沙は、そっと戸を開こうとした。
「どっか行ってよ!」
「……!」
魔理沙は霊夢の顔を見ることすらできず、扉越しで怒鳴られた。
「昨日はっきりと言ったでしょ。来ないでって」
「……なんだよ霊夢! 私が何かしたか? 何か気に食わないことがあったら言ってくれよ。この美味い酒でも飲みながら話そうぜ?」
「あー。そういうこと」
「鯢吞亭の目が飛び出るほど高い清酒を持ってきたんだぜ。霊夢、入っていいか?」
「物とかじゃないの。もう存在が嫌いなの。だからここにはもう二度と来ないでね」
「…………。あー……。じゃ、酒はここに置いておくからさ、私は帰るぜ」
「それも持って帰って!」
「……。」
風が、吹いている。空をとろとろと飛んでいた魔女は、箒にぶら下げた風呂敷の中の酒瓶を意識し、速度を上げた。
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「ねえ。これ読んでよ」
「ん?」
霊夢は一枚の紙を魔理沙に手渡した。魔理沙は紙面を目で追った。そこには魔理沙が理不尽に霊夢に拒絶され、何の理由もなく絶交される話が書いてあった。
「……なんだこれ。私達の話……か?」
「……そう。気付いたらちゃぶ台の上に置かれてたの」
「誰の仕業だろうな」
「……こんなことするやつは一人しかいない」
「紫だな」
「本当にしょうもないわねえ」
「かまってちゃんなんだよ。あいつは」
二人はくすくすと笑った。
* *
幻想郷の外れの古びた屋敷の一室で、隙間妖怪は、はたから見れば奇妙な姿勢を取っていた。親指と人差し指でわっかを作り、それを眼鏡のジェスチャーのように目に当てているのだ。
ふかふかのクッションに座りながらそんなことをしていると、藍が傍のテーブルに湯呑を置いて言った。
「紫さまは相変わらず趣味が悪いですね」
「……藍は相変わらず尻尾がモフモフね」
「触るの止めてくださいよ。それに話をそらさないでください」
「そうね、お茶を淹れてくれてありがとう」
「そうじゃなくて……。もういいです」
藍は自分の分の茶も淹れると、紫の傍のカーペットの上に足を崩して坐った。
「はあ、人の生活を覗き見て、性格がお悪い……」
「その話は終わったんじゃないの? いま良いところだから、静かにね」
藍はため息をつき、茶を啜った。
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「……なあ霊夢」
「どうしたの?」
「おまえはさ、この小説みたいなことにならないよな?」
「なるわけない。何を言ってるのよ」
「そっか、そうだよな。うん、霊夢はそうじゃないよな」
霊夢は、目の前の親友が最悪の想像をして不安になっていることに気付いた。
「もしかして……不安?」
「…………ちょっとだけな。いつかおまえが私を突き放したりしないかって、たまに思うんだよ」
「そんなことしないってば」
「だって! 霊夢の足手まといになってる気がするんだ! 私は霊夢みたいにできないよ……」
堰を切ったように感情が溢れた。酔えどもその発露に自覚的な魔理沙は、酒の影響だけでなく顔を赤らめながら、顔をそむけた。
「ね、魔理沙。こっちをみて」
「う……うん」
霊夢は魔理沙に微笑みかけた。
「ほら、大丈夫」
「うん……」
二人は目を見合わせて、不意に接吻した。
初めは唇と唇とを重ね合わせるだけの愛らしいキスだったはずのその行為が、すぐに熱を帯びていく。
「っ……ちゅ♡……っちゅ♡♡」
互いの存在を溶け合わせて一つにするように、舌を絡め、求め合う。
二人は、日本酒の甘みが幽かに残る唾液を絶えず交換しながら蕩けていった。
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「……あらら」
魔法使いが巫女を押し倒したのを見て、隙間妖怪は見るのを止めた。