Coolier - 新生・東方創想話

こはよきところなり

2025/03/27 07:30:21
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 人並み以上に長生きしているつもりだけど、この路地に身を落ち着けたのは最近のことだ。路地とはなにか。人里の、運河沿いを挟んだ、最下流のあたりだ。自分で勝手につけた地名だが、なんでもいい。迷い人や無宿者が流れ着いて集落を作っている場所だ。本来は名前など無かった。
 そのほとりで人を焼いて過ごした。もちろん娯楽としてではなく、死者の処理を請け負う仕事としてだ。顧客からは、有難いと気味悪いとで二:八くらいの視線を当然のごとく受けたけれど、あまり気にせず燃焼による有機物の急激な変化を観察し続けた。それを見つめるのが気持ちの落ち着く時間だったのは認めるしかない。
 最近と述べたけれども、自分の時間の尺度はいささか調子が狂っているようなので、そうした生活をしつつ、百数十年から数百年くらい経っていたのではないか。言っている事が曖昧すぎると文句を言われそうだが、しょうがない。当時は自分の存在を確かなものとして保証してくれるものがあまりに少なすぎた。そもそも、生きる原動力とでも言うべきものがあの仇の女しかいなかったし、あいつだけが自分の存在の担保だった。

 でも、この話にあの女は出てこないんだよな。一切。

 別の女性が出てくる。当時は先生なんて呼んでいた。今でもたまに先生扱いして差し上げているけれど、この頃のはニュアンスがちょっと違っている。なんだかわけのわからん言動で煙に巻いてくる、教養はありそうだけど頭のおかしい奴くらいの皮肉で、先生呼ばわりしていただけだったから。
 こんなことがあった。
 あるとき、飯を食べるのもなんとなく億劫になる、不死の怠けもの特有のあの時期がやってきて、私は桑の木の下でくたばっていた。そこを通りがかった先生が、食物を分けてくれた。口移しで。
 ほんのわずかな食物を噛みくだいて、ほとんど唾液と変わらないくらいの濃度に希釈して、そのまま口から口へ、どろどろのものとして流し込まれた時は、餓死寸前の朦朧とした意識の中でも、マジかこいつという気持ちになった。今でも思い出すたびになっている。
 多少意識が落ち着いて、どうしてそんな事をしたのかと尋ねると、先生は色々な古典を引いて、人に施すという事をぐちゃぐちゃ教えてきた。たとえば、晋の霊公の時代、宰相趙盾が桑の木の下の餓人に食を恵んだ話なんか、ごちゃごちゃ。
 ぐちゃぐちゃ、ごちゃごちゃ。
 ありがたい話はすべて聞き流してしまったが、そういう扱いを受けるにふさわしい風体を、当時の先生はしていた。服というよりはぼろ切れのような布は裾が擦り切れて垢じみて、しかも身の丈が合っていなくて足首が見えている。乱れた蓬髪には砂埃がちらついて潤いがない。手指は黄色くも青黒くも見える不健康な色に覆われ、爪の間に汚れが見えた。足先も同様。そしてむくんだ瞼の重みに潰された、どんよりした眼差しが、愚鈍な牛を思い起こさせる。かさかさに乾ききった唇の周りに、ちらちらと浮いている産毛は長らく手入れしておらず、その連想を更に後押ししてきた。
「……それはともかくとして、今あなたに死なれると困る」
「どおして」
「今すぐ、死体を家ごと焼いて欲しいから。そこの、川外れのあばら家。疫病でね。家族みんな」
 そんな先生が、ある日突然、身なりをがらりと変えてしまった。口の端の産毛を抜いて、紅を指し、その気になればいつでもそうできたと言わんばかりに、眼もとを涼しげに、ぱっちり。もちろん爪は切り揃えているし、髪も梳かして、皮膚病でもありそうなかさかさした上っ面まで、みずみずしく清潔なふうになった。服装もきちんとしたものになっていたけれど、これはどこかの古箪笥にしまいこんでいたものなのか、ちょっと古びた本のにおいがした。
 古書のにおいがするのは今も変わらないか。
 ともかく、それまで浮浪者のように路地をうろつき回っていた先生は、たった一夜にして、後の、誰もが知る上白沢慧音になっていたわけなのよ。
「稗田さんちの新しい娘さんに会ってきました」
 と、それが全てを説明してくれるといった調子で、慧音は言った。
「なかなか利口そうな子でしたよ」
 そう、と興味なさげに相槌を打つしかない。稗田の云々がこの郷の長者の家格であるくらいは知っているが、そうした猿女君の裔がどうだろうと、興味がない。気になるのは、慧音の急な変転についてだ。
「……今後は彼女とも繁く付き合わなくちゃいけないからね」
 こっちの疑わしげな視線を察したのか、彼女はそう説明した。あやしげな話だが、おかしくはない。路地の住人も、いつまでも集落からのはぐれ者だったり、よそ者であり続ける事は難しい。そこがこの土地の不思議な特色といえるもので、線引きされているものがあったとしても、拒絶まではされていなかった。なので、流れ着いた当初はそうして分け隔てられている人々も、やがてなんとなく人里一般と交わって、溶け込んでしまうのが常だ。
 彼女もその一人になってしまうのだろうなと思った。

