地獄とは、どんなものなのかしら。
本居小鈴は考える。
地獄。それは閻魔様の裁きの場所。生きた精算をする場所。悪事を働けばそれを全て見られる場所。
それはどれほど辛いことなのだろうか。想像をする。責め苦を受ける自分?それは嫌だなあ、なんて。
「あんた、何考えてるの。一人で百面相して面白いわよ」
意識を外に向けると目の前に阿求がいた。私は椅子から落ちそうになる。
「うわああああ! なに! 阿求驚かせないで!」
「そんな事言われても。呼び掛けてるのに返事しないからよ」
フンと鼻で笑うかのような阿求は態度が大きかった。な、何よ私のせい……って、私のせいか。
「はあい、ごめんね阿求」
「反省してない声! まあいいけど。で? 何で百面相してたのしら?」
阿求は私に問いかける。
「何って、地獄ってどんなものなんだろうって。一人で落ちていくのは嫌だなあ、なんてさ」
私は机に突っ伏す。考えてることがとても幼稚なように思えたからだ。地獄ってひとつしかないのにどうしてそんなこと考えたんだろうか。
「地獄、ね」
阿求は口の中に転がすかのように呟いた。
「なにか思い当たる節でも?」
私は気兼ねなく聞いた。
「地獄は何回も通っているから懐かしいように思うのよ。他の人じゃそんなことないんだろうけどね」
……聞くんじゃなかったかな。阿求を盗み見る。話したことがなんてことないかのようにしているので大丈夫なのかと思った。
「阿求から見た地獄って何?」
「私? 私はねえ……地獄はそもそも事務処理の場所かも。阿礼の子達はみんな死んで生まれ変わるまで閻魔様に扱き使われるから。そのイメージしかないかな」
なんと。そんなイメージがあるのかと驚く。てっきり責め苦があるものだと思っていた。何回も転生すると違うのだろうと実感する。
「それじゃあ小鈴は? どんなイメージを持ってるのかしら」
私はひとつ息継ぎをする。
「阿求みたいにさ、死んだことも生まれ変わったことも無いから、地獄なんてわかんないけど。それでも私は地獄は辛い場所だって思う。人生の精算をさせられるのだし、悪いことをたくさんさせられるんだと思う。それが間違ってるって言っても私はそう思ったかな」
「それじゃ救いはないわね。それでもそう思っているのだからいいんじゃないのかしら。閻魔様は罪を償って欲しいものだろうから」
阿求はカラカラと笑ってそう言った。
確かに救いは無いのかもしれないけれど。前に読んだ「蜘蛛の糸」みたいに救いはどこかにあるのかもしれないなんて思ったり。
救いはあっても、なくても地獄はあるのだろうから。
本居小鈴は考える。
地獄とは、どんなものなのかしら。
本居小鈴は考える。
地獄。それは閻魔様の裁きの場所。生きた精算をする場所。悪事を働けばそれを全て見られる場所。
それはどれほど辛いことなのだろうか。想像をする。責め苦を受ける自分?それは嫌だなあ、なんて。
「あんた、何考えてるの。一人で百面相して面白いわよ」
意識を外に向けると目の前に阿求がいた。私は椅子から落ちそうになる。
「うわああああ! なに! 阿求驚かせないで!」
「そんな事言われても。呼び掛けてるのに返事しないからよ」
フンと鼻で笑うかのような阿求は態度が大きかった。な、何よ私のせい……って、私のせいか。
「はあい、ごめんね阿求」
「反省してない声! まあいいけど。で? 何で百面相してたのしら?」
阿求は私に問いかける。
「何って、地獄ってどんなものなんだろうって。一人で落ちていくのは嫌だなあ、なんてさ」
私は机に突っ伏す。考えてることがとても幼稚なように思えたからだ。地獄ってひとつしかないのにどうしてそんなこと考えたんだろうか。
「地獄、ね」
阿求は口の中に転がすかのように呟いた。
「なにか思い当たる節でも?」
私は気兼ねなく聞いた。
「地獄は何回も通っているから懐かしいように思うのよ。他の人じゃそんなことないんだろうけどね」
……聞くんじゃなかったかな。阿求を盗み見る。話したことがなんてことないかのようにしているので大丈夫なのかと思った。
「阿求から見た地獄って何?」
「私? 私はねえ……地獄はそもそも事務処理の場所かも。阿礼の子達はみんな死んで生まれ変わるまで閻魔様に扱き使われるから。そのイメージしかないかな」
なんと。そんなイメージがあるのかと驚く。てっきり責め苦があるものだと思っていた。何回も転生すると違うのだろうと実感する。
「それじゃあ小鈴は? どんなイメージを持ってるのかしら」
私はひとつ息継ぎをする。
「阿求みたいにさ、死んだことも生まれ変わったことも無いから、地獄なんてわかんないけど。それでも私は地獄は辛い場所だって思う。人生の精算をさせられるのだし、悪いことをたくさんさせられるんだと思う。それが間違ってるって言っても私はそう思ったかな」
「それじゃ救いはないわね。それでもそう思っているのだからいいんじゃないのかしら。閻魔様は罪を償って欲しいものだろうから」
阿求はカラカラと笑ってそう言った。
確かに救いは無いのかもしれないけれど。前に読んだ「蜘蛛の糸」みたいに救いはどこかにあるのかもしれないなんて思ったり。
救いはあっても、なくても地獄はあるのだろうから。
本居小鈴は考える。
地獄とは、どんなものなのかしら。
怖い想像を膨らませる小鈴と淡々と答える阿求のやりとりがとてもよかったです