Coolier - 新生・東方創想話

にとまりラヂオ

2025/01/20 14:52:06
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「~~~てなわけで今回のふつおた一通目はこちらだよ。
 ラヂオネーム【ぺんぺんぐさ】さんから、『こんにちは、いつも楽しく聞いています。
 最近、同僚の話を聞くのに疲れました。
 彼女はあの人がこのくらいの収入だとか、
 あんなマウントをこんなマウントで鮮やかに返したといったような話をよくします。
 心に余裕があるときはそんな話でも楽しく聞ける時があるのですが、大体は疲弊するだけで困ります。
 このような話ばかりする彼女はもとより、このような話に疲れるということは、
 このような話を誰よりも気にしていることの証左であるという自分の心持ちに疲れるのです。
 このような気持ちと向き合うにはどうしたらよいのでしょうか』お便りありがとう!」

「そんな気持ちになったことがないからわからないぜ」

「出たよ!おたよりの概念ぶちこわれてるじゃん!」

「この人は疲れたって言ってるけど、そもそも何に疲れてるんだよって感じがしないか?私に元気が1000あったら、この人はいっつも10しかなくて、私が気付かないくらい小さい元気の消耗にも敏感なんじゃないか?って予想くらいはできるけど」

「うんうん。いいじゃん。だとしたら?」

「だとしたら……問題はこの人自身にあるってことになるかもな。人より元気がないんだったら、走り込みでもしたらどうだ?私はいつもその辺を飛び回ってるから、体力には自信があるぜ。体力に自信があるから飛び回ってるのかもしれないけれど」

「疲れてるんだったら体力付けろ!ってこと?投げやりに見えて結構的を射た着地かもね」

「ほら、にとりの方からは?」

「うん。だから走れば?」

「なんだよ!……この霧雨魔理沙さまだって、100年に1度くらいは『ずっとこれをやっていくのか?』って思う時くらいあるぞ。そういう時はお日様にでもあたっておけ。私はそうしてる」

「ポエミーな観点からもフォローを忘れないふわふわ魔理沙さんじゃん」

「殺すぞ!」



「続いてのお便りはこちら。ラヂオネーム【太郎三郎セパタクロー】さんから、
 『私は復讐というものを常々肯定的に捉えています。
 己の何かを傷つけられた時は、それ以上の傷を与えることでしか前に進めないと信じているのです。
 しかし私の無二の友人は違います。復讐が何かを生むことはなく、
 ただやめるべきなだけの空しい行いだと彼は信じており、二人で飲みかわすたびにこの件で意見が割れます。
 二人の意見をお聞きしたいです』お便りありがとう!」

「こいつは確かにいい酒の肴だな。ごくごく!」

「ごくごく!復讐かぁ。こんなの各々が持ってる世界観によるだろとしか言いようがないけど、とりあえず私は復讐否定派かな?」

「私は復讐肯定派だけど、ひとまずにとりの意見を聞こうかな」

「だって私、立場も力も弱いもん。復讐なんて所詮、それを実行するエネルギーか力のどちらかがあって成立するものじゃない?なぜかこの話になると復讐遂行可能前提でみんな話すイメージがあるけど、例えばプライドを傷つけられたと感じたとして、それって大抵自分より力を持った立場が上の人が相手だったりすることが大体じゃない?」

「そうかもな」

「そういう相手に対して私ができることって、許せるその時がくるまで何度も思い出してはムカつくくらいしかないじゃん。でもそれで別によくない?とも思うわけ。そうするのが一番エネルギー面で合理的なんだもん。その相手への復讐のために全力かけるなんて、私むりだし!」

