Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷に喫茶店が開店したようです

2021/05/19 11:38:25
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目の前にあるお洒落な木の扉。この和を具現化したような人里には合わない洋風の建物。
紅魔館の奴らがまた変なことを思い付いたらしく、喫茶店というのを作ったとそこのメイド長に聞いた。
気になる、そして入りたくて堪らない。元々変なことを企んでないか調査しに来たけれども……
ちょっとぐらい入ってもいいよね。うんそうよ、私だってブレイクタイムが欲しいもの。
早速入店しましょう。扉に手を掛けて開け……あっ、開かない?!

「ぷっ……れ、霊夢さん…グフッ…その店、今準備中ですっ…」

しっ、しまったぁぁぁ!というかこの声は…早苗!よりにもよって見られるのが早苗だとは
というか扉に掛かってるプレート…「準備中」って書いてある!異変解決の巫女として観察力は必須なのに…

「さ、早苗…しっ、知ってたわよこれくらい!ただ戸締りしっかりしてるかな〜と!ねっ!ねっ!」

咄嗟に嘘を吐いたけれども大丈夫よね……早苗だしバレたりはしないはずって、何あの目!
凄い侮辱と嘲笑の眼差し!気付いているというの?というかめちゃくちゃ苛つく目付き!
あとで絶対に潰す……絶対に大幣叩き折ってやるわ。取り敢えず、まだ開かないのなら待てば良いのよ待てば。
10分くらい経っただろうか、扉が開いて中から咲夜が出てきて準備中のプレートをひっくり返して「開店中」の文字を見せた。
よし!ようやく開店したわ!さて早速入って…

「って、早苗なんで付いてくるのよ?!」

「私もここに来たかったんですよ。楽しみにしてまして!」

神は非情とよく言われるのがなぜか、はっきりと理解できた気がする。まさか早苗も来るとは…
神に仕えるものとしてどうなのかと言われそうだけれど今回はスルーで。
いやでも、さっきのような失敗をしなければ全く問題は無い!そうよこれは杞憂だったわ
店内を見渡してみると、普段紅魔館で見るような装飾に加え、お洒落なピアノの曲が流れている。
そして前にはカウンター。ここで注文を済ませるのか。前に霧の湖で見たことある緑髪の妖精が店員をしていた。

「こちらメニューです。注文が決まったら仰って下さい」

絶対咲夜に扱かれたわね……さて、メニューは……って、ほぼ全部片仮名じゃん!
このカフェオレとかエスプレッソとかブラックとか何よ。咲夜からコーヒーの種類って聞いたけれど分からない。
メニューに目を滑らせると、一際目立つものがあった。虹色のグラデーションのポップ体で「レインボー」と書いてある。
れっ、レレレレレインボー?!コーヒーに疎い私でも分かる。これコーヒーじゃない!
というかどれが美味しいのか分からない……ここは一先ず本日のコーヒーとやらを頼もう。

「すいません、この本日のコーヒーでお願いします」

「本日のコーヒーはエリクサーですが宜しいですか?」

えっ、エエエエエリクサー?!そういうのに詳しくない私でも分かる、なんてもん出してんの?!
流石にこんな劇物飲みたくないわ……というかここ人里にある喫茶店よね?!
驚きすぎて疲れて来たわ……さっさと決めましょう。ん?何よこれ。

「あっ、このホワイトってなんですか?」

「ホットミルクです」

わっ、分かりづらぁぁぁっ!というか普通に書きなさいよ!メニュー開発誰がやったらこうなるの!

