紫家に突入する二日前
最近、畜生界に正体不明の組織が現れたらしい。情報提供は一丁前にしてくるが、誰もその組長の顔を見た事がない。噂では極度のコミュ障だから人前に出てこないんだとか。そこで我が「鉱結同好会」がその組織の正体を暴き、三大勢力の座につこうと計画した。前々から気になっていた者も多かったので、賛否両論に分かれることはなかった。各自作戦を練り、手こずったがようやく組織の組員を捕らえることに成功した。俺達は隠れ家に行き、組織の組員を椅子に縛り付ける。かれこれ三日経つが未だに吐こうとしない。
「さあ、今日こそお前の組長について話して貰おうか。喋って楽になるか、そのままチャカで蜂の巣にされるか、選ぶんだな。」
「し、知りません!第一顔すら見たことないのに、分かるわけないじゃないですか!!」
「おい、質問を質問で返すな!疑問文には疑問文で返せと学校で教えているのか!?!?」
〆るのは簡単だが、必要最低限の情報を貰う。それが鉱結同好会のやり方だ。だが吐かないのなら話は別で、友人が組員の眉間に銃口を合わせる。
「よく聞け、最後のチャンスだ。言わないなら速攻、蜂の巣だ。」
友人は案外短気なのでこいつはもう死んだだろう。あと二秒も経てば蜂の巣確定だ。その時だった。あの足跡が聞こえてきたのは。
そのヒト?はガレージから堂々と入ってきて、俺達二人と目が合う。こちらを見つめる右目に光は宿っておらず、全てを投げ出してもいい覚悟がある。そのコツコツというブーツの音は死へのカウントダウンの様にも聞こえた。友人が腰から二丁のチャカを抜いて質問を投げる。
「おいテメエ!何モンだ!命が惜しくばとっとと消えやがれ!!!」
「まあ、何も怪しい者では無い。ちょっと仲間を助けに来た、ただのギャングスターだよ。(そういや17でギャングスターなった奴いるけどそれって案外若くね?)」
まるで友達のように振る舞う口調だが、一切スキを晒していない。裾の長い黒コート、下には白い服(恐らく内ポケットに何か入っている)を着ており、顔はフードで隠れて片目しか見えない。コートには返り血で赤く染まった箇所があり、手に持つ刀は全てを飲み込まんとする灰色をしていた。容姿から察するに、外の見張りは殺されたのだろう。
友人はチャカを弾いて、先制攻撃を試みる。一応友人は鉱結同好会の中でも、早打ちガンマンと呼ばれる程の腕前だ。俺は神速の刃と呼ばれており、二人揃えば怖いもの無しと言われたこともある。鉱結同好会の最高戦力を担うチームだ。多人数でも軽傷で勝利することも出来た。だが、目の前の化け物は別格だった。友人が打ったと認識するより早く、奴は友人の腕を切っていた。痛みを感じて悲鳴を上げるより、友人の首はストンと地面に転がって二度と喋らなかった。
「殺すから言って意味無いと思うが、刀捌きのコツを教えてやる。」
そう言って奴はどんどん俺に近づいてくる。俺も刀を抜くが、刀身が震えて狙いが定まらない。一か八か、袈裟斬りをするか。だが、そんな刀で奴に斬りかかっても、当然の如く側面を叩かれて、折られてしまう。
「弾丸や弾幕の捌き方なんだが、ぶっちゃけ弾丸より早く刀を振るうだけなんだよなあ。」
話が終わった所で、奴は俺に背を向ける。刃を持たない俺はただの一般人かよ。奴は縄を解いて、捕らえた組員に何かを渡す。すると黒い煙が発生したかと思えば、煙が消えると同時に組員は居なくなっていた。
俺は死ぬ。だが、それは友人の分を食らわせてからだ。俺は傍にあった鉄パイプを持つ。それに答えるように、奴は構えの姿勢に入る。いわゆる見切り勝負だ。最後に奴は俺に忠告する様にこう話した。
「俺を見た奴は既にその時、もうこの世にはいない。」
次の瞬間、目の前が真っ赤に染まる。
俺は現在、囚われた仲間の事情聴取に入っている。何を、どこまで話したのかを聞いているところだ。
「つまり、組織については何も話していないって言うことか?」
「ハっ、ハイ!貴方が不利益になることは、一切話していません!!だからどうか、命だけは勘弁を!!!」
俺は泣くカワウソ霊を見て思う。こいつは最近鬼傑組を抜けたカワチャムという名前だったが、上司のパワハラの影響でここまで影響を受けるとは。俺は幹部三人の顔を見て頷き、奴に手を伸ばす。そして………………カワチャムの頭を撫でてやる。