 慧音は相変わらず路地に入り浸り続けた。
「今日は暇そうだな。手伝え」
 ある時、私の無い袖を引っ張って、路地の中の家々を巡った。
「やがて、夏ほどに、御阿礼の子の七つのお祝いがある」
 彼女は私にそう説明した。
「そうしたイベントごとにかこつけて、ここに住んでいる人々にも本格的に人里に組み込まれてもらわなければならない」
 そんな形の人里の再編は、数十年から百数十年くらいのスパンで、たびたび行われる事のようだった。結界の外から迷い込んで定住する外来人はけっして少なくなく、それが人里と接続してはいるものの、精神的にはなんとなく隔てられた、独自のコミュニティを形成してしまう事も珍しくはない。路地もそうして膨れ上がった、良性腫瘍のような集落の一つで、いずれは処置の必要な部分でもあるというわけだった。
「つまり稗田さんちの娘さんからの仰せ使いかい」
「まあね。でも悪い事ではない。別に何かに急かされるように変わるわけでもない。今まで通りだよ」
 これがこの郷のゆるいところでもこわいところでもあって、今後も何事もなく今まで通りのはずだが、確実に私たちとあなたたちは同一であるという承認がなされたようなきっかけがあって、以後の路地の住人と人里とは、間違いなく徐々に溶けて混ざっていったのだ。

 そういう時期の話だ。数年後、人里の外でなんやかやあって、この土地の人間と妖怪のありようが、まったく変わっちゃったのはよく知られている通りなんだけど、私はその時期の詳しい事はよく知らない。みんなの方がご存じだろう。……というのも、その数年間の私は、しばらく人里から離れて、迷いの竹林に潜伏する羽目になっちゃったから。
 この頃は、私だってある程度の精神的距離を置きつつも、この土地でそれなりに人に交わって暮らす事ができた。いま思えば、慧音と路地の存在が、そういうふうに私と人間社会を結びつけてくれていたような気もする。同時に、この奇妙な人間社会が妖怪たちに脅かされてもいたから、事があれば陰ながら(当時は表立って切った張ったするような気分ではなかった)命でも捨ててやるか、なんて、ちょっとした侠的な心持ちさえ持っていた……ここで言う侠ってのは、今日的なやくざ者のようなアレじゃなくてね。慧音がよく話にしていたやつ。
「その行動は常に必ずしも正義に従わないかもしれぬが、しかしその言うことはいつも真実で、その行為は決断が早く、約束した以上は必ず実行し、身の安全を忘れて他人の救援に駆けつけるから、これは生命を賭しての仕事である。しかも手柄話を一切せず、人に恩を着せたような素ぶりを少しも見せぬから、それだけでもこの世の中で尊敬さるべき存在だ」
 史記の遊侠列伝にある言葉らしい。
「世の中そればっかりでも困りものだが、そういう非常の人間が歴史を旋回させる事もあってだ……」
 まあ、そういう者になれるかどうかはともかく、当時の私にも、そういうちょっと浮ついた気持ちがあったのは確かだ。慧音にうまく乗せられただけとも言えるけれど……けれど、当時の私たちは、そうしたスタンスさえ覆さなきゃならなくなった。つまり、妖怪と戦うわけじゃなくって、人間同士のごたごたに巻き込まれちゃったわけ。
 いや、彼らを人間と言っていいのかすらわからんのだけれども、そこはお互い様だろう。

