自分が何者であるか、未だに答えを出せずにいる。
ルーミア 。
それは私だけの名前のはずだ。他にルーミアはいない。だけど、私は自分がルーミア だと、絶対なる自信を持って、この世を生きていくのはあまり、いや、とても難しいと思うのだ。だって、私の中にはいつも私が知らない感情が蠢いているから。
「きゃっ!」
夜が降りている時間。うろついていると、何かがぶつかり、相手は高い悲鳴を上げた。目線を下に向けると、藍色の着物を着た女が、腰をついて倒れていた。見た目から、大人と言うには幼すぎるから、まだ子供だろう。
「何してるの、貴方?」
「えっ、え‥‥っと」
女は身体を震わせ、目には涙を浮かべている。どうやら相当怯えているらしく、私の質問に答えるられるほど頭が回らないみたいだ。
たぶん人里の人間かな。どうやら月の光だけを頼りにここまで進んできたみたいだ。今日は満月。過剰な勇気さえあれば、こんな行動に出るのかもしれない。息があがっているから、そういうことなのだろう。
「ねぇ、貴方食べていい人類?」
質問を変えてみた。食われるか、食われないかの二択。これなら頭が回らなくても答えられるかもしれない。
「嘘、妖怪‥‥やだぁ、食べられたくない‥っ‥」
女は泣きじゃくりながら、質問に答えた。思惑通りだったが、私の聞きたかった事とは違う返事が来た。あー、やっぱり直接的に言わなきゃだめか。
「質問を変えるわ。貴方、大切な人はいる?」
女は困惑の表情を浮かべ私を見た。今にも目の光は絶えそうだけど、まだ微かな理性が感じられた。
「わ、わたし、いる。お母さんがいるの。助けなきゃいけないの!だから食べないで!」
その声は震えながらも、強い決意が感じられた。さっきまで消えそうだった目の光も、私を簡単に射抜くほど強くなっていた。
「そう、じゃあ貴方は食べない。だからここにいる理由を教えて」
それを聞いて、女は大きく息を吐いた。私が敵じゃないと認識したらしい。その甘さはまさしく子供だ。
「お母さんが高い熱で苦しんでて、でもこんな夜にお医者様もやってなくて、薬草を取りに行かなきゃって」
「場所は分かるの?」
「うん、いつも行ってるから」
「そう。じゃあ私がついて行ってあげる」
「いいの?やったぁ! お姉ちゃんがいれば怖くないや!」
お姉ちゃん。その言葉に私はなぜか不思議な懐かしさを覚えていた。誰の記憶だろう。いったい誰の。
「‥お姉ちゃん?」
「何でもないよ。でも一つ忠告ね。夜は悪い妖怪がいっぱいいるから、もう一人で外は出歩かないこと。いい? じゃないと美味しく食べられるわよ」
「うん分かった!」
満面の笑顔を私に向ける。
また酷く懐かしい気分がした。
「ばいばい、お姉ちゃん」
あの子は人里に無事帰っていった。なぜか、その後ろ姿を意味もなく見つめていた。特に私と関係があるわけでは無いのに。妖怪と人間。たったそれだけなのに。
変な気分だった。言葉に出来ない感情が私を叩いてくる。それをどう受け止めればいいのか、全然分からない。その感情に従えば良いのか、理解すれば良いのか、肯定すれば良いのか。考えれば考えるほど、私の中の私は形を失っていく。こうやって私は自分が信じられんくなっていく。
あぁ、今日は満月だ。だからこんなにも知らない私が騒ぎ出す。
( ねぇ なんで )
頭の中にいつもように声の断片が流れ始める。聞き取れない言葉の欠片。それが何を伝えたいのか、何も分からない。
( ごめ ね )
ふと、頭のリボンに話しかけられた気がした。とても落ち着く声で、またあの酷く懐かしい感情が蘇る。ついリボンが気になって、触れようとすると、バチっと音を立てて、弾かれた。どうやら今日も私を許すことはないらしい。あぁ、本当意味が分からない。
—————————-——-
