「強盗だっっ!! 金をよこせっ!」
扉を突き破って、そう言ったのはマスクを被った女だった。
「ご、強盗!?」
「命が惜しければ手を上げろっ! そこのメイドもすぐ!」
「……っ、分かりました」
慌てて咲夜が手を上げる。緊迫した空気が当主こと、レミリア・スカーレットを襲う。
しかし、ふと疑問を覚えた。
「ちょっと待って、咲夜。私って吸血鬼よね?」
「ええ、間違いでなければ」
「なによ吸血鬼の住処に突入してくる強盗って。勝てるじゃない」
「おい!! 動くな!!」
「咲夜、やっちゃいなさい」
「かしこまりました」
咲夜は時間停止を使う必要もないと、一気にスピードを上げその強盗へ駆け寄る。
「ごめんなさいね」
バシンッ!
しかし、その音とともに十六夜咲夜は壁を破って吹っ飛んでいった。
「はい?」
「いいから金を出せ、レミリア・スカーレット」
「……」
「……」
「あなた霊夢よね?」
「霊夢、誰かしらそれ」
「いやよく見たら顔の下巫女服着てるし」
「巫女ならまだいる」
「赤い巫女は一人しか知らないわ」
「私のファンの犯行かしら」
「私の言うとるし」
「……霊夢のファンの犯行よ」
「そもそも咲夜をあんな吹っ飛ばせるのなんて、私の記憶の中では数人しかいないのよ」
「犯人が絞れたわね」
「最初から犯人は絞れてるんだけどね」
「……」
「……」
沈黙が続く。
私はポケットから硬貨を出し、フロアへと投げた。
「あ、コイン」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
慌ててコインを拾おうとし最初は失敗し、もう片方の手でもう一度、今度は丁寧にコインを拾ってから、落とさぬように袋の中にしまった。
「霊夢よね?」
「違うわ」
「……そのコイン、幻想郷では使えないわよ。分かってると思うけど」
「っっっ!!」
「霊夢よね?」
「違うわ」
しばしの沈黙が再び。
レミリアは犯人の正体をあっさり掴んでいた、しかし、その犯人がとても厄介なので、誰に助けを求めればいいのかが分からず動けないでいたのだ。
「……」
「……」
パリンッ!
窓の割る音が聞こえた。
そちらを振り向くと、またもやマスクを被った女だった。
「魔理沙よね?」
「違うのぜ」
「そうよね?」
「じゃないって」
「パチェが用があるって言ってたわよ」
「おおっ、そうか? 今度行ってみようかな」
「魔理沙よね?」
「違うのぜ」
厄介なのがもう一人。
この時点で門番のクビが確定されたのであったが、そんなことを美鈴は知らない。
「あんたら、特に魔理沙。あんたは盗みすぎよ? パチェは悪い奴じゃない、しっかり借りて返せば快く本をくれると思うわよ?」
「……魔理沙はもうそのような関係にはなれないと言っている」
「なに? 魔理沙の通訳なの? 君」
「霊夢……悪いがここは私の領分だ。大人しく神社に帰ってくれ」
「私は霊夢ではないわよ、魔理沙。そして、先に強盗したのは私なの。ここは私の場所よ」
「いや紅魔館はスカーレット家のよ」
的確なツッコミ。
そして隣から声が聞こえた。
「……つまりスカーレット家でない私は、ここにいる資格はないと」
「ええっ!? 咲夜!?」
いつのまにか隣に戻ってきていた咲夜がメソメソと泣いていた。
「さようならお嬢様……どうかお幸せに」
「違うのよぉぉぉぉーーー咲夜ぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
こうして一人失った。
あとで一人減ることは確定してるので、もう二人も紅魔館はこいつらのせいで大事な人を失ったことになる。
「さすがに許さないわよ、霊夢、魔理沙!!」
「おおっ、オーラがメラメラしてるぜ。逆ギレにも程があるんじゃないか?」
「ほんと、八つ当たりをするくらいなら真っ当に生きなさいよっていうの?」
「強盗が何言ってるんじゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!?!!」
レミリア・スカーレットは約二人分の怒りを抱えながら、強盗二人へ突っ込んだ。これは、レミリア自身の怒りと、咲夜の分である。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
「……仕方ない、弾幕勝負と行くか、霊夢」
「……ふん、ほんと幻想郷は野蛮ね」
「……お前を筆頭にな」
そしてここに戦いが始まるっ!!