 先にも述べた御阿礼の子の七つのお祝いは、いつの間にか盛大な催事へと膨れ上がりつつあって、当日になれば人里の往来には出店が立ち並び、酒が振る舞われて、また仮設される舞台では、音楽や演劇といった演し物がやられて、ただ一人の人のための祝いがされるような、大きな計画へと発展していっていた。
「私たちも、なにか言祝ぎでもしてやろうかな?」
 と、慧音は私を能とも狂言ともつかぬ謡すらいない二人きりの演劇に誘ってきて、嫌がる私をなだめすかし、里外れの廃寺の講堂で練習を始めるまでにこぎつけた――そして、初めての練習だけで、この話は立ち消えになった。最初からそういうつもりだったのだろう。
「“そしてなによりめでたい事には”……あの家にはもぐらが紛れ込んでいるらしい」
 高砂やら老松やらやっている時に、急に鬼とか蛇のたぐいが乱入してきたような感じだったが、私は動じなかった。当時の先生には、衒いというか、しょうがない性分というべきか、こういうところもあったから。
「……そうか。よくある事だね」
 これがまた本当によくある事で、私もこの土地に流れ着くまでに、色々と自棄になったり無気力になったりあの女の足取りを追ったりまた自棄になったりを繰り返していくうち、多少なり妖怪退治の手管を学んできたりしたわけなのだけれど、そうして時折目にしてきたのが、妖怪退治を生業にしている人々の家系に、妖怪の血が混じっているのではないか、といった疑惑だった。
 この手の疑惑が提示されるのは、なにもおかしな事ではない。彼らは妖怪を退治する。その中で、たとえ敵対という形でも、ほど近い関係にならざるを得ない。そもそも退治といっても本気の殺し合いになってしまえばその先には絶滅戦争しかなくて、誰もそこまでは望んじゃいない。ただ両者の間に一線を引き、利害関係こそあっても互いを尊重していれば、それで構わないのだ。それができなかった妖怪退治屋や妖怪たちは、勝手に滅んじゃったわけだし。
 だから両者の力関係が拮抗した瞬間、必然的に微温的ななまぬるい交流が、どのような世界でも発生する。しかもこの交わりは致命的な破局が無い限りは長期にわたって、人間にとっては幾代も代替わりを経ながら続く事が約束されている。人間の寿命は、数十年から長くても百年前後と短い。この点では多くの妖怪が人間を凌駕している。そして人間側は代替わりによって時には方針の転換が起こり得る。そのために、長命の妖怪が短命の人間側に混乱を与えるとすれば、たいてい代替わりのタイミングだ――とも人間は考える。たとえ当の妖怪にそのつもりが無くとも。互いを尊重しようと努力しても、こうした齟齬によって起こる猜疑心の誘惑は強い。
 人間ばかりが妖怪に対して猜疑をつのらせるだけでは収まらない。悲しいことに猜疑が猜疑だけではなかった場合もある。
 私はそういったものもたくさん見てきた。
「……だけど、慎重に動けよ」
 言える事はそれだけだった。
「もちろん。疑惑はあくまで疑惑でしかないし、あの娘(阿求の事だ)はとても賢い。だからお家内部の問題は、呑みこむ事にしてもらった。私たちは、個々人では犠牲と出血を強いられる事が多かったが、種族としては常に彼らに勝利し続けた。逆に彼らは、個人としては私たちを圧倒しても、種族としては必然のように先細り続けている。なんの問題もないだろう」
 この “私たち”は“人間”と、“彼ら”は“妖怪”と換言できる。
「人間は、個々人では犠牲と出血を強いられる事が多かったが、種族としては常に妖怪に勝利し続けた。逆に妖怪は、個人としては人間を圧倒しても、種族としては必然のように先細り続けている。なんの問題もないだろう」と、慧音はそう言った。
 事実そうなのだろう。彼女がぼそぼそと講義のように弁じるのを、私はじっと聞いた。
「妖怪が人間の血脈に混乱をもたらす方法は様々にあるが、最も優れた戦略は、積極的に交雑してその血を穢し、貶める事だ。しかし、人間側もこれに対策を張る事は可能だ。人間の寿命は短いが、それだけに世代の回転は速い。積極的に種をばら蒔くような無茶をするならともかく――無茶な話に決まっている。そうした行動に出た妖怪は、よほどの正統性を得なければ、種族内の封建的力学によってかえって同族の反感を買い、よってたかって叩き潰されるだけだ――またたく間に妖怪の血は薄まり、希釈されてしまう。稗田の家の某にちょっとくらい妖怪の血が混じったとしても、それを問題とする輩がいなければ、なにも問題ない。だが家の地下に潜んでいるもぐらはともかく、もぐら叩きがいる事が問題なんだな」
「もぐら叩き?」
「秘密結社がある。種族主義、人間主義、原理主義の」
「穏やかじゃないわね」
「しかも私がその結社の指導者だ」

