Coolier - 新生・東方創想話

鞍馬神社 

2020/10/17 08:07:21
最終更新
サイズ
6.45KB
ページ数
1
閲覧数
1424
評価数
4/9
POINT
630
Rate
13.10

分類タグ

鞍馬神社 
 

「あやや〜 あやや〜」

 その声は疲れ切ってる声だった。ホコリが舞ってる。私こと射命丸文はゴホゴホと咳していた。
 服は汚れきった赤ジャージ。手にはハタキを揺らしていた。

「あやや あやや」
 
 ハタキを揺らすたびに大量のホコリが舞う。その度に咳を大量にする。

「なんで私がこんなことしてるんだろう?」

 ハタキをふるのをやめた。上を見る。ホコリが舞っているが更に上には天井が見えた。木製の天井。シミだらけである。

「よく、もってるわね。この神社は」

 そう言いながらハタキを動かし続ける。私がいる建物は神社の本殿である。
 ハタキを適当に動かしてると、何かが飛んできた。黒い物体が私の顔についた。

「あや?」

 最初はその物体が分からなかったが、それが顔の上をカサカサと動く。

「あやややややや」

 分かった。ハタキで自分の顔をはたく。ゲホゲホと咳込む。そして目の前に黒い物体の群れが飛び回る。

「あやややややややややややや」

 ハタキを捨てて、本殿の出入り口に逃げ出す。

「どうしたんですか!!」

 本殿の入り口で緑のジャージを着た東風谷早苗が立っていた。

「早苗さん。黒い悪魔が 黒い悪魔の群れに襲われますーーーー」

 そのまま、早苗にぶつかり倒れて、その上に黒い悪魔の大群が外へ出ていく。
 
「いたたたたた」

 大量の黒い悪魔の群れが空の彼方に飛んでいった。

「早苗さん、あいつら消えました」

 私は顔を降ろす。下には倒れている早苗の顔が見える。

「文さん‥‥」

 早苗の頬があかくなってる。

「あやや」

 私の手に何かの感触がある。私より弾力があって私より大きなマシュマロが‥‥‥

「あややや。違いますよ。あの黒い悪魔がマシュマロをー」

 私は勢いよく立ち上がりそのまま壁に頭を打った。

「ぎゃやああ」

 頭を抑えたまましゃがみこんだ。

「文さん大丈夫ですか?」

 目の前にしゃがみんで心配してる早苗の顔が見える。
 なんでこんなことになってるんだろう。
 私は頭を押さながら考える。

-------------------------------

 数日前だった。

【辞令・射命丸文を鞍馬神社の巫女に任命する】

 烏天狗達を統括する統領府から辞令が届いた。

「転職できてよかったね」

 烏天狗の里の喫茶店で私はアップルジュースをストローでブクブクと泡をたたせながら辞令表を見ていた。
 テーブルの向こうに座ってクリームがたっぷり乗ってるオレンジジュースかき回して豪快に飲んでる、同じ烏天狗の姫海螳はたては笑いながら言う。

「転職できたって、私は新聞記者で」
「あんた、最近発行部数落ちてるじゃん」

 はたての言葉に私は黙る。
 文々。新聞は確実に落ち込んでる。これは事実である。
 最近は鴉天狗以外にも河童や他の妖怪達も新聞を作り始めて、弱肉強食の時代に入った。
 文々。新聞は弱肉になりつつある。

「それだし、まともに読んでるのはあんたの恋人の守矢の巫女ぐらいじゃない」
「恋人って」

 私はテーブルを叩いた。

「ハハハ。ほとんど守矢神社に入り浸ってるんだからそう見られるよ」

 はたてはオレンジジュースを飲み干して入っていた氷をボリボリと食べる。

「確かに」

 アップルジュースをストローでブクブクと泡をたてる。

 ネタの収集先がほとんど守矢神社に入り浸りの状態になっている。

 なぜか守矢神社の二柱神に気に入れたらしく幻想郷のネタを提供してくれる。
 その後は早苗とおしゃべりしていた。
 あっちのっ世界では新聞を作ってたらしく色々とアドバイスを聞いて新聞を作り直しをしたりした。
 そして夕食を食べてそのまま帰る。

