Coolier - 新生・東方創想話

人生経験、ってやつ

2025/04/14 08:21:34
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 「そろそろ働こうと思う」
 
 妹が突然そんな事を言うものだから、今日は俗に言う嘘をついてもいい日なのかと思った。しかし、それはもう二週間くらい前に終わっていて、遅刻と呼ぶのにも流石に度を超えていた。引き篭もりがちなせいで日付感覚が喪失していたのでは、なんて妹の不具合も考えたのだけれど、仮に日時を勘違いしていたとて、そんな俗世のイベントに興味がある訳もなかったから、とりあえず本気で言っているのだろうなとは思った。
 
 「え、なんで? 別に貴方を養うくらいは全く問題ない筈だけど」
 「いや、普通にここに居るのに飽きてきたって言うか。別に地下で快適暮らしやるのも良いんだけど、働いた方が暇潰せそうじゃない?」
 「まあ、暇は確かに潰せるけどさ……」
 
 そんなに暇を潰したいのだったら、働く以外にも色々他にあったと思うし、そもそも令嬢なんだから、別に働かなくてもいいのに。まあ確かに、私も別に毎日暇を持て余してる訳だから、何かしら面白い事はないかなーとはずっと思ってはいる。だけれど、結局咲夜の出す料理とか親友のよく分からない実験とかでそれなりの刺激を得てはいるから、この生活を変えようという気は全く無かった。
 そう考えると妹は、私と違って日常の刺激が劇的に少ないのかもしれなかった。地下室にばかりいるから、ただ毎日を浪費してるのに過ぎないのだ。まあ、家から出させないようにしてた身からすると、それは極めて申し訳ない話ではあったのだけれど。
 
 そういう訳で、妹は働きに行ってくると行って家を出てしまった。正直妖怪とは思えないほど真っ当で健全な理由の外出だったので、止める理由も思いつかず、とりあえずちゃんと帰ってはきなよとだけ言った。
 考えてみれば、妹が働くと言い出したのにも何となく心当たりがあった。ここ最近、賢者連中が妹を連れ出して何かしら異変に関わらせていた。一応事前に報告してくれる場合もあれば、事後報告の時もあって、その時には勝手に連れ出した、あの秘神をめちゃくちゃ叱った覚えがある。
 家族の了承も無しに外に連れ出しては、ヤクザとかいうジャパニーズ・マフィアと戦わせてたし、挙げ句の果てには太陽の力を持つ烏とも戦わせていた。もう絶対会わせてはいけない奴ではあるし、本当に大事にならなくて良かったと思う。妹の身も地底も壊滅するリスクがあったのだから、あの摩多羅野郎はもう少し慎重に、ちゃんと計画を練って、それを私達に提案する義務があった。それを怠ったのだから保護者としては怒らざるを得ない。とりあえず一回ブチ切れたら、妹を貸してくれないかという連絡が一応は来るようになったので、自分で何とかしろと返事はしてやっている。
 冷静になって考えみたら、働くって言っても何してくるのかを聞かなかった。もう唐突に、引き篭もりが絶対に言わないワードを言ってきた訳だから、動転してそのまま送り出してしまった。また妹含め各方面が危なくなるような仕事なのだろうか。何かあったら皺寄せが紅魔館に来る事は間違いないし、お願いだから無事に終わって欲しかった。
 
 三、四時間程度したら妹が帰ってきた。普通に家を出る前と変わらない様相ではあったので、何か派手な事をしてきたという事はなさそうだった。
 
 「おかえり。何の仕事してきたの? ほんとに不安だったんだけど」
 「普通に里の飲食店で片付けとか清掃やってきただけだよ」
 「はあ? 何でそんな普通の仕事なのよ。てかそんなすぐ働けるの?」
 
 働くってなったら職場に行って、面接というか何かしらがあるだろう。私だって咲夜が紅魔館で働く時は、少なくとも二人で話したし、自分なりに見極めて招いたのだ。そんな当日に、しかも人間の里の店で妖怪がすんなり働けるのか。
 
 「お姉様知らないの? 今は簡単に働き口見つかるのよ」

 何でも、幻想郷の技術進化は著しく(主に河童のせい)、人間の里はその恩恵を受けて、凄まじい発展を遂げていた。そういえば最近、夜だっていうのにやけに里の方が光ってるなとは思っていたが、もう電気が通ってるらしい。
 それだけでも驚いたが、中でも通信技術? というものが幻想郷全体に普及を見せるほど発達していた。携帯電話なりパソコンなりと、あまり分からないけれど、そういうものを殆どの者が持つようになり、誰とも連絡が取れるようになった。それの応用のようなもので働き口の募集や検索ができるようになったらしい。
 正直全くわからない。私はそういう機械類にはめっぽう弱いのだ。
 
