拝啓
地上では夏の日差しがかなり厳しくなっているそうです。
私も気をつけようと思いますが、冥界に住んでいるのでよく分かりません。
さて、地底での暮らしはいかがでしょうか。
冥界はそろそろお盆に入るので繁忙期です。
幻想郷のお盆は七月に行われているので、顕界へ帰る幽霊達は一斉に送り出せるのですが、外の世界のお盆は地域によって八月の初旬や中旬だったりもするので、かなり面倒なのです。
さて、以前に地底でのことを伺いました。
冥界だけでなく、そちらも怨霊達が地上に出たいと訴えてきて、時折目を盗んでは勝手に出ようとしている怨霊もいるとか。
そちらは相手が怨霊だから、当然地上に彼らを出すわけにはいかないでしょう。
我々と違うところですね。
しかし、こちらもおいそれと幽霊達を全て送り出せません。
最初に言っていたことと矛盾にしているように感じますが、実は一回に送り出す数を決めて、地上が飽和状態にならないようにしているのです。
とはいえ、時間に間に合うように四半刻に一度の頻度なのですが。
さりとて、これがなかなかに難しく、早くしてくれと騒ぎ立てる幽霊がいるものです。
そういった者は前回は早めに送り出したので、平等にしていると説明して、引き下がってもらいます。
ですが、幽霊の中には勝手に勘違いをして、家族に会える時間が短くなると煩い者もいたりします。
非常に面倒くさいです。
そのような場合には、妖夢の白楼剣を話に出して、強制的に成仏を早めると脅します。
白楼剣は斬られた者の迷いを断つことが出来、彼らに使えば成仏するのです。
実に便利ですよね。
そういった幽霊達の対応をしていると気付けばあっという間に七月、八月が過ぎていってしまうのです。
暑さを忘れて動き回るので、毎日気付けば汗をかいてしまいます。
まぁ、実際に大量の汗を流しているのは妖夢なのですが。
とはいえ、妖夢一人で対応できるような量ではないですし、幽霊を扱うのは私の方が長けているので、手伝うのは当然のことです。
それ故、私も少々汗をかくことがあり、常に手拭いを持って、いざという時は取り出して首元などを拭きます。
今、何を想像しましたか。
一日が終わった後、黄昏時にお風呂に入ります。
いつも妖夢が頑張っているので、先に入りなさいと言うのですが、「従者たる者、主人より先に湯に浸かるなど」と断ってきます。
そういう時は、一緒に入れば良いわねと言うのですが、顔を真っ赤にして「それはご勘弁を!」と慌てる姿が可愛く、一日の疲れが吹き飛びます。
そんなこんなで何とか妖夢を先にお風呂に入れて、私の入る番です。
かけ湯などで汗を流し、体を洗います。
それから湯船に浸かるのですが、妖夢で癒された後に入るお風呂は格別です。
いつか一緒に温泉に行って、洗いっ子しましょう。
地底の良い温泉を教えてくれると嬉しいですね。
ついでに、美味しい食事と可愛いさとり様もお願いいたします。
一仕事を終えて、お風呂から上がった後の冷たいお茶と羊羹は格別です。
今、格別が二つあると思いましたね。
それが人生の醍醐味です。
何事にも格別の喜びを抱くことで、人生というものは彩りがあり、豊かになっていくのです。
私は死んでいるのですが。
それから夕食まで、涼しくなった縁側でのんびりとします。
ここでは幽霊が淹れてくれた麦茶で温まった体を冷やし、夕食を気長に待ちます。
ここにひぐらしのような音を鳴らす虫がいればより風情があって良いのですが、冥界にはそのような虫はおらず、ただ庭の風景をぼんやりと眺めながら他愛のないことを考えています。
例えば、今度あなたが来た時にはどんなふうに可愛がってあげようとかです。
楽しみにしていてくださいね。
さて、それから夕食をいただくのですが、このところは暑さが続いているため、冷麦や冷たい蕎麦が多いです。
幽霊達に買い出しはできないので、妖夢に合間を見て地上に降りてもらったり、紫を通じてそこの式神に代わりをお願いをしたりするのですが、やはり足りないものです。
さっぱりしたものが続く時にしっかりしたものがくるとこちらもしっかり食べたくなってしまいたくなるので、たまに紫が外の世界の鰻を持ってきてくれるとついつい一日で平らげてしまいそうになります。