 やがて日が暮れた。寂れた講堂の中も薄暗くなって、私たちは互いの顔もわからないくらいになる。そこに人がやってきた。
「縁起の編纂準備の邪魔になるからと人払いさせて、こっそり忍んできました。時間はさほどありません」
 そう言ったのは、他でもない九代目御阿礼の子、稗田阿求だ。
「……ここでその、結社の会合が行われていたのですね」
「この薄暗さの中でね。結社のリーダーは……えー、匿名性を重んじていた。そのために結社のメンバーにもその正体は知られていない」
「あなたでしょう」
「……ちょっと前まで浮浪者のようななりをして人里をほっつき歩いていた女が、当のリーダーだとは、誰も思うまい」
「しかも最近かなりのイメチェンをしましたしね」
 暗闇の中で少女がふっと微笑むのがわかる。
「……みんな、今のさわやかで清潔なあなたを積極的に受け入れて、以前のあなたの事を急速に忘れつつあります。やがて覚えているのは私だけになる」
 阿求の言を聞いて、私もかつての彼女の姿を覚えておいてやろうと思っていたが、最近どうも自信が無くなってきている。
「ところで……」
 と、小さな人影は私の方に視線を向けたような気がした。彼女は意外と夜目がきくのか――それともこの暗闇の、わずかな陰影の違いも完璧に記憶してしまっているためか――、私の少しの存在感にも敏感だった。
「そこの人は、いかに」
「そう」
 私も同じことを考えていた。
「私の役目はなんだ?」
「この世界の危うさに対する答えを、おそらく持っている方だ」
「手短にお願いします」
「大丈夫。すべてはひとつの質問をするだけで事足りる――お前は何者だ? 人間なのか? と」
「……それどういう意味?」
「もっと言うなら、この場にいる三人全員が、同じ質問を受けるべきだ。“お前は何者だ? 人間なのか?”ってね。……私は人間ではない」
 慧音はさらりと言ってのけた。
「かといって完全に妖怪でもない……なんだか物事の例外として置かれているらしい。でも、ここで告白させてもらうと、自認としてはほぼ人間らしい。白沢になってしまうのも、満月の夜だけだからだろうね。ひと月の内ひと晩だけの妖怪なんて、ほとんど妖怪ではないに等しい……じゃあなんで私は人間ではないんだ?」
 私は、阿求らしい影の方にかぶりを振った。これは穏やかじゃない、危険な質問だ、そう思った。
「あなたも人間ではない可能性だってあるよ、稗田阿求」
「……家祖の稗田阿一は、この地に流れ着いて土着していく中で、先にこの土地にいた者たちと積極的に交わっていきました。たしかに、それが今ではいわゆる妖怪だとか、そうして呼びならわされている存在の、原初の姿の一つだった可能性はあります」
「かつては、様々なものが未だ定まりきっていない上古の時代。彼らと我々との境目は、非常に曖昧だったようだからな」
 慧音は相手の弁を引き継いで、呟くように言った。
「人にも妖怪にもなりきれない私としては、色々思うところがあるんだが……今もその境界は非常に曖昧なのではないか?」
「……その考えは危険です」
「わかってる」
 阿求の声は湿っぽく震えていて、慧音の声は確固たるものを持っているように、がらんどうの中に響いた。
「正しいか正しくないかはともかくとして、この考え方は一度でも植え付けられるのさえ危険だ、そういうものだ。人里の統制を守る側となれば、できればそういう事は考えて欲しくない――違うかい?」
「あなたは恐ろしい事を言う人ですね」
 私なんかはもう聞かなかった事にして、黙ってこの場から出ていきたいくらいだった。
「……結社の起こりは、元々から人里に住んでいた人間たちによる、ルーツの探求だった。けれど、やがて外来人によって画期が起こった――妹紅がぶらついているあたりに定住し始めた人々だね」
「え、そうなの?」
「彼らの多くは探求心に富んでいて、恐れ知らずで、そしてなにより、わからない事を知ろうともしない里の人間を軽んじているからな。実際、そうした外来人の一派は実証主義的な手法を用いて結社内で研究成果を上げてきた。ために、活動はどんどん体系的に、洗練されつつある。やがてはこの里の人間が、厳密には純粋な人間ではないという結論にも辿り着くだろう」
「……それ、まずいんじゃないの?」
「まずい。まずいからこそ、私が結社のリーダーとして制御する必要があった」慧音は、ひとつ大きなため息をしてから続けた。「……事の起こりは数年前。人里である流行が起きた。それが自分たちのルーツを求める運動だった。――以前からそうした物事を探究する動き自体はあったけれど、普通なら人里の知識層に限定されている学究でもあった。それが大きな流れになるきっかけは、九代目御阿礼の子の生誕だ」
「私ですか?」
「そう。幻想郷でも由緒ある家の、めでたい継承者の出現は、この郷の歴史や自分たちの源流なんかまったく興味が無いような里人にとっても、少しは刺激になる出来事だったらしい……もっとも、たいていは自分の家の蔵の中から古ぼけた怪げな系図を取り出してきて、自分のところの祖先はこれこれこうで、あんたところと何代前に養子を出したり嫁いだり……といった話をするだけのものだったが、百人に一人くらいは、それだけで飽き足らない者も出てくる」
「してみると、あなたが身を隠しつつ結社を立ち上げたのは、ある種のガス抜き目的だった」
「ああ。私は彼らの探求心を肯定したいけれど、それだけに彼らが危うい領域にたやすく足を踏みいれてしまいかねない事も知っている。手綱は握っておく必要があった。彼らが“お前ら人里の連中は、千年かけてちょくちょくと妖怪と交雑してきたらしくて、だからもはや実態として人間であるかすらあやしい”など言ったところで、なにも良い事は無い。起こるのはただの……喧嘩だ」
 慧音はちょっと言葉を選んだようだが、あえて戦争とは言わなかった。
 阿求も口を開いた。
「……そこまで積極的な差別は起こらないと思いますが、彼らがそうした結論を得てしまった場合、今後人里と距離を置くという事は考えられますね。それは危機をもたらすでしょうし、絶対に避けなければならない」
「なんで?」
「そりゃあまあ、人里内に混じりゆく妖怪の血を薄めるには、里の人間だけで婚姻を回転させるわけにはいかないからな」と慧音は言った。「どうしても、外からやってきた人間が必要になる――結界の外の人間世界だって、外の世界に生存している妖怪の影響を多少なり受けている者もいるだろうが、それでもきわめて薄いものなのは間違いない。そうした彼らに純血主義者になられてしまうと困るんだよ――人里の人間にとっても、そしておそらく山野に潜む妖怪たちにとっても」
「ですね、連中も困るでしょう。そうしたことが極まった末、何が起こるかというと……そうか、人里の妖怪化でしょうかね」
 阿求がぼそりと言った。無意識だろうが、服の袖かなにかを神経質にいじっている雰囲気もあった。
「考えた事もありませんでしたが、たしかに彼らにとってもまずい。この郷の最も生産性の高い地域に、最も結束が強く、最大の人口を有する大勢力が出現する事になります」
「私に言わせれば、それこそが正しい推移の気もするが」
 慧音が、少し考え込むように言った。
「……しかし、あなたは人間でありたいんだろう、阿求ちゃん」
「ありたいもなにも、私は人間です」
 少女はきっぱりと言った。それから、なぜか私に向かって尋ねた。
「……ところで、この人は結局なんなんですか?」
「そこなんだよ」
 慧音は苦笑いしながら言った。
「君はもうちょっとめそめそ葛藤すると思っていたんだけどな。堂々と答えてしまったせいで、彼女の役割は宙ぶらりんになっちゃった――ところで妹紅、君は人間なのか?」
(じゃあ結局、私いらなかったんだ?)と思いつつ、私はむっつり答えた。
「失敬な。あたしゃ人間だよ」

