Coolier - 新生・東方創想話

第7話 プライドがある武士 プライドがない組員

2024/06/23 23:43:44
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俺はホテルの一室で仮眠してたところからしばらくして、
尤魔から連絡が入った。内容はA地区に巣くっている連中の地図だった。しかも組員一人一人の情報がまとめられており、流石の情報量だ。中でも組長のトキ三郎という鳥っぽい奴は異質だと書かれている。剣技を得意とし、これまで捌かれた組員はかずしれない程斬っているんだとか。とにかく用心してかかれと言うことは分かった、がどのくらいかは分からない。それは会っての、お楽しみと言うことだろう。俺はさっき手に入れたココアシガレットを咥えながら、ホテルを出た。



「あそこで間違いないか?」
「はい。あの『慶長組』という表札があるので間違いないです。」
俺はホテルを出た後、尤魔が回したであろう鷹の霊と覗き込む。入り口に組員五人、窓から見えるだけで十七人、奥の道場はもっといるだろう。全員が刀を持って見張りをして、中には二本持っている組員もいた。
「作戦は?」
「最初に私達が、入り口五人を眠らせます。そのうちに貴方様は組長のところに行って暗殺といった作戦です。」
「暗殺、か。尤魔に言っとけ。暗殺は好まない性格だと。」
「まあ、いいでしょう。作戦を無視してもしなくても結果さ
えあればいいと饕餮様は仰っていたので。」
兎にも角にも作戦はなしで、後始末は鷹の霊達がすることになった。早速入り口五人の、組員にカチコミの知らせと死を伝えに行く。



「よう、お前さん達。忙しそうで何よりだ。」
「なんだ貴様、ここは人間が立ち入っていい場所ではない。
場所を改めよ。」
「そうだ!貴様如きが立ち入っていい場所ではない!」
「それが立ち入っていいんだよ。これからお前さん達の組長シバきに行くからさ。」
「二言はないな。」
「これはトキ三郎様の侮辱と見なす。」
五人それぞれ刀を抜く。
「我が主のためお主の首、頂戴する!」
五人が一斉に刀を振るう。攻撃自体は大した事なく、単調な動きだが油断イコール死だ。徹底的に殺す。こいつらは資料で見た五人組で、連携攻撃を得意とする。つまり、だ。一人を潰せば後は流れ作業と言うことだ。俺は一人の喉仏に水の刀の先端を刺す。続いて二人の腹を割き、一人になった頭をかち割る。残された一人は怯えきった表情でこちらを見つめてくる。とどめをさそうとするとそいつは大声で叫んだ。
「敵襲ーー!!敵襲ーーー!!全員限界体制を取れええーー!!!」
やれやれ、面倒なことになった。争いは嫌いなのに、これでは戦闘狂みたいじゃないか。残った一人の首を斬ると既に通達済みのようだ。仕方ない、正面突破だ。



「うーい、カチコミだぞー。死にたくなければ組長だせー。(棒読み)」
そう言って勢いよくドアを蹴飛ばした。すると待っていたのは組員ではなく弾丸の嵐だった。咄嗟に水の防壁を出したので全弾受け止めることが出来たものの、中は大分切羽詰まった状況だ。息継ぎをする暇もない。機関銃の発射音と同時に俺はあの技を使う。
「王の鎮魂歌(キングレクイエム)」
そう、黒駒戦で発見した奇妙な冒険もどきの技だ。時は停滞している様に見え、組員を斬る時は、血すらゆっくりだった。
解除と同時に組員達は混乱し、やがて死んで行った。この容量で他の組員達も始末していき、血溜まりだけが残る道を辿り、ようやく道場っぽい場所に辿り着いた。
中は外見通り普通の道場で、窓からメトロポリスの光が差し込む。改めて見渡すと一人で中央に正座している武士がいた。
鎧を纏っており、手には刀を握っていた。
「君が、カチコミがてら私の子供達を殺したものかね?」
「まあそうだ。目に見える範囲は全部殺した。」
「それにしてもよく辿り着いたものだ。中には刀を握って数年で幹部になった者も居るというのに。」
するとトキ三郎は立ち上がる。独特な異質の覇気を持って。
「私はトキ三郎。慶長組の組長だ。お主よ、覚悟は出来てるか。我が組織に足を踏み入れた罪は重いぞ。」
「お前さんこそ、覚悟は出来てるか。俺に殺されるという覚悟を。もちろん、俺は出来てる。」
互いに刀を構え、居合の体制に入る。最も、相手はマジの武士だが。
「参る。」
その言葉と同時に戦闘は始まった。まず、トキ三郎の刃がこちらの首にあたる。俺は回避したので頸動脈を、ギリカスったぐらいで助かった。こちらからも刀の連撃を入れるも、全て交わされてしまう。明らかに刀の歴が違う。今の一撃で把握した。あの目は武士の目ではない。獲物を狩ろうとする虎の目だ。こんな奴に刀を握って数ヶ月足らずの初心者がかなうはずずがない。そう刀では、だ。こちらにはライスブレイカーという手札があるのでそれを軸に攻めればいい。
しかし甘かった。レーザーを打つも、なんとレーザーを跳ね返してきて対応されたのだ。
「お主のような、遠距離攻撃は慣れておる。銃は我にとっては無意味だ。諦めよ。」
「かと言って、諦める訳じゃあないんだよなあ。」
続けてライスブレイカーを打つも、またも弾き返されてしまった。そして黒駒すら耐えれなかったライスブレイカーの雨を全て弾き返された。お互いボロボロで疲れ果てている。
「だから……言っただろう…無駄…………だと。」
「いや、無駄ではなかったよ。こうしてお前さんの体力を根こそぎ取ってくれたんだからさ。」
そう、ライスブレイカーを打ったのはダメージ目的ではなく、体力狙いのためだった。俺は勝ちを確信して、とどめのライスブレイカーを放つ。



