千九九八 千九九九 二千
ふう、と溜息をつきながら依姫は訓練用の鉄剣かじきころしを元に戻す。鍛錬の準備運動である素振り二千回を終わらせ、さあ本格的に励むかという所だった。
おーい でてこい
とどこからか声がする。ほう、この私に向かってそんな口をきく奴がいるとはな。お前の方こそ出てこい、と一喝しかけたすんでの所で口をつぐむ。玉兎達がいまさら私に向かってそんな事を言うわけがない。姉さんだってそんな口をきくような人でも無い。絶対に無いと頭から抜けていたがもしや侵入者か?自分でもあまり信じられない事だがその万が一があってはむざむざと侵入を許した無能になってしまう。それだけは駄目だと半信半疑ではあるが依姫は実剣を手に取り、気配を探る。5分ほどが過ぎ、流石に杞憂かと気を緩みかけた瞬間、何もない所から反応があった。不意を突かれたがそれでも依姫は反射で剣を地面に突き立て、侵入者を切り刻む。気配はすんなりと消え、おそらく侵入者は粉みじんになって文字通りこの世から消え去ったのだろう。終わったと警戒を解こうとした所で依姫はしまったと思った。跡形もなくしてしまったら情報を聞き出すことは勿論何が侵入したかすらもわからないではないか。やはり緊急事態で舞い上がっているな。冷静になれと自分に言い聞かせ、頬をぱしんと叩き緩みかけた緊張の糸を締め直し、今度こそ本気で周りの気を探る。
いいだろう、いつでも来い。
どこからでもいいぞ、かかってこい。
根比べか。上等だ。
まだか。
先程と違ってかなり慎重だな。
焦らした所で気は緩めんぞ。
来ないな。
え、もしかして本当に来ない?
…
……
………
あ。
この後ゴミまみれになるんだろうなぁ