【傘が彼女(初期版)】の番外編です。(続き物)
番外編第一章妖魔の夜明け
夕焼け空の人里の広場では、少年が竹笛で子供達に演奏していた。人数は5~6人程だが、毎日演奏しているのだ。酷いときには人がいない場合もある。
演奏を終えると、子供の1人から飴玉を貰った。
「ありがとう。ありがたくもらっておくね。」
「頑張ってね!笛吹の兄ちゃん!」
「暗くなるから、早めに帰るんだよ。」
帰る準備をすると、小傘が迎えに来たようだ。少年に頭を撫でられてご機嫌である。小傘の手を繋いで家に帰る最中に、霊夢と遭遇した。どうやら、少年を探していたらしい。
「今度、神社で宴会があるから参加しなさい。小傘もいいわね?」
「勿論だよ~また、霊夢さんを驚かせていい?」
「今、退治されたいならしてもいいわよ。」
針を片手に構える霊夢に、小傘は慌てて少年の後ろに隠れた。苦笑している少年に、霊夢は溜め息をして帰っていった。
「毎回この茶番よく飽きないね?」
「何でだろうね。」
「帰ろうか。小傘姉ちゃん…」
「君はいつになったら、姉ちゃん呼びやめるの?」
小傘に言われても、少年は呼び捨てで呼ぶのは、慣れないので当分は、姉ちゃん呼びが暫く続くだろう。
「鍛冶屋の仕事は順調なの?」
「良い調子だよ。今度の原稿手伝ってもらって良いかな?」
「恐怖の話を考えるのは、大変だからね。」
小傘は今から1年前に、妖怪病を発病していた。妖怪が人間からの恐れを得られない状態が続くと、発病される妖怪の病である。そのため、今現在は恐怖の昔話の原稿を考えている。人間で言う、リハビリをしているのだ。
「原稿書いたら、霊夢さんに見てもらわないと…」
「焦ったらダメだよ。あの時は、本当怖かったんだから…」
「うん。焦らずに考えるよ!」
家に帰ると、早速小傘は恐怖昔話の原稿を考え始める。幻想郷の影響を受けない話を考えなければならないため、話の最後の落ちも力を入れる。
(包丁で切り刻まれる話で、落ちを考えても良いかな?)
考え方は人によるが…
少年は妖怪としての力を蓄えるため、能力の練習をしている。少年は小傘を助けるため、人里の保護権利を失った代わりに妖怪になる権利を獲得した。理由は、小傘を守りたいがために人間では、限界だと思い妖怪になったのだ。
(この話は…ん?落ちが思い付かない…)
小傘は昔話の落ちの部分がどうしても思い付かないようだ。そのため、能力の練習をしている少年に、何かアドバイスをしてもらうか考えている。
(でも…練習の邪魔したくないな…あの子が人間から妖怪化してまだ、1年も経ってないし…)
小傘の視線に気づいた少年は、練習を中断して小傘に視線を向ける。どうやら、何か困っていることに気づいたらしい。
「どうしたの?」
「この話の最後の落ちが思い付かなくて…」
「ん…?確かに、これだけだと…怖い話だよね。人によるけど…」
少年も落ちの部分を考えることにするのだが、中々思い付かないようだ。気分転換をするために、小傘と人里を出て散歩することに。
散歩すること1時間。空が暗くなって夜になると、野生の妖怪が活発に活動する時間帯である。
「今更だけどさ、君は妖怪になって後悔してない?」
小傘は悩んでいたのだ。少年が妖怪化して後悔しているのではないかと。少年は小傘を抱き締める。
「小傘姉ちゃん…後悔しないよ。だって、小傘姉ちゃんと対等になれたんだよ。妖怪としては、まだ未熟だけど…同じ時を一緒に歩めるんだ。」
「私は…バカだよ…本当は…君が、人間として生活してもらいたかった…妖怪に関わらないで…私なんて……んむ!?」
少年がキスをして、小傘の発言を無理矢理終わらせる。
「…んむ…ん…は、ちょっと、いきなり何を!?」
「そんなこと言わないで!僕は…出会ったときから、一目惚れだった。その時は、人間だったから…僕が紅妹さんを男だと勘違いしたときだって、悔しかった。正直、嫉妬もしたよ…だから、小傘姉ちゃんは自分のことを責めないでよ!」
「ありがとう……私と君は、絶対に離れない。」
少年と小傘はお互いに笑い合った。そして、散歩を終える頃には、夜が明けたのだった。
「綺麗な夜明けだよ…」
「小傘…そろそろ、帰ろう!」
「あ、姉ちゃん呼びやめてる!」
「もう良いかな。僕も妖怪として、活動しないとダメだし。」
小傘と少年は手を繋いで家に帰っていきました。
番外編第二章 小傘のリハビリ
家で小傘は原稿を書いていたのだが、疲れたので休憩していた。永琳から出された薬を飲むと、あることを思い出していた。それは、小傘が永遠亭を退院して、少年がまだ人間だった時の話である。
