Coolier - 新生・東方創想話

理不尽あいてむくりえーしょん

2022/12/09 21:48:14
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「うぉおおおおおおおおおいうぁ! アリスうううっ!」
「なによ。また叫んでるの?」
「ああ、そうだぜ!」
「あんたもよく飽きないわね。で、一体なんなの」
「腹減った! なんか作ってくれ!」
「あいにく今、何もないから、食材調達してきなさい。そしたら持ってきた食材に応じた料理をこの不思議なレシピ本に従って作ってあげるわよ!」
「唐突のお使いイベントかよ!?」
「ほら、わかったなら早く行ってらっしゃい!」

 魔理沙は家から追い出されてしまった。

 ▽

 秋の魔法の森。秋だからと言って特に何も変わらない。魔法の森は一年中うっそうとしてジメジメしている。
 魔法の森は食材に乏しい。あるのはせいぜい怪しい草か怪しいキノコくらいだ。

「うーむ。キノコったって結構食べ飽きてるし……葉っぱ食ったってたいして腹の足しにならないし……どうしたもんか」

 魔理沙はすぐさま判断を下す。そう、魔法の森で食材を探すのは間違っていると。

「魔法の森がダメときたら……あそこだな」

 魔理沙が次にやって来たのは――

「さあここは、紅魔館の台所だ! ここなら大体の食材は手に入るはずだぜ! なんてったってここは食料の万国博覧会だからな! ではさっそく行くとするか!」

 妙な説明口調とともに、魔理沙は静まりかえった厨房の中へ侵入する。

「まだ夕食まで時間があるだけあって静かだな。それにしては良い匂い……! これはスパイスの香りか?」

 と、魔理沙が鼻をクンクンさせながら台所を進んでいたその時だ。

「害虫がいるみたいね。駆除しなきゃ」

 彼女の前に突如、銀髪のメイドが立ちはだかる。

「げっ! おまえは紅魔館メイド長の十六夜咲夜!」
「あら、この害虫、一丁前に喋るのね」
「なぜおまえがこんなところに!?」
「こんなところって……ここは私のテリトリーよ? 私がいても何らおかしくないでしょ」
「それもそうだな。……で、私になんの用だ?」
「それはこっちの台詞よ! 何の用よ」
「そりゃ決まってるだろ。ちょっと食材をあさりに来たのさ!」
「やるわけ無いでしょ! さっさと帰りなさい!」
「帰れと言われて素直に帰る奴はいないぜ!」
「なら力尽くで帰すまでよ!」

 彼女がそう言った途端、一瞬にして魔理沙の周りにはナイフで埋め尽くされる。

「うわぁああああ!? なんだこのおびただしい数のナイフは!?」
「これでチェックメイトよ。悪く思わないでね」

 ナイフが一斉に彼女に向かって襲いかかる。魔理沙はとっさに床に転がり前転してナイフをかわす。ナイフは一瞬で姿を消す。彼女が時を止めてナイフを回収したのだ。

「ちっ。あいつの時間を止める能力はやっかいだな! よし、ここはひとまず逃げるが勝ちだぜ!」

 魔理沙は一目散にその場から逃げ出した。去って行く彼女を見つめながら咲夜は思わず息をつく。

「やれやれ……あいつも懲りないわね……って、あら? ここにあった鍋がないわ……あ! まさか!?」


「……へっへっへ! この魔理沙様がタダで転ぶかっての! 悪いがこの鍋は頂いていくぜ!」

 そのまま魔理沙は、してやったりの表情で鍋を抱えて家に帰った。

「おう! 帰ったぜ! アリス」
「あらおかえり。魔理沙。で、食材は見つかった?」
「おう! これだ!」

 魔理沙は得意げに鍋を開けてアリスに見せる。

「ふむふむ。なるほど。これは……『カレー』のようね」
「そうだな。そんなじっと見なくても、すぐわかるよな」
「で、もう一つの食材は?」
「は? カレーで十分だろ?」
「ちょっと、一個だけじゃ料理できないじゃない。もう一つ何か持ってきなさいよ!」
「えー! これだけじゃだめなのかよ!?」
「ダメよ。二個以上って言ったでしょ! ルールは守ってよ」
「なんだよ。そのこだわりは!?」
「ほら、わかったなら早く行ってらっしゃい!」

 再び魔理沙は家を追い出されてしまった。

 ▽

「まったくおかしいじゃないか……カレー持ってきたんだから、そこは素直にカレーでいいじゃないか。なんで更に食材を集めなければならないんだ。そもそも不思議なレシピ本ってなんだ? アリスの奴、一体何を考えているんだ? 全くもって納得出来んぞ!」

