【八雲紫のプロジェクト演目会議編】の続きです
妖怪屋敷計画の演目会議から一ヶ月後。博麗神社の境内では妖怪屋敷のオープン準備をしている最中だ。それにともない、妖怪屋敷以外の屋台も便乗して準備していた。
「お祭りみたいね。」
「妖怪屋敷だけでは味気無いから他の屋台も用意すれば、此方にもお客が流れてくるわ。グッズ売場は準備できてるわよ。」
「紫。宣伝とかはどうしたのよ?」
「射命丸文の【文々。新聞】に頼んだわ。講読者が増えたって喜んでたわ。」
八雲紫は妖怪屋敷の宣伝に、射命丸文の【文々。新聞】を利用して宣伝をしていたようだ。開催場所が博麗神社のなので、安全策は問題ない。博麗霊夢もこのイベントの開催協力として、博麗神社の通り道全てに強力の結界を何重にも施したそうだ。
「結界の問題は無いけど、あうん達三人の方は大丈夫だったわけ?」
「あの三人の演目には苦労したわ。予定を前倒しで練習させたから大丈夫よ。」
「あうんが言ってたわね。『練習がきつかったですよ…』」
「そうなの?厳しすぎたかしら。そろそろ、最終調整してくるわね。藍の仕事も見ておかないと。」
紫は藍の仕事を確認しないといけないため、隙間に消えた。それを見届けると、霊夢は神社で御守りやくじ引きの準備をするので一旦戻る。
妖怪屋敷の中にいる八雲藍はグッズ売場の確認をしている。商品棚にはキーホルダーが置いてあった。種類は、あうん、お燐、橙の三種類である。
「商品はこれくらいかな?」
「グッズが少ないですね。これを作ってみたのですが…」
古明地さとりが妖怪屋敷のグッズ売場にやって来て、あうん、お燐、橙の人形を作ってきたようだ。
「……アリスさんに手伝ってもらいました。」
「それは凄いな。」
「……それでは、仕事がありますので……」
「夕方にお燐達の演目があるからな。」
「………わかりました。」
グッズ売場の準備が順調に進んでいる頃。劇場のステージでは、あうん、お燐、橙の三人がリハーサルをしていた。
「これなら、本番も大丈夫だよ。」
お燐が鞠を橙にパスしながら言った。橙は空中に浮いているあうんにパスする。
「緊張するね。」
「そうですね。」
あうんは鞠をステージの中心にある箱に狙って蹴ると、鞠が箱の中に入り、練習を終える。
「リハーサルは大丈夫です!」
「神社に一度戻りましょう。」
三人が神社に戻る。その頃。境内では妖怪屋敷オープンセレモニーが始まっていた。司会は霊夢になっている。
「えーと。今から妖怪屋敷がオープンします…楽しんで……下さい。」
「霊夢!元気がないぜ!」
「巫女様!」
セレモニーが終わり、妖怪屋敷の門が開かれた。
「霊夢。御苦労様。」
「私がオープンセレモニーの司会なのよ!?しかも、大勢の前で!?」
「目立つこともしないとね。霊夢も今日は楽しみなさい。この引換券をあげるわ。屋敷の食堂と屋台で使えるから。」
紫は霊夢に引換券10枚渡した。妖怪屋敷の食堂、屋台等で使える物だ。霊夢は引換券を受け取ると、屋台を見て回った。
妖怪屋敷のグッズ売場には少なからずお客が来ているようだ。霊夢はちょっと覗いてみることに。
「お客来たわね。藍はグッズ売場の売り子をしてるの?」
「河童にも手伝ってもらってるが人手が足りないんだ。それと、美鈴は食堂で料理をしてもらってる。」
「料理をしてるわけね。私も行こうかしら。」
「霊夢が?お金は?」
「紫から貰ってるわよ。司会代で引換券貰ったけど。」
食堂の引換券は妖怪屋敷のオープン一週間前に文々。新聞講読者に限定発売された券だ。
「なら納得だな。」
「それじゃあ。」
霊夢は美鈴が働いている食堂に向かうと、行列ができていた。人里の人間も並んでいた。霊夢は行列の最後尾に並んで待つ。
「十分待ち。すぐね…」
順番を待っていると、食堂に入ることができた。調理場では美鈴が料理をしていた。美鈴の他にも、妖精が料理を運んでいる。
(さて、何頼むかな?屋台もあるし、余り手の込んだ料理を頼んで迷惑になることは避けないと。)
メニューを選んでいると、セットメニューの一覧を見て何を食べようか悩む霊夢は、餃子セットを選ぶようだ。
「いらっしゃいませ。御注文は決まりましたか?」
「それじゃあ…餃子セット1つ。」(何で魔理沙が白のエプロンをしてるのよ!?しかも、前のしゃべり方だし…)
霧雨魔理沙が白のエプロン姿で、男勝りなしゃべり方ではない魔理沙を見て、動揺しながらも注文する。
「畏まりました。餃子はニンニク有りと無し。どちらか選べますが…」
「無しで。」
「暫く御待ちくださいね。」
一礼した魔理沙が行ったのを見届ける。
(あれは誰だ!?魔理沙に化けた妖怪か!?)