 「人間の里って、外観だけは派手になってたけど、中身の人口が追いついてないのよ。だからどこも人手不足らしいわ。で、このスキマ仕事ってアプリで暇な時間に入れる仕事を探せるのよ」
 「……お姉ちゃんそういう話わからないなあ」
 「あらお姉様、ちょっと遅れているんじゃないの」
 
 妹がどうしてこんなに詳しいのか疑問だったが、パソコンという単語が話に出てきたことで一つ思い出したことがあった。確かに、少し前にパソコンという機械が出たので面白そうだと思って買った事があった。結局いじってみたけどやり方がもう本当に分からなかったし、面白いとも思えなかったので、彼女に譲ったのだった。
 そうして私からパソコンを譲り受けた妹は、どうやらそれを使いこなしていたらしかった。幻想郷内の情報を集め、他人ともやり取りをし、そうしてとうとう働き口すら見つけてしまった。
 
 「えっと、とりあえずその飲食店で働くって事なの?」
 「違うって。まあ今後も働く事はあるだろうけどさ。この時間帯に人手が欲しいって募集をかけてる店に働きに行くんだよ」
 「ああ、そういうことね……」
 
 一気に妹が遠くに行ってしまった様な錯覚を覚えた。自分の知らない事を捲し立てる彼女が何処か別人に思える。いやまあ、元々私には無い感性がある子ではあったけど、ここまで全然分からない奴になるとは思ってもいなかった。
 
 「ちょっと疲れたわ。建前だけど立場を隠して働くってのも気を使うものね」
 「流石に妖怪だってのは隠してはいるんだ……」
 
 
 
 あれから何年か経った。妹は同じ様な生活を続けていた。気が向いたら働きに出て、何時間かしたら帰ってくる。お金はどうしてるかは知らないけれど、あの子が働いて得たものだから、特に何も言わずに任せていた。
 
 「お姉様」
 
 そんな折、妹が声を掛けてきた。またいつもの様にスキマ仕事で見つけたとこで働きに行くのだろうか。あれから勉強して、里の状況やパソコンのアプリだのというのが少し分かってきたのだ。だからこそ、もうあの子の話題に遅れる事はないという自負があった。
 
 「どしたの? また仕事?」
 「私一人暮らしするわ」
 
 はあ、一人暮らしね。
 
 「は? 一人暮らし? ええ?」
 
 耳を疑った。一人暮らし、何でだろう。引き篭もりの癖に、いや、もう引き篭もりでは無くなったけれど、それでも地下の自室自体には満足していた筈だ。それがどうして一人暮らしをするなんて言うのだろう。
 私達の何かに不満があったのだろうか、確かに最近パチェの実験が失敗して紅魔館が水浸しになったし、咲夜が私に出す筈だった毒入り紅茶をいや、もしかしたら遊び心かもしれないけれど、まあそれを間違えてあの子に出して、割と普通に怒られてたなんて出来事があったけれど、それでも紅魔館が嫌いになるような事では無いだろう。日常の中のほんの小さなハプニングに過ぎなかった筈だ。いや、でもそういうのが積み重なってっていうのもあるかもしれないし、何より本人がずっと不満を感じていたのかもしれない。そうであったら気付けなくて申し訳ないという話ではあるのだが、でもやっぱり此処の事を嫌いになって欲しくなんかないよ。
 
 「仕事決まったの。定職だから、毎日この家から通うのだとめんどくさくて、近場に引っ越す事にしたわ」
 「ええ、ああ、そう? えっと、就職おめでとう……、いや待って。いつ決まったのよ。そんな素振りなかったじゃない!」
 
 紅魔館の事が嫌いになったとかじゃなくて一安心したのも束の間、またまた訳の分からない理由が飛んできて私の情緒は妹のそれ以上に不安定になっていた。定職に就くだって? 吸血鬼が? 何なのだそれは。馴染むのにも程がある。というか前々から言ってはいたけれど、一応良家ではあるのだから、働く必要がある程金に困ってる訳ではないのだ。わざわざ暇潰しの為なら働くとかいうよりも別の事でもいいのに、我が妹ながら本当に何を考えているのか分からなくなってきた。
 
 「スキマ仕事でちょくちょく入ってる職場があったんだけど、そこで社員として働かないかって言われたのよね。昼間の出勤出来ないから断ろうとしたんだけれど、割と働き方自由らしくてさ、夜勤だけで良いみたいなんだよね。条件も良さそうだから決めちゃったわ」
 「ああ、そういうことね……」
 
