Coolier - 新生・東方創想話

第16話 決意

2024/09/16 23:30:23
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「体温低下!!脈拍64!!生死不明!!!」
「各幹部に緊急事態宣言文を送れ!!」
現在基地の情報通信室では、組長の命の危機に大混乱していた。自身の組長が追い詰められる事はごく稀にあったが、ここまでやられる事は初めてだった。巨大スクリーンにノイズが走り、部下達は計器を叩いて生死の確認を試みる。しかし映し出されたのは『no signal』(反応無し)というメッセージだけだった。一人のマムシ霊が、計器を叩いて焦り始める。
「畜生、一体組長は何と戦っているんだ。あの人がやられたらここはもうお終いだ。」
「何がどうなっているかさっぱり分からん。俺達はこんな状況で無事を祈る事しか出来ないのか……。」
「いや待て。スクリーンの映像が修復されていくぞ!!」
「映像、復元します!!!!!」
おぉぉっと歓声をあげるが、そこに見慣れた組長の姿は無かった。灰色の髪に、赤と紫の瞳の姿に全員が疑念を抱く。目の前のスクリーンに映る人物は身に覚えが無い。だが計器によれば、血液型、体重、身長、指紋までピッタリなのだ。全員がスクリーンに釘付けになっている間、パラメーターの計器が復元し、情報を映し出す。映し出された情報にまたもや全員が混乱する。なぜなら、全ての情報が『解析不能』と表示されたからだ。気質も水、炎、電気から闇に変わっている。もはやこの戦いの先が読めない。その場にいた百人が確信を持つと、急いで解析と報告に取り掛かった。



大陽と名乗る男は赤い両刃の剣を振り、斬撃を飛ばしてくる。私と諏訪子で再び固定を試みるが、苦しくも柱元々砕け散り銃弾が飛び交う。次に顔を上げた時には、大陽は純子目掛けて殺意を放つ。純子は再度能力を発動し、迎撃をした。しかし純子の能力は発動せず、わけのわからないまま純子は首ごと食いちぎられた。
「元々あいつは、俺が強く望んだ性格を露わにしたものだ。俺は人前が嫌いだから、対話はあいつに任せっきりだったけどな。今は体ごと分離させて休ましている。まあ、次に目を覚ます頃には死体だらけだろうがな。」
「あら、そうでもなさそうよ。」
私はスペルカードを掲げ、攻撃する。
御符『ライジングオンバシラ』
柱から放たれた弾幕は大陽を捉え、命中していく。だが大陽の体には傷一つない。目を凝らして見ると、周りに電気を帯びた空間があり、大陽が懐から拳銃を取り出すと消えていった。
瞬く間に辺りは火薬の匂いに包まれ、匂いが濃くなる程私達の傷も目立ってきた。当たり前だ。先刻の奴とはまるで動きが違う。あちらは近距離型特化のバランスタイプとするならば、こちらは遠距離型、中距離型特化の攻撃極ぶりタイプだ。近づこうとすれば拳銃の餌食になり、かと言って離れても水と炎の弾幕が飛んでくる。更には回避先を読んでいるかの様な配置で動きが毎度制限され、くらいながらも進んで攻撃しても全てかわされる始末。だが銃弾と水弾と炎の弾を警戒しているとアレが控えている。それは神出鬼没のなまくら刀だ。恐らく自由に伸び縮みが可能で、任意のタイミングで発動してくる。主に大陽をサポートする様に後ろから、奇襲を仕掛ける様に私達の後ろから、地面に着地した瞬間に大腿骨を狙う様に出現してきた。
だがどんな弾幕にも抜け道があるように、この鉄壁を壊す解決策を見つけた。それはリロードだ。龍陽同様、弾を一発一発込めないといけないタイプらしい。リロードがバレないように、炎の弾幕となまくら刀で誤魔化しているが、死角から見られているのには気付いていないようだ。この事を諏訪子に伝え、弾幕で抗戦しながら早急に対策を練る。聞く分には簡単そうだが、実際上手くいく確率は五分五分と言った感じだ。何せリロード時間はたったの五秒だし。弾を外すのに一秒、弾を込めるのに三秒、装填しトリガーを引くまで一秒。この時間に攻めないと返り討ちどころか、一瞬であの世行き。本当、どんな訓練積んだらあそこまで行けるのかしら。兎にも角にも、リロードしている大陽を仕留めることに変わりは無い。しばらくすれば大陽は一歩後ろに飛び、リロードをしようとした。すかさず私は、早苗と諏訪子の3人がかりで仕留める。