「よくやった。流石元鬼傑組の一員だ。その調子で頑張ってくれ。あと、体の傷はとっととメディカルセンターに行って治しとけよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
俺は基本、体罰系は嫌いなのでこうして教えてやる事しか出来ない。だがそれで学んでくれるなら万々歳だ。そうして俺は事情聴取を終えて組長室に戻る。
戻る途中、ふとあるゲームをしたいと思った。最近世界のゴミ置き場で見つけたソフトだが、あの人気のインディーゲームなので是非とも遊びたい。勝てる自信は鼻から無いが、集中力向上にはなるだろう。しかし、そうはさせまいと、仲間から一通の手紙を受け取る。その送り主はどうやら組長室で待っているらしい。人を待たせるのもアレなので、俺は組長室のドアを開ける。そこに待っていたのはやはり、あの博士だ。黒いコートを着ており、白ネクタイを身につけている。資料を持って立っているが、足がどこにあるか確認できない。唯一違和感を抱くのは、顔にある両目の傷と奥が見えない黒い目ぐらいだろう。
俺は椅子に座る時、防音効果のスイッチを押してゲーミングチェアに座る。博士から貰った資料には兵器のテストデータが載っている。
「プラズマキャノンのテストデータとジェットパックのテストデータ、そしてコアブラストのテストデータ、どれも正常だ。君の部下は本当に素晴らしい。通常時のテストデータよりも遥かに性能が上だし、火力面の方も120%上昇している。」
「まあ、毎日俺もテストに参加しているし、何よりこれは仲間の努力の結晶だからな。」
データを過去と比べても、明らかに向上しているのが分かる。棒グラフは常に上に進み続け、数値も上だ。これなら決戦時でも大活躍間違い無しだ。黙々と報告を続ける博士だが、いつもは狭い部屋に閉じこもりっきりで人に合わないらしい。例え会ったとしても、問答無用で追い出されてしまうそうだ。
「そういえば、試作品零号三機はパーツ不足で最終決戦中にできるかもしれない。それ以外は目立った物はないよ。それと、前々から頼まれていたが君にはこれを渡そう。」
そう言ってカバンの中から渡してきたのは、四つの黒いUSBだった。丁寧に付箋まで着いているので、とても分かりやすい。
「一つは兵器開発の設計図、もう三つは……君の望んでいた物だ。それさえ言えばもう分かるね。では、失礼する。」
いつの間にか博士は煙となり、どこかに消えてしまった。異次元の世界から来たという博士だが、なぜこんなにも軍事提供してくれるのか。そこは深く考えない様にしておいた。人前かもしれないのに、人前で悪口を言うのは失礼だからな。博士は霊の一種だそうだが、あんなに気配がしない幽霊は初めてだ。とても開発中に死んだ博士とは思えない。
博士が去って一人きりになった俺は、ある物を机から取り出す。それは最近ハマり出した趣味の一環で、一度は引いてみたいと思う物だ。俺はギターを取り出して、早速引いてみる。人前に見せる勇気は無いので、いつも1人の時に引くのが日課である。
「〜♪生きる意味も希望も夢も捨てた。くだらない自尊心も捨てた。
残ったのは生きようともがいた傷。必死になって戦った傷。
全ては一巡し、何も変わらない毎日。〜♪」
「失礼します。入ってもよろしいでしょうか。」
突然ドアのノックが聞こえたので、慌てて俺はギターを隠し、真面目に応答する。(危ねぇー焦った(꒪ω꒪υ))ドアからマムシんが入って来て、手には資料を持っている。俺はマムシんから報告を受け、今後の行動に移る。
だが一つ気がかりな事がある。
「マムシん。最近の剛欲同盟、勁牙組鬼傑組の行動はどうだ。あ、あと残無とかも。」
「特にこれといった報告はありません。饕餮尤魔は血の池地獄で飲み明かし、天火人ちやりもゲームセンターでテトリスの日々。黒駒早鬼は……ご主人との昔話。三頭慧ノ子も霧雨魔理沙の家で昔話。吉弔八千慧は組の事で大忙し、孫美天も同様です。日白残無もこれといった動きなし、豫母都日挟美はまあ、大丈夫でしょう。」
一人馴染みのあるゲームをしているのが気になるが、とにかく作戦に異常なしと言う結論に至った。例え慧ノ子が霧雨魔理沙を連れて攻め込んだとしても、問題はなし。依然として我々に勝利は間違い無い。