 先もわからぬ暗闇でも、阿求が道を違えず(やっぱり記憶力がすごいとすごい)戻っていった後で、慧音は闇の中でじっと丸まったまま、言った。
「さて……状況はなにひとつ好転していないが、ともかく方針は決定した。君たちは人間だ。どうする?」
「私に聞くんだ?」
 私無関係だよ?
「その“私無関係だよ?”って空気を出すのはいいが、君とて無関係ではないからな?」
 慧音は私の心を見透かしたように言ってから、くっくと笑った。
「外来人たちの一部は人里と距離を置いているが、やがては人里に編入される必要がある。それは君のような、所属のわからない人間だって一緒だ」
「あー……そうか」
 自分の立場なんか考えてもみなかった。
「まあ、君の問題より、私は私の問題の方が大変なんだな」
「それなら私もわかる。秘密結社にどう始末をつけるか――必要な要件はなんだろう?」
「……君は私の問題に首を突っ込んでくるのかい」
「それが私の人里との関係の持ち方だ。今、そう決めた」
 私たちはさびれたお堂の板敷きの上で、腰を下ろして小さくなりながら話し合った。

 半月後、秘密結社に異例の会合があった。異例というのは、普段なら会合は朔の前後あたりに行われていたかららしい。境内にあらかじめ引いてある細い綱をたどって、暗闇の中をようやく講堂に辿り着いて出席するというような、密やかで儀式的なプロセスをともなって始まるはずの結社の会合は、この夜は初めて満月の下に行われた。
 月の光がこぼれ差す下で会した結社の一同は、居心地が悪そうだ。私もその座の中に、初めての出席者にもかかわらず、しれっと混じっている。
 結社の指導者は現れない。
「……まだ来ないの?」
 と、焦れた誰かが言った。私は訳知り顔に答えてやった。
「来られないんだろう。なんせ化けの皮が剥がれた」
 事情を知っている様子の私に一座の注目が集まり、ざわめきがあったが、私はしばらく黙ったままだった。
「そもそもこれ、誰の発議なのよ」
 ぶつくさ言う声が聞こえる。さっきの声と同じような気がした。私は答えて言う。
「私だ。たしかにこんな……お祭りの準備も忙しい時分にお集まりいただいて、本当に迷惑をかけるわ。しかし重要な、緊急を要する会合よ」
 稗田阿求の七つをお祝いするお祭りは、準備の忙しさといったものを飛び越えて、その前夜祭そのものといった雰囲気になっている。
「さっきも言ったように――」
「待て」
 外は月の光で眩しいくらいで、そんな講堂の入り口からやってきた慧音の出現は、能楽の仕手が橋掛かりを歩いてくるようにゆるゆるとした、奇妙に場を支配する動きだった。一歩一歩、すり足で、その異形の姿を引きずってきている。服というよりはぼろ切れのような布は裾が擦り切れて垢じみて、しかも身の丈が合っていなくて足首が見えている。乱れた蓬髪には砂埃がちらついて潤いがない。手指は黄色くも青黒くも見える不健康な色に覆われ、爪の間に汚れが見えた。足先も同様。そしてむくんだ瞼の重みに潰された、どんよりした眼差しが、愚鈍な牛を思い起こさせる。かさかさに乾ききった唇の周りに、ちらちらと浮いている産毛は長らく手入れしておらず、天衝くような二本の角とともに、その連想を更に後押ししてきた。
 だあれも、この鬼女を慧音と認識する者はいない。だって、私でさえ、上白沢慧音って、いつも身なりを整えていて、目上にも目下にも礼儀正しく、博学で、半分妖怪だけれども里の人間と分け隔てなく交流している……最初からそういう人物だったような気がしてしまうのだ。この場に出現した醜い妖女と彼女とを、同一人物だと指摘する方が毀損であり、憚られる事だった。
「……さて」
 完全に一座の支配者となった彼女は、ようやく吐き捨てるように言った。
「騙された気分はどうだい?」

