彼女[ミスティア・ローレライ]は化け物だ。
初めて彼女の歌声を聴いた時からずっとそう思っていた。
そんな彼女からコンビ結成の打診をされた時も、嬉しさよりも不安が勝っていた。果たして自分なんかに彼女の相方が務まるのか、自分が隣にいることで彼女の格が落ちやしないかと。
彼女は歌手としての顔を持ちながら、その裏では屋台の女将として人間(と妖怪)に料理や酒を格安で振る舞っている。本人曰く、鶏肉食を廃止させるための活動らしい。意識が高い。
そんな彼女は昼間は人里の料理屋で働いている。
お金が必要なわけではないのだが(というか私達妖怪は基本的に金がなくても困らないが)、屋台で出す料理の勉強だったり、人間を観察するのが楽しいらしい。自分だったら労働なんて金を貰ってもやりたくないというのに。
山の神社、麓の神社、人里のお寺。縁日や催し物があれば必ず彼女は店を出す。幻想郷のあちこちに屋台を運ぶのは骨が折れるが、それでも彼女は欠かさず出席する。一度その理由を聞いてみたところ、「応援してほしいなら応援しなきゃ」とのこと。屋台を出して行事を盛り上げるのが彼女なりの応援なのだという。
それにしても、
コミュ力お化けだ。
「ところでー」
彼女が数枚の紙を差し出した。
「これ、新曲なんだけど」
は?
前回の曲を出してから半月も経っていない。その上ほぼ毎日働いてなかったか?いつ書いた?バケモンか?(知ってる)
楽譜に目を通す。2人用の曲。サビは二重唱。どっちがメインでもなく、2人が完全に対等な曲。
……
対等?
私[お前]が?
お前が彼女と対等だって?
そんな資格があると思ってるのか?
思ってないです
私はダメな子です
彼女の隣にいちゃいけないんです
彼女と話しちゃいけないんです
彼女に関わっちゃー
……あ、ダメだ
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
馬鹿でごめんなさい
無能でごめんなさい
怠惰でごめんなさい
涙が止まらない。ダメなのに。
突然泣き出してごめんなさい
困らせちゃってごめんなさい
嗚咽に掻き消され、声にならない。
私は大丈夫です
頭おかしい子じゃないんです
ただちょっと、貴女が眩しすぎるだけなんです
彼女が動いた。
あっ待ってください
ドン引きさせちゃってごめんなさい
すぐ泣き止みますから
だからー
「大丈夫だよ、響子」
そう言って彼女はそっと私の肩を抱き寄せた。
彼女の暖かい体温が伝わってくる。
「大丈夫大丈夫…」
彼女の手が私の頭を優しく撫でる。
彼女の声が脳内に木霊する。
頭が働かない。もう何も考えられない。けれど。
彼女が大丈夫って言ってるのだから、きっと大丈夫なのだろう。
「大丈夫だからね」
ごめんなさい
涙はもうしばらく、止まりそうにありません
初めて彼女の歌声を聴いた時からずっとそう思っていた。
そんな彼女からコンビ結成の打診をされた時も、嬉しさよりも不安が勝っていた。果たして自分なんかに彼女の相方が務まるのか、自分が隣にいることで彼女の格が落ちやしないかと。
彼女は歌手としての顔を持ちながら、その裏では屋台の女将として人間(と妖怪)に料理や酒を格安で振る舞っている。本人曰く、鶏肉食を廃止させるための活動らしい。意識が高い。
そんな彼女は昼間は人里の料理屋で働いている。
お金が必要なわけではないのだが(というか私達妖怪は基本的に金がなくても困らないが)、屋台で出す料理の勉強だったり、人間を観察するのが楽しいらしい。自分だったら労働なんて金を貰ってもやりたくないというのに。
山の神社、麓の神社、人里のお寺。縁日や催し物があれば必ず彼女は店を出す。幻想郷のあちこちに屋台を運ぶのは骨が折れるが、それでも彼女は欠かさず出席する。一度その理由を聞いてみたところ、「応援してほしいなら応援しなきゃ」とのこと。屋台を出して行事を盛り上げるのが彼女なりの応援なのだという。
それにしても、
コミュ力お化けだ。
「ところでー」
彼女が数枚の紙を差し出した。
「これ、新曲なんだけど」
は?
前回の曲を出してから半月も経っていない。その上ほぼ毎日働いてなかったか?いつ書いた?バケモンか?(知ってる)
楽譜に目を通す。2人用の曲。サビは二重唱。どっちがメインでもなく、2人が完全に対等な曲。
……
対等?
私[お前]が?
お前が彼女と対等だって?
そんな資格があると思ってるのか?
思ってないです
私はダメな子です
彼女の隣にいちゃいけないんです
彼女と話しちゃいけないんです
彼女に関わっちゃー
……あ、ダメだ
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
馬鹿でごめんなさい
無能でごめんなさい
怠惰でごめんなさい
涙が止まらない。ダメなのに。
突然泣き出してごめんなさい
困らせちゃってごめんなさい
嗚咽に掻き消され、声にならない。
私は大丈夫です
頭おかしい子じゃないんです
ただちょっと、貴女が眩しすぎるだけなんです
彼女が動いた。
あっ待ってください
ドン引きさせちゃってごめんなさい
すぐ泣き止みますから
だからー
「大丈夫だよ、響子」
そう言って彼女はそっと私の肩を抱き寄せた。
彼女の暖かい体温が伝わってくる。
「大丈夫大丈夫…」
彼女の手が私の頭を優しく撫でる。
彼女の声が脳内に木霊する。
頭が働かない。もう何も考えられない。けれど。
彼女が大丈夫って言ってるのだから、きっと大丈夫なのだろう。
「大丈夫だからね」
ごめんなさい
涙はもうしばらく、止まりそうにありません
「応援してほしいなら応援しなきゃ」というミスティアの考えが強かでよかったです