「じゃあ……このカフェオレってので良いです」

「ホットですか?アイスですか?マグマもありますが」

まっ、マグマ?!えっ、誰がそんなの飲むの?!いや誰も飲まないよね?
ここは安定でアイスにしましょうそうしましょう。と、いうかよく見たら絶対零度もあるのね…
チルノとかが飲んでそう。いやまずこんなところに来なかったわ。

「では、トッピングはどうされますか?」

「えっ」

まだあるの?うっ、確かにメニューの角にトッピングって書かれてあるわね…さて何があるのかしら…って、
何この呪文の羅列!バニラシロップって何よエクストラホイップって何よ!辛うじて分かるのがチョコレートソース…

「え〜と……この、チョコレートソースで」

「はい!畏まりまし……って、サイズを聞き忘れてました!サイズはどうしますか?」

サイズ……大きさとかを選ぶのね。ここに書いてあるので良いのかしら。
このS、T、G、V、Yって何よ。大中小で表して欲しい。一応聞くだけ聞いてみましょう。

「すみません、サイズってどれくらいの量なんですか?」

「え〜と、Sが一合、Tが一合五勺、Gが二合、Vが二合五勺、Yが一斗です」

サイズの飛躍の仕方が転移なんだけど!急に増えすぎよ?!
※一勺が18ml、一合が180ml、一斗が18L
Yだけ異質よ!もはや妖怪が飲むお酒レベルじゃないの……って、

「"Y"OKAIサイズってこと……?」

「はい!」

(くだらないって騒ぎじゃない!もうこれ考えた奴絶対に歳取ってるわよ!BBAが作ったやつよ!
流石にこんなのは頼めないからGくらいにしましょう。これくらいが丁度いいわ)

決まったらすぐに店員に伝えた。店員は分かりました!とニコニコで注文を反復した。
これで注文は終わったはずよね。さてあとは待つだけの簡単な作業ね。

「本日オススメのサンドイッチがありますがどうしますか?」

「あっ、それも追加で」

これで昼ご飯も済ませましょ。今まで一度も飲んだことないけれど、カフェオレってどんなのかしらね。
数分待っただろうか、サンドイッチとドリンクが出てきた。ハムと瑞々しいレタスがパンに挟まれていて美味しそうだ。
さてと、席は………あ、一ヶ所だけ空いてた。というか西洋感といい雰囲気といい、人里内とは思えないくらいね。

「いただきます」

サンドイッチを持って噛み付く。柔らかいパンにレタスの水分とハムの塩気が丁度いい。
実際紅魔館の料理は美味しいから味に関しては全く文句はつけられないわ。それ以外は兎も角。
夢中になってサンドイッチを食べていると、横に見覚えのある人物が現れた。

「相席、大丈夫だろうか」

「ええ問題ないわ。あんたは確か…」

美しい金髪に青い道士服、そして特徴的な帽子に狐の尻尾、人里ではかなり目立つが、許容されている。
でもどうしても名前が出てこない……スキマ妖怪の式の八雲……なんだっけ。

「八雲藍だ。失礼するよ」

あぁそうだった藍だ藍。というか、何も持ってないけど何を買ったのか。後で来るのか。
そう考えていると、何故かメイド服を着ている……そうだ、藍の式の橙がオムライスを持ってきた。
そしてプレートの上にはケチャップが……嫌な予感がする。

「おっ、お待たせしました藍様!オムライスです…!」

「ちぇぇぇえん!大丈夫だよ全然気にしてないからね橙!」

もう二人の世界に入っちゃってるよ…藍様、橙と言い合って、もはや息苦しい程ね…
すると橙が何か思い出したようにハッとし、ケチャップを持ってオムライスにかけていく。
そして出来上がったのは………ハートマーク…………今すぐこの場から逃げ出したい。
橙は両手でハートを作り、照準をオムライスに揃える。

「美味しくなぁれ!萌え萌えキュン♡」

(やっ、やってしまったぁぁぁぁぁぁああっ!!知り合いと思われたくない!
 思われたくないのに相席してるから逃れようにも逃れられないよ!
 っていうか自分の式に何させてんのよ!周りからの視線が痛すぎる…!
 まっ、魔理沙?!めっちゃこっち見てる!凄い憐れみの目で見てる!
 とにかくここから離れるのが第一ね………空いている席は………あそことか良さそうね)
足早にあのトンデモ現場から逃げ出すのが第一優先事項だわ。あそこに居たら気が狂うわね。
着席して再びサンドイッチを頬張る。うぅ、さっきの景色が浮かんで不味くなってきた。

