Coolier - 新生・東方創想話

四角い何か

2025/07/20 22:02:17
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その日は何も無い日だった。
春の陽気が暖かく、桜が満開になっていた。
鈴奈庵はいつも通りの貸本業で店内に入ってくるお客の相手をして。
妖魔本を読みながらうつらうつら。
寝そうになっているところにバーン!と大きな音が鳴り響いき、びっくりして本を取り落としそうになりながら目覚めた。
「誰!?」
「私よ、阿求よ!ちょっと小鈴、手伝って!!」
体をグイグイ押してくる阿求。暖かい中走ってきたのだろう、体が熱いようだった。
「待って!用意するから」
「早く早く!外で待ってるわよ」
スタスタ歩いていき、外に出て行った阿求。
よく分からないまま、荷物を纏めて、母に声をかけた。
「阿求が緊急で来て欲しいって言われたから行ってくるね」
「わかったわ。鈴奈庵は私が店番してるわね」
「行ってきまーす」
ガララと引き戸を開けて外にいた阿求に声をかける。
「ほら、来たわよ」
「早く行くわよ!」
パシンと勢いよく手を掴まれて走って行く。
二人で走るのなんて無いから不思議な感覚だ。
とりあえず彼女について行こう。

阿求のお屋敷に着くと玄関先でばあやが困っている様子だ。こちらの視線に気が付くと安心したような目が印象的だった。
「阿求様!急に外に出てはいけませんよ」
「早く小鈴に見て欲しかったから……」
「それでも声をかけてから出てきてください。お願いします」
まさかの無言で出てきたのか、阿求は。
「阿求何してるの??」
「妖魔本に近しいものだったから興奮してしまったのよ……ばあやごめん、次からは声かける」
「そうしてください……。とりあえず上がりましょうか。小鈴さんも上がってください」
「ありがとうございます」
大きなお屋敷に入らせてもらう。

阿求の部屋に通されて、一息ついた。
「阿求が無言でお屋敷抜け出すものって何かしら?」
気をそぞろ、さっそく今回の本題のお話を始める。
阿求は真剣な表情で、風呂敷に包まれた四角い何かを差し出してきた。
「これは……?」
とりあえず受け取り、するりと風呂敷を解く。
四角い何かは黒くつるりとした表面。薄い板みたいだ。手のひらサイズの板。後ろも黒色でザラザラしている質感だ。
「何かしら、これ……?」
始めて見るものなので眉を顰めながらよく観察する。
「これがなにか分からないのだけれど、ここを押すと……」
阿求が四角い何かの側面に着いている突起を押した。
パッと四角いつるりとした面から光が出てきた。
「わっ!?何かしら!?光った?」
「そう!光るのよ!何か書かれているのだけれど、ここを見て」
指を指すと数字が書かれている。よく妖魔本で見た縦の数字だ。ええと……
「1045って書いてあるわ」
「その文字動くのよ」
そう言われて黙って二人で見ていると……。
「あ、動いたわね?6に増えた?」
けっこう面白いモノを阿求は拾ったみたいだ。
「これ触ってみるとどうなるの?」
好奇心で触ってみる。スッと斜めを動かした。すると。
「わ、私たちが写ってる!?」
私も阿求もバッと四角い何かから離れる。
そろりそろりともう一度覗き飲む。
私たちが写っている。2人が覗き込んでいるのが写っているのだ。
「これは……写真?」
「そうかもしれない……?」
二人で頭を抱えながらよく分からないことになってきた。
「ええと……」
見ていると何か丸いものが写っているのが見えた。
「これを……えい!」
パシャ!と何か音が鳴った。
「小鈴!?何したの!」
阿求のあわあわしている姿が面白い。
「あははは!四角いやつの丸いもの押してみたのよ」
「これなの?なにか端の方にも私たちが見えるけれど」
「それなら押してみよう」
トン、端の四角いものを押してみる。
すると、黒い面いっぱいに私たちが映っていた。
髪の毛がすだれのように広がっている。
「外にはこんなものがあるのね」
「こんな外来の物は珍しいけれどね」
私が関心していると、阿求は何かうーんとしている。
「これ、なにかの高級品なのかもしれないわね。写真が撮れるなんて只者じゃないわよ」
「妖魔本ならぬ、妖魔絡繰みたいな?」
「それは、そうかもしれないけれど……」
すごいなと思いながらつるつるの面を見ているとプツンと面が真っ暗になった。
「あら?真っ暗なったわね」
「なにかが無くなっちゃった?」
阿求が押した突起を押しても何も反応はない。
「阿求ー!これもう光らないの?」
「そうかもしれないわ。何かが必要なのかしら?」
2人とも考えても何も分からない。
「これは緊急性あったでしょう?」
ドヤ顔を決める阿求。
「消えたら意味ないじゃないの!」
私は頭を抱えた。
でもこの四角い何かで遊ぶのはおしまいだ。
「あーあ、せっかくの絡繰だったのに」
「仕方ないわね、壊れちゃったんだから」
頷いた。グー、とお腹がなる音がした。
「食事してから帰る?お腹すいたでしょう」
「うん、食べたいけどいいの?」
「今更の仲でしょ!」
いい笑顔の阿求が見れたので良しとしよう。

この四角い何かはきちんとした阿求のお屋敷で保管されることになった。
これで一件落着。
あの四角い何かの中にある小鈴と阿求。
あの二人は永遠に。
タップとかスライドを書けないので代替案考えるの結構楽しかった。
じゅり朱色
[email protected]
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コメント



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3.100南条削除
面白かったです
データとして永遠に保存されるあきゅずすに文脈を感じました
勢いがあってよかったです
4.100名前が無い程度の能力削除
エモかったです