 場のイニシアチブとは、一本のおそろしく長い天秤棒の両端のようなもので、けっして一個人だけでは握れない。他の誰かが何かを言う前に、私がこの場のもう一方の力点を握る必要があった。
「とぉっても胸糞が悪いわ!」
 だからそのような事を叫んだ。真っ先に叫んだために、私は一同の代弁者のようになった。なんの正当な理由もなく、感情的にわめいているだけにもかかわらず。
「最初から私たちを騙していたんでしょ! 最初から! 自分たちの原点を探るだなんだと言って、みんなの好奇心を煽って、それが必ず、悪い方向へ向かうものだとわかっていたでしょうに!」
「騙すつもりはなかったよ」
 慧音は、不思議にしおらしくしていた。
「……ただ、人間たちにも自信を取り戻してもらいたかっただけよ」
「自信?」
「博麗大結界以降、我々妖怪も、安定した現状に怠け、だらけきった姿になる者が多かった」
 と、ここで妖怪たちの弱みを見せるのが慧音の策略。連中の弱みなんか、見せるだけ見せてやればいい。それにしても、彼女の弁は、地の底を這うような情念があって、本当に何かが憑りついてしまったみたい。
「私はこうした堕落を許せなかった。結局のところ、私たちはひとつところに引き籠って、安寧を貪るだけになってしまっていただけだ――しかし、それは人間たちも悪い」
「あー?」
 またしても、誰より声を張り上げる必要がある。対話の主導権を他に握らせてはいけない。
「私たちの、普通に生きているだけのどこが悪いって言うのよ」
「あなたたちの先祖は、かつては高名な僧や、神職や、また陰陽師だった。闇に蠢く妖を鎮め、退治して、民衆の不安を取り除く者たちだった」
 それはただの伝説であったり、神話であったりしたろうけど。……でも、実際、この里のちょっと古い家には、気軽にそういう家系がちょくちょくと残っていたらしいのは事実だ。
 嘘は事実から作るのが一番だからね。
「……それなのにこの体たらくはなんだろう。あなたがたもまた、妖怪が腑抜けるのを良しとして、現状に甘んじる事にした」
 ここも慧音の巧妙なところで、妖怪たちがあくまで先の原因であるという前提だけは、人間たちに対して崩していない。こんなどちらも手を出しかねている状況だと、どちらが原因とか、そういうのは無いだろ。ただ、空気がそういう感じになって、両者ともその雰囲気に呑まれただけだ。
 慧音――妖怪側も声を荒げる必要があるが、場を人間原理的なものに持ち込みたいから、それはある程度抑制されている。
「私は、あなたたちに妖怪に対抗できるほどの祖先を、再発見して欲しかっただけだ。そのために、君たちにルーツを探らせた。自分たちの出自に誇りを持って欲しいから」
 ものすごい理由だが、真実味はある。それ以上に一番真実味が無いのは、妖怪や、妖怪と人間の中間物や、なにより私のような不死の存在だろ。
「……別に、私はお前らが腑抜けようが、構わないのだけれど?」
「私たちは困るのだ」
 この表明自体は、以降、妖怪側の公式見解として常に言われている事だ。慧音は人里にあり続けながら、山野にある妖怪たちの実情を、そこまで理解していた。人が主で妖が従であるという原則は、たとえ建前であってもずっと維持されている――いや、そのバランスが一番崩れかけたのがこの時期だったんだろう。
 同時に、その事実をここまで情けなく表明する事で、真実を覆い隠しもした。この世界の人間がもはや人間とは言えないならば、妖怪だって妖怪ではいられないはずだ。自分たちはあり方を歪められ、変化させられつつも、自分たちはきっとそうであろうと信じ続ける事で魂をそこに固着させなければいけないのだろうな、と思った。
 まあ、それに、なんというか、こういう感想が適当なのかわかんないけど、別にさ、それでいいじゃん。私が死ねないのに人間でも、慧音が人なのかなんだかよくわからん半分こでも、自分たちが何者であるかは、自分たちで決めればいい。
(後年、藤原妹紅は完全憑依の異変において二ッ岩マミゾウと組んだ時、こうした感想を、ふと思い出すように再考させられる事があった。この化け狸の旦那は結界の外からやってきた者で、昔ながらの妖怪として、幻想郷の変わってしまった妖怪たちを明らかに軽んじていたのだ。……でも、とも妹紅は思うのだ。彼女とて変質している。昔ながらの、本来の妖怪を自認して定義の中にいようとする時点で、彼女だってもう本当の昔ながらも本来もわからなくなりはじめているのだ。――当人がそこに気がついているのかどうか、尋ねるのはさすがに止しておいた)