「ねぇなんで‥ついてきたのよ‥」
「ごめんね‥流石にやりすぎだとは思ったんだけどさ‥ほら私ってさお節介だから‥気になっちゃって」
「ごめんなさい‥っ‥ごめんなさい」
「‥謝らないでよルーミア。今だって私を食べるの必死に我慢してくれてるんだろ?あんたのことも考えず踏み込んだ私が悪いのに」
「違うの‥私が悪いの‥っ‥私が‥。あんたたち家族の邪魔だけはしたくなかったんだ。あそこはいつも楽しかった。孤独しか知らなかった私にとって博麗神社であんたたちと一緒に過ごす時間は本当に特別で楽しかったんだ。だから壊したくなったのに‥なんで、なんで!‥」
「‥ゲホ‥なぁルーミア。私はさ泣いてる誰かを見るのが嫌だったんだ。泣いてるのを見ると、私がなんとかしなきゃって思っちゃってさ。‥あんたが神社の裏で泣きながら自分の腕を噛んでたのを一度見てしまったんだよ。だからどうにかしたいなって。
あんたは愛した奴はどうしても食べたくなってしまうんだろ?なんとなくは分かってたんだ。それでも放っておくなんてこと出来るはずもなかったんだ‥」
「‥なんでよ、なんでよぉ‥」
「だからさ、ルーミア 。今から私はあんたに術を掛ける。もうあんたが大事な人を食べないように。そうじゃないとあんたは一生独りぼっちじゃないか‥‥あぁ、どうやらもう時間はないみたい。この出血量じゃ当然か。‥‥じゃあねルーミア 。霊夢のこと、もし出会えたら宜しく頼むよ。
‥‥ごめんね、一緒にいてあげられなくて」
—————————————
冬の空気は冷たい。夏のような付き纏う暑さはなく、突き放すような冷たさで、乾燥した空気はよりその冷たさを引き立てる。だから冬は寒い。太陽は出ているが全くの役立たずに成り下がっている。
「あーあ、太陽なんか消えてくれないかなー」
「あんた馬鹿でしょ。こんなクソ寒いのに太陽が無くなったらもう世界の終わりよ」
「だって太陽が無くなったら、ずっと月がこの世を支配するわけでしょ?最高じゃない、もう肌荒れに悩まされなくなるし」
「恩恵を受けるのはあんただけよ。‥‥あー、お茶が温かくて美味しい」
そんな霊夢の頬は寒さで林檎の様に真っ赤になっていた。肌が白いから、不自然にそれは目立ってしまっている。
また変な気持ちに駆られた。
「ねぇ、知らない記憶ってあると思う?」
「何よ急に。うーん。知らない記憶ね、私もあるから、頷くしかないのよね」
驚きと同時に嬉しさもあった。
「そうなんだ。それってなんかこう急に来ない? で、変な感情が湧いたり、よく分からない映像が流れてきたりして」
「もしかしてあんたもそうなの?」
「うん。昨日の満月の夜。変なよく分からないものを見た」
「私も。あれ、何なのかよく分かんないのよね。来た後はぼんやりとして、あんまり頭に強く残らないと言うか。あぁー、でも昨日のはいつもより少しはっきりしてるかも」
「どんなのだった」
「なんか黒髪の女性と金髪の女性だったかなぁ。その二人が私達みたいに神社の本殿の階段で座ってて‥‥これ以上は思い出せない。なんかあれ妙に懐かしい気がしたわね」
共感できる誰かがいると言うのはこんなにも心が落ち着くものらしい。そう、私だけじゃないんだ。
「私もほぼ同じのをみた事がある気がする。なんなんだろうねあれ」
「さぁ?前世の記憶とかそんなところじゃない。深く考える必要は無いと思うけど」
「そーなのかー」
「そーなのよ」
こうやって毎日博麗神社に足を運ぶ様になったこと、食べる人間を選ぶ様になったこと、今までの私と違う全ては前世の記憶のせいなのだろうか。そう考えると少しだけ納得はいった。疑問があるとすれば、このままずっと変わっていったら私はどうなるのか、ということだ。