兵器開発について話そうとしたが、やめておいた。マムシんは兵器の話になるとじょう舌になり、あの「huh?」と言っている猫の隣のヤギになるからな。その姿は舌をレロレロしながら意味不明な事を言うヤギそっくりだ。下手をすると1〜2,3時間は潰すことになるだろう。難しい顔を数分していると、マムシんはどこかに行ってしまった。考えやすいようにしてくれたのかどうかは分からないが、気を使わせてしまい申し訳ない気分になった。
あれこれ考えている内に、一つ思い出したことがあった。俺は内ポケットからある物を取り出す。それはスペルカードで、前々からどうしようか悩んでいたところだ。そういえば何故か増えている事に気がついた。最初は数枚程度だったが、今では20枚近くある。八千慧が言っていたが、スペルカードで強さが決まると言うのは信じて良さそうだ。1枚目は確定で【絶技 神裂】だがそこから先が出てこない。一応二枚目には
【電磁砲 遁走曲 】(エネル フーガ)三枚目には
【火災神 イフリート・クロス】が当てはまるが、自分自身が必殺技名そんなに言ってないのが仇になった。それからは試行錯誤で、出来るだけ早く、そして厨二病っぽくならない様に。技名を考える時は人って大体厨二病っぽくなってしまうので、とんでもなく苦戦した。ペンを走らせようやく20枚全て埋めたので、ココアシガレットで休憩をとる。大事なスペルカードは、再び内ポケットにしまって一服した。正直対峙するであろう敵を想像してのスペカなので、そこは俺次第になってしまう。しかし敵から学ぶのもまた一興、それで成長出来るなら結果オーライ。さて、一服の後はゲームだ。パソコンで採掘と作製をするゲームをやっていたが、しまいにはあきてしまう。その後は寝てしまい、記憶があやふやだ。案外、ゲーミングチェアで寝るのも悪くは無い。
定刻30分前に目覚め、俺は急いで組長室から出る。その後は会議を開き、各々装備を着る。するとヨシタカが話しかけてくる。
「組長、いや龍陽さん。」
「なんだ、どうした。」
「お互い、死ぬのはごめんッスよ。」
「ああ、もちろんだ。俺はお前さん達と一緒に食う飯は美味いんでね。」
俺達は意を決して戦場に向かう。それぞれ思考は違えど、目に灯す意思は一緒だ。
最近、畜生界に正体不明の組織が現れたらしい。情報提供は一丁前にしてくるが、誰もその組長の顔を見た事がない。噂では極度のコミュ障だから人前に出てこないんだとか。そこで我が「鉱結同好会」がその組織の正体を暴き、三大勢力の座につこうと計画した。前々から気になっていた者も多かったので、賛否両論に分かれることはなかった。各自作戦を練り、手こずったがようやく組織の組員を捕らえることに成功した。俺達は隠れ家に行き、組織の組員を椅子に縛り付ける。かれこれ三日経つが未だに吐こうとしない。
「さあ、今日こそお前の組長について話して貰おうか。喋って楽になるか、そのままチャカで蜂の巣にされるか、選ぶんだな。」
「し、知りません!第一顔すら見たことないのに、分かるわけないじゃないですか!!」
「おい、質問を質問で返すな!疑問文には疑問文で返せと学校で教えているのか!?!?」
〆るのは簡単だが、必要最低限の情報を貰う。それが鉱結同好会のやり方だ。だが吐かないのなら話は別で、友人が組員の眉間に銃口を合わせる。
「よく聞け、最後のチャンスだ。言わないなら速攻、蜂の巣だ。」
友人は案外短気なのでこいつはもう死んだだろう。あと二秒も経てば蜂の巣確定だ。その時だった。あの足跡が聞こえてきたのは。
そのヒト?はガレージから堂々と入ってきて、俺達二人と目が合う。こちらを見つめる右目に光は宿っておらず、全てを投げ出してもいい覚悟がある。そのコツコツというブーツの音は死へのカウントダウンの様にも聞こえた。友人が腰から二丁のチャカを抜いて質問を投げる。
「おいテメエ!何モンだ!命が惜しくばとっとと消えやがれ!!!」
「まあ、何も怪しい者では無い。ちょっと仲間を助けに来た、ただのギャングスターだよ。(そういや17でギャングスターなった奴いるけどそれって案外若くね?)」
まるで友達のように振る舞う口調だが、一切スキを晒していない。裾の長い黒コート、下には白い服(恐らく内ポケットに何か入っている)を着ており、顔はフードで隠れて片目しか見えない。コートには返り血で赤く染まった箇所があり、手に持つ刀は全てを飲み込まんとする灰色をしていた。容姿から察するに、外の見張りは殺されたのだろう。