 ともかく、妹は就職する旨を紅魔館の皆に伝えた後、さっさと荷物をまとめて出ていってしまった。いつの間にか新居についても既に決めていたらしい。本当に一度決めたらやたら行動が早いとつくづく思う。
 引っ越しの為の費用なんかは、今まで働いて稼いだお金で完全に賄えたらしい。元々暇潰しの為に働いていた訳だから、物欲も大して無くて、ずっと貯金でもしていたのだろう。
 一応荷物を取りに何度か紅魔館の方に帰るとは言っていたので、彼女の部屋はそのままにしておいた。とりあえず、咲夜に地下室の掃除をするように命じていたのだが、話を聞くと咲夜は妹が引っ越す事を事前に聞いていたらしい。てっきりもう知ってるものだと思ってました、なんて言われたから、それはもう悲しくなってしまった。まあ、咲夜も偶然引っ越しの準備をしている現場に居合わせたとかで、別に誰に対しても当日まで伝えるつもりは無かったみたいだった。それにしたって、もっと早く伝えて欲しいけれど。
 
 荷物を取りに何度か紅魔館を訪れた後、この荷物で最後だから、また気が向いたら帰ってくると言って、妹は暫く帰らなくなった。二回目の訪問の時に引っ越し先の住所と電話番号を教えてくれたから、最低限連絡は取らせてくれるみたいだった。
 そこまで邪険に扱われていなそうで一先ずは安堵していたが、職場で暴れたりだとかのトラブルを起こさないかが不安だったので、ちょくちょく咲夜を偵察に行かせては報告を聞くという事を何度か繰り返した。五、六回あたりの偵察後の報告を聞き終わった後、突然家の固定電話がなったので出てみたら、妹が鬱陶しいから咲夜を寄越すなと怒ってきた。ちょっと過保護だったかなと反省した。
 報告を聞くに、とりあえず変に目立つ事もなく、普通に職場に馴染めているみたいだった。元々何度かスキマ仕事で働きに行っている職場でもあったし馴染みやすかったのだと思う。新居での生活も普通に自炊してるし、うちから仕送りで送る血液パックも使ってくれているみたいで、上手く順応出来ているようだった。
 ここ数年で驚く程成長というか自立というか、とりあえず言動に変化が見られる訳で、姉の私としては些か困惑気味ではあった。しかし、それはそれとしてあの子が上手く外に馴染めているのはとても喜ばしい事ではあった。反対に私自身は段々と彼女に置いて行かれているような気もしているのだが。
 
 
 妹が紅魔館を出てからまた数年が経った。もう殆ど帰ってこなくはなったが、それでも年に数回程度は帰省してきて、地下室に引き篭もり、何かしらをしてまた自分の家へと帰って行った。妹が引っ越した当初は、紅魔館に妹が居ないという事実に寂しさを感じてはいたが、元々毎日顔を合わせるような生活はしていなかったし、慣れてしまえば、別に以前と変わらない当たり前の暮らしであった。
 そんな折に、妹から電話が掛かってきた。毎年の帰省の時期でもないし何用だろうと思って電話に出ると、今度結婚するから相手を連れて来るという連絡だった。私は結婚とかいう妹から確実に出てこなそうな単語を聞いた事で頭の中の全てが白飛びしてしまった。
 
 「そういう訳でお姉様、今度相手と一緒にそっちに帰るから宜しく」
 「ええ、ああ、うん」
 
 私は衝撃で呆けていたのだが、辛うじて咲夜に事の顛末を説明する事が出来た。話を聞いた咲夜は眼を見開いた後、しみじみと感慨に耽りだし、私の間の抜けた顔を横目で見るとクスリと笑った。
 
 「お嬢様、色々と抜かされちゃいましたね」
 「うるせえ」
 
 
 私の放心は三日三晩続いたが、そのせいで心の準備が全く出来ないまま、妹が結婚相手を連れてくる日になってしまった。相応しくない奴なら紅魔館総出でぶちのめしてやろうとも思ったのだが、逆に言うと妹が結婚相手として認めた者がどんなものなのかも大変な興味があった。とりあえず、紅魔館に着いたらしい妹と結婚相手を咲夜に応接室まで案内させた。私は事前に部屋で待っており、正直かなり緊張しながら二人が来るのを待ち侘びていた。だって、あの子が結婚するってのも未だに信じられないし、そもそもとして義理の弟になるかもしれない奴と会うってのが何とも形容し難い気持ちにさせられる。
 廊下から三人分の足音が聞こえ、部屋の前で音が止まった。いよいよ来ると思って覚悟を決めた。
 
