Coolier - 新生・東方創想話

いつかとおいところで

2025/05/07 23:26:34
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じゃあ明日も遊ぼう!




そう...だね



あした...も...







え...?








ねえ、起きてってば...









もー、あたいをからかってるわけ?起きてよ!









ちょっと...やめてよ...ねえってば....







...








はは...










アハハハハハハ!!!



















フフフ...ここから飛び降りれば...















「...あれ?」

「あたい、何してたんだっけ」

って

イタイ!

「体中が痛い...何なのよ...まあいいや、外は暗いし、おうちに帰って寝よっと」

「はあ〜あ。何か疲れたなあ〜」

「はい、じゃあおやすみー」












ん...



この景色...どこかで...








小川のせせらぎ、鳥の鳴き声、虫の歌。
自然だって死ぬときは死ぬのです。







は!?



「今のって...確か...」

「何であれが夢に出てくるのよ...もう忘れてたのに...」

「はぁ...嫌な気分だわ...どうしよう」

あ...

「そうだ...こんな時間に迷惑かもしれないけど...」















「やっほ。」

「チ、チルノちゃん!?どうしたの?こんな時間に」

「えへへ...何か寝れなくてさ。ごめん、起こしちゃったかな」

「気にしないで。ほら座っていいよ」

「うん...」

チルノは悪い夢を見たせいで寝れないことを、大妖精に話した。
話せば解決する、というわけではないことは分かっている・・・

「...そっかぁ。私はあまり夢とか見ないから、どうすれば治るかは分からないな...せっかく来てくれたのに、ごめんね」

「んーん、実はね、やってほしくて...ほら、昔やってくれたみたいにさ...その...」

「昔?なんだろう...」

「大ちゃんの...お膝にさ...」

あ...

もう、私ったら、チルノちゃんの気持ちがすぐわからないなんて...まだまだ甘いなあ。

「うふふ...『膝まくら』だよね?ほら、おいで」

「そう!それ!さっすが大ちゃ〜ん!」

よほど嬉しいのか、主人の帰りを待っていた飼い猫のように大妖精の膝にダイブする。

「やっぱり大ちゃんのお膝は気持ちいいなあスリスリ」

「はいはい♪いっぱい寝ましょうね」

「大ちゃんありがとう!おやすみ!」

「おやすみ、チルノちゃん」

勢いが凄いなあと思いながらも、それも彼女の可愛いところだ。
その無邪気な可愛いさに、今まで何度助けらてきたか、そんなことを考えながら、自分もゆっくりと目を閉じた。













うぅ...







うあああああああああああああああああああ













チルノちゃん!!!




「はっ!?」

「チルノちゃん...」

「...大ちゃん...あたいまだ治らないみたい...」

結局変わらなかった・・・
親友が膝を貸してくれたというに、それに応えられなかったことが申し訳なくて、下を向くしかなった。

「ごめん、大ちゃん。うるさい声だしちゃって...」

「んーん。それよりもし嫌じゃなければ、どんな悪い夢なのか教えてくれるかな?」

「実はね、思い出なんだ」

「思い出?」

「そう。思い出。いやーな思い出」


いつのことだったか、季節を無視して様々な花が一気に咲き乱れる、そんな異変があった。
妖精であるチルノは当然はしゃいだ。いや、はしゃぎ過ぎだ。
チルノは出会った妖怪や人間とがむしゃらに弾幕勝負をしていた。
そんな中いつの間にか見知らぬ場所に辿り着き、背の高い見慣れない服装の、妖怪なのか何なのかわからない、不思議な雰囲気を放っている者と対峙した。

「その人はエンマ様なんだって。そのエンマ様が言うのよ。あたいが死ぬって」

「そんな...」

「それであたい、何か急に怖くなっちゃって、そしたらアヤっていう天狗が励ましてくれたから、もうそのことは考えないようにしてたんだけど」

「何でかその時のことが何回も夢に出てくるようになっちゃたのよ。そういえば寝る前に体中が痛くなってたっけ」

(え...?)

「あ〜なんでかな〜」

(チルノちゃん...まさか...)

「でもこうやって大ちゃんに言えたからかな?心がスッキリした気がする!あーあ、最初から大ちゃんに言えばよかったんじゃん。ほんと馬鹿馬鹿しいわ。あたいが死ぬわけ無いじゃん!だって妖精だし、サイキョーだし!ねえ、大ちゃん?」

「...」

「大ちゃん?」

「う、うん、そうだね...」

「よおし、今度こそちゃんと寝れる気がする!大ちゃん、もうい一回お膝を貸しておくれ!」

「うん、いいよ。はいどうぞ」

「えへへ、今度こそおやすみ!」

「おやすみ...」





スゥ...スゥ...




今度は良い夢でも見ているのだろうか、さっきまでのことが嘘だったようによだれを垂らして笑っている。
そんなチルノを見たら自分まで嬉しくなり自然と笑顔になってしまう、いつもならそのはずだった。




「ああ...チルノちゃん...」




「チルノちゃん...かわいそうなチルノちゃん...」

私はどうするべきなんだろう

このまま黙ってればいいのかな

でもそれじゃあきっとまた...

チルノちゃんにとっての、本当の幸せは...私がしてあげなくちゃいけないことは...
