友人はチャカを弾いて、先制攻撃を試みる。一応友人は鉱結同好会の中でも、早打ちガンマンと呼ばれる程の腕前だ。俺は神速の刃と呼ばれており、二人揃えば怖いもの無しと言われたこともある。鉱結同好会の最高戦力を担うチームだ。多人数でも軽傷で勝利することも出来た。だが、目の前の化け物は別格だった。友人が打ったと認識するより早く、奴は友人の腕を切っていた。痛みを感じて悲鳴を上げるより、友人の首はストンと地面に転がって二度と喋らなかった。
「殺すから言って意味無いと思うが、刀捌きのコツを教えてやる。」
そう言って奴はどんどん俺に近づいてくる。俺も刀を抜くが、刀身が震えて狙いが定まらない。一か八か、袈裟斬りをするか。だが、そんな刀で奴に斬りかかっても、当然の如く側面を叩かれて、折られてしまう。
「弾丸や弾幕の捌き方なんだが、ぶっちゃけ弾丸より早く刀を振るうだけなんだよなあ。」
話が終わった所で、奴は俺に背を向ける。刃を持たない俺はただの一般人かよ。奴は縄を解いて、捕らえた組員に何かを渡す。すると黒い煙が発生したかと思えば、煙が消えると同時に組員は居なくなっていた。
俺は死ぬ。だが、それは友人の分を食らわせてからだ。俺は傍にあった鉄パイプを持つ。それに答えるように、奴は構えの姿勢に入る。いわゆる見切り勝負だ。最後に奴は俺に忠告する様にこう話した。
「俺を見た奴は既にその時、もうこの世にはいない。」
次の瞬間、目の前が真っ赤に染まる。
俺は現在、囚われた仲間の事情聴取に入っている。何を、どこまで話したのかを聞いているところだ。
「つまり、組織については何も話していないって言うことか?」
「ハっ、ハイ!貴方が不利益になることは、一切話していません!!だからどうか、命だけは勘弁を!!!」
俺は泣くカワウソ霊を見て思う。こいつは最近鬼傑組を抜けたカワチャムという名前だったが、上司のパワハラの影響でここまで影響を受けるとは。俺は幹部三人の顔を見て頷き、奴に手を伸ばす。そして………………カワチャムの頭を撫でてやる。
「よくやった。流石元鬼傑組の一員だ。その調子で頑張ってくれ。あと、体の傷はとっととメディカルセンターに行って治しとけよ。」
「あ、ありがとうございます!!」
俺は基本、体罰系は嫌いなのでこうして教えてやる事しか出来ない。だがそれで学んでくれるなら万々歳だ。そうして俺は事情聴取を終えて組長室に戻る。
戻る途中、ふとあるゲームをしたいと思った。最近世界のゴミ置き場で見つけたソフトだが、あの人気のインディーゲームなので是非とも遊びたい。勝てる自信は鼻から無いが、集中力向上にはなるだろう。しかし、そうはさせまいと、仲間から一通の手紙を受け取る。その送り主はどうやら組長室で待っているらしい。人を待たせるのもアレなので、俺は組長室のドアを開ける。そこに待っていたのはやはり、あの博士だ。黒いコートを着ており、白ネクタイを身につけている。資料を持って立っているが、足がどこにあるか確認できない。唯一違和感を抱くのは、顔にある両目の傷と奥が見えない黒い目ぐらいだろう。
俺は椅子に座る時、防音効果のスイッチを押してゲーミングチェアに座る。博士から貰った資料には兵器のテストデータが載っている。
「プラズマキャノンのテストデータとジェットパックのテストデータ、そしてコアブラストのテストデータ、どれも正常だ。君の部下は本当に素晴らしい。通常時のテストデータよりも遥かに性能が上だし、火力面の方も120%上昇している。」
「まあ、毎日俺もテストに参加しているし、何よりこれは仲間の努力の結晶だからな。」
データを過去と比べても、明らかに向上しているのが分かる。棒グラフは常に上に進み続け、数値も上だ。これなら決戦時でも大活躍間違い無しだ。黙々と報告を続ける博士だが、いつもは狭い部屋に閉じこもりっきりで人に合わないらしい。例え会ったとしても、問答無用で追い出されてしまうそうだ。
「そういえば、試作品零号三機はパーツ不足で最終決戦中にできるかもしれない。それ以外は目立った物はないよ。それと、前々から頼まれていたが君にはこれを渡そう。」
そう言ってカバンの中から渡してきたのは、四つの黒いUSBだった。丁寧に付箋まで着いているので、とても分かりやすい。