「ようやく引っかかってくれた。」
そう言って、俺は弾の入っていない拳銃のトリガーを引く。本来、銃には弾を込める必要があるが、この拳銃は弾丸を打つのではなく、悪魔で『出現』させるの方が正しい。そこで龍陽同様、リロードする振りをして三人か四人同時に仕留めるタイミングを狙っていた。その結果見事にハマってくれて大助かりだ。三人の四肢の関節に狙いを定め、スコープのマークを付ける。後は後ろに飛び退いたら、動けない神様と現代人の出来上がり。
念の為二人の神様にトドメを刺し、残った早苗に対して話を投げ掛ける。
「どうすれば諦めてくれるんだ?俺の肩には数え切れない程の仲間の想いと希望が乗っている。こんな所で俺が皆の想いを裏切ると思うか?正直乱暴はもうこりごりだからな。あいつも…………責任感がとても強い。だから諦めるか、それとも選択するか。あいつも仲間も託してくれた。だからお前を殺さなくちゃいけない。」
「私を殺した所で、諏訪子様と、神奈子様の、意思が消える事はありません。後のことは、霊夢さんに任せます。貴方は、きっと、後悔する。」
遺言も聞いたことなので、俺はリアルゴで早苗の脳天を刺す。そして残党達の方向を向いて再度語る。
「覚悟を決めろ。この戦場に居る事、俺達に傷を負わせた事に。今、戦いは始まったばかりだからな!」
俺はリアルゴの弾幕で奴らを誘導し、すかさず銃弾を浴びせる。背後から観戦していた霊夢と魔理沙が飛んでくるが、指を指し指定の方向に叩きつける。やはり反重力装置は便利だな。先程もこれを使いレミリアを肉団子にしていたが、いざ使ってみると中々かっこいい。だが俺はヒロインに熱中しすぎていた様だ。フランが銃弾を掻い潜り、レーヴァテインを振りかざす。咄嗟にレジェンドブレイカーを発動させるが、様子がおかしい。するとレジェンドブレイカーは煙を立て、特大なレーザーを放った。レーザーは空一面を覆い、天井に当たって消えてしまったがフランは黒焦げだ。レーザーは当たったからいいものの、攻撃力が低く大したダメージにはならなかった。現にもう完治されているし。そう言えば龍陽の助言を忘れていた事に気づき、それを考えているとレジェンドブレイカーの装甲が崩れ落ちてきた。中から出てきたのは青いコアのようなもので、俺の手に触れた瞬間レジェンドブレイカーは龍の頭蓋骨へと姿を変えていった。よくよく考えればガス〇ーブラスターっぽいが、あちらとは違い角張ったところが多い。しかも左目が切り傷で損傷しており、右目は俺と同じ赤と紫の眼光だ。形からして恐らくサムサラ出身のガス〇ーブラスターなのだろう。俺は一人で勝手に納得した。