今の私は昔の自分とは何かが違う。そう思えるのは今だけで、このまま時間が過ぎていけば、この違和感すら感じなくなってしまうのではないか。
そんなことを想像してしまい、心には生まれたての恐怖が我が物顔で居座っていた。もう私の思考はそれに支配されていた。
「でもそういうのって怖くない?自分が自分でなくなるような、じわじわ追い詰められっていうか」
同意を求めた。共感を求めた。
「いや全然」「どうして?」
「あんたの足は勝手に動くの?」
「いいえ」
「そう動かない。歩いてるのは自分。だから自分の好きなように歩けば良いの。その足跡が自分だから」
今まで歩いてきた足跡が自分。
ハッとした。そうか。それで良いんだと。
「じゃあ私がここにくるようになったのは私がここが好きだから。霊夢も最初はなんか邪魔そうにしてたけど、今では私が来るとお茶とかお菓子とか持ってきて、一緒にいてくれるのは霊夢が望んだってことだよね!」
「‥そ、そうよ‥」
霊夢はそっぽを向いてしまった。寒さとたぶん恥ずかしさで耳はとても赤く染まっている。そんな霊夢の姿がとても愛おしく感じた。
なんとなくからかいたくなって、近づいて、ほっぺを両手で握ってみた。「ふぁにふんのよ」と言っている。そのままゆっくり上下に動かしてみる。柔らかくて温かい。とても懐かしくて、良い気分だ。
「ぷはぁ! って何すんのよ。私の肉の味でも確かめようとしたの!」
「そんなことしないもん。だって霊夢貧相で不味そう」
それは嘘。でも食べてしまったら、私はもう霊夢に会えなくなるから。
「はぁ!?あんた良い度胸ねこら。今から退治してあげるわよ!」
「ばーいばーい」「あっ逃げんなこら!」
また知らない私が心に表れている。でもこれはたぶん私だと思うのだ。だっていま、とっても気分が良いから。
ルーミア 。
それは私だけの名前のはずだ。他にルーミアはいない。だけど、私は自分がルーミア だと、絶対なる自信を持って、この世を生きていくのはあまり、いや、とても難しいと思うのだ。だって、私の中にはいつも私が知らない感情が蠢いているから。
「きゃっ!」
夜が降りている時間。うろついていると、何かがぶつかり、相手は高い悲鳴を上げた。目線を下に向けると、藍色の着物を着た女が、腰をついて倒れていた。見た目から、大人と言うには幼すぎるから、まだ子供だろう。
「何してるの、貴方?」
「えっ、え‥‥っと」
女は身体を震わせ、目には涙を浮かべている。どうやら相当怯えているらしく、私の質問に答えるられるほど頭が回らないみたいだ。
たぶん人里の人間かな。どうやら月の光だけを頼りにここまで進んできたみたいだ。今日は満月。過剰な勇気さえあれば、こんな行動に出るのかもしれない。息があがっているから、そういうことなのだろう。
「ねぇ、貴方食べていい人類?」
質問を変えてみた。食われるか、食われないかの二択。これなら頭が回らなくても答えられるかもしれない。
「嘘、妖怪‥‥やだぁ、食べられたくない‥っ‥」
女は泣きじゃくりながら、質問に答えた。思惑通りだったが、私の聞きたかった事とは違う返事が来た。あー、やっぱり直接的に言わなきゃだめか。
「質問を変えるわ。貴方、大切な人はいる?」
女は困惑の表情を浮かべ私を見た。今にも目の光は絶えそうだけど、まだ微かな理性が感じられた。
「わ、わたし、いる。お母さんがいるの。助けなきゃいけないの!だから食べないで!」
その声は震えながらも、強い決意が感じられた。さっきまで消えそうだった目の光も、私を簡単に射抜くほど強くなっていた。
「そう、じゃあ貴方は食べない。だからここにいる理由を教えて」
それを聞いて、女は大きく息を吐いた。私が敵じゃないと認識したらしい。その甘さはまさしく子供だ。