「一つは兵器開発の設計図、もう三つは……君の望んでいた物だ。それさえ言えばもう分かるね。では、失礼する。」
いつの間にか博士は煙となり、どこかに消えてしまった。異次元の世界から来たという博士だが、なぜこんなにも軍事提供してくれるのか。そこは深く考えない様にしておいた。人前かもしれないのに、人前で悪口を言うのは失礼だからな。博士は霊の一種だそうだが、あんなに気配がしない幽霊は初めてだ。とても開発中に死んだ博士とは思えない。
博士が去って一人きりになった俺は、ある物を机から取り出す。それは最近ハマり出した趣味の一環で、一度は引いてみたいと思う物だ。俺はギターを取り出して、早速引いてみる。人前に見せる勇気は無いので、いつも1人の時に引くのが日課である。
「〜♪生きる意味も希望も夢も捨てた。くだらない自尊心も捨てた。
残ったのは生きようともがいた傷。必死になって戦った傷。
全ては一巡し、何も変わらない毎日。〜♪」
「失礼します。入ってもよろしいでしょうか。」
突然ドアのノックが聞こえたので、慌てて俺はギターを隠し、真面目に応答する。(危ねぇー焦った(꒪ω꒪υ))ドアからマムシんが入って来て、手には資料を持っている。俺はマムシんから報告を受け、今後の行動に移る。
だが一つ気がかりな事がある。
「マムシん。最近の剛欲同盟、勁牙組鬼傑組の行動はどうだ。あ、あと残無とかも。」
「特にこれといった報告はありません。饕餮尤魔は血の池地獄で飲み明かし、天火人ちやりもゲームセンターでテトリスの日々。黒駒早鬼は……ご主人との昔話。三頭慧ノ子も霧雨魔理沙の家で昔話。吉弔八千慧は組の事で大忙し、孫美天も同様です。日白残無もこれといった動きなし、豫母都日挟美はまあ、大丈夫でしょう。」
一人馴染みのあるゲームをしているのが気になるが、とにかく作戦に異常なしと言う結論に至った。例え慧ノ子が霧雨魔理沙を連れて攻め込んだとしても、問題はなし。依然として我々に勝利は間違い無い。
兵器開発について話そうとしたが、やめておいた。マムシんは兵器の話になるとじょう舌になり、あの「huh?」と言っている猫の隣のヤギになるからな。その姿は舌をレロレロしながら意味不明な事を言うヤギそっくりだ。下手をすると1〜2,3時間は潰すことになるだろう。難しい顔を数分していると、マムシんはどこかに行ってしまった。考えやすいようにしてくれたのかどうかは分からないが、気を使わせてしまい申し訳ない気分になった。
あれこれ考えている内に、一つ思い出したことがあった。俺は内ポケットからある物を取り出す。それはスペルカードで、前々からどうしようか悩んでいたところだ。そういえば何故か増えている事に気がついた。最初は数枚程度だったが、今では20枚近くある。八千慧が言っていたが、スペルカードで強さが決まると言うのは信じて良さそうだ。1枚目は確定で【絶技 神裂】だがそこから先が出てこない。一応二枚目には
【電磁砲 遁走曲 】(エネル フーガ)三枚目には
【火災神 イフリート・クロス】が当てはまるが、自分自身が必殺技名そんなに言ってないのが仇になった。それからは試行錯誤で、出来るだけ早く、そして厨二病っぽくならない様に。技名を考える時は人って大体厨二病っぽくなってしまうので、とんでもなく苦戦した。ペンを走らせようやく20枚全て埋めたので、ココアシガレットで休憩をとる。大事なスペルカードは、再び内ポケットにしまって一服した。正直対峙するであろう敵を想像してのスペカなので、そこは俺次第になってしまう。しかし敵から学ぶのもまた一興、それで成長出来るなら結果オーライ。さて、一服の後はゲームだ。パソコンで採掘と作製をするゲームをやっていたが、しまいにはあきてしまう。その後は寝てしまい、記憶があやふやだ。案外、ゲーミングチェアで寝るのも悪くは無い。
定刻30分前に目覚め、俺は急いで組長室から出る。その後は会議を開き、各々装備を着る。するとヨシタカが話しかけてくる。
「組長、いや龍陽さん。」
「なんだ、どうした。」
「お互い、死ぬのはごめんッスよ。」
「ああ、もちろんだ。俺はお前さん達と一緒に食う飯は美味いんでね。」
俺達は意を決して戦場に向かう。それぞれ思考は違えど、目に灯す意思は一緒だ。