さて、レジェンドブレイカー改めサムサラブラスターは口にエネルギーをチャージし、目標に向けて白いレーザーを放つ。サムサラブラスターはレーザーを放つとすぐに消えてしまうが、特に問題は無い。機動力を得た俺はサムサラブラスターに乗り、上空からレーザーやなまくら刀の弾幕をぶつける。もちろん黙ってくらう程馬鹿な事は無いので、隠岐奈や天子、魅須丸と千亦も反撃してきた。全員が瀬戸際の所でなまくら刀を交わして行くが一人は違った。天子はなまくら刀を刺してもその強度だけで突破してくるのでこの上厄介極まりない。
「全く畜生の連中はこんな化け物作る程暇なのか?お前前世絶対大罪犯したか自殺しただろ。ま、どんな奴でも倒せば一緒だがな!」
天子は岩を生成しぶつけて来ようとする。だが赫い刃が全てを切り裂き、俺はリアルゴの構えを解いた。
「全てを失って一人で生きていく……言うまでもなく、根っからつま先まで負け犬だったよ。夢を失い、希望も失い、この魂は灰を吹くことなく徹底的に破壊され、無音で空に消える。そしてまたくだらない人生のリサイクル。悲しいと同時に笑えるだろ。」
そう返答し、俺は次の剣技を発動させる。
壱式『天罰 烈火滅殺斬』
スペルカードとは別に、剣技を作っていたのでこれはこれでアリだ。リアルゴは炎を纏い赫い刃を更に真紅に染める。炎の斬撃は地面に到達すると同時に、赫い炎はたちまち灰色の炎に変化し辺りを燃やし尽くす。
地上にいた霊夢と魔理沙も上昇してきて、弾幕戦もより本格になり始めた。弾幕では押される一方だが、そこはサムサラブラスターと剣技で誤魔化し、リードに進める。これには流石の霊夢も呆れたようだ。
「クッ、さっさと倒れなさいよ!!第一その致命傷でなんでそこまで戦えるのよ!!」
「お前達こそ、ここにつっ立ってる理由はあるのか。相互の嫌悪感?自己欺瞞?それとも何だ?」
「私達はお前をぶっ飛ばして紫を取り戻す。ついでに里の人達も助ける。それがつっ立っている意味なんだぜ。」
やっぱりかあと思い、俺はため息混じりで返事を返す。
「偽善者が。そんなものはただのトリックに過ぎない。」
霊夢はスペルカードの準備をするが、少し後に俺がスペルカードを発動した様で、霊夢のスペルカードは打ち消された。
厄災『永劫のせん妄』
掲げた手から大量の水が溢れ、やがて大滝となり霊夢達に襲いかかる。水中には無数のなまくら刀が交差に設置されており、回避しようにも水流で動きが取れないだろう。全員が溺れるのを確認し、再度大波を起こすが、霊夢達が居ない。あの激流の中でどうやって生きているか分からなかったが、答えはすぐ目の前にあった。星輦船からはムラサ船長が睨みつけており、荒波を意図もせずこちらに近づいてくる。
「よぉーし!姐さんのためにも一肌脱ぐぞぉぉ!!」
ムラサ船長は張り切って錨を投げてきた。一応何かあったら嫌なので、残ったフォースシールドで防ぐ。しかし攻撃があまりにも温い。どうやらこれは本命では無いようだ。気付いた時には体に鎖が巻かれており、勢いのまま地面に叩きつけられた。それと同時にスペルブレイクされ、波も弾幕も消えてしまった。霊夢達をびしょ濡れにした後は、水と一緒に血も混じっていた。全体のダメージはそこそこだがこれでいい。何せ空気中の水素濃度が濃くなったんだからな。何かに気付いた様に隠岐奈が仕掛けるがもう遅い。俺は何処ぞのバイツァダストの様にスペルカードを発動させた。
『屠龍神風の大爆心衛』
水素爆発とは何か知っているかな。一般的に酸素濃度が5%以上、水素濃度が4%以上混ざった気体に点火すると起こる爆発の事を示唆している。また、温度が500℃よりも高くなると自然に発火し、爆発が起きてしまう現象の事……だったはず。俺も詳しくは知らない。そもそも高校でそんな事習ってたまるか。兎にも角にも戦場は爆風で包まれ、岩石地帯は見晴らしが良くなった。辺りを見回すと、魔理沙は片手を負傷した様で、回復には時間を要するだろう。



俺は、急いで解けてしまった腕の包帯を巻き直そうとコートを捲る。しかし見慣れた真っ白な包帯では無く、赤く染った包帯をキュッと巻き直す。能力の代償は知っていたが、吐血に続きは細胞破壊は聞いていない。歯で再度結んで、リアルゴを持つが段々と手の箇所の包帯も赤く染まり始めた。能力を急に使いすぎたせいか、それとも傷のせいかは知らないが、赤くなる速度が異様に早い。傷を治そうと試みるが、どうやら奴らがそうはさせてくれなさそうだ。古明地姉妹が弾幕を放ち、ついでにそのペット達も迫ってきた。やはり面倒なのはお空で、核エネルギーから放出される放射線には打つ手が無い。かと言ってお空ばかりに気を取られていたら、今度は弾幕にぶつかる。しかもこいしは本物のパッショーネのボスのスタンドの様に迫ってき、ナイフを振り回す。するとさとりが弾幕で応戦しながら話しかけてきた。
「貴方は例え四肢を無くしても、頭が潰されても死にはしないでしょう。今の貴方は『半妖怪』と言った状態です。もはや人間とは程遠い。今すぐその脳みそに恐怖の記憶(トラウマ)を刻み付けてやるわ!!次いでにスキマ妖怪の借りも貰う!」
「自信家ってのは嫌いじゃないけど負けた時クソダサいぞ。こうしてお前とそのペット達と対峙するのはお前が思っている以上に苦痛なんだよ。だが俺こうして命を燃やせば、貴重な時間稼ぎになるんだ。それなら後は無意味では無い。こんな風に気配を察して不意打ちを防げるんだからな。」
俺は片手で背後に迫る妖夢の抜刀を捉える。チッとさとりは舌打ちし、再度お空とお燐で仕掛けた。