 で、結社の会合は続いている。が、先ほどまでの勢いは無くなっていた。慧音が演じる鬼女は、既に言うべき事は全て言い、その場にうずくまって、内向的に、なにかぶつぶつと呟いていた。
 やはりここでも会話の主導権を取らなければならない。
「……なんで黙っているのよ」
 ここは感情たっぷり、情念深く。若干メロドラマ調に。人間と妖怪の関係を、私と慧音が作った構図に置き換えて、卑近で矮小にしていかなければいけない。
「話は聞いてやったわ。そっちに事情があったのもわかる。でも、なんと言おうと、あんたは妖怪よ。私たちを――いいや、みんなが騙されたつもりは無くても、私を騙した」
「それはもう個人的な問題になってくるな」
 だが、事は個人的な問題にはとどまらないだろう。なぜなら彼女は妖怪で、私は人間だからだ。なぜなら妖怪は人間の敵だからだ。だからこの里の人間は戦い続け、妖怪とだけではなく、“お前は何者だ? 人間なのか?”という問いかけに立ち向かい続ける。……この人里の人間は一見するとおそろしく鈍感で純真と言えるくらい無知な人々だけれど、こうした状況では、それすらも彼らの力になりえる。人里はおそろしくしたたかな者たちの勢力とも言えた。
「個人的……そう、個人的な問題か」
 私は呟くように言った。
「……それじゃあ、やらなきゃいけない事は一つしかないわね」
 すなわち決闘。

 そこから先、言葉は必要なかった。
 機先を制したのは私の方で、相手に向かって暗器の小刀を投げつけたところから、大立ち回りが始まる。攻撃のタイミングは、互いの呼吸の回数によって決まっていて、慧音はそれを難なく飛びすさって避けた。第二撃、第三撃も同様。完全に取り決め通りだ。
 その後は、攻撃を控えた。慧音が一座の外周をぐるりと周るように逃走しかけたので、下手に手を出せなかったのだ。
 周囲は、この決闘にくちばしを挟んでいいものか、それすらはかりかねていた。その間に、慧音の体は講堂の外の、いっぱいの月の光の中に飛び出していて、私は少し遅れながら、まぶしいばかりの世界に身を曝した。
 境内の追いかけっこは、奇妙な影絵になっていた。私たちはちょっと楽しみさえしながら、この場を駆け抜けていった。それから往来を上っていくうち、月の白々しい光は祭りの前夜の活気に、暖かな灯かりに変わっていった。私たちは人ごみの中を、子供のように駆けていったと思う。やっている事の性質上、笑ってしまってはまずいとも思ったが、客観的にはどうだっただろうか。
 まあ、どうせ笑っていたとしても狂気的な笑みだっただろうけど。
 やがて、舞台に行き着く。御阿礼の子の七つのお祝いのお祭りのために作られた、仮設ステージだ。明日には音楽だとか奉納の舞いだとか演劇だとか、とにかく稗田阿求を祝うために、様々な有志が、その舞台に立ってくれると思う。
 それを血で穢すわけにはいかないので、慧音もそこは素通りしていく。
 駆け抜けに駆け抜けて、路地の最下流あたりの河原までやってきた。いつも私が焼き場にしているあたり。
「……ここでいい。ここで決めよう」
 慧音がくるりと振り返って、私に相対した――と、頭上から別の女の声が降りてくる。その、さっきから聞き覚えのある声が言った。
「あくびの出るような追い物でしたけれども、最後だけは見届けてあげますよ」
 こうした天狗のような連中が、秘密結社の構成員に紛れ込んでいる事は、慧音もかねてから察知していた。こいつだけが追いついてくれるだろう事も、予想通りだ。天狗はこの決闘を止めない。止めるわけがない。今やすっかり腑抜けてしまった妖怪たちの中でも、現状に思うところはあるだろう。自分たちがおそれられるためなら、こんな茶番だって積極的に支援してくれる。
 決闘の結果、慧音演じる妖怪は、私の心臓を抉り取る。