「おはよう、チルノちゃん」

「むにゃー、お、大ちゃん先に起きてたんだね」

「良い夢みれた?チルノちゃん」

「そうなのよ!やっぱり大ちゃんに話したおかげだわ〜ありがとう大ちゃん!」

「チルノちゃん、今日は私と一緒に行ってほしいところがあるの。いいかな?」

「もちろんよ!大ちゃんには恩返ししないといけないもんね。さっそくいくわよ!」




ー霧の湖

チルノと大妖精
彼女らにとって当たり前のようで、特別な場所。

「なあーんだ。大ちゃんが来たかったのってここなの?いつも一緒に遊んでるじゃない」

「...そうだね。でも今日は遊ぶんじゃなくて、見てほしいのがあるの」

あそこ、と指を指した方には特に何の変哲もない光景が広がっていた。

「あそこが何なのよ。お花が咲いてるだけじゃない...」

「チルノちゃん、あのお花を見て気になることはない?」

「え?えーっと...」

「何ヶ月か前までは、別の色のお花が咲いてなかったかな...?」

「言われみれば、そうだったような、そうじゃなかったような...」

「チルノちゃん」

大妖精はチルノの片手を両手で優しく包み込む。

「だ、大ちゃん?」

「チルノちゃん、よ〜く聞いて、ね?」

「え...」

「私やチルノちゃんは妖精だから、とてつもなく長い間生きてきた。それこそ自分でももうわからないぐらいに、何十年、何百年も」

「...」

「その間に、きっと数え切れないほどのたくさんの妖精が生まれてきた。だとしたら、この湖だってもっと妖精で溢れてるはずだよね?」

「...大ちゃん」

「きっと、何かが生まれるってことは、別の何かが終わりに向かうってことなんだと思うよ...」

「...やめてよ...大ちゃん」

大妖精はしばらく黙った。こんなことがチルノの助けとなるのか、今でも自分に問い続けていた。

「チルノちゃん...エンマ様の言ってることは本当だったんだよね?何を見たか分からないけど、チルノちゃんはそれを受け入れたくなくて...」

「やめてって言ってるでしょ!!!大ちゃんのバカ!!!」




「それを忘れたくて、思いっきり自分を傷つけようとした」




あぁ...


あああああああああああ




ああああああああああああああああああ








「ごめん、ごめんね。せめて私も一緒にいたら...」

「なんでっ...なんで死ななくちゃいけないのよ...ぐっ...大ちゃん教えてよ...」

何で私はそこにいなかったんだろう。
...いや、自分がいたところで何も変わらなかったかもしれない。

「嫌だ...嫌だよう...大ちゃんっ...!あたいは...ずっとこのまま皆と一緒に生きたいのに...それの何が悪いのよっ!」

自分は泣いちゃダメだ、そう言い聞かせてチルノの背中をさすり続ける。だけどもう限界を迎えていた。
友達を目の前で失う。想像を絶するその恐怖と悲しみにより、親友が心を壊してしまった。挙句の果てに自分の体を・・・
私は、私だけは彼女の心に寄り添わないといけないのに、何もできない情けなさに耐えられなかった。

「嫌だあああああああっ!死にたくないよおおおおおおおお!怖いっ、怖いよおおおおおお!」

救いは...

「チルノちゃん...きっとチルノちゃんは、そのことを本当は忘れちゃいけないって、心のどこかで思ってるんだよ...だから、こんなに苦しんでるんだよ...」

「...忘れちゃ...いけない...?」

たった1日一緒に遊んだだけの、その子が見せた笑顔が、頭の中に蘇った。
胸の奥が少しだけ温かくなった気がした。

「涙が枯れるまで泣いていいんだよ。チルノちゃんも私も、少しずつ、前に進めばいいんだよ」

湖には慟哭が響き続いたが、しばらくしていつもの静かな湖に戻った。
ふもとには、小さな体が二人抱き寄せあっていた。














「よいしょっと。本当にこんなんでいいのかな」

「分からないけど、これでこの子も楽になったんじゃないかな」

「名前ぐらい聞けばよかったな...」

添えられた木の枝にはこう書かれている。

あ た い の し ん ゆ う

「...この子は、幸せだったのかな...」

「きっとそうだよ...だって、チルノちゃんが最後に傍にいてくれたんだもの」

思わずまた泣いてしまいそうだった。だが今回ばかりはなんとか堪えたいと思った。

「ねえ、大ちゃん」

「...?」

「大ちゃんには、最後まであたいが一緒にいてあげる!けど、もし先にあたいが...」

「チルノちゃん、私も最後までチルノちゃんと一緒だよ...」


いつかとおいところで
東方の世界では妖精は不死と明言されています。それをあえて否定しました。気に障る方がいましたら、申し訳ありません。
これだけ科学が進歩しているのに、人間や動物は未だに寿命というものに逆らえません。僕は昨年のある出来事で、その理由が分かったような気がしました。おそらく生命は、次の生命のために、永遠に続いてはならず、自ら終わりに向かわないといけないということなのかもしれません。親や兄弟や友達と、いつかは別れることになるのに、それを分かっていながらダラダラ生きる自分と、自分と同じような方々に、何か響けばと、このお話を書かせて頂きました。きっとチルノなら、死への恐怖も、強さに変えてくれると信じて。
ぷっち
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