意識が飛びかける。なんだ?何が起きたんだ。確かに奴の腕を打ったはず……。しかし今体に穴が空いているのは俺の方だ。
「残念だったな。もう一度言おうか。我に銃は無駄だと。」
作戦通りかと思っていたが、実際に作戦通りだったのはむこうだった。地べたに倒れた俺を、嘴で拾い上げてトキ三郎は説明する。
「戦いの最中、我が弱っていたら敵は何をするか。そう、狙い撃ちだ。近距離では起き上がって攻撃されるかもしれんしな。若造には想像出来ん知識だ。」
そしトキ三郎の刀が、俺の喉仏を狙って突いた。俺は真っ赤な血しぶきをあげて倒れた。トキ三郎は刀を鞘に収める。
「死んで、子供達に懺悔するんだな。」
突然、ドォンという音が道場に響く。何事かとトキ三郎はその場を離れる。すると道場のドアが、何者かに叩き壊される。
「これはっ、水!?一体どこから!?」
「あ”ーしんど。(頭の中で il vento d'oroが流れる)」
俺はまだ出血中の肩を抑えながら言う。
「馬鹿な!確かに喉仏を貫いたハズだ!生きてるなぞ有り得ん!!」
「ああ、あれか。あれは陽炎だ。前にもこんな事あったっけ。まあそれより、足元心配した方がいいんじゃない?」
気づけば周りは水で溢れて、肩の高さまできている。刀相手ではこれが1番有効だ。足を捉え、動きを鈍くする。
「ぐっ、こんな所で!!くたばる訳には行かん!!!」
「そうか。じゃあ死ね。」
トキ三郎が水で溺れている間に水の刀で袈裟斬りにする。血を吹き出した後、水を消して溺れないようにした。先へ進もうとすると袈裟斬りにしたはずのトキ三郎が質問してきた。
「何故、……とどめを…刺さない……?水を…消さなければ…勝負は………着いていた…はずだ。」
「お前さんはいい武士だったから、と言っておこう。」



先に進むと、1つの刀が見えた。その刀は異様に長く、俺の身長の1,5倍ぐらいはあった。その刀を手に取ろうとするとトキ三郎が大声で止めようとした。
「ダメだ!!!その刀に触れては行かん!!!!大勢の死人を出すぞ!!!」
トキ三郎が言った時にはもう遅い。俺はその刀の刃を確認しようと抜いて見た。見た感じ、刀は全てを壊さんとする白銀の色で唸っているようだった。その光景を見たトキ三郎は驚愕した。
「嘘だろ?この我が使えなかった伝説の妖刀、
【村正】を使えるだと?そんなことは有り得………。」
トキ三郎は何か言いたげに事切れてしまった。



外に出ると、鷹の霊とカワウソの霊が待っていた。俺は任務完了の報告と入手した刀について質問した。
「なあこの刀、貰っていいか?結構気に入ったからさ。」
「…まあ、いいでしょう。ですがその前に、」
後ろから眼鏡をかけた鷹の霊とカワウソの霊が、入ってくる。
「一度、調べさせてもよろしいでしょうか。万が一、危険物だった場合放棄せねばなりません。」
俺は承諾して、刀をカワウソ達に渡す。そして後ろでは、拳銃や組員達の所有物等を外に出していた。中にはどでかい金庫を運んでいる奴もいた。
かくして俺の最初の任務は無事、完了した。帰っていいと言われたので、俺はココアシガレットを咥えながらその場を立ち去った。