「許すのだって、別にそいつのためじゃなくて自分のためだもんな」

「そうそう!私からしたら復讐肯定なんてただのポジショントークだよ。脳みそがそういう風にできてるからできるだけでしょ?って感じの」

「にとりの話を聞いてたら、なんだか私ってどういう時に復讐心を感じるんだろうっていうそもそもの処に入ってきちゃったな」

「ええ~。じゃあすっげえすっげえ悪いやつに私が殺されちゃったりしたらどう?」

「弔い合戦くらいしてやってもいいけど、復讐してやるってモチベーションにはならないかもな」

「ドライだなあ。復讐肯定派って言ってたのは?」

「何事もしないよりする方が良いに決まってるじゃん。それに、復讐だっていい復讐と悪い復讐があるでしょ」

「例えば?」

「競技で負かされたリベンジは良い復讐でしょ」

「確かに!」

「母の命の名誉を汚された復讐は?」

「いい敵討ちだ!」

「自分に振り向いてくれなかったあの人への復讐は?」

「そんなこと言う奴はなにをしてもだめだだめだ!【太郎三郎セパタクロー】さん、参考になったかな?友達となかよくね!」



「続いてのお便りはこちら。ラヂオネーム【木になるあの狐】さんから、
 『こんにちは、私は普段仕事中にこのラヂオを聴いており、いつも作業の助けとなっております。
 ありがとうございます』こちらこそありがとう!『少し前、主人から休暇を言い渡され、
 たまには休めという心遣いであることは理解したのですが、何分仕事人間なもので、
 主人の世話や日常の業務がない日々にやきもきしています。
 おふたりは普段の日常から不意に放り出されることはあるでしょうか。
 また、そういった時に行うことはありますでしょうか』お便りありがとう!」

「この前さあ」

「うん?」

「ちょうど研究のテーマを切らしたことがあったんだよな。ずっとコツコツやってた単体恒星間航行の理論がまとまってパチュリーに査読を投げたらさ、ああ、そういえばなんも考えてなかったかも、って。いつもだったら三つか四つくらい同時に走らせてるからあんまりなくて珍しかったんだけど」

「いつも忙しそうだとは思ってたけどそのレベル感だったんだ。引いたよ」

「楽しくてやってるんだよ。このお便りの人みたいに仕事って感じではないけど。でもべつにこの人みたいにじたばたはしなかったな。神社に行ったら霊夢が私の顔を見るなりお茶と漬物を出してくれてさ、ぽりぽり食って縁側で転がってるっていうのを一週間くらいずっとやってたかも」

「扱いが猫じゃん。っていうか日向ぼっこ好きなの?」

「すきだぜ。別に普通の日でも昼寝の時間は大抵設けてるし。日光浴びてなきゃ基本だめだ。そんな高い意識でやってるわけじゃなくて、すきだからやってるだけだが」

「おほしさまの魔法使いなのに力はもっぱらおひさまから貰ってるんだね」

「おつきさまからも貰ってるぞ」

「私は仕事でやってるのとは別に趣味の開発もあるし、キュウリ畑の世話もあるんで暇とかあったことないよ。自慢じゃないけど今日も修羅場だね。急に暇になったら【木になるあの狐】さんみたいになっちゃうかも」

「ラヂオやってる場合なのか?」

「スケジュール管理してるの私じゃないから、ラヂオやってても平気だよ。あとリスナーの皆さん、このラヂオネーム、樹木の木に狐で【木になるあの狐】だからね。【フィジカル・昨日】ってイントネーションだから、よろしく」

「【フィジカル・昨日】は何?」



「続いてのお便りはこちら。ラヂオネーム【null】さんから、
 『自分は自分の中にある正義が暴走して抑えられないことがあります。
 間違っているものを見た時、なぜそれが是正されないか理解できず反発的になるのです。
 ルールを侵した者はいかなる手を用いても集団から排除すべきだと考えてしまいます。
 考えてしまいますという言い方をしましたが、この考えが間違っているとは毛頭考えてはおりません。
 この考えが外部に露見したとき、排斥されるのはなぜか自分の側であるという経験から
 【しまいます】という表現を用いました。お二人の意見を聞かせてください』お便りありがとう!」

「かわいいね。まだ寺小屋なのかな」

「お前もそんなかわんないだろ!」

「犯罪者は見つけたら殺せよ。なんでそうしないの?ってことでしょこれ」

「うん」

「かわいいじゃん」

「かわいいけど」

「でもまあ気持ちはわからんでもない。悪いことしたやつは何されても仕方ないって考え自体は、全然理解できない考えってわけじゃない」

「私はそこからもう既になにそれ怖って感じだけど……」

「でもちょっと考えを前に進めて、そもそも悪いことを本当はしてないかもしれないから、その人のことは尊重しておいた方が誰にとっても良いってところまでは至らないわけじゃん」