「相席良いか?」

「あんたは確か竹林の…藤原妹紅?別に良いわよ」

前の席に座ったのは、迷いの竹林の案内人であり永遠亭の姫の殺し合い相手である妹紅だった。
人里に出来た新しい店に彼女が食い付くのは珍しいと取るべきか、はたまた必然と取るべきか。
いずれにせよ来ていることには変わりはないんだから気にしない気にしない。
手に持っているプレートの上には……筍が載っていた。
筍の料理ではない。ただその上には未調理の、土がまだ付いている新鮮で立派な筍が載っていた。
こんなメニューあったのかと思ったけれど、見ていなかっただけかもしれない。
だとしてもなんだこれ。土がパラパラ落ちてるよ汚いよ食べれないよ流石に。

「……なんだ、これ見た事ないのか?」

「いや……筍でしょ?どうやって食べんのよ」

すると妹紅は、チッチッチ舌を打ちながらと指を振って、手際良く筍の皮を剥いていく。

(流石竹林の住人……筍の剥き方の手際が良い。無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きね)

みるみると皮が剥かれて中から出てきたのは、見知ったあの純白の円錐……ではなく、



「………いち…ご…?」

真っ赤な表面につぶつぶがいくつも付いた小粒なソレは、あんな大きな筍の中に一粒だけちんまりと在った。
さも当然のように筍の中から現れたいちごは、何の違和感もなくそこに鎮座していた。

「どうした?顔に何か付いてるのか?」

(待て待て待て待てどうしたもこうしたもあるか!何故これを疑念なく受け入れられるのよ妹紅)

例え「幻想郷は全てを受け入れる」の紫でも受け入れられないほどだ。
というかなんてメニューだったらこの光景を脳内で処理できるのだろうか。

「いやぁ、なんとか手に入ったよ1日3個限定のstrawberry in the takenoko」

(ネイティブッ!めっちゃ、ネイティブッ!それで良いのか藤原の末裔よ。
 というかそのまま過ぎるわよ!しかも1000円って書いてる!ぼったくりじゃん!)

ていうかこの店に入ってから碌なことが起きてない。運が尽きたかと思うほどだ。
そう考えていると、妹紅が懐からライターと煙草(太陽の畑原産)を取りだした。
妹紅がライターを開き火を付けた。その瞬間……

ドォォオオン!

豪快に爆発した。ライターがではない。妹紅が爆発四散した。
爆煙を上げ店内に轟音をこれでもかと響かせて妹紅が爆発した。
一体何が起きたというのだ。とりあえず周りを見渡してみる。壁は何故か傷一つ付いてない。
そして妹紅の周りがススで汚れている。すぐに妹紅が復活すると、その目線の先には…
ロケットランチャーを構え、よく分からない被り物を被った……

「誰だよあんた!?」

デフォルメされた私の顔……まるで饅頭のように丸々としたなんとも言えないイライラさせる被り物。
これデザインしたやつのセンスを疑うわ。もう少し可愛げのあるように作りなさいよ。

「妹紅ぅぅぅッ!!今日こそは死ねぇぇぇッ!!」

(あんたかよぉぉぉッ!!)