永遠亭から帰ってきた小傘
と少年は、家に入るとすぐに、少年が泣き出してしまったのである。小傘が退院して、家に帰るまで我慢していたようだ。
「もう大丈夫だからね。心配してくれて…ありがとう。」
「でも…あの時…あんなこと言わなかったら…」
「あの時の…だったら、私と人間を恐怖で…驚かす方法を一緒に考えて?そうしたら、許すよ。」
「うん…」
少年は小傘と一緒に、恐怖での驚かす方法を考えることにしたのだが、中々思い付かないようだ。気分転換に人里内を歩き回るが、それでも思い付かなかった。
「誰か、妖怪の知り合いに聞ければ…」
「妖怪じゃないけど、1人知り合いいたよ!」
少年と小傘は貸本屋の娘、本居小鈴が店番をしている鈴奈庵に訪ねた。小鈴は売り物で読書をしている。
「小鈴!久し振り!」
「小傘さん!今日は何をお求めに?」
「恐怖関係の話が書かれている本は無いかな?」
「怪談話の本があります。」
「怪談話?」
小鈴に本を見せてもらうと、外の世界の怪談話が書かれている外来本だった。
「小傘さん。隣の男の子は?」
「私の彼氏!」
「はぁ!?小傘さんに彼氏!えーと、何歳なんですか?」
小鈴は少年に年齢を聞くが、読書に夢中になっていて、聞いていない。
「え?年齢は…13だけど…」
「私より年下!?小傘さん。ちょっと、良いですか?」
「どうしたの?」
小鈴と小傘は本棚の裏で小さな声で会話する。
「13歳の彼氏…小傘さんが手を出したんですか?」
「出してないよ。告白されたんだ。」
「それは…おめでとうございます?」
少年は小鈴に見られているのに気づくと、視線を向ける。
「どうしたんですか?」
「何でもないわ。」
「そうですか。」
少年は本が決まったようで、小鈴に見せて会計する。選んだ本は音楽系と音に関する本だ。
「2冊ね。80銭になるわ。」
「これで…」
「丁度ね。2週間まで借りれるから。」
「小傘姉ちゃんは決まったの?」
小傘は3冊の会談話の本を選んだ。全部外来本である。
「外来本なんで…150銭になります。」
「外来本は高いんだね?」
外来本は外から流れてくる本のため、仕入れが難しく。値段が高くなるのだ。
「滅多に仕入れできないので、値段が高くなります。」
「それは仕方ないね。」
代金を払い、鈴奈庵を出ると、丁度お腹がなった。昼は何処かのお店で食べることにした。
「何にしようか?」
「何でも…」
「団子にする?」
「それで大丈夫。」
2人は近くの団子屋に向かう。
「どの団子にする?」
「三色団子で。」
小傘と少年は三色団子を頼んで、話し合いをする。
「何がいいかな…」
「怪談話は?」
「内容考えないとね。」
メモ用紙に必要なことを書き込んでいく。
「このくらいかな?」
団子を食べなからメモ用紙を見て、考えていく。そうしている内に、団子を食べ終わっていた。会計をして家に帰る。
「思い付かないね?」
「また明日も考えようよ。小傘姉ちゃん。」
少年と小柄は一緒に眠った。
過去を思い出した小傘は、原稿の続きをする。
(あの頃は…1年しか経ってないけど…あの子が妖怪になると…思わなかったな。)
すると、少年が帰ってきたようだ。
「おかえりなさい。今日も練習?」
「疲れたよ。妖怪は人間がいないと、存在が保てないから…」
「今日は…一緒に寝ない?」
「良いよ…小傘。」
少年と小傘は一緒に眠った。
番外編第三章 少年の買い物
少年は小傘に内緒でとある店で接客のバイトしていたのである。少年が妖怪であることは、人里の一部の人間以外には知られていないため、短い時間でもバイトさせてもらえている。
「そろそろ、今日は帰っても良いぞ。」
「はい。お先に失礼します。」
「明日で最後だけど、体調には気を付けろよ。」
「わかりました。」
店から出ると、外は日が沈んできていた。暗くなる前に家に帰る。小傘は帰りが遅いのか、帰ってきていないようである。
(遅いね…)
すると、漸く小傘が帰ってきた。しかも、雨が降っていたのか濡れて帰ってきたようだ。
「小傘!?どうしたの?」
「急に、大雨が降ってきて…クシュン!」
タオルを持ってきて、小傘の濡れた頭を拭いている少年は、小傘の服を見て急に後ろを向いて言った。
「小傘…すぐに着替えて!風邪引くよ…」
「何で後ろ…………ごめんね!」
急いで部屋に行き、着替えてくる小傘。少年は顔を真っ赤にしながら、落ち着かせる。
(小傘…あれは、無しだよ。落ち着かない…)
着替えを済ませた小傘はパジャマ姿で部屋から出てくる。