妖夢に止められなければ、きっと紫に怒られてしまっています。
そして、今、この手紙を書いているのがお昼を食べた後なのですが、急にお腹が空いてきました。
それから寝間着に着替えて、布団に入るのですが、白玉楼の夏の夜はかなり涼しいので、地上とは全くの別世界です。
ですが、貴方が隣にいない夜は夏でも随分と冷たく感じるものです。
いつからでしょうね、隣に貴方がいなければ心が凪いてしまうようになってしまったのは。
お互いに幻想郷を支える重要な役目があるが故に会えることが少ないというのに。
会いたくなってしまうのは、私が亡霊であるが故の執念深さでしょうか。
それとも、貴方が愛し過ぎるのがいけないのでしょうか。
どちらもあるからなのでしょう。
読み返すとただ忙しい一日を振り返るような日記のようなものになってしまいました。
貴方という愛しい人に知ってもらいたいがため。
そう思ったからこそです。
では、いつかまた会えるであろう晩秋に。
連絡をお待ちしています。
敬具
西行寺 幽々子
拝啓
地底の暑さは地上と比べると正に地獄のようで、定期的に汗を拭わなければ、紙が台無しになってしまいます。
さて、貴方に会えることが叶わず、早二ヶ月が経とうとしています。
以前、お会いした時にいただいた簪の御礼、文にて改めて申し上げます。
大切に使わせていただいています。
地霊殿は貴方の察しの通り、怨霊が地上へ行こうと騒がしく、色々と対応に追われています。
ペット達だけでなく、星熊勇儀を筆頭とした鬼達にも協力してもらって、地上への脱走を阻止しているのですが、中々に上手くいかないため、最近は饕餮尤魔にも嫌々ながら頭を下げています。
みかじめ料を巻き上げられるかと思いましたが、見積もり通りに通してくれたので安堵しています。
おそらく何か裏があるのかと思うような表情をしていましたし、案の定、旧血の池地獄の利権について心が一杯でしたので、釘を刺しておきました。
しかし、向こうも私の能力を知っているのです。
こちらから依頼をしている手前、対価を求めてくるのは当然ですからこちらも強く出られないのです。
あわよくば組の戦力にしようとするところもいただけません。
怨霊は憑依し、人間や妖怪を狂わせます。
それを利用する手段を用いられでもすれば、旧地獄のこの地の存在意義にも関わりかねません。
例年、この時期は忙しいというのに、このような厄介事が増えてしまっては、ますます繁忙期が多くなってしまいます。
あの後戸の神も残された業務を任される側の身にもなってほしいものです。
いきなり愚痴となってしまい、申し訳ございません。
まぁ、お互い様ということで。
最近、嬉しく思うことは妹が徐々に自我を取り戻していることです。
お燐やお空に話を聞いたところ、私が留守にしている時、代わりを務めようと怨霊に対して頑張ってくれているようです。
聞く限りだとここでは認めることもできないほどに色々と関わってくれているようで、姉として嬉しい限りです。
一方で、姉でありながら妹をここまで導くことができなかった悔しさもあります。
もしかすると身内が故に気付けないこともあったのでしょう。
変わった人間達や面霊気のおかげと思えば、姉として友達が増えたことを喜ぶべきなのかもしれません。
私が貴方と知り合えたように。
さて、私も一日の流れを書き連ねたいところですが、生憎、認めているとおり、とにかく大変なので一日があっという間に過ぎていきます。
心を落ち着かせる時間とすれば、お昼休憩、と言いたいところですが、休みも返上で対応に追われるので大変です。
ペット達にも餌を片手に頑張ってもらっています。
貴方ならおそらくお腹を空かせて気絶してしまうでしょう。
冥界は幽霊を地上へ送り出すと束の間の閑散期があるかと思います。
それを書かないのは、貴方なりの優しさだったのでしょう。
しかし、私のような捻くれ者はそれすらも台無しにしてしまうことをお許しください。
覚妖怪は愚かなほどに嘘をつくことができず、哀れなほどに捻くれてしまうのです。