「餌付けされてるね」

 はたてはニヤニヤしながらオレンジジュースにあった氷をごくりと飲んだ。
 私はアップルジュースをずっとブクブクさせていた。

「あやや」

------------------------------------------
 
 蔵馬神社の本殿をある程度掃除して私の目の間に鏡がある。その鏡には守矢の巫女服を着た自分が写っていた。
 
「文さん、似合ってますよ」

 鏡に守矢の巫女服を着た早苗が見えた。

「早苗さん。似合うとか言わないでくださいよ。恥ずかしくなります」
 
 頬を赤くしてる私が映ってる。

「文さん。私は毎日こんな恥ずかしい服を着てるんですけど」

 目を細める早苗が映る。

「そうやって、いじめないでくださいよ」

 私が言うと早苗はフフフと笑い始める。

「それにしてもあの二人の神様にはやりたい放題ですね」

 今度は私が細い目をして、

「そうですね」

 早苗も頷きまた目を細める。
 なぜ、私が蔵馬神社の巫女になったのか?
 すべては早苗が持ってきた手紙に書いてあった。
 妖怪の山の横に隠れるよう蔵馬山という小山があり、そこには蔵馬神社がある。
 昔は巫女や神主がいたらしいが今は誰もいなく、神社の建物には誰もいなかつた。
 最近になり蔵馬山に温泉が湧いた。
 それを機に烏天狗の上層部は温泉街にして儲けようようとした。そして守矢神社に二人の神が絡んで私と早苗の知らぬところで勝手に進んだ。
 そのような内容の手紙を見て、私は『あやや』と言うしかなかった。

「最終的には守矢神社の巫女に転職したんですね」

 私は早苗を見る。いつも見てる巫女服姿の早苗がいる。

「この蔵馬神社も守矢神社の支社になりましたから」

 早苗は言う。鞍馬山の開発は守矢神社の出資で行われてる。
 神社は交渉の中で自然と守矢神社に支配下になる。

「でも、私は文さんと同じ巫女でこれから面白くなると思ってワクワクしてますよ」

 早苗は笑顔で言う。

「あやや」

 私は早苗を見てる。えーと同じ巫女服を着てる‥‥‥
 なんだろう。私は見惚れてる?
  
 早苗と同じ‥‥‥

 私は早苗をじーと見てると早苗の服に何か黒い物体が高速で走ってる。

「黒い悪魔」

 私はいつの間にかスリッパを持って早苗に向かって行った。

「え? え?」

 早苗は言う、私はスリッパを持ったまま早苗に突っ込んでいた。

 そして......

「......」
「......」

 壁が見える。壁にもたれるように早苗がいる。
 私はスリッパを持ったまま壁ドンをしていた。

「えーと、文さん」

 早苗の戸惑いの声する。頭の中で『あやや』が連呼される。

「早苗!!」
「はい!!」

 自然と早苗を呼び捨てにする。顏をゆっくりと早苗に近づける。

 何をしてる?

 自分に問いながらも顏が勝手に進む。早苗はゆっくりと目を閉じていた。

 なんで目を閉じるんですか? 止めてください。

 心の中で叫びながら、早苗と顏と私の顏が重なる。
 短い時間だと思った。長い時間とかも感じた。
 ゆっくりと顏を戻す。早苗は目を閉じたままだった。頬が少し赤くなってる。
 
 自分もなってるだろう。

 頬を赤らめてる自分を想像しながら目を閉じてる早苗を見る。。
 自分も守矢の巫女になり、今後はこの鞍馬神社で巫女をしながら早苗と。
 妄想が広がる。甘い妄想。ずっと浸りたいと思ったが、それを破壊する物が出てきた。早苗の服に黒い悪魔がいた。

「は!!」

 すぐに現実に戻り、手に持ってるスリッパで黒い悪魔を叩いた。黒い悪魔は文の攻撃を避けて飛んでいた。

「痛い」

 早苗が目を開けた。

「文さんいきなり何するんですか!! いきなりスリッパで私を叩いて......」

 そこで早苗は黙った。

「黒い悪魔が」
「え?」

 後ろを見ると、天井に黒い悪魔達が沢山いる。

「きゃーーー」
「あやややややーーーーー」
 
 私と早苗は転げるように鞍馬神社を脱出をする。
 次の日は私と早苗はガスマスクをかぶって大量のバルサンを装備して鞍馬神社に向かっていた。
 そして転職して私の初めて守矢の巫女の仕事は黒い悪魔の退治になった。
ありがとうごじまございます。
三河屋
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.250簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
2.100終身削除
この黒い悪魔たちどこかの神作の警官の部屋から抜け出てきて天井でバカとかトモダチとかのG文字作ってきそうですね  特に誰も来なさそうな神社の管理を任されてるだけでも賑やかそうな感じで良かったと思います
5.90Actadust削除
良いラブコメっぷりでした。G先生ナイスです。
6.100南条削除
面白かったです
ジュースをぶくぶくしてる射命丸がコミカルでかわいらしかったです