 結社のありようはがらりと変わるだろう。外来人に人間と妖怪の対立関係の印象を植え付けて、もとからの里人には更に根深いものにさせる。やがて人里の再編が始まるだろう。路地は消滅し、外来人の血は里に吸収されるだろう。それまでの時間稼ぎさえできれば、それでよかった。
 ただ、私たちにとっても予想外だったのは、それから数年の間に、幻想郷そのもののありようが、がらりと変わってしまった事だった。
 悪い変化ではなかったと思う。博麗霊夢や霧雨魔理沙のような連中は、この世界に今こそ必要だった。もはや人が妖怪以上に妖怪らしく、妖怪が人以上に人らしくなってしまって、誰も線引きが行えなくなった世界で、あいつらは誰も彼もぶん殴る事で「私らがあんたたちを認めて、解釈して、受容してあげる」という、まったくもって身勝手な決定を下し続けた(たぶん、当人らはそこまでエモくは考えてなかっただろうけど、形式としてはそういう事になってしまった)。彼女たちの裁定にははっきりした定義など無く、いっそ定義などくれてやったら全てがむなしくなってしまう。霊夢や魔理沙だって、本当は人間かどうかあやしいものだもの――でも彼女たちは間違いなく人間だろう。人間だって信じ続けているから。
 それはそれでいいんじゃないかな。周囲もみんなそう承認した……承認するしかなくなったわけだし。

 一度は死んだ事になった方がいい私は、しばらく竹林に潜伏する事にした。たまに慧音がやってきて、色々の最新情報を持ってきてくれた。けれど、その後の秘密結社がどうなったのかは、特に興味がない。とりあえず慧音がこの秘密組織の活動から足抜けできて、もっと別の活動を自由にできるようになったのだけが本当だ。
「……寺子屋の先生なんか始めたんだ?」
「なぜか阿求にも驚かれたけど、私ってそんなに向いてなさそうかな……」
「いやまあ、どうだろう……根は真面目だからな。いけすかないディレッタントみたいなところさえ矯正したら、いい先生になりそう」
「なかなか使える助言に感謝しかないよ」
 むっつりと膨れながら慧音は言った。以来、私の助言には従っているようだけれど、講義は相変わらずぐちゃぐちゃ、ごちゃごちゃ式らしい。
「少なくとも、引き合いに出すのが春秋左史からっていうのはよくないな。私なんか、正直そんなもの全然覚えてないもの」
「だって、好きなんだよ。趙盾の逸話に出てくる翳桑餓人が。飢えている時に食を恵まれた、そのたった一つの施しだけで、命を惜しまず恩人を守った。そうした物語の典型だからな」
 また、なんだか言い訳めいたことをぶつくさ言い始める慧音。
 ……まあ、私の命なんか幾つでもあるからいいんだけどね。
タイトルは「ここは良いところですぜ」くらいのアレです。(二回目)
かはつるみ
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
2.80名前が無い程度の能力削除
幻想郷って、全員が全員(自覚の有無はともかく)芝居の役者みたいな立ち回りを演じてるよなって改めて思いました。その象徴としての2人の小芝居があったということで。
3.90ローファル削除
二人の関係性が初めて見た形のお話だったので読んでいて新鮮に感じました。
面白かったです。
4.90福哭傀のクロ削除
幻想郷の人間の血に妖怪が混ざっているかもしれないの下りは面白いなとも思ったし、結局2人で舞台で喜劇を演じているのはなんか好きでした
5.90のくた削除
慧音と妹紅の関係もさることながら、霊夢と魔理沙の立ち位置の解釈が好きです
6.100夏後冬前削除
この慧音と妹紅の儀式的な立ち回りが実に幻想郷的で膝を打ちました。マジで面白い。
7.100南条削除
とても面白かったです
人里の人間の血筋という考えの及ばなかったことにスポットライトが当てられており読んでいて新鮮でした
幻想郷も歴史長いんだからそうなってもおかしくないということを改めて思い知りました
素晴らしかったです
8.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。秩序の維持のための暗躍というか、そういった政の部分に人間とは?という問いかけがあって良かったです。
9.90東ノ目削除
幻想郷の人里であっても政の一つの側面は民草に納得を与えるための芝居であるということに乾いた笑いも出つつ、阿求含めた里の「普通の」人が人間であるということに当然疑問を持っていなかったのでそこを問いかけてくる着眼点に新鮮さを覚えました。面白かったです