書いているだけでも嫌悪感が喉をせり上がり、吐瀉物となって出ていきそうになります。
それでも、書き続けるのは貴方がそれさえも受け入れてくれると信じる心があるからです。
私は直接相対さなければ心を読むことはできません。
しかし、どうしてでしょう。
貴方の手紙を読んでいると貴方の心の声が聞こえてくるようで、不思議です。
処々でこちらに問いかけるような文は私へ相槌を求めている。
貴方の心にも私という存在が日に日に大きくなり、困惑しているのではないでしょうか。
覚妖怪としての私ならば、良しと思い、貴方へトラウマを植え付けたいと思うところです。
記すということは嘘です。
語ることで騙ることはできないですが、記すことでならできます。
さて、これからも繁忙期は続きますが、私の方は成長した妹やペット達と地底を守り、幻想郷に無駄な混乱を招かないように努めていきます。
そうしなければ、貴方と会える時も減りますからね。
貴方に会いたいという思いは貴方に負けないと思いますよ。
想起する貴方の存在は日に日に大きくなり、そしていつしか夜も眠れずに密かに訪ねたいと思うほどになってしまうのです。
あの地上での偶然の出会いから心を読むことでしかに彩りがなく、白黒だった日常を、華やかにしてくれたのは他でもない貴方なのですから。
晩秋の頃、地上は紅葉が綺麗になっているでしょう。
妖怪の山は非常に良いですよ。
地底に暮らす前は私はあそこで暮らしていました。
徐々に自我を戻してきている妹やペットのお燐曰く、相変わらずの美しさがあるそうです。
お望みであれば、こちらからもお弁当を持参しますね。
お腹を満たすことはできずとも、心を満たすことならお任せください。
さて、そろそろ外が騒がしくなってきました。
また脱走者がいるようです。
まだまだ暑い日が続きますが、共に頑張りましょう。
熱い日を共に過ごせるようにするために。
敬具
古明地 さとり
地上では夏の日差しがかなり厳しくなっているそうです。
私も気をつけようと思いますが、冥界に住んでいるのでよく分かりません。
さて、地底での暮らしはいかがでしょうか。
冥界はそろそろお盆に入るので繁忙期です。
幻想郷のお盆は七月に行われているので、顕界へ帰る幽霊達は一斉に送り出せるのですが、外の世界のお盆は地域によって八月の初旬や中旬だったりもするので、かなり面倒なのです。
さて、以前に地底でのことを伺いました。
冥界だけでなく、そちらも怨霊達が地上に出たいと訴えてきて、時折目を盗んでは勝手に出ようとしている怨霊もいるとか。
そちらは相手が怨霊だから、当然地上に彼らを出すわけにはいかないでしょう。
我々と違うところですね。
しかし、こちらもおいそれと幽霊達を全て送り出せません。
最初に言っていたことと矛盾にしているように感じますが、実は一回に送り出す数を決めて、地上が飽和状態にならないようにしているのです。
とはいえ、時間に間に合うように四半刻に一度の頻度なのですが。
さりとて、これがなかなかに難しく、早くしてくれと騒ぎ立てる幽霊がいるものです。
そういった者は前回は早めに送り出したので、平等にしていると説明して、引き下がってもらいます。
ですが、幽霊の中には勝手に勘違いをして、家族に会える時間が短くなると煩い者もいたりします。
非常に面倒くさいです。
そのような場合には、妖夢の白楼剣を話に出して、強制的に成仏を早めると脅します。
白楼剣は斬られた者の迷いを断つことが出来、彼らに使えば成仏するのです。
実に便利ですよね。
そういった幽霊達の対応をしていると気付けばあっという間に七月、八月が過ぎていってしまうのです。
暑さを忘れて動き回るので、毎日気付けば汗をかいてしまいます。
まぁ、実際に大量の汗を流しているのは妖夢なのですが。
とはいえ、妖夢一人で対応できるような量ではないですし、幽霊を扱うのは私の方が長けているので、手伝うのは当然のことです。
それ故、私も少々汗をかくことがあり、常に手拭いを持って、いざという時は取り出して首元などを拭きます。
今、何を想像しましたか。