「む…見えてたんなら、先に言ってよ!」
「う…でもそれは…」
「それは?」
「……小傘の前で言うの…恥ずかしいよ…」
「そ、そうだよね!」(やっぱり、君は男の子だね。)
少年は小傘の表情に不機嫌になる。
「子供扱いしてない?」
「……………してないよ。」
「その間は何!?やっぱり、してる!」
少年が小傘の肩を掴んで、壁まで追い詰める。
「ちょっと…近いよ…待って!」
「嫌だ。子供扱いしたお仕置きだよ。」
「ちょっと…んむ!?」
少年は小傘にキスをすると、肩を叩いて抵抗するが、少年が小傘の耳に触れて、次第に力が抜けてしまう。
「ん…!」(もう…無理…)
抵抗する力が抜けた小傘を少年が支える。キスをやめると、小傘は気を失ってしまった。
「子供扱いしたからだよ。でも…やり過ぎたかな?」
少年は小傘が起きるまで待っているが、眠くなったようで、寝てしまった。
翌朝、小傘が目を覚ますと少年がいなくなっていた。
「ん?私寝てたの?思い出した!あの時…………う、恥ずかしいよ…」
あの時の少年の行動に、小傘は顔を真っ赤にしながら座り込んだ。すると、書き置きがあった。
「『出掛けてきます。夜までには帰ります…』用事でもあったのかな?」
小傘が目を覚ましている頃。少年は鬼の仮面と黒装束の姿になって、人里内を走っていた。
(買い物しなくちゃ…)
目的のお店に入ると、他のお客に怯えられてしまった。
「我は買い物に来ただけだ。警戒をやめてくれぬか?」
「………何をお求めに?」
「………贈り物をするのに…髪飾りを買いに来たのだ。何か…オススメ教えてくれぬか?」
少年が武器なしであることと、敵意がないことがわかり、冷静に質問してきた。
「髪飾りですか?」
「オススメを教えてくれぬか?」
別の客がやって来て、少年を見ると…
「妖怪でも、買い物するんですね。何かお困りですか?」
女性に声をかけられた少年が、オススメの髪飾りを教えてもらい、髪飾りを買って帰っていった。少年を監視する存在が現れた。
(あれが、妖魔の笛吹師…新聞に載せてみますか。)
その存在は姿を消した。
番外編最終章 笛吹師に浮気発覚!?
博麗神社の縁側で、小傘と霊夢がお茶を飲んでいると、上から新聞が落ちてきた。拾ってみると、文々。新聞の文字。
「霊夢さんは新聞読むんですか?」
「焼き芋の火種にしか使わないわね。読みたかったら、良いわよ。」
「お言葉に甘えて………は!?」
新聞を読んだ小傘が、黒いオーラを出しながら妖気を発生させている。
「ど、どうしたのよ…小傘?」
「新聞を読んでください…」
霊夢に新聞を渡すと、記事の内容を読んでみる。そこには、驚くべき内容が書かれていた。
文々。新聞 妖魔の笛吹師に熱愛発覚!?
先月の昼未明に、人里のとある店に、妖魔の笛吹師と人里の女性が密かに来店していることが、発覚しました。
2人は楽しそうに買い物をしていることから、デートをしているのではないかと、予想されます。今後は、2人の関係を調べる方針である。
「これは…流石に…庇えないわね。小傘…!?」
小傘は暗黒面に誘われたかのように、黒い傘を構えている。そして、黒いオーラが物凄く、霊夢でも止められそうにない。
「霊夢さん…私…ちょっと、あの子を殺りに行ってきますね。」
「気をつけてね…」
小傘は博麗神社を出ていくと、家にいる少年に黒い傘で、殴り掛かった。
「ちょっと小傘!?なんなの!?」
「白状してよ!浮気者!」
「僕が浮気!?何のことだよ!?」
「う…私が好きだと言っておきながら…浮気するなんて…先月、人里の女性と買い物してたでしょう!」
「先月…買い物したよ。でもそれは…」
「もう、知らない!」
少年の発言に小傘は、弁解も聞かずに家を出ていってしまった。
(浮気?誰だ?そんなデタラメを情報を小傘に与えたのは?絶対に後悔させてやる…)
少年は人里内を歩いていると、既に噂になっていて、人里全体に広まっていた。少年からしたら大迷惑な話である。
「少年!この新聞を見たか?大変なことになってるぜ!めでたい話だがな…妖怪と人間だからな…」
「見せてもらってもいいですか?」
「この新聞だせ!」
少年は人里の人間から新聞を見せてもらうと、文々。新聞の文字に注目する。
(文々。新聞…確か、天狗が発行している新聞だったな…)
情報先が天狗の新聞だとわかると、新聞を返して一旦家に戻り、短刀、竹笛…招待を隠すための仮面をつける。ちなみに、妖魔の笛吹師で行動する時は、黒頭巾と鬼の仮面をしている。服装も黒だ。
(絶対に許さない!)