「お母さんが高い熱で苦しんでて、でもこんな夜にお医者様もやってなくて、薬草を取りに行かなきゃって」
「場所は分かるの?」
「うん、いつも行ってるから」
「そう。じゃあ私がついて行ってあげる」
「いいの?やったぁ! お姉ちゃんがいれば怖くないや!」
お姉ちゃん。その言葉に私はなぜか不思議な懐かしさを覚えていた。誰の記憶だろう。いったい誰の。
「‥お姉ちゃん?」
「何でもないよ。でも一つ忠告ね。夜は悪い妖怪がいっぱいいるから、もう一人で外は出歩かないこと。いい? じゃないと美味しく食べられるわよ」
「うん分かった!」
満面の笑顔を私に向ける。
また酷く懐かしい気分がした。
「ばいばい、お姉ちゃん」
あの子は人里に無事帰っていった。なぜか、その後ろ姿を意味もなく見つめていた。特に私と関係があるわけでは無いのに。妖怪と人間。たったそれだけなのに。
変な気分だった。言葉に出来ない感情が私を叩いてくる。それをどう受け止めればいいのか、全然分からない。その感情に従えば良いのか、理解すれば良いのか、肯定すれば良いのか。考えれば考えるほど、私の中の私は形を失っていく。こうやって私は自分が信じられんくなっていく。
あぁ、今日は満月だ。だからこんなにも知らない私が騒ぎ出す。
( ねぇ なんで )
頭の中にいつもように声の断片が流れ始める。聞き取れない言葉の欠片。それが何を伝えたいのか、何も分からない。
( ごめ ね )
ふと、頭のリボンに話しかけられた気がした。とても落ち着く声で、またあの酷く懐かしい感情が蘇る。ついリボンが気になって、触れようとすると、バチっと音を立てて、弾かれた。どうやら今日も私を許すことはないらしい。あぁ、本当意味が分からない。
—————————-——-
「ねぇなんで‥ついてきたのよ‥」
「ごめんね‥流石にやりすぎだとは思ったんだけどさ‥ほら私ってさお節介だから‥気になっちゃって」
「ごめんなさい‥っ‥ごめんなさい」
「‥謝らないでよルーミア。今だって私を食べるの必死に我慢してくれてるんだろ?あんたのことも考えず踏み込んだ私が悪いのに」
「違うの‥私が悪いの‥っ‥私が‥。あんたたち家族の邪魔だけはしたくなかったんだ。あそこはいつも楽しかった。孤独しか知らなかった私にとって博麗神社であんたたちと一緒に過ごす時間は本当に特別で楽しかったんだ。だから壊したくなったのに‥なんで、なんで!‥」
「‥ゲホ‥なぁルーミア。私はさ泣いてる誰かを見るのが嫌だったんだ。泣いてるのを見ると、私がなんとかしなきゃって思っちゃってさ。‥あんたが神社の裏で泣きながら自分の腕を噛んでたのを一度見てしまったんだよ。だからどうにかしたいなって。
あんたは愛した奴はどうしても食べたくなってしまうんだろ?なんとなくは分かってたんだ。それでも放っておくなんてこと出来るはずもなかったんだ‥」
「‥なんでよ、なんでよぉ‥」
「だからさ、ルーミア 。今から私はあんたに術を掛ける。もうあんたが大事な人を食べないように。そうじゃないとあんたは一生独りぼっちじゃないか‥‥あぁ、どうやらもう時間はないみたい。この出血量じゃ当然か。‥‥じゃあねルーミア 。霊夢のこと、もし出会えたら宜しく頼むよ。
‥‥ごめんね、一緒にいてあげられなくて」
—————————————
冬の空気は冷たい。夏のような付き纏う暑さはなく、突き放すような冷たさで、乾燥した空気はよりその冷たさを引き立てる。だから冬は寒い。太陽は出ているが全くの役立たずに成り下がっている。
「あーあ、太陽なんか消えてくれないかなー」
「あんた馬鹿でしょ。こんなクソ寒いのに太陽が無くなったらもう世界の終わりよ」
「だって太陽が無くなったら、ずっと月がこの世を支配するわけでしょ?最高じゃない、もう肌荒れに悩まされなくなるし」
