「レミリアが可愛いのってさ吸血鬼だからなの?」
「え?知らない。」
いつも賑やかな幻想高等学校の2年A組では今日も仲良しグループがおしゃべりに花を咲かせていた。
問いかけをしたのはこのクラスの委員長である妖夢。
「ああそいつぁ気になるなあ。でもこいつが可愛いのは生まれつきじゃないのか?」
真面目なようなふざけてるような顔で考え始めるのはクラス一明るい魔理沙だ。
明るすぎてたまに脱線する。
「急ねぇあんたたち...それとさとり離れてよ。」
「嫌です。」
あきれた声でお菓子をつまむクラス一運動神経がいい霊夢。
そんな霊夢にぴったりとくっついてるのはさとりだ。
とくに特化したことはないが相手の思考を読むのが上手らしい。
そして「私そんなに可愛いかなぁ?」
と首をかしげるのは渦中の受けヒロイン(?)ことレミリアだ。
転校生してきたばかりではあるが容姿端麗で 優しく面倒見のいい性格をしているのですぐにクラスに溶け込んだ。
頭もいいが飛び抜けて秀才と言うわけでもない。
とにかく交流会などで他校の男子と接触するとモテるという非の打ち所のない少女だ。
ただひとつだけ違うところあった。
それは彼女が吸血鬼だということ。
どうやら吸血鬼一族の末裔らしいが羽がはえていて空を飛べるということ以外は普通の人間と変わらないので比較的ノリのいいこのクラスは結構簡単に受け入れた。
そうして何故か背の小さいレミリアのことを気に入った妖夢のグループに入ったわけだ。
さて、とりあえず最初の話題に戻ろう。
「レミリアが可愛いのはやっぱ生まれつきだよ。人間でもきっと美少女になったさ。」
ずっとポッキーをくわえながら考えていた魔理沙はそう結論付けた。
「美少女...?私が?」
少し天然の入っているレミリアは未だに首をかしげている。
クッキーをかじりながら。
余談だがこのグループはみんなお菓子が大好きである。
「そんなもんですかねぇ...もぐもぐ...」
堂々と早弁としてサンドイッチをかじっている妖夢は納得したように頷く。
「...ちょっと委員長。まだ一時間目ですよ?」
じっとりとした目でさとりが見つめるが妖夢は知らん顔をしてサンドイッチを食べ続けている。
「もぐ...だってじゃんけんで負けただけだもん。」
一応抗議はしてきたがいかんせんハムスターみたいなので迫力はない。
「そういえばレミリアって吸血鬼でしょ?血とか吸うの?やっぱり。」
にらみあう二人を放り出した霊夢は話題を変えて訊ねる。
「ポリポリ...」
相も変わらずクッキーをかじりながらこくんと頷くレミリア。
「どうやって?」
「やっぱりがぶーっと首にいくのか⁉」
霊夢と魔理沙の二人からの同時質問に少し焦ったかおをしながらレミリアはクッキーを飲み込んだ。
「んく...昔はがぶってやってたときもあったけど今は輸血パックですんでるわ。」
「ほう...」
「輸血パック...?」
絶対わかってないが一応感心したように頷く魔理沙と輸血パックに首をかしげる霊夢。
そんな霊夢にレミリアはさらに細かく付け加えた。
「ポリポリ...うん。私んちお金持ちじゃん?だから月に一回病院から買い取ってるの。ポリ...」
「なるほど...わかったわ。でも食べるのか話すのかどっちかにしましょう?」
レミリアは霊夢の言葉に素直に従いクッキーをしまう。
「さすがお嬢様ね聞き分けがいい。それに比べてあっちは...」
呆れた霊夢の視線をたどるとそこには
「もぐもぐもぐ...」
「委員長!そろそろ先生来ますって!」
ひたすらにサンドイッチを食べ続ける妖夢と止めようとするさとりがいた。
「はーいじゃあ今日の授業ではひとつだけ夢がかなったら何を願いたいかについて考えましょう。まとめたら誰かとみせあうことねー。じゃ、自習しててねー。」
そういうと教室から出ていく先生。
「レミリアは何にした?」
先生がいなくなるとたんに教室がざわめき出す。
「私?私はー...」
霊夢に聞かれ少しいいどよむレミリア。
そこにわらわらといつものメンバーが集まってきた。
「お?なんだなんだ?レミリアの夢か⁉聞かせろきかせろ。」
「気になりますね...」
「お腹すいた...」
興味津々の四人に囲まれレミリアは渋々言った。
「人間になりたい。」
その言葉に一瞬きょとんとしたメンバーだがすぐに笑いだした。
「なんだよ可愛いじゃないか~」
「いい夢ですねー!お手伝いします。」
「あら私は吸血鬼のレミリアも捨てがたいわね。」
「頑張ればなれるよ。」
いろんな反応を見たレミリアは複雑な表情ではあったが少し嬉しそうでもあった。
「んじゃあ今日から『レミリアを人間にする大作戦』スタートだな!」
「「「おー‼」」」
「......え?」
転校早々自分のためとはいえ変な企画に巻き込まれてしまいすこーしだけ嫌な予感がしたレミリアだった。
おまけ
「『人間になりたい吸血鬼さんプロジェクト』開始だな!」
「あれ?なんか作戦名変わってない?なんか探せばどっかにありそうな作品名になってるよ⁉」
「魔理沙は...ほんとに...昔から乙女思考なんだから...」
「...お弁当いるよね?私はサンドイッチ作ってこようか?」
「...探検隊じゃないんですよ委員長。お弁当なんていりません。」
「しゅん。」