私の傘に無数の雨粒が落ちていく。今日は雨の日。私の一番好きな天気だ。時には大きな雨粒が落ち、時には霧雨となって私の体を包み込む。そんな少し非日常な所が案外楽しい。いつもと違う一日というのは中々に充実しているものだ。
だからといって人が少ないのは寂しい。あの賑やかな人里が少し恋しく感じてしまう…………たまには命蓮寺にでも行ってみようかな。聖様もきっと喜んでくれるでしょ。そうと決まったら早速行かないと!
…はぁ、命蓮寺ってこんなに遠かったっけ?最近体力が落ちてる気がする。寿命でも近づいてるのかな?いや、私は妖怪だからそんな訳ないはず。じゃあ妖怪仲間の命蓮寺のみんなはどうなのかな?
「おはようございまーす!」
うん、清々しい程めっちゃ元気。この元気は一体どこから溢れてくるの?
「響子は朝から元気だねぇ。てか今雨降ってるよ?寒くない?風邪引くよ?」
「大丈夫だって。これも修行だから。というかそっちはいつも傘さしてるじゃん。筋肉痛なりそうだけどなんないの?」
「聖様に散々鍛えられたからこの位余裕になっちゃったよ。これだけは筋肉つけてよかった。」
「でもそれ以外は?」
「無い」
「キッパリ言うじゃん」
…やっぱり人と話すのは楽しい。これだから命蓮寺はやめられないのだ。例え雨で包まれていようとも、その楽しさは全く変わらない。
「……寒い」
「ほら言ったじゃん。風邪引くって」
「ごめんごめん。丁度掃除もいい感じだし、温まりたいな」
「ほら、聖様の所早く行かないと」
「傘入れてくれない?雨が保冷剤みたい」
「早く入りな。一緒に連れてってあげる」
こうして私達は雨と傘に包まれながら聖様の元に向かうのであった。ちなみにこのあと響子が熱を出したのは私だけの秘密である。