霊夢は今も混乱していると、注文していた餃子セットが来た。
「餃子が多いわね…ゆっくり食べますか。」
餃子セットの料理は、餃子が10個、ご飯、お味噌、胡瓜の漬物が付いたセットだ。
「肉汁が凄い!野菜も結構入ってるわ。」
ゆっくり食べながら、減らしていく。
「漬物も美味しい…」
一時間くらいで食べ終わると、会計にいく。
「餃子セットが1つ。引換券か現金どちらで御支払ですか?」
「引換券。」
「引換券は2枚となります。」
霊夢は持っていた引換券を渡して、食堂から出た。満腹になって満足した霊夢。演目が始まるのは夕方の5時。今の時刻は10時。
「お昼は…1時なってからでいいわね。」
一度、妖怪屋敷を出る。暇潰しに屋台を見て回る。人里の人間が出してる屋台もあるが、妖怪や妖精の屋台も出ている。
「うーん。悩むわね…」
「どうしたんですか?霊夢さん。」
「早苗。来てたのね?」
霊夢の後ろにいたのは、守矢神社の祝風、東風谷早苗だ。早苗の手にはストラップが握られていた。妖怪屋敷のグッズ売場で買ったようだ。
「早苗だけなの?あの神様は?」
「諏訪子様は風邪を引かれまして…」
「わかったわ。楽しんでこいと言われたのね?」
「はい…」
早苗の困り顔に、霊夢は暫く行動を共にする。すると、屋台の方で言い争いが聞こえてきた。霊夢と早苗が見に行くと、人里の若者と十六夜咲夜が言い争っていた。
「祭りの最中に何やってんのよ!」
「博麗の巫女!?」
「霊夢。助かったわ…」
霊夢が争いを止める。
「部外者は邪魔なんだよ!」
「神社の敷地内で言い争いしないでもらえる?迷惑よ。咲夜。話を聞かせてもらうわよ。」
霊夢は咲夜から事情を説明してもらう。レミリアが屋台でジュースを売っていたら、若者に喧嘩を売られたようだ。咲夜はレミリアの代わりに喧嘩を買ってしまい、言い争いになった。
「吸血鬼が作ったジュースなんて飲めるかよ!」
「何だ……」
「咲夜!私に任せて。レミリア。ジュース買うわ。」
霊夢はレミリアに引換券を1枚渡した。ジュースを貰うと、若者の目の前で飲み干した。
「トマトジュースね。レミリアらしいわ。」
「霊夢!私が作ってるジュースは様々な野菜をブレンドしたものよ。」
「な!?」
「レミリアの疑いは晴れたわ。紫には悪いけど、あの人間を人里まで送ってくれないかしら?責任なら私に押し付けていいから。」
「わかったわ。」
「な!?妖怪が本性を…」
霊夢は若者が言い終わる前に、殴り飛ばして気絶させた。完全に怒っている。その証拠に、レミリア、咲夜、早苗の三人は、霊夢の殺気に恐怖している。
「紫。残りの引換券で屋台の食べ物と食堂の適当に持ち帰りでお願い。」
紫に引換券を4枚渡して、神社に戻ろうとするが、早苗に止められる。
「何?」
「帰るんですか?」
「……一人にさせて。」
霊夢は早苗の手を振りほどいて、神社に戻った。
「紫さん。霊夢さんは…」
「大丈夫だわ。今は一人にさせてあげましょう。それにしても、霊夢が殺気を出すなんて久し振りね。」
「え!?」