 「お姉様ただいまー」
 「……おかえりなさい」
 
 扉が開かれて早々に、そんな空気の読めない軽薄な声が飛んできた。普通に家に帰ってきたみたいな調子のその声を聞き、私は今まで緊張していたのが馬鹿らしくなった。
 
 「あんたねえ、もうちょっと神妙な面持ちとかで入ってきなさいよ。こっちも結婚っていうんだから真剣に考えてるのよ」
 「別に良いのに、そんな固くならなくても」
 「結婚てのも契約の一つでしょうが。悪魔にとっちゃそれなりに大事なことでしょうよ」
 
 思っていた以上に軽い感じで来られたものだから、つい呆れてしまった。まあしかし、それはそれとして大事なのは妹の相手だ。私には妹が相応しい相手を選べているのか確かめる義務があり、彼女の保護者としての責務を全うしなくてはならない。
 わたしは意を決して、妹の横に立つ、恐らくその結婚相手と思われる者を見た。どうかまともな奴であるようにと願って視線を送ると、そこに立っていたのはただの人間の男だった。
 
 「え、あんたあれ、ただの人間じゃないの」
 「そうよ。ただの人間」
 
 今日は一体何度驚けば良いんだろう。正直何処をどう見ても私達妖怪の餌にされるような普通の人間で、何処にも妹が気に入るようは面白味は感じられなかった。とうとう妹がとち狂ったと思った。確かに私に仕えてる咲夜も人間ではあるけど、目の前の男とは違ってめちゃくちゃ面白いし、遊び相手にもなるし、もう出来が全くと言って良いほど違う。あの男は、何の力を感じる訳でもないし、なんか妹好みのイカれ具合とかもなさそうだし、とにかく普通の奴だった。
 私はこいつの何処が良かったの、と妹に聞くと、知り合ってから結婚に至るまでの経緯を聞いた。正直それも普通だった。なんかありきたりな職場恋愛みたいな話だった。妹がすごい惚気まくって話すとかだったら気持ち悪くて聞くのをやめたけど、なんか普通にさらさらと喋るものだから最後まで聞き入ってしまった。別に面白い話では無かった。まあでも、悪い奴じゃなさそうってのが分かったので、正直毒気を抜かれてこっちとしても別に良いかって思ったので、結婚を認める事にした。悪魔と結婚する癖に悪い奴じゃないのもどうかと思うけど、妹の方も悪い奴ではなくなってる気がして、何というかちょっとつまらないなとも思った。普段は大人しいけど手のかかる奴だった妹が、丸くなってるのを感じて少し虚しさに近いような寂しさを覚えた。
 
 妹は、そのまま籍を入れた。式を挙げると里に形式上隠していた妖怪なのが大体的にバレそうだからやらなかった。流石に式を挙げないのは何だか可哀想に思ったが、二人は納得しているらしく、外野があれこれ言うのも違うので、二人の良いようにさせた。
 一応私には義理の弟が出来たということで、まあ家族ではあるのだから、二人とも紅魔館に住まないかと誘ってはみたけど、職場から遠くなるからいいと断られた。案外二人だけの時間が欲しいのかもしれなかった。それでもたまに妹は帰ってきてくれたし、義弟の方も何だかんだ来てくれることは多かった。相変わらず義弟は私の好きな人間達と比べて面白い訳でも無かったけれど、別に嫌いな事も無かったので、それなりの関係は築けたと思った。
 
 
 妹が結婚してから何十年か経ったある日、ふと連絡が来た。義弟が死んだらしかった。人間にしては良い歳まで生きていたから寿命だろうなと思った。義弟の弔いは里で行われるらしかった。私は身分を隠すという行為がそこまで好きではなくて、里に近づく事をあまりしなかった。だけれど、今日という日はそういう訳にも行かなかった。家族が死んだ日であったから。
 咲夜と共に現地に着くと、妹も居た。妹は一言来てくれてありがとうと感謝を述べると、義弟の弔いに参加しに行った。私達も後に続き、そうして一日を終えた。
 妹曰く、適度に転職を繰り返していたとの事だったが、義弟の晩年には仕事を辞めて残った貯蓄で余生を共に過ごしたらしい。何だかんだ一緒にいる時間は悪くなかったとぽつりと呟いた。妹は泣いていた。
 