「うん……うん?そういう方向か……」

「どういう方向だと思ってたんだよ」

「そもそもそんな綺麗に生きてる人がどれくらいいるの~とか、決まり事とかシステムによって更生を促すシステムじゃないとただの私刑になっちゃって危険とかの感じかと思ってた」

「あー」

「でもまあ、ちょっと考えただけでも悪いことした人を見かけた時に、あっ殺そうってすぐ殺さない方が良い理由はこれだけいっぱいあるってことにはなるか」

「そうだね。にとりが言ってるのはなんだかんだいっても裁く側の理論かなって思う。私は、自分が本当は何もしてないのにって場合に問答無用で殺されたらたまらないから、他人に対しても本当は違うかもって気持ちを持った方が自分が生きやすいじゃんって思うだけだけど。どっちかと言えば裁かれる側の考え方」

「魔理沙って自分を裁かれる側に置いて生きてるの?」

「置いてるっていうか……裁くことは選択式かもしれないけど、裁かれることからは全員逃げられないから、そっちのことをいっぱいシミュした方が人に寄り添える?みたいな?ごめん、あんまり考えないタイプのことだから適当言ってるかも」

「うん」

「えっと、とにかく、このお便りの人はね、自分を完全に裁く側の人間だと思ってることは間違いない。でも裁かれる人間でもあることが実際だから……う~ん、だから、なんだ?」

「なんか困ってる?」

「正直特段エピソードもない空っぽのお便りだから、こっちが言うことも表面だけなぞったうすっぺらなものになってるっぽい」

「あ~」

「【閻魔様ですら死者を裁いた罪で鉛を熱して飲んでるのに、自分の見分の狭さを【正義の暴走】なんてかっこいい言葉に言い換えて魔女狩りしてちゃだめだよ】とかどう?」

「説教くさいかも」

「やっぱり……」

「落ち込まないで!」

「所詮はラヂオパーソナリティ用に進行を重視した一面的な人格を見て、これが霧雨魔理沙なんだみたいに思われるの最近すごい嫌だから、なんかうまい塩梅を探してるんだよ。でも、みんなそういう【魔理沙が切る!】みたいなの求めてるから!って、文が言うからさ、私は仕方なくさ」

「アイデンティティが崩壊しかけてるじゃん」

「へへっ」

「へへっじゃない」



「最後のお便りはこちら。ラヂオネーム【恋するうさぎちゃん】さんから、
 『いつも楽しく拝見してます。ありがとうございます。
 私には彼女がいるのですが、最近お互いの仕事が忙しくてなかなか会えずにいます。
 そんなある日、施設(匿名性のためここでは施設という言い方をさせてください)へ
 よく来る人の一人とちょっといい感じになってしまい、そのままやることをやってしまいました。
 完全に浮気だと思っているし、最低のことをしてしまったと後悔しています。
 しかし、全然会えない彼女のことよりその人のぬくもりを求めてしまうのです。
 わたしはどうしたらよいのでしょうか』お便りありがとう!」

「最後おたよりこれであってるか?ドロドロすぎない?」

「私のセレクトじゃないから私に言われても困るよ」

「浮気ダメって風潮、すごい外の世界被れだよな。正直私にはよくわからん」

「マジ!?魔理沙って浮気すんの?」

「いや、私は多分この人って決めた一人しか嫌かな……。でもそれはたまたま浮気ダメだよねって社会と合ってるってだけの話で、浮気がそもそも絶対悪なのかってこととは別かもなっていう」

「されるのは?浮気されるのはどうなん?」

「されたことないからわからんけど、嫉妬とかするのかな?……でも私がこの人と決めた相手なら、きっと相手も私のことが一番好きで最後には私の処に戻ってくるだろうって気持ちがあるから平気かも」