『次のニュースです。昨日、4時13分頃、刀収集を目的としていた慶長組が何者かに惨殺されたと言う通報がありました。屋敷には、おびただしい数の死体があり、警察は無差別殺人事件として調査を進めています。また、事件当時、白いフードを被った人間を目撃していたと証言があり…』
俺はいつものビルで朝のニュースを聞く。今日は何故呼ばれたかと言うと、成功報酬の受け取りのためだ。今は三人で尤魔を待っているが、黒駒は退屈そうな顔、八千慧はまじまじとニュースを見ていて、正直……気まずかった。しばらく待っていると、尤魔が頑丈なバックを持ってやって来た。
「ほれ、成功報酬の1億だ頑張ったな。」
「あれ?成功報酬は20億って聞いたけど饕餮、思ってネコババしたのか?」
「残りの19億は私が頂きました。貴方達二人が破壊した土地代ですよ。」
「確かにそうだった。」と黒駒は笑いながら答えた。俺としては、猫に小判なので正直どうでもいい。
「そういえば研究班から渡すものがありました。」
そう言って八千慧は指パッチンをし、ガラスに覆われた村正をカワウソ達が運んできた。
「この刀、何やら貴方しか使えないようで。」
「?」
「言っても分からないなら本人も自覚してないと言う事でしょう。百聞は一見にしかずです。黒駒、触って見て下さい。」
黒駒は渋々刀に触れてみる。その瞬間、黒駒の右腕に切り傷が入り、手を離すと切り傷は治った。その場にいた全員が蒼白し、俺も内心ビビった。
「カワウソ達によるとこの刀、貴方が回収したそうですね。その時、刀は何も起こらなかった。持ち主が変わった瞬間、何故拒絶反応が出たのか、何故腕だけなのk……。」
「黒駒様!吉弔様!饕餮様!緊急事態です!!敵が攻め込んで来ました!!!かなり敵が強く、苦戦しています!!」
突然ボロボロのオオカミの霊がドアを開けて報告してきた。その瞬間俺も含め、四人の顔つきが変わる。
「分かった。すぐ行く。」
そう言った黒駒はいち早くテラスから飛び出した。緊急事態という事もあり残された俺達は急いで現場に向かった。



そこには想像を絶する光景が待っていた。動物霊が戦っているのは、水平線まで見える鬼達だ。各々が棍棒を振り回して、次々と動物霊達を蹴散らしている。
「これはまずいな。あんなに大量の鬼、何処で拾って来たんだ?」
「組長、すいません。自分がおっちょこちょいだったばかりに…。(泣)」
オオカミ側の言い分によると、地獄で観光していたところ、運悪く鬼の足にぶつかってコケさせてしまったらしい。その後鬼が仲間を呼んで今に至るっということだ。
「どうする?大量の鬼を止める策でもないのかよ!」
「私に頼っても、無意味という事を分かってですか?残念ながら無理です。」
「いや待て、無意味じゃないかもしれん。今の私達にはこいつがいるんだからな。」
そう言っ尤魔及び、八千慧と黒駒がこちらを見てくる。おいおいマジかよ。



「行けぇーー!!」
「やっちまえぇーーー!!!」
「臓物捻り潰せぇぇーーーーー!!!!」
この動物霊達はプライドの欠片もないのか。全軍撤退命令と同時に、戦場に立たされた俺は思う。こっちは命かけて戦うのに向こうは岩場で観戦か。よくリングで戦うプロレスラーの気持ちが分かる。肝心の鬼達はと言うと、敵が人間になったのを見て舐め腐っている。
「まじかよwこのガキに何が出来るんだって言うんだい!動物共よォ!!」
「わざわざ勝ちを譲ってくれるとは本当に優しいねぇwww」
うん。完全にキレた。絶対ぶっ殺す。俺はさっき貰った村正を抜いて構えの姿勢をとる。横一文字斬りとは本来、刀を早く振り真空を作り出し、攻撃するという剣技だ。だが、達人でもせいぜい二、三メートルが限界だという。しかしこの雷で肉体強化した体と、雷を纏った村正は限界など知らん。あの舐め腐った面向かって斬りたいが 致命傷に繋がらないので、よしておく。マンガで見た事があったので技名はオマージュとして入れよう。
【絶技 神裂】
次の瞬間、雷を纏った斬撃が鬼達を襲った。足と胴体が泣き別れ状態になり嘆く者や、その光景に怯える鬼もいた。そんなことお構い無しに、俺はとどめを刺すために刀を鞘に収める。
「去ね。クソ共。」
カチンと音と共に、胴体と足に電撃が走り、次々とブロック状の焼肉が出来上がる。残った鬼は捨て台詞を吐きながら、地獄に帰って行った。



「あ〜疲れた。さ、帰ろう。」
唖然とした表情をした尤魔達に、俺は別れを告げる。
めちゃくちゃ頑張って書きました。よろしければコメントと点数をお願いします。m(*_ _)m
SABAMESI
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