妖怪の山では謎の侵入者によって天狗達が大慌てしていた。
「どうしたんだ!?」
「妖怪の山に侵入者です!?鬼の仮面を付けた者が…」
伝令天狗が大天狗に報告する。侵入者の鬼の仮面をしていることを説明すると、何処からか笛の音色が聞こえてきて、大天狗が気を失ってしまった。
「貴様!?」
「我は妖魔の笛吹師…この新聞は誰がやっている?大迷惑だ!」
「そ、それだけのことで…」
「この新聞が原因で、既に人里の1人が被害を受けている。この新聞で勘違いが起きたせいでな!」
「な!?わかった…今から連れてくるから、待ってくれ!」
伝令天狗が飛び去っていった。少年は完全にぶちギレている。
(あの新聞が原因で、女性が被害を受けている。)
少年が人里で調べている時に、泣いている女性を発見した。その女性は先月、少年が一緒に買い物を頼んだ女性だった。
(何があったんだろ?僕が関係しているのは、間違いない。)
女性の話だと、あの新聞が原因で、夫から別居させられたそうだ。
「あの妖怪からは只買い物での相談を受けただけたのに…お店の店員さんが証人よ!」
(調べもせずに、新聞に出すとか非常識だろ!)
少年は待っていると、射命丸文が縛られた状態で、犬走椛に連れてこられた。椛は少年に謝罪する。
「調べもせずに、新聞を出してどうするつもりだ!」
「申し訳ありません!」
「此方も済まなかった。天狗の半数を気絶させて…後日謝罪に改めて向かわせてもらう。我は生まれたばかりでな。人里の人間に危害を加える者は、誰であろうと許さない。」
少年は妖怪の山から降りて姿を消した。その頃、小傘は魔法の森に来ていた。
(冷静に考えてみたら、あの子が浮気するはずないのに…家に帰れないな…)
後悔していると、小傘の目の前に少年がいたのだ。逃げようとするが、小傘の腕を掴んだ。
「離してよ!私は君に酷いことを…」
「僕は…気にしてないよ…」
「嘘だ!あの時…私は……んむ!?」
少年は小傘の唇を奪い静かにさせる。
「んむ…ダメ!…お願いだから…離してよ…1人にさせて…」
「絶対に離すもんか!逃がさないよ!」
「どうして!?君に…酷いことをしたのに…」
「なら、どうして…小傘は魔法の森にいたの?博麗神社に匿ってもらうのも、出来たはずでしょ…自分を責めないで…」
少年は泣きそうな小傘を抱き締めながら、説得する。
「一緒に帰ろう…大丈夫だからね。」
「許してくれるの?」
「仕方ないな…泣きたかったら、泣いて良いよ…」
小傘は少年に抱きついて、泣き叫んだ。
「ごめんね…ごめんなさい…」
「もう…大丈夫だから。泣き止んで…」
少年は小傘の頭を撫でると、泣き止んだ。
「買い物の相談を頼んでただけなんだ…」
「え…相談?」
懐から高価な細長い箱を取り出すと、小傘に渡した。
「私に?」
「本当は…誕生日とかに渡したかったんだけど…小傘の誕生日知らなくて…だから、開けてみて。」
箱を開けると、薄い緑色の傘の形をした髪飾りが入っていた。小傘は少年のプレゼントに驚いた。
「これ…どうしたの?」
「プレゼント代…稼いたんだ。」
小傘は髪飾りを付けると、少年に見せてみる。
「可愛いよ…小傘…」
「そ、そうかな?」
少年が小傘に近づいて、それを察した小傘は目を閉じてキスする。
「んむ…ん……そ、そろそろ、帰ろうよ。」
「そうだね。」
手を繋いで、少年と小傘は家に帰っていきました。
その後…少年と小傘は何時までも幸せに暮らしたそうです。
終わり
「何者ぞ、こなたへ来たるは?」と書かれた笛に応じて、闇の中から曰く「10点です」