Coolier - 新生・東方創想話

フランドールとスキップ

2026/04/05 02:03:27
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紅魔館の地下には頭が狂ったやつがいる。

それは、それで合ってるんだけどね。「はぁっ」とため息をつきながらフランドールは息を吐く。
人里におけるフランドールの評価について咲夜が聞いた内容だ。
私自身は、その事についてどうでもいいと思っている。
お姉さまはそれについて「私が直接その噂を流したやつに文句をいってやる!」と憤慨しているけれど、どうでも良い。

私は私の狂気についてある程度は理解しているつもりだし、それに対して付き合っていける自信もある。例えば、朝起きた時、狂気の前兆である頭が割れるような痛みがあれば、朝食は妖精に持ってこさせて自室で食べるし、お姉さまとのお茶会も、適当に理由をつけて断れば良い。何事も準備と冷静さがあれば対処できるだ。
だから、「フラン、今日の夜は宴会に行くわよ。もちろんあなたも出席よ。」

お姉さまの強引さにはたまに困る。
昼食を食べている最中、お姉さまがパンを口に頬張りながら言った。口からパンくずを零しながらしゃべっている。汚い。咲夜が口元を拭きながら注意をしている。その光景がちょっとだけ羨ましい。もし変われるとしてもあいつなんかにはなりたくないけど。
「あれ、咲夜なんかフランの方がケーキ大きくない?」
お姉さまが私のケーキと自分のケーキを交互に見ながら言う。こいつ本当に姉か?

「そうでしょうか…お嬢様、私の目には同じに見えますが。失礼ながら見間違いでは?」
「うーん。咲夜が言うならそうなんだろうな。そういえばフラン、宴会には紅魔館から食事も出すから持っていくのを手伝いなさいよ。」
そういいながらレミリアはケーキをフォークで切り取り食べる。

この二人は仲が良いなぁ、と私が思っていると頭の部分にピリッとする痛みがやってきた。ちらっと二人を見ると咲夜が返事を促すようにこちらを見ている。
あぁ、まずいな。頭の痛みが酷くなってきた。狂気の前兆が少し出てる。
「フラン、フラーン、聞いているのー?」
「ああ、分かったわ、お姉さま。夜になったらまた呼んで。」
そういって、残っていたスープを一口で飲み、食器を置いて食堂を出ていく。早めに自室に戻ろう。あぁ何で私は普通に生活できないのだろう。頭の痛みは収まらないのに、考えは嫌に回る。
地下に帰る途中、近くにいた妖精の目を掌に乗せる。ごめんなさい、と心の中で謝りながら目を潰す。
謝るのは、自己満足だ。私が、どれだけ謝っても起こった結果は変わらない。

これは、私の罪悪感を減らすためだけそれだけの行動だ。

私が咲夜ではなく、妖精に食事を持ってこさせるのもこれが理由だ。
抑えることの難しい破壊衝動。これに咲夜を巻き込んでしまったら咲夜は二度と戻らない。それが怖い。
一度、咲夜の目を潰そうとしたことがある。いや、一度だけじゃないのだけれど。ただ、一度だけ本当に一歩手前までいったことがある。

咲夜が私の部屋におもちゃを置きに来たときだ。普通咲夜は私が部屋に居ないときに時間を止めておもちゃを置く。性格も、能力も人であるか疑わしい本当に優秀なメイドだ。その日は珍しく、咲夜が私に断りを入れておもちゃを置きに来た。恐らく能力の調子が悪かったのだろう。
その時だ。お姉さまが大切にしてる咲夜を壊したらどうなるだろう。
あの綺麗な咲夜が破裂する時はどんな顔をするだろう。
もしかしたらこれで衝動が止まるのかもしれない。そう考えていると自然と咲夜の目を掌に集めていた。そうして掌をぼーっと見ていると、いつの間にかお姉さまが私をじーっと見ているのが目に入った。
私は頭から血がスーっと逃げていって、気づいたときには自室から駆け出していた。
お姉さまが私の背中に何かを言っていたが、私には何も聞こえなかった。
ある程度走った後、自分がしようとしていたことに怖くなって、まずは自分の腕を切断した。少し痛かった。それでも足らなくて私は目を見ないように自分の両目を潰した。
暗闇の視界は予想以上に怖かったが目が見えないことに安心した。
そして私は、精神、肉体、両方の疲れにに身を委ねて眠った。