「うわー!うわー!そうなんだぁ」

「楽しそうすぎるだろ」

「こんな話大好きだもん、わたし」

「でも私の話じゃなくてさ、この子の話じゃん」

「この子は浮気ダメって思ってるわけじゃん?謝るしかないんじゃない?」

「そこも含めて悩んでるんじゃないの?正直に話して謝るか、わざわざ言わないか、関係を切るべきか、切らないべきか、誰とそうすべきか」

「悩んでるっていうか、楽しんでるんだよ、この子は。問題の先送りを」

「あー。そうかも?」

「浮気が絶対悪とは限らないっていうのは?」

「浮気って、要は一対多の恋愛関係の悪い言い方なわけじゃん」

「うん」

「一対多の恋愛関係がなんで悪いの?」

「そりゃあ……な、なんで?」

「なんか考えてよ。話が進まないじゃん」

「ひ、人のものとったらだめだからとか……」

「それはいい。たしかに、【恋するうさぎちゃん】はすでに彼女のものなんだから、あとから生えてきた方の人は【恋するうさぎちゃん】を横取りしたってことになるな」

「そういうことになる……」

「うん。でもなんていうか、これって一対一がルールとして先に決まってるから生まれるトラブルという気もする」

「というと?」

「だからさ、初めから三人で話し合って、【恋するうさぎちゃん】が二人とも幸せにするからって説得すればいいじゃん。それはなんかタブーみたいになってる」

「そうかも?」

「それはなんで?」

「なんでだろう?」

「多分、外の世界ではそうじゃないと社会に不都合があったんじゃないかと思う。幻想郷とは比べ物にならないくらい人が多いところでこのルールを許すとさ、10人も100人も1人で持っていくめっちゃ甲斐性のあるやつがいた時にさ。あぶれる9人か99人がいるわけじゃん」

「ははあ」

「その9人か99人かは、多分その社会に協力しないと思う。実際、そいつらにチャンスがあったのかは別問題として、とにかく、その社会に協力しないという厳然たる事実が産まれると思う。だから一対一が推奨されて、後付けでそれに至る倫理観も足された。そうすれば圧倒的な勝者と多すぎる敗者は生まれなくなるから」

「なるほど」

「で、その外の世界の理屈が、今流行ってるからってなんでもかんでもで、幻想郷にも流れてきてる。その本質も理解しないままに」

「社会的な観点じゃなくて、生物的な観点は?」

「それはちょっと私が出したい結論に邪魔だから敢えて避けてたんだけどさ」

「うん」

「自分の子孫を残すのに相手に浮気されると不利だから、浮気ってされる分には不利益なんだよね。オスはメスに浮気されると自分のじゃない子供が生まれちゃうし、メスはオスに浮気されたら優秀な遺伝子の独占性を損なうし種によってはそもそも生活基盤を奪われるリスクがあるじゃん」

「うわうわ!」

「でもする側は有利なわけ。そうすると、他人に不利益を与えて自分が得する行為だよ。道徳観念的によくないし、じゃあ浮気ってそりゃよくないじゃん」

「身もふたもなさすぎる」

「うん。身もふたもなさすぎるからさ」

「あと多分このお便りの登場人物は全員メスだしね」

「うん」

「持っていきたかった結論ってなんだったの?」

「二人とも幸せにすればいいんじゃん?ここは幻想郷なんだし」

「ま、やることやっちまったならハラ括れってこったね!かぁっくいぃ~!みんなお便りありがとう!それでは次のコーナーへ~~~」
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コメント



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1.100ありがてぇ…!キンッキンに冷えてやがるッ!削除
ラヂオっていうネームがいいなと思いました。
2.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
7.90めそふ削除
面白かったです
ストレートに自分の思想はこれですみたいなのがくると、個人的には正直に話してくれて嬉しいみたいな感情が出るので楽しく読めました。
8.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。あくの強い話題にもしっかりと対応して雑談に昇華できているふたりが良かったです。
9.100南条削除
面白かったです
まじめにパーソナリティしているにとりと魔理沙に驚きました
それにしても届くお便りに癖がありすぎて聴取者もわかってやってる感があってよかったです