と思いきや、扉を開け無垢な瞳を当主に向ける少女が現れたではないか。
「お姉さま……?」
「フラン!?」
しかし、この無垢な瞳は決して純粋ではない。この妹は、姉を憎み外へ出る口実を三百六十五日考えていたのである。ここまでくると、もはやその憎しみは愛。三百六十五日のラブレターである。
「……魔理沙をいじめてるの? ひどいっ、もうお姉さまと一緒にいられない」
そしてフランはあっという間に外に出た。
パチュリーはというと、とっくに普通の魔法使いによって撃沈していた。
「そ、そんな……妹まで失うなんて」
「魔理沙じゃないぜ」
もうレミリア・スカーレットには何もない。妹までいなくなり、咲夜も泣きながら去り、門番は解雇し、大切な親友以外すべてを失った。ちなみに小悪魔に関してはど忘れしてる。
「あはは、パチェ、今行くわよ」
フラフラ、フランっ!
なんてくだらない駄洒落が浮かんでしまうくらいには、フラフラしながらレミリアはその部屋を去っていた。
「強盗って虚しいわね……誰も喜ばない」
「私は喜んだぜ。たくさん本が手に入って。霊夢さ、今度お賽銭入れてやるから元気出せよ」
「ありがとう、魔理沙」
「いいって」
二人はなんとも幸せそうに笑い合った。
「——ぅっ——っっ!」
「ふふ、パチェ。あなただけは離れないわよね?」
パチュリーは目を覚ました瞬間に、口を押さえられ椅子に縛り付けられていた自分を確認した。目の前にはいつかの妹さまのような、狂った親友がっ。
「ぷはっ! レミィ! お願い目を覚まして!!」
「ふふふ、目は覚ましてるわよ。今日は読み聞かせなんてどうかしら? 昔はちっちゃいパチェに絵本を読み聞かせてあげたものだわ」
「逆よっ! 逆!! 私でしょ!? 読み聞かせてあげたのは!!」
その後、気まぐれに帰ってきたフランにパチュリーは助けられ、さすがに紅魔館一同は反省し、みんな帰ってきた。レミリアは再び得た幸せに感謝しつつも、憎き強盗へ向けて静かに計画を練っていたのである。
小悪魔は忘れられたことに涙し、美鈴は職場を探し回った。
おわり
扉を突き破って、そう言ったのはマスクを被った女だった。
「ご、強盗!?」
「命が惜しければ手を上げろっ! そこのメイドもすぐ!」
「……っ、分かりました」
慌てて咲夜が手を上げる。緊迫した空気が当主こと、レミリア・スカーレットを襲う。
しかし、ふと疑問を覚えた。
「ちょっと待って、咲夜。私って吸血鬼よね?」
「ええ、間違いでなければ」
「なによ吸血鬼の住処に突入してくる強盗って。勝てるじゃない」
「おい!! 動くな!!」
「咲夜、やっちゃいなさい」
「かしこまりました」
咲夜は時間停止を使う必要もないと、一気にスピードを上げその強盗へ駆け寄る。
「ごめんなさいね」
バシンッ!
しかし、その音とともに十六夜咲夜は壁を破って吹っ飛んでいった。
「はい?」
「いいから金を出せ、レミリア・スカーレット」
「……」
「……」
「あなた霊夢よね?」
「霊夢、誰かしらそれ」
「いやよく見たら顔の下巫女服着てるし」
「巫女ならまだいる」
「赤い巫女は一人しか知らないわ」
「私のファンの犯行かしら」
「私の言うとるし」
「……霊夢のファンの犯行よ」
「そもそも咲夜をあんな吹っ飛ばせるのなんて、私の記憶の中では数人しかいないのよ」
「犯人が絞れたわね」
「最初から犯人は絞れてるんだけどね」
「……」
「……」
沈黙が続く。
私はポケットから硬貨を出し、フロアへと投げた。
「あ、コイン」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
慌ててコインを拾おうとし最初は失敗し、もう片方の手でもう一度、今度は丁寧にコインを拾ってから、落とさぬように袋の中にしまった。
「霊夢よね?」
「違うわ」
「……そのコイン、幻想郷では使えないわよ。分かってると思うけど」
「っっっ!!」
「霊夢よね?」
「違うわ」
しばしの沈黙が再び。
レミリアは犯人の正体をあっさり掴んでいた、しかし、その犯人がとても厄介なので、誰に助けを求めればいいのかが分からず動けないでいたのだ。
「……」
「……」
パリンッ!