私の背後に雷が落ちる。と言ってもイメージなので実際に落ちている訳では無いが。
どうやら颯爽と現れたのは蓬莱山輝夜らしい。普段から殺し合いをしているが、
わざわざ竹林から出向いて人里まで入ってくる。これは大変珍しいことだ。

(さっきから悉く私の昼ご飯が邪魔される。一体私が何をしたってのよ……
 うん?待てよ…?確か今日の朝、突然魔理沙がやってきて……

『霊夢〜?ちょっくら占いやってみないか?』

『占いぃ?私は巫女よ?自分で占う事くらい出来るわよ』

『まぁまぁそんな事言わずに……って、お前かなり運悪いぞ』

『はぁ?そんな出鱈目言ってる暇あったら賽銭寄越しなさいよ』

『今日は何をしても上手くいかないな。特に色んな邪魔が入って』

『そんなの信じれるわけないじゃ無い。ほら賽銭無いんだったら帰った帰った』

(魔理沙お前ぇぇぇッ!!)

回想している間に妹紅がガタっと立ち上がり机の上に足を乗せ、輝夜に指を指す。
何か言っているようだが、回想中の霊夢には何も耳に入っていない。

「輝夜ぁぁッ!私のティータイムを邪魔するなぁぁぁッ!!」

「なぁにがティータイムよ?そんなチンケな物食べて───って何それ?」

輝夜も見た事ないような変な物なのは間違い無い。なんせ筍の皮の中にチョコンといちごが在るのだから。
すると妹紅は得意げにプレートを持って見せつけると、鼻を高くして自慢した。

「あぁ、これは1日3個限定のstrawberry in the takenokoだ。美味いぞ?」

「ふ〜ん……も〜らい」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ッ!!私のstrawberry in the takenokoがあ゙あ゙ぁ゙ッ!!」

(何回商品名言うのよ!長いし五月蝿いし!)

「今私のヘッドはバーニングしているゥッ!!」

(いやルー語!それ遥か昔に滅んだ幻の言語!)

死なないやつと死なないやつの殺し合いになんて巻き込まれたくないわ……
食べ終わったことだしさっさと会計に移ろうとカウンターに戻った。
後ろから爆音と雄叫びが聞こえるが気にしない気にしない。今日はとりあえず帰って寝よう。
カウンターでプレートを渡して妖精が会計をする。

「え〜と、カフェオレチョコレートソース一点と、サンドイッチ一点で、合計760円です!」

「760円ね……」

がま口を取り出して中から500円玉、100円玉二枚、50円玉………しまった、10円が無い。
あっ、良かった5円と1円があった。さて5円……1円が4枚………

「あれっ…?おかしいわ……あれ?」

「?どうされたんですか」

財布を逆さにして振ってみる。が、何も出てこない。
よし、となればすることは一つだ。

「……………………」

「………………………?」

「…………ヶでお願いします」

「なんですか…?」

「ツケでお願いします!!」



 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




「で、どうだった?私の占いは!」

「1円をツケにするとかいうとんでもない恥をかいたわ」

ツケでなんとか逃れられたが、今度また同じようなことが起きたらもう無理だ。
あれで早苗には笑われるし、新聞でネタにされるし、あの妖精の子には苦笑いされるしで散々だった。
そうだ、仕返しに魔理沙を占ってやろう。

「魔理沙、ちょっと占わせなさい」

「うん?別に良いけど」

占い……というか私の勘って言った方が正しいのかもしれない。そう考えつつも魔理沙を占う。
一応魔理沙のよりも精度は高い自信があるそうで、ものの十数秒で終わった。

「明日のあんたは前方注意、後方注意、左右注意、足元頭上注意ね。ラッキーアイテムは咲夜の隠し撮りしたレミリアの写真ね」

「いや詰んでるじゃねぇか」
オチが付けられない……まだ三作目されど三作目
次回こそは面白いのを出したいですね
藍月 テイル
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コメント



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2.80名前が無い程度の能力削除
テンション高くてよかったです
3.70夏後冬前削除
S、T、G、V、Yで噴出したので負けです。
4.100南条削除
面白かったです
テンションが高くてよかったです
6.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
7.70名前が無い程度の能力削除
面白かった。
9.100メアみょん削除
今私のヘッドはバーニングしてるッ! でマジで笑いましたw 面白かったです