一日が終わった後、黄昏時にお風呂に入ります。
いつも妖夢が頑張っているので、先に入りなさいと言うのですが、「従者たる者、主人より先に湯に浸かるなど」と断ってきます。
そういう時は、一緒に入れば良いわねと言うのですが、顔を真っ赤にして「それはご勘弁を!」と慌てる姿が可愛く、一日の疲れが吹き飛びます。
そんなこんなで何とか妖夢を先にお風呂に入れて、私の入る番です。
かけ湯などで汗を流し、体を洗います。
それから湯船に浸かるのですが、妖夢で癒された後に入るお風呂は格別です。
いつか一緒に温泉に行って、洗いっ子しましょう。
地底の良い温泉を教えてくれると嬉しいですね。
ついでに、美味しい食事と可愛いさとり様もお願いいたします。
一仕事を終えて、お風呂から上がった後の冷たいお茶と羊羹は格別です。
今、格別が二つあると思いましたね。
それが人生の醍醐味です。
何事にも格別の喜びを抱くことで、人生というものは彩りがあり、豊かになっていくのです。
私は死んでいるのですが。
それから夕食まで、涼しくなった縁側でのんびりとします。
ここでは幽霊が淹れてくれた麦茶で温まった体を冷やし、夕食を気長に待ちます。
ここにひぐらしのような音を鳴らす虫がいればより風情があって良いのですが、冥界にはそのような虫はおらず、ただ庭の風景をぼんやりと眺めながら他愛のないことを考えています。
例えば、今度あなたが来た時にはどんなふうに可愛がってあげようとかです。
楽しみにしていてくださいね。
さて、それから夕食をいただくのですが、このところは暑さが続いているため、冷麦や冷たい蕎麦が多いです。
幽霊達に買い出しはできないので、妖夢に合間を見て地上に降りてもらったり、紫を通じてそこの式神に代わりをお願いをしたりするのですが、やはり足りないものです。
さっぱりしたものが続く時にしっかりしたものがくるとこちらもしっかり食べたくなってしまいたくなるので、たまに紫が外の世界の鰻を持ってきてくれるとついつい一日で平らげてしまいそうになります。
妖夢に止められなければ、きっと紫に怒られてしまっています。
そして、今、この手紙を書いているのがお昼を食べた後なのですが、急にお腹が空いてきました。
それから寝間着に着替えて、布団に入るのですが、白玉楼の夏の夜はかなり涼しいので、地上とは全くの別世界です。
ですが、貴方が隣にいない夜は夏でも随分と冷たく感じるものです。
いつからでしょうね、隣に貴方がいなければ心が凪いてしまうようになってしまったのは。
お互いに幻想郷を支える重要な役目があるが故に会えることが少ないというのに。
会いたくなってしまうのは、私が亡霊であるが故の執念深さでしょうか。
それとも、貴方が愛し過ぎるのがいけないのでしょうか。
どちらもあるからなのでしょう。
読み返すとただ忙しい一日を振り返るような日記のようなものになってしまいました。
貴方という愛しい人に知ってもらいたいがため。
そう思ったからこそです。
では、いつかまた会えるであろう晩秋に。
連絡をお待ちしています。
敬具
西行寺 幽々子
拝啓
地底の暑さは地上と比べると正に地獄のようで、定期的に汗を拭わなければ、紙が台無しになってしまいます。
さて、貴方に会えることが叶わず、早二ヶ月が経とうとしています。
以前、お会いした時にいただいた簪の御礼、文にて改めて申し上げます。
大切に使わせていただいています。
地霊殿は貴方の察しの通り、怨霊が地上へ行こうと騒がしく、色々と対応に追われています。
ペット達だけでなく、星熊勇儀を筆頭とした鬼達にも協力してもらって、地上への脱走を阻止しているのですが、中々に上手くいかないため、最近は饕餮尤魔にも嫌々ながら頭を下げています。
みかじめ料を巻き上げられるかと思いましたが、見積もり通りに通してくれたので安堵しています。
おそらく何か裏があるのかと思うような表情をしていましたし、案の定、旧血の池地獄の利権について心が一杯でしたので、釘を刺しておきました。
しかし、向こうも私の能力を知っているのです。