窓の割る音が聞こえた。
そちらを振り向くと、またもやマスクを被った女だった。
「魔理沙よね?」
「違うのぜ」
「そうよね?」
「じゃないって」
「パチェが用があるって言ってたわよ」
「おおっ、そうか? 今度行ってみようかな」
「魔理沙よね?」
「違うのぜ」
厄介なのがもう一人。
この時点で門番のクビが確定されたのであったが、そんなことを美鈴は知らない。
「あんたら、特に魔理沙。あんたは盗みすぎよ? パチェは悪い奴じゃない、しっかり借りて返せば快く本をくれると思うわよ?」
「……魔理沙はもうそのような関係にはなれないと言っている」
「なに? 魔理沙の通訳なの? 君」
「霊夢……悪いがここは私の領分だ。大人しく神社に帰ってくれ」
「私は霊夢ではないわよ、魔理沙。そして、先に強盗したのは私なの。ここは私の場所よ」
「いや紅魔館はスカーレット家のよ」
的確なツッコミ。
そして隣から声が聞こえた。
「……つまりスカーレット家でない私は、ここにいる資格はないと」
「ええっ!? 咲夜!?」
いつのまにか隣に戻ってきていた咲夜がメソメソと泣いていた。
「さようならお嬢様……どうかお幸せに」
「違うのよぉぉぉぉーーー咲夜ぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
こうして一人失った。
あとで一人減ることは確定してるので、もう二人も紅魔館はこいつらのせいで大事な人を失ったことになる。
「さすがに許さないわよ、霊夢、魔理沙!!」
「おおっ、オーラがメラメラしてるぜ。逆ギレにも程があるんじゃないか?」
「ほんと、八つ当たりをするくらいなら真っ当に生きなさいよっていうの?」
「強盗が何言ってるんじゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!?!!」
レミリア・スカーレットは約二人分の怒りを抱えながら、強盗二人へ突っ込んだ。これは、レミリア自身の怒りと、咲夜の分である。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
「……仕方ない、弾幕勝負と行くか、霊夢」
「……ふん、ほんと幻想郷は野蛮ね」
「……お前を筆頭にな」
そしてここに戦いが始まるっ!!
と思いきや、扉を開け無垢な瞳を当主に向ける少女が現れたではないか。
「お姉さま……?」
「フラン!?」
しかし、この無垢な瞳は決して純粋ではない。この妹は、姉を憎み外へ出る口実を三百六十五日考えていたのである。ここまでくると、もはやその憎しみは愛。三百六十五日のラブレターである。
「……魔理沙をいじめてるの? ひどいっ、もうお姉さまと一緒にいられない」
そしてフランはあっという間に外に出た。
パチュリーはというと、とっくに普通の魔法使いによって撃沈していた。
「そ、そんな……妹まで失うなんて」
「魔理沙じゃないぜ」
もうレミリア・スカーレットには何もない。妹までいなくなり、咲夜も泣きながら去り、門番は解雇し、大切な親友以外すべてを失った。ちなみに小悪魔に関してはど忘れしてる。
「あはは、パチェ、今行くわよ」
フラフラ、フランっ!
なんてくだらない駄洒落が浮かんでしまうくらいには、フラフラしながらレミリアはその部屋を去っていた。
「強盗って虚しいわね……誰も喜ばない」
「私は喜んだぜ。たくさん本が手に入って。霊夢さ、今度お賽銭入れてやるから元気出せよ」
「ありがとう、魔理沙」
「いいって」
二人はなんとも幸せそうに笑い合った。
「——ぅっ——っっ!」
「ふふ、パチェ。あなただけは離れないわよね?」
パチュリーは目を覚ました瞬間に、口を押さえられ椅子に縛り付けられていた自分を確認した。目の前にはいつかの妹さまのような、狂った親友がっ。
「ぷはっ! レミィ! お願い目を覚まして!!」
「ふふふ、目は覚ましてるわよ。今日は読み聞かせなんてどうかしら? 昔はちっちゃいパチェに絵本を読み聞かせてあげたものだわ」
「逆よっ! 逆!! 私でしょ!? 読み聞かせてあげたのは!!」
その後、気まぐれに帰ってきたフランにパチュリーは助けられ、さすがに紅魔館一同は反省し、みんな帰ってきた。レミリアは再び得た幸せに感謝しつつも、憎き強盗へ向けて静かに計画を練っていたのである。
小悪魔は忘れられたことに涙し、美鈴は職場を探し回った。
おわり
いつのまにか紅魔館が一家離散してて不思議でした
読んでいて楽しかったです
笑っちゃったからには点数入れないとね