 
 家を引き払い、妹は紅魔館に帰ってきた。何十年ぶりか、また妹と暮らせるのを嬉しく思った。が、それも束の間妹はまた引き篭もりに戻ってしまった。家事はとっくに覚えたなんて言ってた筈なのに一切やらなくなったから、流石にまだ落ち込んでるのかと思ったて聞いてみたのだが、帰ってきた答えは、家事なんて面倒だからやらないに越した事はないと返ってきた。何十年とやってきた訳だから、そりゃあもう説得力の塊で、寧ろそんな面倒な事をずっと咲夜にやらせてる事にもう大変な罪悪感すらも感じた。
 何というか妹は本当に以前のような感じに戻ってしまった。引き篭もっては、たまに運動と称して暴れてみたりと、また尖り出してきた。彼女にとってはこの数十年間は、やっぱりあくまで暇潰しだったらしい。私達にとっての数十年というのはまあ確かにそのレベルだなとは思う。
 けれども、姉である私を差し置いて、就職、結婚、死別とかいう人間が人生で体験し得る重要なライフイベントを思いっきり経験してる訳で、何というか、もう保護者を名乗っちゃいけないような気がしていた。咲夜にもお嬢様も結婚なされてみれば、とか揶揄われる時あるし、パチェに至っては、暇潰しで魔法をせがまれるのも面倒だから貴方も働いてみれば、とか言われる。
 もう妹に人生経験ってやつで確実に負けてるのが悔しくなってきたから、私も人間のフリして人間の一生分の、いやそれじゃあ、同程度だから、その倍くらいの人生経験を積んで姉の威厳を見せてやろうかなと思う。
 家主が百年以上も、ちょくちょく帰るとはいえ、家を空けるのはちょっと憚れる気もするけれど、結局と言って私がそんな取り急ぎでする事なんて、この幻想郷には大して無いだろうから、暫くはみんなに任せて、盛大な暇潰しをしてきてやろうかなと、今はとにかくその事だけを考えている。

 
 
趣味 人間の人生体験
めそふ
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コメント



0.100簡易評価
1.90ローファル削除
面白かったです。
フランドールが人間の一生分ぐらいの経験をした上で元の自分に戻るのが、なんともいえない切なさを感じました。
(多分時間軸的に)咲夜の寿命も近付いてきている中レミリアが今後をどう過ごすのか等も含め、色々考えさせられました。
2.90相月八舞兎削除
すごく現実味のあるストーリーだった、フランが送る人生を淡々と実況するレミリアの心情は穏やかでは無さそうだけど負けずに頑張って欲しい
3.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
4.90福哭傀のクロ削除
発達した人里を見て結構未来の話なのかと思えば、咲夜が出てきて少し先くらいの話なのかなと思ってでも咲夜が全く死なないから時代わかんねえな!!でも咲夜さんなら仕方ないか!って変な納得がありました。
吸血鬼の一生を物差しにすれば、一夏の思い出くらいのものなんだろうけど、いつの日かたまに思い出したりするんだろうなーとかなんだかちょっとだけしんみりしました
6.100名前が無い程度の能力削除
良かったです。なんというか友達とかが結婚したりしてると漠然と差を感じますよね。
8.100名前が無い程度の能力削除
はえーすっごいこんな事を語るのは何だかなあって気がするのですが、今の紅魔館の設定でなければ書けない上で、後の紅魔館としても無い感じなんだろうなあというのが、なんだかどストライクです。
9.100東ノ目削除
作中でフランは人間の一生分の人生経験を積んでるのに寿命差のせいで職業体験くらいの空気感になってるのが人妖の差を上手く活かしてきたなと思いました
10.100名前が無い程度の能力削除
飄々とした語り口と、そこから滲み出る吸血鬼の人外アトモスフィアがすごくマッチした作品でした。時が経っても頑張って姉であろうとするレミリアに、案外フランも救われているのかもしれません。
ご馳走様でした。面白かったです。
11.100南条削除
面白かったです
飄々としてとらえどころが無いフランでしたが、夫の葬式で涙を見せる一面もあってじんわりとした感慨がありました
フランにとっては短い時間だったのかもしれませんが、それでも大切な時間だったのだとわかりました
困惑しつつも対抗しようか迷っているレミリアもよかったです
12.90竹者削除
よかったです
13.90名前が無い程度の能力削除
おそらく主人公が人間だったらものすごく平凡でなにもおもしろくない人生として、姉が妹の「人生経験ごっこ」を語る、という構図が面白かったです。フラン視点だとおそらくありきたりな人生じゃないんでしょうけど、傍観者に徹していたレミリアはそれを描くことができない。
14.80名前が無い程度の能力削除
ああ無常