「霊夢が殺気を出すなんて、本気で相手を殺す以外にしか、出さないんだけど。成長したわね。」
紫の爆弾発言に、驚愕する三人。
「私は頼まれているから、また後で。」
隙間で姿を消した。レミリア、早苗、咲夜の三人は霊夢に何か持っていこうと決め、食堂に向かった。
時刻は午後4時。霊夢は神社の裏手でしゃがんでいた。何も考えずに時間だけが過ぎていく。
(やっちゃたかな…他の人のいる前で…)
「霊夢さん!」
早苗が近づいてきた。霊夢を探して裏手に来たようだ。
(早苗!?何で…)
霊夢はパニックになるも、早苗が近づいてくるので、いつもの平然とした表情をした。
「ここにいましたか。そろそろ、演目の時間になりましたよ。一緒に見に行きましょう。」
「そうね…」
霊夢は歩き出そうとしたら、早苗に腕を掴まれてしまい動けない。後ろに振り返り、早苗の方を見ると抱き締められてしまった。
「早苗!?ちょっと…」
「霊夢さんのことを嫌う人はいません。」
「何が…言いたいのよ…私は、嫌われたってなんとも……んむ!?」
霊夢は早苗に口を塞がれ、状況を理解した。キスされているのだと。
「ん…早苗…やめ…んむ…は…何すんのよ早苗!」
「やっと、いつもの霊夢さんに戻りましたね。」
「だ、だからって…キスしなくてもいいじゃないの!?」
「誰も霊夢さんを嫌いませんよ。私は霊夢さんが好きですよ。」
早苗の発言に霊夢の顔が赤らめて、後ろを向いてしまった。恥ずかしかったようだ。
「な…い、行くわよ!時間が過ぎちゃうわ!」
「そうですね。霊夢さん!」
早苗と霊夢は劇場に向かった。
霊夢と早苗が妖怪屋敷の劇場に向かっている頃。劇場のステージ裏では、魔理沙が出し物の最終確認をしていた。
「魔理沙。大丈夫なの?練習なしの本番で。」
「練習ならしたじゃないか。パチュリーの特殊空間?の中で…」
魔理沙は妖怪屋敷のオープン前日まで、紅魔館、図書館の主…パチュリー・ノーレッジの協力で出し物の練習をしていたのだ。
魔理沙の発言していた特殊空間とは、外の時間は1時間だが、特殊空間内では1年間経過する時空魔法を使ったのだ。勿論だが、紫の協力が無ければ不可能な魔法で、年齢は変わらない。
「あの空間内で合計30年間練習したぜ!」
「今回だけの特別よ。本も全部返してもらったから。」
まもなく、演目が開始される。
劇場の薄暗く雰囲気のあるステージでは、司会の紫が開始の宣言をするところだった。
「それでは、妖怪屋敷名物のステージを楽しんでくださいね。」
紫が姿を消すと、ステージが暗くなって目の前が真っ暗になった瞬間。光の出現と同時に魔理沙がステージに出現した。
「私は魔女の魔理沙だぜ!今回は私の可愛い三人の使い魔を紹介するぜ!」
魔理沙は何も入っていない少し大きめな箱を3つ用意すると、観客達に誰も入っていないことを確認させる。
「さあ!私の使い魔、出てこい!」
箱の中からあうん、橙、お燐の三人が箱から出現して、ステージに出てきた。魔理沙の方に向いてあうんが頭を下げる。
「魔理沙様!お呼び出しに参上しました!何なりとご命令を…」
「あうんは主に忠実だね…疲れないかな?どう思う…だいだい?」
「お燐!?何でだいだい呼ばわり!?橙て呼んでよ!」
魔理沙が橙とお燐の喧嘩を止める。だが、喧嘩をやめずに続けると、魔理沙が怒った。
「喧嘩をやめないなら…今すぐにでも、猫に戻してやろうか!どうなんだい…」
「魔理沙様…!?冗談ですよね!?」
「私が冗談嫌いなのは、知ってるよな?橙とお燐?」
魔理沙が橙とお燐に笑みを浮かべながら近づく。ステージが何故か、肌寒いような感じがしてくる。
「御許しください!魔理沙様!何でもするので…」
「そうか…わかった。三人にチャンスをやろう。」
「ちょっと!?私は関係無いですよね!?」
あうんが魔理沙に抗議するが、魔理沙には関係無いようで。
「あうん、橙、お燐は私の使い魔だ。勿論、責任も仲良く三等分だ。反論は無しだ。あうんも犬に戻されたくはないだろ?」
「………わかりました。何をすればよろしいですか?」
「三人には蹴鞠を15回挑戦してもらう。出来たら許してやらなくもないよ。」
三人は集まって話し合う。暫くして、覚悟を決めたようだ。魔理沙から鞠を貰うと、お燐が鞠を軽く何回か蹴り続けて、橙に蹴り渡す。
「蹴鞠は…難しいんだよね。」
難しいと発言しながらも、ジャンプしながら蹴って、鞠を高くあげる。それをあうんが飛んで、下にいるお燐に蹴り飛ばした。
「危ないよ!?私に恨みでもあるの!?」
鞠をあうんに飛ばして怒った。
「喧嘩したから魔理沙様に怒られたんだよ!」
鞠が魔理沙の方に飛んできた。あうんのコントロールが悪いのか、スピードが上がっている。
「危ないね…」
黒い布を鞠目掛けて飛ばすと、鞠が跡形もなく消滅した。三人はヤバそうな表情をして、魔理沙を見る。
「お前達三人の今日のおやつは、ワライダケの串焼きだよ。」
「そんな!?」
「御許しください!」
「貰って良いんですか!?」
橙の発言に、あうんとお燐が転けた。
「欲しかったの!?」
「やっぱり変わってるね。橙は…」
「それじゃあ、罰にならないじゃないか………と、思ったら時間が来たようだぜ!今回はここまでだ。再び、このステージで会おうぜ!」
ステージから光が放って、あうん、橙、お燐、魔理沙の四人が光と共に姿を消した。
「ステージは楽しんでいただけたかしら?これにて、妖怪屋敷を終了します。屋台は夜遅くまでやってるので、再び…お祭りを楽しんでください。人里に帰る時は、事前に渡したスキマメダルを割れば、安全に人里に帰れますよ。ありがとうございました。」
観客席から拍手が鳴り響いた。
妖怪屋敷イベント終了後。紫と藍は神社の境内で、お酒を飲んでいた。長かった計画の終了に満足したような表情をしている。
「お疲れ様でした。紫様。」
「長かったわね。」
「この屋敷をどうするのですか?」
「少し考えるわ。皆に報酬を渡しておいてね。」
「畏まりました。」
霊夢は神社の屋根の上で横になりながら、夜の月を見ていた。今現在は宴会中で霊夢だけは宴会に参加しなかった。
(嫌いな人はいないか…報酬貰ったけど…どうしようかな?)
何かを思い付いたのか、思いきって使うことにした。
エピローグ
妖怪屋敷企画から半年後。境内に建設されていた屋敷は、紫のスキマに保管された。
「取り壊すのは、勿体無いからね。それでも、良かったの?報酬の一部を宴会や人里の寺子屋の資金として寄付したときいたわよ?」
「なんかね…わからないのよね。贅沢する意味が…生活費として一部貰ったから良いわ。」
妖怪屋敷終了後に、霊夢は報酬の七割を宴会や人里の寺子屋の資金として寄付したのだ。
「納得したなら良いわ。」
紫は姿を消した。霊夢は神社の縁側でお茶を飲み、変わらない日常を過ごしたそうだ。
終わり
妖怪屋敷計画の演目会議から一ヶ月後。博麗神社の境内では妖怪屋敷のオープン準備をしている最中だ。それにともない、妖怪屋敷以外の屋台も便乗して準備していた。
「お祭りみたいね。」
「妖怪屋敷だけでは味気無いから他の屋台も用意すれば、此方にもお客が流れてくるわ。グッズ売場は準備できてるわよ。」
「紫。宣伝とかはどうしたのよ?」
「射命丸文の【文々。新聞】に頼んだわ。講読者が増えたって喜んでたわ。」
八雲紫は妖怪屋敷の宣伝に、射命丸文の【文々。新聞】を利用して宣伝をしていたようだ。開催場所が博麗神社のなので、安全策は問題ない。博麗霊夢もこのイベントの開催協力として、博麗神社の通り道全てに強力の結界を何重にも施したそうだ。
「結界の問題は無いけど、あうん達三人の方は大丈夫だったわけ?」
「あの三人の演目には苦労したわ。予定を前倒しで練習させたから大丈夫よ。」
「あうんが言ってたわね。『練習がきつかったですよ…』」
「そうなの?厳しすぎたかしら。そろそろ、最終調整してくるわね。藍の仕事も見ておかないと。」
紫は藍の仕事を確認しないといけないため、隙間に消えた。それを見届けると、霊夢は神社で御守りやくじ引きの準備をするので一旦戻る。
妖怪屋敷の中にいる八雲藍はグッズ売場の確認をしている。商品棚にはキーホルダーが置いてあった。種類は、あうん、お燐、橙の三種類である。
「商品はこれくらいかな?」
「グッズが少ないですね。これを作ってみたのですが…」
古明地さとりが妖怪屋敷のグッズ売場にやって来て、あうん、お燐、橙の人形を作ってきたようだ。
「……アリスさんに手伝ってもらいました。」
「それは凄いな。」
「……それでは、仕事がありますので……」
「夕方にお燐達の演目があるからな。」
「………わかりました。」
グッズ売場の準備が順調に進んでいる頃。劇場のステージでは、あうん、お燐、橙の三人がリハーサルをしていた。
「これなら、本番も大丈夫だよ。」
お燐が鞠を橙にパスしながら言った。橙は空中に浮いているあうんにパスする。
「緊張するね。」
「そうですね。」
あうんは鞠をステージの中心にある箱に狙って蹴ると、鞠が箱の中に入り、練習を終える。
「リハーサルは大丈夫です!」
「神社に一度戻りましょう。」
三人が神社に戻る。その頃。境内では妖怪屋敷オープンセレモニーが始まっていた。司会は霊夢になっている。
「えーと。今から妖怪屋敷がオープンします…楽しんで……下さい。」
「霊夢!元気がないぜ!」
「巫女様!」
セレモニーが終わり、妖怪屋敷の門が開かれた。
「霊夢。御苦労様。」
「私がオープンセレモニーの司会なのよ!?しかも、大勢の前で!?」
「目立つこともしないとね。霊夢も今日は楽しみなさい。この引換券をあげるわ。屋敷の食堂と屋台で使えるから。」
紫は霊夢に引換券10枚渡した。妖怪屋敷の食堂、屋台等で使える物だ。霊夢は引換券を受け取ると、屋台を見て回った。
妖怪屋敷のグッズ売場には少なからずお客が来ているようだ。霊夢はちょっと覗いてみることに。
「お客来たわね。藍はグッズ売場の売り子をしてるの?」
「河童にも手伝ってもらってるが人手が足りないんだ。それと、美鈴は食堂で料理をしてもらってる。」
「料理をしてるわけね。私も行こうかしら。」
「霊夢が?お金は?」
「紫から貰ってるわよ。司会代で引換券貰ったけど。」
食堂の引換券は妖怪屋敷のオープン一週間前に文々。新聞講読者に限定発売された券だ。
「なら納得だな。」
「それじゃあ。」
霊夢は美鈴が働いている食堂に向かうと、行列ができていた。人里の人間も並んでいた。霊夢は行列の最後尾に並んで待つ。
「十分待ち。すぐね…」
順番を待っていると、食堂に入ることができた。調理場では美鈴が料理をしていた。美鈴の他にも、妖精が料理を運んでいる。
(さて、何頼むかな?屋台もあるし、余り手の込んだ料理を頼んで迷惑になることは避けないと。)
メニューを選んでいると、セットメニューの一覧を見て何を食べようか悩む霊夢は、餃子セットを選ぶようだ。
「いらっしゃいませ。御注文は決まりましたか?」
「それじゃあ…餃子セット1つ。」(何で魔理沙が白のエプロンをしてるのよ!?しかも、前のしゃべり方だし…)
霧雨魔理沙が白のエプロン姿で、男勝りなしゃべり方ではない魔理沙を見て、動揺しながらも注文する。
「畏まりました。餃子はニンニク有りと無し。どちらか選べますが…」
「無しで。」
「暫く御待ちくださいね。」
一礼した魔理沙が行ったのを見届ける。
(あれは誰だ!?魔理沙に化けた妖怪か!?)
霊夢は今も混乱していると、注文していた餃子セットが来た。
「餃子が多いわね…ゆっくり食べますか。」
餃子セットの料理は、餃子が10個、ご飯、お味噌、胡瓜の漬物が付いたセットだ。
「肉汁が凄い!野菜も結構入ってるわ。」
ゆっくり食べながら、減らしていく。
「漬物も美味しい…」
一時間くらいで食べ終わると、会計にいく。
「餃子セットが1つ。引換券か現金どちらで御支払ですか?」
「引換券。」
「引換券は2枚となります。」
霊夢は持っていた引換券を渡して、食堂から出た。満腹になって満足した霊夢。演目が始まるのは夕方の5時。今の時刻は10時。
「お昼は…1時なってからでいいわね。」
一度、妖怪屋敷を出る。暇潰しに屋台を見て回る。人里の人間が出してる屋台もあるが、妖怪や妖精の屋台も出ている。
「うーん。悩むわね…」
「どうしたんですか?霊夢さん。」
「早苗。来てたのね?」
霊夢の後ろにいたのは、守矢神社の祝風、東風谷早苗だ。早苗の手にはストラップが握られていた。妖怪屋敷のグッズ売場で買ったようだ。
「早苗だけなの?あの神様は?」
「諏訪子様は風邪を引かれまして…」
「わかったわ。楽しんでこいと言われたのね?」
「はい…」
早苗の困り顔に、霊夢は暫く行動を共にする。すると、屋台の方で言い争いが聞こえてきた。霊夢と早苗が見に行くと、人里の若者と十六夜咲夜が言い争っていた。
「祭りの最中に何やってんのよ!」
「博麗の巫女!?」
「霊夢。助かったわ…」
霊夢が争いを止める。
「部外者は邪魔なんだよ!」
「神社の敷地内で言い争いしないでもらえる?迷惑よ。咲夜。話を聞かせてもらうわよ。」
霊夢は咲夜から事情を説明してもらう。レミリアが屋台でジュースを売っていたら、若者に喧嘩を売られたようだ。咲夜はレミリアの代わりに喧嘩を買ってしまい、言い争いになった。
「吸血鬼が作ったジュースなんて飲めるかよ!」
「何だ……」
「咲夜!私に任せて。レミリア。ジュース買うわ。」
霊夢はレミリアに引換券を1枚渡した。ジュースを貰うと、若者の目の前で飲み干した。
「トマトジュースね。レミリアらしいわ。」
「霊夢!私が作ってるジュースは様々な野菜をブレンドしたものよ。」
「な!?」
「レミリアの疑いは晴れたわ。紫には悪いけど、あの人間を人里まで送ってくれないかしら?責任なら私に押し付けていいから。」
「わかったわ。」
「な!?妖怪が本性を…」
霊夢は若者が言い終わる前に、殴り飛ばして気絶させた。完全に怒っている。その証拠に、レミリア、咲夜、早苗の三人は、霊夢の殺気に恐怖している。
「紫。残りの引換券で屋台の食べ物と食堂の適当に持ち帰りでお願い。」
紫に引換券を4枚渡して、神社に戻ろうとするが、早苗に止められる。
「何?」
「帰るんですか?」
「……一人にさせて。」
霊夢は早苗の手を振りほどいて、神社に戻った。
「紫さん。霊夢さんは…」
「大丈夫だわ。今は一人にさせてあげましょう。それにしても、霊夢が殺気を出すなんて久し振りね。」
「え!?」
「霊夢が殺気を出すなんて、本気で相手を殺す以外にしか、出さないんだけど。成長したわね。」
紫の爆弾発言に、驚愕する三人。
「私は頼まれているから、また後で。」
隙間で姿を消した。レミリア、早苗、咲夜の三人は霊夢に何か持っていこうと決め、食堂に向かった。
時刻は午後4時。霊夢は神社の裏手でしゃがんでいた。何も考えずに時間だけが過ぎていく。
(やっちゃたかな…他の人のいる前で…)
「霊夢さん!」
早苗が近づいてきた。霊夢を探して裏手に来たようだ。
(早苗!?何で…)
霊夢はパニックになるも、早苗が近づいてくるので、いつもの平然とした表情をした。
「ここにいましたか。そろそろ、演目の時間になりましたよ。一緒に見に行きましょう。」
「そうね…」
霊夢は歩き出そうとしたら、早苗に腕を掴まれてしまい動けない。後ろに振り返り、早苗の方を見ると抱き締められてしまった。
「早苗!?ちょっと…」
「霊夢さんのことを嫌う人はいません。」
「何が…言いたいのよ…私は、嫌われたってなんとも……んむ!?」
霊夢は早苗に口を塞がれ、状況を理解した。キスされているのだと。
「ん…早苗…やめ…んむ…は…何すんのよ早苗!」
「やっと、いつもの霊夢さんに戻りましたね。」
「だ、だからって…キスしなくてもいいじゃないの!?」
「誰も霊夢さんを嫌いませんよ。私は霊夢さんが好きですよ。」
早苗の発言に霊夢の顔が赤らめて、後ろを向いてしまった。恥ずかしかったようだ。
「な…い、行くわよ!時間が過ぎちゃうわ!」
「そうですね。霊夢さん!」
早苗と霊夢は劇場に向かった。
霊夢と早苗が妖怪屋敷の劇場に向かっている頃。劇場のステージ裏では、魔理沙が出し物の最終確認をしていた。
「魔理沙。大丈夫なの?練習なしの本番で。」
「練習ならしたじゃないか。パチュリーの特殊空間?の中で…」
魔理沙は妖怪屋敷のオープン前日まで、紅魔館、図書館の主…パチュリー・ノーレッジの協力で出し物の練習をしていたのだ。
魔理沙の発言していた特殊空間とは、外の時間は1時間だが、特殊空間内では1年間経過する時空魔法を使ったのだ。勿論だが、紫の協力が無ければ不可能な魔法で、年齢は変わらない。
「あの空間内で合計30年間練習したぜ!」
「今回だけの特別よ。本も全部返してもらったから。」
まもなく、演目が開始される。
劇場の薄暗く雰囲気のあるステージでは、司会の紫が開始の宣言をするところだった。
「それでは、妖怪屋敷名物のステージを楽しんでくださいね。」
紫が姿を消すと、ステージが暗くなって目の前が真っ暗になった瞬間。光の出現と同時に魔理沙がステージに出現した。
「私は魔女の魔理沙だぜ!今回は私の可愛い三人の使い魔を紹介するぜ!」
魔理沙は何も入っていない少し大きめな箱を3つ用意すると、観客達に誰も入っていないことを確認させる。
「さあ!私の使い魔、出てこい!」
箱の中からあうん、橙、お燐の三人が箱から出現して、ステージに出てきた。魔理沙の方に向いてあうんが頭を下げる。
「魔理沙様!お呼び出しに参上しました!何なりとご命令を…」
「あうんは主に忠実だね…疲れないかな?どう思う…だいだい?」
「お燐!?何でだいだい呼ばわり!?橙て呼んでよ!」
魔理沙が橙とお燐の喧嘩を止める。だが、喧嘩をやめずに続けると、魔理沙が怒った。
「喧嘩をやめないなら…今すぐにでも、猫に戻してやろうか!どうなんだい…」
「魔理沙様…!?冗談ですよね!?」
「私が冗談嫌いなのは、知ってるよな?橙とお燐?」
魔理沙が橙とお燐に笑みを浮かべながら近づく。ステージが何故か、肌寒いような感じがしてくる。
「御許しください!魔理沙様!何でもするので…」
「そうか…わかった。三人にチャンスをやろう。」
「ちょっと!?私は関係無いですよね!?」
あうんが魔理沙に抗議するが、魔理沙には関係無いようで。
「あうん、橙、お燐は私の使い魔だ。勿論、責任も仲良く三等分だ。反論は無しだ。あうんも犬に戻されたくはないだろ?」
「………わかりました。何をすればよろしいですか?」
「三人には蹴鞠を15回挑戦してもらう。出来たら許してやらなくもないよ。」
三人は集まって話し合う。暫くして、覚悟を決めたようだ。魔理沙から鞠を貰うと、お燐が鞠を軽く何回か蹴り続けて、橙に蹴り渡す。
「蹴鞠は…難しいんだよね。」
難しいと発言しながらも、ジャンプしながら蹴って、鞠を高くあげる。それをあうんが飛んで、下にいるお燐に蹴り飛ばした。
「危ないよ!?私に恨みでもあるの!?」
鞠をあうんに飛ばして怒った。
「喧嘩したから魔理沙様に怒られたんだよ!」
鞠が魔理沙の方に飛んできた。あうんのコントロールが悪いのか、スピードが上がっている。
「危ないね…」
黒い布を鞠目掛けて飛ばすと、鞠が跡形もなく消滅した。三人はヤバそうな表情をして、魔理沙を見る。
「お前達三人の今日のおやつは、ワライダケの串焼きだよ。」
「そんな!?」
「御許しください!」
「貰って良いんですか!?」
橙の発言に、あうんとお燐が転けた。
「欲しかったの!?」
「やっぱり変わってるね。橙は…」
「それじゃあ、罰にならないじゃないか………と、思ったら時間が来たようだぜ!今回はここまでだ。再び、このステージで会おうぜ!」
ステージから光が放って、あうん、橙、お燐、魔理沙の四人が光と共に姿を消した。
「ステージは楽しんでいただけたかしら?これにて、妖怪屋敷を終了します。屋台は夜遅くまでやってるので、再び…お祭りを楽しんでください。人里に帰る時は、事前に渡したスキマメダルを割れば、安全に人里に帰れますよ。ありがとうございました。」
観客席から拍手が鳴り響いた。
妖怪屋敷イベント終了後。紫と藍は神社の境内で、お酒を飲んでいた。長かった計画の終了に満足したような表情をしている。
「お疲れ様でした。紫様。」
「長かったわね。」
「この屋敷をどうするのですか?」
「少し考えるわ。皆に報酬を渡しておいてね。」
「畏まりました。」
霊夢は神社の屋根の上で横になりながら、夜の月を見ていた。今現在は宴会中で霊夢だけは宴会に参加しなかった。
(嫌いな人はいないか…報酬貰ったけど…どうしようかな?)
何かを思い付いたのか、思いきって使うことにした。
エピローグ
妖怪屋敷企画から半年後。境内に建設されていた屋敷は、紫のスキマに保管された。
「取り壊すのは、勿体無いからね。それでも、良かったの?報酬の一部を宴会や人里の寺子屋の資金として寄付したときいたわよ?」
「なんかね…わからないのよね。贅沢する意味が…生活費として一部貰ったから良いわ。」
妖怪屋敷終了後に、霊夢は報酬の七割を宴会や人里の寺子屋の資金として寄付したのだ。
「納得したなら良いわ。」
紫は姿を消した。霊夢は神社の縁側でお茶を飲み、変わらない日常を過ごしたそうだ。
終わり
シリーズは最初から追っていましたが、無事に大団円を迎えられてよかったです
序盤であれだけ頑張っていた藍があまり出てこなかったのがちょっと心残りでした
きっと舞台裏でガッツポーズしてるのだと思うことにしました