こちらから依頼をしている手前、対価を求めてくるのは当然ですからこちらも強く出られないのです。
あわよくば組の戦力にしようとするところもいただけません。
怨霊は憑依し、人間や妖怪を狂わせます。
それを利用する手段を用いられでもすれば、旧地獄のこの地の存在意義にも関わりかねません。
例年、この時期は忙しいというのに、このような厄介事が増えてしまっては、ますます繁忙期が多くなってしまいます。
あの後戸の神も残された業務を任される側の身にもなってほしいものです。
いきなり愚痴となってしまい、申し訳ございません。
まぁ、お互い様ということで。
最近、嬉しく思うことは妹が徐々に自我を取り戻していることです。
お燐やお空に話を聞いたところ、私が留守にしている時、代わりを務めようと怨霊に対して頑張ってくれているようです。
聞く限りだとここでは認めることもできないほどに色々と関わってくれているようで、姉として嬉しい限りです。
一方で、姉でありながら妹をここまで導くことができなかった悔しさもあります。
もしかすると身内が故に気付けないこともあったのでしょう。
変わった人間達や面霊気のおかげと思えば、姉として友達が増えたことを喜ぶべきなのかもしれません。
私が貴方と知り合えたように。
さて、私も一日の流れを書き連ねたいところですが、生憎、認めているとおり、とにかく大変なので一日があっという間に過ぎていきます。
心を落ち着かせる時間とすれば、お昼休憩、と言いたいところですが、休みも返上で対応に追われるので大変です。
ペット達にも餌を片手に頑張ってもらっています。
貴方ならおそらくお腹を空かせて気絶してしまうでしょう。
冥界は幽霊を地上へ送り出すと束の間の閑散期があるかと思います。
それを書かないのは、貴方なりの優しさだったのでしょう。
しかし、私のような捻くれ者はそれすらも台無しにしてしまうことをお許しください。
覚妖怪は愚かなほどに嘘をつくことができず、哀れなほどに捻くれてしまうのです。
書いているだけでも嫌悪感が喉をせり上がり、吐瀉物となって出ていきそうになります。
それでも、書き続けるのは貴方がそれさえも受け入れてくれると信じる心があるからです。
私は直接相対さなければ心を読むことはできません。
しかし、どうしてでしょう。
貴方の手紙を読んでいると貴方の心の声が聞こえてくるようで、不思議です。
処々でこちらに問いかけるような文は私へ相槌を求めている。
貴方の心にも私という存在が日に日に大きくなり、困惑しているのではないでしょうか。
覚妖怪としての私ならば、良しと思い、貴方へトラウマを植え付けたいと思うところです。
記すということは嘘です。
語ることで騙ることはできないですが、記すことでならできます。
さて、これからも繁忙期は続きますが、私の方は成長した妹やペット達と地底を守り、幻想郷に無駄な混乱を招かないように努めていきます。
そうしなければ、貴方と会える時も減りますからね。
貴方に会いたいという思いは貴方に負けないと思いますよ。
想起する貴方の存在は日に日に大きくなり、そしていつしか夜も眠れずに密かに訪ねたいと思うほどになってしまうのです。
あの地上での偶然の出会いから心を読むことでしかに彩りがなく、白黒だった日常を、華やかにしてくれたのは他でもない貴方なのですから。
晩秋の頃、地上は紅葉が綺麗になっているでしょう。
妖怪の山は非常に良いですよ。
地底に暮らす前は私はあそこで暮らしていました。
徐々に自我を戻してきている妹やペットのお燐曰く、相変わらずの美しさがあるそうです。
お望みであれば、こちらからもお弁当を持参しますね。
お腹を満たすことはできずとも、心を満たすことならお任せください。
さて、そろそろ外が騒がしくなってきました。
また脱走者がいるようです。
まだまだ暑い日が続きますが、共に頑張りましょう。
熱い日を共に過ごせるようにするために。
敬具
古明地 さとり
>お腹を満たすことはできずとも、心を満たすことならお任せください。
この言い回しが特に好きです。
手紙の向こうに相手を想像する様が雅でよかったです