「恩恵を受けるのはあんただけよ。‥‥あー、お茶が温かくて美味しい」
そんな霊夢の頬は寒さで林檎の様に真っ赤になっていた。肌が白いから、不自然にそれは目立ってしまっている。
また変な気持ちに駆られた。
「ねぇ、知らない記憶ってあると思う?」
「何よ急に。うーん。知らない記憶ね、私もあるから、頷くしかないのよね」
驚きと同時に嬉しさもあった。
「そうなんだ。それってなんかこう急に来ない? で、変な感情が湧いたり、よく分からない映像が流れてきたりして」
「もしかしてあんたもそうなの?」
「うん。昨日の満月の夜。変なよく分からないものを見た」
「私も。あれ、何なのかよく分かんないのよね。来た後はぼんやりとして、あんまり頭に強く残らないと言うか。あぁー、でも昨日のはいつもより少しはっきりしてるかも」
「どんなのだった」
「なんか黒髪の女性と金髪の女性だったかなぁ。その二人が私達みたいに神社の本殿の階段で座ってて‥‥これ以上は思い出せない。なんかあれ妙に懐かしい気がしたわね」
共感できる誰かがいると言うのはこんなにも心が落ち着くものらしい。そう、私だけじゃないんだ。
「私もほぼ同じのをみた事がある気がする。なんなんだろうねあれ」
「さぁ?前世の記憶とかそんなところじゃない。深く考える必要は無いと思うけど」
「そーなのかー」
「そーなのよ」
こうやって毎日博麗神社に足を運ぶ様になったこと、食べる人間を選ぶ様になったこと、今までの私と違う全ては前世の記憶のせいなのだろうか。そう考えると少しだけ納得はいった。疑問があるとすれば、このままずっと変わっていったら私はどうなるのか、ということだ。
今の私は昔の自分とは何かが違う。そう思えるのは今だけで、このまま時間が過ぎていけば、この違和感すら感じなくなってしまうのではないか。
そんなことを想像してしまい、心には生まれたての恐怖が我が物顔で居座っていた。もう私の思考はそれに支配されていた。
「でもそういうのって怖くない?自分が自分でなくなるような、じわじわ追い詰められっていうか」
同意を求めた。共感を求めた。
「いや全然」「どうして?」
「あんたの足は勝手に動くの?」
「いいえ」
「そう動かない。歩いてるのは自分。だから自分の好きなように歩けば良いの。その足跡が自分だから」
今まで歩いてきた足跡が自分。
ハッとした。そうか。それで良いんだと。
「じゃあ私がここにくるようになったのは私がここが好きだから。霊夢も最初はなんか邪魔そうにしてたけど、今では私が来るとお茶とかお菓子とか持ってきて、一緒にいてくれるのは霊夢が望んだってことだよね!」
「‥そ、そうよ‥」
霊夢はそっぽを向いてしまった。寒さとたぶん恥ずかしさで耳はとても赤く染まっている。そんな霊夢の姿がとても愛おしく感じた。
なんとなくからかいたくなって、近づいて、ほっぺを両手で握ってみた。「ふぁにふんのよ」と言っている。そのままゆっくり上下に動かしてみる。柔らかくて温かい。とても懐かしくて、良い気分だ。
「ぷはぁ! って何すんのよ。私の肉の味でも確かめようとしたの!」
「そんなことしないもん。だって霊夢貧相で不味そう」
それは嘘。でも食べてしまったら、私はもう霊夢に会えなくなるから。
「はぁ!?あんた良い度胸ねこら。今から退治してあげるわよ!」
「ばーいばーい」「あっ逃げんなこら!」
また知らない私が心に表れている。でもこれはたぶん私だと思うのだ。だっていま、とっても気分が良いから。
すとんと納得できるストーリー運びとルーミアの可愛さと優しさと細かい原作ネタで、ルーミア分をたくさん補充できました。ありがとうございます。
記憶にある黒髪の女性……は先代の巫女(霊夢のお母さん?)ですかね