「龍陽、あの約束覚えているか?お前は俺に生きる意味を与えてくれた。だから今度こそ、俺は約束を守るだろう……。約束は嫌いだが、命の恩人には逆らえないからな。」
一人でブツブツ呟きながら、大陽はサムサラブラスターを放つ。そして拳銃を絡ませ、弾幕を難化させていく。さとりは心を読めるので何が来るかは分かるが、避けるのは別の話だ。しかも先程の大波で体力を失っているので、数分もすれば息切れし始めた。一方お空は事態に悪態をついていた。なぜなら大陽が投げたボールを、お燐が取りに行ってしまったので一人で相手にするしかない。加えて背中に主を抱えて戦うので、火力を抑えらなければいけない。一応続々と大陽に向かって弾幕攻撃や近距離戦をする者もいるが、戦闘が長引くにつれて数が減っていった。旧友が殺されたり主の友人が殺されたり、そしてついに主までもが致命傷を負いかねる。
「さとり様、少し降りて下さい。一撃で片付けますので。」
そう言ってお空はさとりをそっとおろし、右腕の制御棒にエネルギーを貯める。大陽は始末した遺体を蹴り飛ばし、スペルカードを構える。核エネルギーはどんどん大きくなり、最終的には太陽と張り合えるぐらいの大きさになった。
「そうだな。元々この戦争はもっと早く終わるべきだった。茶番劇にも終わりと始まりがある。」
大陽はグッとスペルカードを握る。
「その中に埋もれてしまえ!」
『地獄の人工太陽』
SD『夜明けの雨』(リナイトダウン)
互いの最高火力がぶつかり、地面が大きくえぐれた。クレーターとなった地面から大陽は岩をどかしながら出てくる。すると突然結界が張られ、大陽は指一本動けなくなった。頭部から出血した霊夢が登場し、続いて後ろから高速球の魔理沙が飛んで来る。
彗星『ブレイジングスター』
あと数秒遅かったら当たっただろう。大陽は御札を燃やし、再度回避する。だが大陽は宙で何者かに背後を取られた。霊夢は想定していなかったが、これは決め手になる。その確信があった。こいしは後ろから大陽の心臓目掛けてナイフを刺す。



ナイフが心臓に刺さり、破裂する音が聞こえる。だが奇妙な事に、肝心の大陽にはダメージが全く無い。不思議に思いながらも、大陽は後ろを振り向く。その瞬間、初めて大陽が真顔から驚いた顔になった。
「…………龍陽?」
そこには、回復を必要としていた龍陽の姿があった。ただ傷は完璧に癒えた訳でも無く、体には大陽と同じ袈裟斬りが残っている。分離した時の状態が共有されて袈裟斬りがあるのは納得できるが、庇うまで回復するのは想定外だった。
「フッ、そんなだっせえ顔するな。俺はお前さんから生まれた存在。どーせ死にはしない。ただ、これだけは、言っておく。後悔の無い、選択をしろ、よな。」
龍陽はこれだけを言い残し、その場で動かなくなってしまった。その時、大陽の顔から水滴がポロポロと流れ落ちる。それは決して悲しみや怒りの涙では無い。そんな物は彼らには存在しないのだから。だが目をごしごしした後は霊夢とこいしの方を振り向く。
「あいつはなあ、俺より頭もいい。話し上手でジョークが面白かった。俺はコミュ障だったから対話はあいつに任せっきりだったんだ。でもこんな形で庇うとは…………義理堅いもんだ。」
そう言って大陽はサムサラブラスターを構える。
「だからと言ってこの戦いを降りるわけにはいかない。まだまだ戦いは………………これからだ。」
サムサラブラスターにエネルギーが溜まり、霊夢の目の前が青白く輝く。
最近Undertaleの二次創作系にハマったのを受けて少しリスペクトしています。よろしければ評価とコメントをお願いします。
m(_ _)mm(*_ _)m
SABAMESI
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