Coolier - 新生・東方創想話

サナトリウム

2022/02/12 02:56:00
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ギコギコギコ( ^ω^)・・・ギコギコネコ( ^ω^)・・・

のこぎりをひく音が、小気味よく部屋に響く。

「あれまぁ、何をしているんですかぁ?阿求、さぁ~ん!」

すっとんきょうな声を出して部屋に入ってきたのは、早苗である。

「おやおや早苗さん、ごきげんよう。御覧の通り、私は今額縁を作っているんですよ。」

額の汗をぬぐいながら阿求は答えた。

「わぁ~(シャリシャリ)阿求さんって(モグモグ)執筆のほかにも(ペッペッ)日曜大工の才能もあるんですね!」

「早苗さん、台所にあったスイカ、食べちゃったんですね。まぁたくさんもらったからいいけど。」

「(*´σー`)エヘヘ。甘くてと~ってもおいしいです~う(⋈◍>◡<◍)。✧♡」

にこーっと笑った早苗の口の端からは、新潟市西区産のすいかの果汁がツツーッと漏れ、床にしたたった。」

「ところで阿求さん?日曜大工と言ったら、棚とか椅子とかを作るのが一般的ですよね。これまたどうして、額縁なんていう渋いチョイスをなさったんですか?ダ フレーム ハズ ビーン チュズンなんですかぁ?」

「それは私自身が額縁を数多く必要としているからなんです。買ってきた額縁もあるんですけど、額縁って、安いものは安っぽくて、せっかく飾っておくのにふさわしくないような気がしてしまうし、かといって立派なものは、すごく高いのよ。だからいっそのこと、自分で作ってしまおうということにおちついたんです。」

「額縁を定期的に必要とするんですか阿求さんはぁ?変わってますね~。何に使うのかしら?あ~っ、わかった!阿求さんは頻繁に表彰されるから、その賞状を飾っておくため、ですね?( *´艸`) (うふふ、こんなの冗談。きっと写真を飾ったりするんだわきっと)」

「早苗さん、鋭いですね!あたりです。」

瞳の白目の部分をほんの少し大きくしながら阿求は答えた。床には蟻が何匹か来て、さっき早苗がこぼしたスイカの果汁をなめていた。


阿求宅から守屋神社に帰ってきた早苗は、ぬかみその樽からきゅうりをとりだすと、晩飯の食卓に上げるために木曽ヒノキのまないたに乗せ、包丁で切り始めた。

とんとんトン…リズミカルにきゅうりは切られ、軽快な打楽器を思わせる音が鳴る。ふと、早苗は包丁を動かす手を止めて、台所の格子戸から庭を見た。雨がしとしとと降り始め、アジサイが雨に叩かれてかすかに揺れていた。ふたたびきゅうりを切り始める。

とんとんトン…ゲコゲコ下戸。
とんとんトン…ゲコゲコ下戸。

まるで合いの手を入れるように、早苗の手つきにあわせてカエルが鳴くのであった。






阿求は書斎にこもり、原稿を書き始めた。早苗はよく今日のように阿求の家に遊びに来る。その間は騒がしい早苗の相手をするので、物書き仕事どころではなくなってしまうのだが、ひとたび早苗が帰ってしまうと、早苗が来る前よりも筆が滑らかに進むのだから不思議なものである。今しがた書かれている阿求の原稿、読んでみたくないですか?それができるのが小説の魅力です。

『すぐれた文学や漫画を生み出すためには、その題材となる現実のコンテンツを作者が濃密に経験している必要があるのかという疑問は、たびたび読書好きの間で議論を呼ぶ話題である。たとえばハードボイルドなバイオレンス小説を書くためには、作者は夜の路地裏で暴漢と格闘した経験があったほうが良い作品がかけるのか、恋愛ものを書きたければ、作者は燃えるような恋を経験していなければならないのか、という疑問である。ノンフィクション作品や、記者が身分を隠しての職場潜入ルポ、エッセイなどは、これはもう絶対に作者が経験していなければ、書かれたものに価値がないことはわかりきっている。なので、そうではない作品を取り上げて、この話題を進めることにする。キャプテン翼だ。
高橋洋一氏はもともとサッカー経験はなく、かといってサッカー観戦オタクというわけでもなかったそうである。協議経験がないということは、この技術が向上したことで勝てたとか、相手の戦術に効果的な対策を講じて勝てたなどの、競技経験者が読者となったときに「あるある!」「そうだよなぁ。」と臨場感をもって作品世界に没入してもらう手段をあきらめざるをえない。また、作者に競技経験があれば、競技中に味わったカタルシスを忠実に誌面で再現することで、読者にもそのカタルシスを味わってもらうことができるのだが、これも想像で作り上げるしかない。ではどうやって作るのかというと、サッカー以外の何かからカタルシスを引っ張ってきて移植するのである。スカイラブハリケーンは空中遊泳をしたいという夢をかなえてくれるし、タイガーショットは壁をも砕く重火器を撃ってみたいという夢をかなえてくれる。ドライブシュートはゴールが視界に入りさえすれば、枠の中に必ず打ち込めるという技だが、ほかの人がコントローラブルではないことを自分だけがコントローラブルである状態というのは、まさに事業独占の快感である。このようにサッカーの魅力を作者が身をもって知らないために、他分野の魅力を引っ張ってくることでどのような効果が生まれたかというと、読者の子供たちはサッカーをやることで、空も飛べるし、大砲も撃てるし、特許もとれるんだという希望に目を輝かせることになった。彼ら幼い読者の中からトッププレイヤーが輩出されることが珍しくなくなったもう20年以上も前からである。すでに競技に熟練した人や、プロ選手が読者になった場合にも良い効果がある。彼ら熟達者に少なからず襲い掛かっているのが、長年競技に取り組んできたからこそのマンネリと、これ以上対象の競技を組み込んだ生活習慣に大きな変化がないと理解した故の空虚感である。人もうらやむプロ選手といえども、その生活は決まった練習メニューをこなし、休暇にはカウチに寝そべってネットフリックスでも見るか、決まった仲間と飲みに行く程度のものだ。いくらサッカーがうまくなったって、やっぱり高校の部活と同じように、いやな先輩はいるし、何か世の中を変えるような影響を持てるわけでもない。サッカー選手にもほかの人と同じように、できることとできないことがあるだけなのだと気づき始めたときに、翼君たちが荒唐無稽な技を繰り出して現実のサッカーを破壊していく様を眺めるのは痛快なのである。でも別に、サッカーボールを玉乗りしてセグウェイみたいに移動しなくてもいいと思う。溶けた氷の中にいた恐竜じゃあるまいし。』


カタリ…

「ふぁ~…あ!」

阿求は筆をおくと、両腕を上に突き上げて反り返り、天井を見た。木目にところどころ、人の顔みたいな部分がある。

「ヨガでもやってから寝ようかしら。」
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コメント



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1.無評価名前が無い程度の能力削除
時々入る顔文字が面白かったです(*⌒▽⌒*)

一つ誤字報告
協議経験→競技経験かと
2.無評価ラビぃ・ソー削除
>>1
えへへ^ー^ありがとうございます
また誤字っちゃったか~w
3.無評価名前が無い程度の能力削除
チャオ!
4.無評価ラビぃ・ソー削除
>>3
ちゃおちゃお!^ー^お久しぶりでぇ~っす
5.無評価名前が無い程度の能力削除
チャオ!!
6.無評価名前が無い程度の能力削除
よかったです?
7.無評価ラビぃ・ソー削除
>>6
どうなんでしょうねぇ~?^ー^;果たして良かったのかどうなのかw
お読みくださってありがとうございます?