 しかし納得出来なくても、食材を集めなくてはいけない。何故なら食材を集めなければ、このわがままな腹の虫を黙らせることは出来ないからだ。

「……というわけで私がしかたなくやってきたのはご存じ霊夢の家だ! 知っての通り奴は赤貧巫女だが、流石に何か食材くらいは……」
「誰が貧乏巫女よ!」

 魔理沙の目の前に、お祓い棒で素振りをする霊夢が立ちはだかる。

「おっと! 凶器を振りかざし早くも臨戦態勢の鬼巫女が私の前に立ちはだかった! 今宵のお祓い棒は血に飢えているというのか!」
「尻尾を巻いてとっとと帰れ! この×××ヤロー!」
「あっと!? これは放送コードぎりぎりアウトな、そんなアウトローな暴言を駆使する悪魔巫女が私に牙をむくというのか! 危うし! 霧雨魔理沙!」
「ごちゃごちゃうるさい! くらえ! 夢想封印!」
「うわぁああああああああああぁあああああ!? これは強烈だぁー! 鬼巫女必殺の一撃が直撃し、私の体は華麗にもんどり打って後頭部を壁に……げきおげふ……っ!?」

 後頭部をしこたまぶつけた魔理沙は、大の字になって倒れてしまう。

「そのまま3カウント奪ってやる!」

 好機とばかりに霊夢は彼女に覆い被さって抑え込む。しかし2.9秒というところで魔理沙は彼女をはね除ける。観客がいたら大いに盛り上がっていたことだろう。だが、あいにくこの場に観客はいない。ここには霊夢と魔理沙の二人の戦士しかいないのだ。孤高にして最上の決戦の舞台。はたまたここは幻想郷の巌流島か。

「……って、なんでプロレスごっこになってんのよ!?」
「知らん!! 乗ってきたそっちが悪い!」
「仕掛けてきたのはそっちでしょーが!」
「まあ、ノリって奴だ! と、いうわけでこいつは戦利品として頂いていくぜ!」

 魔理沙はどさくさに紛れて目の前にあった干し肉の切れっ端を掴む。

「あ! 私の貴重なタンパク源が!?」
「ちょっと借りるぜ!」
「返すつもりないくせに!」
「よくわかってるじゃないか。というわけで、それじゃ、あーばよぉー! 霊夢!」

 魔理沙は素早くホウキにまたがり、華麗に空へ舞い上がる。

「待てえええぇー! 魔理沙ああああぁー!」

 そのあとを霊夢が一心不乱にお祓い棒を振りかざし、ホーミング座布団弾を乱射させながら追いかける。

「まったく、往生際が悪いぜ。霊夢!」

 魔理沙はくるりと反転すると八卦炉を構える。

「マスタァアアア……スパアァアアアアアアアッー!!」

 極太レーザーが八卦炉からどか~んと景気よく発射され、その反動で彼女はぎゅいーんと急加速する。あっという間に霊夢の姿は見えなくなり、そのまま彼女は家にダイナミック帰宅を果たした。

 ▽

「おう! 帰ったぜ! アリス」
「あらおかえり。魔理沙。家の屋根突き破って帰ってくるなんて随分豪快な帰宅じゃない。でも、せめて玄関から帰ってきて欲しかったところだわ。直すの大変なんだから」
「ああ、すまんな。でも仕方ないぜ。こうするしかなかったんだ」
「そうなの。それじゃ仕方ないわね。で、食材は見つかったの?」
「おう! これだ!」

 魔理沙は得意げに干し肉をアリスに見せる。

「ふむふむ。なるほど。これは……『干し肉』のようね」
「そうだな。そんなじっと見なくても、すぐわかるよな」
「よし。食材は『カレー』と『干し肉』ね。それじゃさっそく料理に取りかかるわ」
「ああ、頼むぜ! 空腹で死にそうだ!」
「そんなんで死にやしないから大丈夫よ」

 ――しばらくして

「さあ、魔理沙。おまたせ! 終わったわよ!」
「待ってたぜ! さあ、一体どんなご馳走が私の欲求を満たしてくれるっていうんだ?」
「はい。これよ」
「んんん……?」

 アリスが差し出したのは、どこからどう見ても饅頭だった。恐る恐る魔理沙はそれを口にする。こしあんだった。

「おい、アリス! なんだこれは!?」
「見ての通り『饅頭』よ」
「カレーと干し肉はどこいった!?」
「さあ。このレシピ本通りに調合したらこれが出来たのよ」
「おまえ、今、調合って言ったな? まさか……」
「そう。その二つを調合したら『饅頭』になったのよ。良かったわね。あんた、こしあん好物でしょ?」

 すかさず魔理沙は彼女の持っている本を奪い取り、表紙のタイトルを確認した。それにはこう書かれていた。

【楽しい錬金術入門】

 魔理沙はその饅頭を一口で食い切り、咀嚼して飲み込むと渾身の力で叫んだ。

「今度はお茶が欲しいぃいいいいいぃぁああああうぅあああああ……っ!」
アリス「ちなみに『カレー』が食べたいなら『じゃがいも』と『にんじん』を調合するみたいよ」
魔理沙「そんなん知るかぁあああああああ!」
ミミモ
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コメント



0.190簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
勢いがありました
5.50名前が無い程度の能力削除
勢いしかありませんでした
あとオチがわからない
何か元ネタあるんですか?
6.80名前が無い程度の能力削除
勢いが良かっただけにオチがちょっと残念
7.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
8.100おーどぅ削除
「××ヤロー」というネタがわからなかった(変Tではないですよね?)けど饅頭食べたらお茶欲しくなってしまうというオチが面白かった
9.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです!勢いがすごかったです!