次に目をさましたときは、お姉さまの部屋だった。みんな私を心配していた。いや、恐れていたのかな?私はその時の記憶はあまり覚えていない。覚えていたくない。嫌な記憶を思い出すことは苦痛だ。




昼食が終わり、暇潰しに図書館に行くと珍しくパチェから声をかけてきた。
「ねぇ、レミィ本当にフランをつれていくの?」
パチュリーが本から顔を少し上げながらレミリアに尋ねる。
「ああ、そうだよ。そろそろフランも外の世界と交流させてやりたい。」
椅子に座り、足をぶらぶらさせながらレミリアが答える。ちょっと行儀が悪い。
「フランは本当にそれを望んでいるの?レミィがしていることは、本を読むのが好きな人間を、中で遊ぶより外で遊ぶ方が楽しいだろうと決めつけて、無理矢理外に誘うような行為じゃないの?」
パチュリーはテーブルに本を置き、完全に読書を止めている。ものすごく珍しい光景だ。
「そうかもね。フランは、外との交流を望んでいないかもしれない。紅魔館の中で私たちとたまに遊ぶ程度で良いのかもしれない。それが一番の幸せなのかもしれない。私には、フランの本当の心なんて分からないわ。そう、私がフランを連れ出すのは、私のわがままよ。」
レミリアはそこで、一回息を吐き、ふぅっと空気を吸い込んで続けた。
「でもね、私はそれでもフランには、外と交流してほしいんだ。多分フランは紅魔館の中で遊ぶだけで満足しているだろう。フランは能力のせいか、百の幸せがあっても、自分には十の幸せ以上は望んじゃいけないと思っている。私はそれが、許せないんだ。フランには百の幸せを味わってほしい。」
言い終わると、椅子から立ち上がり図書館に来た理由を思い出すように本を探し始めた。やがて本を見つけたのか満足そうに二冊の本を持って図書館から出ていった。

あーあ遂にこの時間が来てしまった。今は発作が収まっているけど、どうしようか。フランドールの部屋に響くノックの音。フランドールがドアを開けると、目を輝かせている姉と、その隣で子供を見るような目で姉を見ている従者が見える。
「さあ、宴会に行くわよフラン!」
やっぱり断ろう。私はまだ外に出るには不安すぎる。
「今日の宴会、私ってどうしてもいかなくちゃダメ?今日は調子が悪いの。」
あーあ、言っちゃった。お姉さま機嫌悪くするんだろうなぁ。なんで私はいつも他人を不快にするんだろう。

レミリアは途端に真面目な顔をしていう。
「分かったわフラン。じゃあ今日はお留守番していなさい。ただ留守だからって私のプリンは食べちゃダメだからね。それじゃあ行ってくるわ。」
「お姉さま?…ずいぶんあっさりしているのね。てっきり怒るのかと思ったわ」
「どうせ、自分の能力に怯えているのでしょ。それなら仕方ないわ。ただ一言だけ言ってあげる。あなたの狂気は必ずコントロール出来るようになる。この私が約束するわ。このレミリアスカーレットがいうのだから絶対よ。だからそれまでフランのことは、待つことにする。」
そういってレミリアは、フランを見て笑う。
「そうなんだ」
「そうだよ」
そう言うとお姉さまは翼をパタパタ鳴らしながら部屋を出ていった。

余計なお世話なんだよねと軽く小声でいってみたものの私はなんだか心が軽くなったような気がした。私はこんなに愛されているんだ。
フランドールはその日スキップをしながら主のいない紅魔館を闊歩した。

見てくれてありがとうございました
kes
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コメント



0.50簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです