真夜中の博麗神社では、霊夢が次々と出現してくる妖怪軍勢と戦闘していた。霊夢は妖怪を確実に討伐するために、魔封じの針を妖怪に突き刺すと、妖怪は消滅する。
咲夜は時を止めながら、近くの妖怪の集団に十数本のナイフを一度に投げる。時を進めると、投げられた十数本のナイフが次々と妖怪を刺して討伐していく。
魔理沙は霊夢と咲夜が、倒し損ねた妖怪を魔法薬の入った小瓶をばら蒔き、確実に仕留めていく。
「霊夢、咲夜。妖怪はどうなった?」
「一応、倒したわ。真夜中に攻めに来るとは思わなかったけど。」
「妖怪は消滅してるわね。不自然だわ。」
「黒幕は来てない。あの妖怪は偵察なのかしら?」
三人は境内の針やナイフを片付ける。文は神社の上空から妖怪が攻めに来ないか監視をしている。
「文。境内は終わったわ。」
「今のところ異常は無いわ。」
境内の片付けが終わり、三人は戦闘で疲れて眠ってしまった。小鈴は眠れないようで、境内に出ていた。
「小鈴さん…眠れないんですか?」
「妖怪との戦闘を見たら眠れなくなって…」
「小鈴さんは妖魔本を集めてましたね。」
「…………妖怪に興味があったんです。妖怪は人間を喰らう存在なのは…わかってるんですけど…」
小鈴は前々から妖怪に興味を持ち、妖魔本を集め続けていたのだ。だが、妖魔本は人間が所有するのは、余りに危険である。
「小鈴さんは……妖怪に…なりたいですか?」
「………………」
「やめましょう。この話は…霊夢さんが起きてますしね。」
霊夢は物凄い睨みで文を警戒して、小鈴の前に出る。
「文!小鈴ちゃんを妖怪にしたいの!?この意味がわかるわよね?」
「そんなことしませんよ。紫さんの敵になりたくありません。」
「……私が見張るわ。文と小鈴ちゃんは寝てて。」
霊夢の言葉に甘えて、文は眠るが、小鈴だけは起きていた。まだ、眠れないらしい。
「小鈴ちゃんは…眠くなったら…寝ていいからね。」
霊夢は小鈴の頭を撫でながら、抱き寄せる。一瞬吃驚したが、抵抗せずにおとなしくしている。
「お姉ちゃん……ごめんなさい…霊…」
「お姉ちゃんで良いわよ。そう…呼びたいんでしょ?」
「お姉ちゃん…怖かったよ…」
小鈴は霊夢に抱き締められたまま、涙を流して泣いた。
「大丈夫…私が小鈴ちゃんを守ってあげるから。」
その頃。守矢神社では、妖怪軍勢の襲撃に備えていたのだが、一切の襲撃がなく不気味な雰囲気が漂っていた。
「妖怪が襲撃に来ない!?どうなっての?別の場所を襲ってるのでしょうか…」
「不気味すぎるね。異変の黒幕の考えが…」
早苗、諏訪子の二人が警戒している中、伝令係の天狗がやって来て、二人に報告する。
「早苗様、諏訪子様…伝令で御座います。妖怪軍勢が
博麗神社に襲撃中。博麗の巫女殿、十六夜咲夜殿、霧雨魔理沙殿が交戦中です。」
「博麗神社!?援軍はどうしたんですか?」
「それが…」
「僕が援軍を撤回したのさ…」
守矢神社に霖之助が現れた。右手には妖魔本を持って、林之助の瞳が赤く染まっている。
「早苗…気をつけな!あの男は操られてる。」
「僕が此処に来たのは、交渉するためさ。この妖怪の山から誰も出なければ…誰一人殺さない。上層部はこの交渉を受け入れた。射命丸文には、博麗神社に通達するように仕向けた。」
霖之助の策で、妖怪の山からの援軍が不可能になったのは、それが原因である。
「貴方は逃げられませんよ!」
「僕を捕まえても構わないが…妖怪軍勢は人里の人間達が妖怪化したものだ。意味わかるね?」
「それが本当なら…」
「妖怪化された人間を殺す。但し…異変が解決すれば、妖怪化された人間は元の姿に戻る。僕を捕まえないことだね。」
「卑劣な!諏訪子様…どうすれば。」
「く…伝令係。誰一人妖怪の山から出ないように通達して!」
「……畏まりました。諏訪子様。」
「さて、明日は殺戮祭の始まりだ!」
翌朝。博麗神社は不自然な静けさに包まれていた。境内に妖魔本を持った人間達がいるのだ。それも人里の人間達だ。
「どうして、人里の人間が…」
「僕がやったのさ。」
人間達が道を開けると、霖之助が霊夢の目の前に現れた。魔理沙は霖之助の存在に近付こうとしたら、霊夢に止められた。
「魔理沙!霖之助さんは操られてる!危険よ!」
「そんな……!?」
「でも、人里の人間を使って何を…」
霊夢、魔理沙、咲夜は、霖之助の狙いがわからないが、警戒を緩めない。霖之助は妖魔本を捲ると、妖気が漂い、妖魔本を持つ人間に取り付き、妖怪化させた。
「な!?人間が…妖怪化!?」
「何て…霊夢。この状況は…」
咲夜が霊夢の方を見ると、霊夢の表情は暗く、瞳に光が消えて漆黒に染まる。
「私は博麗の巫女…幻想郷の掟に従い、人妖を討つ…」
「霊夢さん…やめてください!あの人達は…」
「小鈴!霊夢に近付いてはダメだ!」
小鈴が霊夢に近寄ろうとして、魔理沙に止められる。
「どうして…人里の人達が…殺されちゃうんですよ!?」
「人里の人間は…妖怪になってはならない掟だ。どんな原因があってもだ!」
霊夢は魔封じの針を妖怪化した一体の妖怪に刺すと、妖怪は消滅した。消滅した妖怪を見て、魔理沙の表情が凍り付いた。
「咲夜…昨日の討伐した妖怪…人間だぜ…しかも…人里の人間だ…」
「昨日の妖怪が…人里の人間!?」
そう…魔理沙の発言通り、真夜中の妖怪軍勢との戦闘は、全て人里の人間達が妖怪化したものだった。だが、人里の人間は歴史から隠されたはずである。
「どうして…」
「簡単なことさ。歴史から隠される前に、妖魔本を一部の人里の人間に配っただけのこと。」
霊夢は針を林之助に投げると、持っていた妖魔本で受け止め妖魔本は消滅。霖之助は丸腰になるのだが、妖魔本は操られてる人間も持っているので、霖之助は近くにいた人間の妖魔本を回収する。
「どうすれば…」
「妖怪を討伐…【夢想封印】」
霊夢は妖怪に向けて、弾幕を放ったが妖魔本が妖怪の目の前に現れた。弾幕が妖魔本に命中して消滅するが、妖怪は無傷だ。
「あの妖怪は、人里の人間達…だが、幻想郷の掟で…霊夢は妖怪化した人間を討伐しなければならない。殺るしかないか…小鈴。」
「なんですか…」
「神社の中で隠れるんだぜ!」
魔理沙はパチュリーから貰った魔法薬を取り出す。
「魔理沙…その薬は、パチュリー様の…」
「霊夢だけに…責任を押し付けることはしないぜ!私だって、同族殺しの実行者だ!」
魔理沙は覚悟を決めて、魔法薬を飲み、五分間魔理沙の魔力量が無限になる。魔理沙の魔力が境内に漂い、妖魔本が次々と消滅する。
「妖魔本が!?だが、妖怪が消えたわけではない…」
「なら、妖怪達を討伐するぜ!」
「この妖怪達は人間だぞ!討伐出来るわけが…」
「同族を討伐するわけだからな。地獄行きは確定だぜ!フルパワーだぜ…」
ミニ八卦炉に魔力を集中させる。無限に魔力が溢れるので、悲鳴をあげている。
「消し飛びやがれ!【ファイナルマスタースパーク】!」
ミニ八卦炉から数倍以上の威力の虹の閃光を放ち、妖怪軍勢、霖之助を襲う。霊夢は正気に戻り、魔理沙の後ろに退避する。
「霊夢は正気に戻ったようね。」
「咲夜。私に何が…」
「人里の人間が妖怪化したことで、貴女は正気を失ってたのよ。」
「妖怪はどうなったの?」
「魔理沙が終わらせるはずよ。最後の切り札を使ったわ。」
ミニ八卦炉から虹の閃光が消えた。それと同時に、八卦炉が砕け散った。無限の魔力には耐えきれなかったようだ。魔理沙はその場で座り込む。
「流石に…疲れたぜ…」
「魔理沙……。あれ……嘘でしょ!?」
霊夢が視線を向ける先には、無傷の霖之助の姿があった。しかも、持っているのは妖魔本ではない。禍々しい妖気が漂う版画を所持していた。
「あの版画は!?」
「どうしたの?小鈴ちゃん…」
「この異変は…私が…原因…あの版画を使って、製本を…」
霖之助が所持していた版画は、半年前に小鈴が男性から依頼されて、版画の内容を製本にしたものだった。小鈴はあの大量の妖魔本を知らずの内に、作らされていたのだ。
「私が…」
「小鈴!異変の発生はお前が原因じゃないぜ!」
「魔理沙さん…」
「小鈴ちゃんは悪くないわ。」
「お姉ちゃん…」
「妖怪は消滅したが、この版画を使えば…」
「させるか!【ファイナルマスパースパーク】」
「ミニ八卦炉無しで!?」
虹の閃光が版画に命中する。版画の一部が欠けたのだ。
「欠けただけか……く!?時間切れだぜ……」
魔法薬の効力が切れて、倒れるところを咲夜に支えられる。
「無理しないの。」
「咲夜、霊夢…あの版画が妖怪の本体だぜ!」
「わかったわ…霊夢!後ろに下がって。」
「やらせん。【妖魔の盾】」
霖之助の目の前に、禍々しい妖気で作られた盾が出現する。
「【時を止まれ】」
咲夜以外の時を止めた。今動けるのは咲夜のみになった。霖之助の前と後ろに大量のナイフを等間隔にセットする。
「これで倒せなかったら、死ぬわね…【そして時は動き出す】」
時を進めると、セットされていたナイフが、霖之助に発射される。
「く!?」
咲夜の大量のナイフが盾を貫いて、版画に命中すると。粉々に砕け散り、操られていた霖之助は解放された。
「く!?僕が人間だったら、絶対死んでる…」
「霖之助さん!?操られて無いわよね!?」
「記憶はあるよ…迷惑をかけた。」
「霖之助さんに責任は無いわ。暫くは神社に泊まりなさい。博麗の巫女として、霖之助さんを異変の被害者として保護するわ。」
「霊夢。助かるよ…少し…寝る。」
霖之助は神社の一室で眠った。異変が解決されるまでの間。丸一日操られていたのだ。無理はない。
「魔理沙…大丈夫?」
「魔法は使えなくなった。薬の代償でな…」
魔理沙は異変解決のために、魔法薬を飲んで代償も覚悟していた。後悔はないはずなのに…
「霊夢…暫く泊めてくれ。今の私じゃ…空も飛べない。」
「良いわよ。咲夜…悪いけど、神社で待ってて。私は小鈴ちゃんと鈴奈庵に行くわ。」
「霊夢さん?」
咲夜に神社を任せると、霊夢と小鈴は鈴奈庵に向かう。上空からも確認するが、あの妖魔本の気配は感じられない。
「小鈴ちゃんは大丈夫?」
「早く寝たいです。」
「急ぐわ。」
鈴奈庵に到着する。霊夢は小鈴を寝かせてから、人里に妖怪がいないかどうか確認する。
「怪しいところはないわね。」
霊夢は小鈴と一緒に眠ることに。
真夜中の鈴奈庵に、あの禍々しい妖気が再び発生した。発生した妖気がなんと、白髪の少年に姿を変えた。
「やっと、表に出られたぜ!あの版画を持ち出す前に、鈴奈庵に置いて正解だった。」
少年は小鈴に近付く。
「俺様の目的を果たすとするか。」
「そうは、させないわよ!」
少年の後ろに、霊夢の姿があった。後ろを振り向かずに、霊夢に話し掛ける。
「どうして、俺様の存在に気づいた。」
「違和感があるのよ。咲夜のナイフが簡単にあの版画を破壊したことがね。あんたの本当の目的は、小鈴ちゃんに憑依すること。だから、百冊もの製本を依頼したのよ。その間に憑依するために。答えてもらうわよ。」
「俺様の負けだ。勝者の命令に従うぜ。」
「あんたの能力と、異変を起こした理由を話してもらうわ。」
「珍しいな。詳しく話せだなんてよ。」
少年は笑いながら、霊夢の発言に興味を持った。
「良いだろ。俺様の能力は【形あるものに憑依する程度の能力】この異変で、俺様が憑依したのは、本、版画、半妖の男の三つだ。」
「小鈴ちゃんを狙った理由は?」
「あの小娘は、ありとあらゆる文字を読むことが出かる。小娘に憑依して、少しずつ幻想郷を支配するつもりだったのさ。」
「最後に…貴方の存在。」
「俺様は古代の亡霊だ。とある男に敗北し、気がついたら幻想郷にいたわけだ。」
少年は全てを語り終わると、霊夢に手を向ける。
「貴様だけでも…【パラサイトマインド】」
少年は霊夢を対象に、能力を発動するが弾かれた。
「残念だったわね。私には効かないのよ。」
「俺様の負けにしといてやるぜ。たがな…いつかまた、幻想郷を支配してやる。」
少年は姿を消し、異変は解決された。
咲夜は時を止めながら、近くの妖怪の集団に十数本のナイフを一度に投げる。時を進めると、投げられた十数本のナイフが次々と妖怪を刺して討伐していく。
魔理沙は霊夢と咲夜が、倒し損ねた妖怪を魔法薬の入った小瓶をばら蒔き、確実に仕留めていく。
「霊夢、咲夜。妖怪はどうなった?」
「一応、倒したわ。真夜中に攻めに来るとは思わなかったけど。」
「妖怪は消滅してるわね。不自然だわ。」
「黒幕は来てない。あの妖怪は偵察なのかしら?」
三人は境内の針やナイフを片付ける。文は神社の上空から妖怪が攻めに来ないか監視をしている。
「文。境内は終わったわ。」
「今のところ異常は無いわ。」
境内の片付けが終わり、三人は戦闘で疲れて眠ってしまった。小鈴は眠れないようで、境内に出ていた。
「小鈴さん…眠れないんですか?」
「妖怪との戦闘を見たら眠れなくなって…」
「小鈴さんは妖魔本を集めてましたね。」
「…………妖怪に興味があったんです。妖怪は人間を喰らう存在なのは…わかってるんですけど…」
小鈴は前々から妖怪に興味を持ち、妖魔本を集め続けていたのだ。だが、妖魔本は人間が所有するのは、余りに危険である。
「小鈴さんは……妖怪に…なりたいですか?」
「………………」
「やめましょう。この話は…霊夢さんが起きてますしね。」
霊夢は物凄い睨みで文を警戒して、小鈴の前に出る。
「文!小鈴ちゃんを妖怪にしたいの!?この意味がわかるわよね?」
「そんなことしませんよ。紫さんの敵になりたくありません。」
「……私が見張るわ。文と小鈴ちゃんは寝てて。」
霊夢の言葉に甘えて、文は眠るが、小鈴だけは起きていた。まだ、眠れないらしい。
「小鈴ちゃんは…眠くなったら…寝ていいからね。」
霊夢は小鈴の頭を撫でながら、抱き寄せる。一瞬吃驚したが、抵抗せずにおとなしくしている。
「お姉ちゃん……ごめんなさい…霊…」
「お姉ちゃんで良いわよ。そう…呼びたいんでしょ?」
「お姉ちゃん…怖かったよ…」
小鈴は霊夢に抱き締められたまま、涙を流して泣いた。
「大丈夫…私が小鈴ちゃんを守ってあげるから。」
その頃。守矢神社では、妖怪軍勢の襲撃に備えていたのだが、一切の襲撃がなく不気味な雰囲気が漂っていた。
「妖怪が襲撃に来ない!?どうなっての?別の場所を襲ってるのでしょうか…」
「不気味すぎるね。異変の黒幕の考えが…」
早苗、諏訪子の二人が警戒している中、伝令係の天狗がやって来て、二人に報告する。
「早苗様、諏訪子様…伝令で御座います。妖怪軍勢が
博麗神社に襲撃中。博麗の巫女殿、十六夜咲夜殿、霧雨魔理沙殿が交戦中です。」
「博麗神社!?援軍はどうしたんですか?」
「それが…」
「僕が援軍を撤回したのさ…」
守矢神社に霖之助が現れた。右手には妖魔本を持って、林之助の瞳が赤く染まっている。
「早苗…気をつけな!あの男は操られてる。」
「僕が此処に来たのは、交渉するためさ。この妖怪の山から誰も出なければ…誰一人殺さない。上層部はこの交渉を受け入れた。射命丸文には、博麗神社に通達するように仕向けた。」
霖之助の策で、妖怪の山からの援軍が不可能になったのは、それが原因である。
「貴方は逃げられませんよ!」
「僕を捕まえても構わないが…妖怪軍勢は人里の人間達が妖怪化したものだ。意味わかるね?」
「それが本当なら…」
「妖怪化された人間を殺す。但し…異変が解決すれば、妖怪化された人間は元の姿に戻る。僕を捕まえないことだね。」
「卑劣な!諏訪子様…どうすれば。」
「く…伝令係。誰一人妖怪の山から出ないように通達して!」
「……畏まりました。諏訪子様。」
「さて、明日は殺戮祭の始まりだ!」
翌朝。博麗神社は不自然な静けさに包まれていた。境内に妖魔本を持った人間達がいるのだ。それも人里の人間達だ。
「どうして、人里の人間が…」
「僕がやったのさ。」
人間達が道を開けると、霖之助が霊夢の目の前に現れた。魔理沙は霖之助の存在に近付こうとしたら、霊夢に止められた。
「魔理沙!霖之助さんは操られてる!危険よ!」
「そんな……!?」
「でも、人里の人間を使って何を…」
霊夢、魔理沙、咲夜は、霖之助の狙いがわからないが、警戒を緩めない。霖之助は妖魔本を捲ると、妖気が漂い、妖魔本を持つ人間に取り付き、妖怪化させた。
「な!?人間が…妖怪化!?」
「何て…霊夢。この状況は…」
咲夜が霊夢の方を見ると、霊夢の表情は暗く、瞳に光が消えて漆黒に染まる。
「私は博麗の巫女…幻想郷の掟に従い、人妖を討つ…」
「霊夢さん…やめてください!あの人達は…」
「小鈴!霊夢に近付いてはダメだ!」
小鈴が霊夢に近寄ろうとして、魔理沙に止められる。
「どうして…人里の人達が…殺されちゃうんですよ!?」
「人里の人間は…妖怪になってはならない掟だ。どんな原因があってもだ!」
霊夢は魔封じの針を妖怪化した一体の妖怪に刺すと、妖怪は消滅した。消滅した妖怪を見て、魔理沙の表情が凍り付いた。
「咲夜…昨日の討伐した妖怪…人間だぜ…しかも…人里の人間だ…」
「昨日の妖怪が…人里の人間!?」
そう…魔理沙の発言通り、真夜中の妖怪軍勢との戦闘は、全て人里の人間達が妖怪化したものだった。だが、人里の人間は歴史から隠されたはずである。
「どうして…」
「簡単なことさ。歴史から隠される前に、妖魔本を一部の人里の人間に配っただけのこと。」
霊夢は針を林之助に投げると、持っていた妖魔本で受け止め妖魔本は消滅。霖之助は丸腰になるのだが、妖魔本は操られてる人間も持っているので、霖之助は近くにいた人間の妖魔本を回収する。
「どうすれば…」
「妖怪を討伐…【夢想封印】」
霊夢は妖怪に向けて、弾幕を放ったが妖魔本が妖怪の目の前に現れた。弾幕が妖魔本に命中して消滅するが、妖怪は無傷だ。
「あの妖怪は、人里の人間達…だが、幻想郷の掟で…霊夢は妖怪化した人間を討伐しなければならない。殺るしかないか…小鈴。」
「なんですか…」
「神社の中で隠れるんだぜ!」
魔理沙はパチュリーから貰った魔法薬を取り出す。
「魔理沙…その薬は、パチュリー様の…」
「霊夢だけに…責任を押し付けることはしないぜ!私だって、同族殺しの実行者だ!」
魔理沙は覚悟を決めて、魔法薬を飲み、五分間魔理沙の魔力量が無限になる。魔理沙の魔力が境内に漂い、妖魔本が次々と消滅する。
「妖魔本が!?だが、妖怪が消えたわけではない…」
「なら、妖怪達を討伐するぜ!」
「この妖怪達は人間だぞ!討伐出来るわけが…」
「同族を討伐するわけだからな。地獄行きは確定だぜ!フルパワーだぜ…」
ミニ八卦炉に魔力を集中させる。無限に魔力が溢れるので、悲鳴をあげている。
「消し飛びやがれ!【ファイナルマスタースパーク】!」
ミニ八卦炉から数倍以上の威力の虹の閃光を放ち、妖怪軍勢、霖之助を襲う。霊夢は正気に戻り、魔理沙の後ろに退避する。
「霊夢は正気に戻ったようね。」
「咲夜。私に何が…」
「人里の人間が妖怪化したことで、貴女は正気を失ってたのよ。」
「妖怪はどうなったの?」
「魔理沙が終わらせるはずよ。最後の切り札を使ったわ。」
ミニ八卦炉から虹の閃光が消えた。それと同時に、八卦炉が砕け散った。無限の魔力には耐えきれなかったようだ。魔理沙はその場で座り込む。
「流石に…疲れたぜ…」
「魔理沙……。あれ……嘘でしょ!?」
霊夢が視線を向ける先には、無傷の霖之助の姿があった。しかも、持っているのは妖魔本ではない。禍々しい妖気が漂う版画を所持していた。
「あの版画は!?」
「どうしたの?小鈴ちゃん…」
「この異変は…私が…原因…あの版画を使って、製本を…」
霖之助が所持していた版画は、半年前に小鈴が男性から依頼されて、版画の内容を製本にしたものだった。小鈴はあの大量の妖魔本を知らずの内に、作らされていたのだ。
「私が…」
「小鈴!異変の発生はお前が原因じゃないぜ!」
「魔理沙さん…」
「小鈴ちゃんは悪くないわ。」
「お姉ちゃん…」
「妖怪は消滅したが、この版画を使えば…」
「させるか!【ファイナルマスパースパーク】」
「ミニ八卦炉無しで!?」
虹の閃光が版画に命中する。版画の一部が欠けたのだ。
「欠けただけか……く!?時間切れだぜ……」
魔法薬の効力が切れて、倒れるところを咲夜に支えられる。
「無理しないの。」
「咲夜、霊夢…あの版画が妖怪の本体だぜ!」
「わかったわ…霊夢!後ろに下がって。」
「やらせん。【妖魔の盾】」
霖之助の目の前に、禍々しい妖気で作られた盾が出現する。
「【時を止まれ】」
咲夜以外の時を止めた。今動けるのは咲夜のみになった。霖之助の前と後ろに大量のナイフを等間隔にセットする。
「これで倒せなかったら、死ぬわね…【そして時は動き出す】」
時を進めると、セットされていたナイフが、霖之助に発射される。
「く!?」
咲夜の大量のナイフが盾を貫いて、版画に命中すると。粉々に砕け散り、操られていた霖之助は解放された。
「く!?僕が人間だったら、絶対死んでる…」
「霖之助さん!?操られて無いわよね!?」
「記憶はあるよ…迷惑をかけた。」
「霖之助さんに責任は無いわ。暫くは神社に泊まりなさい。博麗の巫女として、霖之助さんを異変の被害者として保護するわ。」
「霊夢。助かるよ…少し…寝る。」
霖之助は神社の一室で眠った。異変が解決されるまでの間。丸一日操られていたのだ。無理はない。
「魔理沙…大丈夫?」
「魔法は使えなくなった。薬の代償でな…」
魔理沙は異変解決のために、魔法薬を飲んで代償も覚悟していた。後悔はないはずなのに…
「霊夢…暫く泊めてくれ。今の私じゃ…空も飛べない。」
「良いわよ。咲夜…悪いけど、神社で待ってて。私は小鈴ちゃんと鈴奈庵に行くわ。」
「霊夢さん?」
咲夜に神社を任せると、霊夢と小鈴は鈴奈庵に向かう。上空からも確認するが、あの妖魔本の気配は感じられない。
「小鈴ちゃんは大丈夫?」
「早く寝たいです。」
「急ぐわ。」
鈴奈庵に到着する。霊夢は小鈴を寝かせてから、人里に妖怪がいないかどうか確認する。
「怪しいところはないわね。」
霊夢は小鈴と一緒に眠ることに。
真夜中の鈴奈庵に、あの禍々しい妖気が再び発生した。発生した妖気がなんと、白髪の少年に姿を変えた。
「やっと、表に出られたぜ!あの版画を持ち出す前に、鈴奈庵に置いて正解だった。」
少年は小鈴に近付く。
「俺様の目的を果たすとするか。」
「そうは、させないわよ!」
少年の後ろに、霊夢の姿があった。後ろを振り向かずに、霊夢に話し掛ける。
「どうして、俺様の存在に気づいた。」
「違和感があるのよ。咲夜のナイフが簡単にあの版画を破壊したことがね。あんたの本当の目的は、小鈴ちゃんに憑依すること。だから、百冊もの製本を依頼したのよ。その間に憑依するために。答えてもらうわよ。」
「俺様の負けだ。勝者の命令に従うぜ。」
「あんたの能力と、異変を起こした理由を話してもらうわ。」
「珍しいな。詳しく話せだなんてよ。」
少年は笑いながら、霊夢の発言に興味を持った。
「良いだろ。俺様の能力は【形あるものに憑依する程度の能力】この異変で、俺様が憑依したのは、本、版画、半妖の男の三つだ。」
「小鈴ちゃんを狙った理由は?」
「あの小娘は、ありとあらゆる文字を読むことが出かる。小娘に憑依して、少しずつ幻想郷を支配するつもりだったのさ。」
「最後に…貴方の存在。」
「俺様は古代の亡霊だ。とある男に敗北し、気がついたら幻想郷にいたわけだ。」
少年は全てを語り終わると、霊夢に手を向ける。
「貴様だけでも…【パラサイトマインド】」
少年は霊夢を対象に、能力を発動するが弾かれた。
「残念だったわね。私には効かないのよ。」
「俺様の負けにしといてやるぜ。たがな…いつかまた、幻想郷を支配してやる。」
少年は姿を消し、異変は解決された。