虫も寝静まる深夜、外の月明かりが私を照らしている。
ここ最近、どうも寝付けない。
数日前、パチュリーに相談した所、運動不足なんじゃないかと言われてしまい、お前が言うなという思いはありつつも、最近は特に用がなくとも家から出ることを心掛けているのだが、それを続けて数日、めぼしい効果は実感出来ていない。
「そういえば最近は外で食事を摂ってばかりだな。
アリスから新しい趣味を持つことを勧められたことだし、
ここはひとつ、久しぶりに料理でもしてみようかな」
ふぁっ、と欠伸をし、ボリボリと腹を掻きながら台所へと向かう。
「人里のヤツらに”貰った”鶏肉、新鮮なうちに食べたいからな。」
鶏むね肉を1枚、まな板の上に取り出す。
薄いピンク色で、ハリがよく、プリっとしている。
「最近霊夢にお腹の肉を指摘されたし、脂肪の多い皮は捨てちゃおう」
指摘をされた時は本気で落ち込んだが、実際鏡の前に立ってみると明らかに数ヶ月前より太っている。
それもこの狂った生活習慣が招いた弊害なのかもしれない。
まあでも趣味を持つことはいいだし、と自分に言い聞かせ、
料理に集中する。
鶏肉の繊維を断ち切るように、斜めに包丁を入れてそぎ切りにしていくと、固くなりやすいむね肉でも柔らかく仕上げることが出来るとかなんとか。
密閉できる袋に切ったむね肉を入れ、醤油とみりんと料理酒を大さじ1杯入れていく。優しく揉みこんで15分ほど寝かしておく。
鉄の鍋に油をなみなみと注ぎ、小型の八卦炉で熱していく。
箸を油に入れて細かい泡がふつふつと浮き上がってくるようになったら、卵液にくぐらせて片栗粉をまぶしたむね肉を入れていく。
じゃあああっと、油の弾ける音が部屋を満たす。
虫も寝しずまる深夜、まるでこの世界に自分しかいないのではと錯覚するような静寂と寂しさを、むね肉と油が心を満たしてくれる。
「お、そろそろかな。」
むね肉の色が薄く色づいてきたら、1度油から引き上げ、
揚げていた時間と同じだけ休ませてやる。
八卦炉の火力を強くし、油の温度を上げていく。
箸を油に入れて大きな泡がパチパチと弾けるようになったら休ませていたむね肉を入れていく。
さっきよりも大きな音が、私の世界を満たしていく。
15秒ほど揚げたら引っくり返して更に15秒。
むね肉が茶色くなったら引き上げ時だ。
一回目でむね肉に火を通し、
二回目で衣をより高い温度で揚げていく。
“二度揚げ”というのだと、以前咲夜から教わったことがある。
「咲夜の言うこともたまには役に立つもんだな。」
そう呟きながら、鍋に箸を伸ばす。
引き上げても尚、箸の間でパチパチと油を弾けさせてる唐揚げを皿へ盛り付けていく。
「唐揚げにはこれがなきゃな。」
檸檬を皮を下にしてふりかけていく。
油の香ばしい匂いの中に柑橘の爽やかさが加わり、
陰鬱な気持ちを完全に吹き飛ばしてくれる。
いつも使っているテーブルに皿を運び、手を合わせる。
「いただきます。」
まだほかほかと湯気の立つ唐揚げを頬張る。
ざくっ、と衣が音を立てて崩れていく。
直後、黄金にも見える肉汁が口の中いっぱいに広がる。
ざくっ、じゅわっ、ざくっ、じゅわっ。
口の中が肉汁で満たされたと思えば、
鼻腔に爽やかな匂いが流れ込む。
美味しさと酸っぱさで涎が止まらない。
一部、衣だけの部分ができてしまっているが、
そこがまた美味しい。
レモンの汁を吸ってしんなりとしている衣を口に運ぶ。
「~~~~っ」
酸っぱい。
カップにお酒を注ぎ一気に飲み干す。
口の中の油っこさを、レモンの匂いとお酒で流し込む。
自然と唐揚げにまた箸が伸びていく。
酔いが完全に回る頃、唐揚げも最後の一つになっていた。、
名残惜しさを感じながら唐揚げを頬張る。
「ごちそうさまでした。」
ぱんっと手を揃え、空になった皿に向かって礼をする。
窓の外を見ると空が白けてきている。
いつの間にそんな時間が経っていたのか。
満足感を感じながらふらふらと布団へと潜り込む。
「ああ、こりゃ明日も夜更かしコースだな。
明日は何を作ろうか。」
おやすみ。
ここ最近、どうも寝付けない。
数日前、パチュリーに相談した所、運動不足なんじゃないかと言われてしまい、お前が言うなという思いはありつつも、最近は特に用がなくとも家から出ることを心掛けているのだが、それを続けて数日、めぼしい効果は実感出来ていない。
「そういえば最近は外で食事を摂ってばかりだな。
アリスから新しい趣味を持つことを勧められたことだし、
ここはひとつ、久しぶりに料理でもしてみようかな」
ふぁっ、と欠伸をし、ボリボリと腹を掻きながら台所へと向かう。
「人里のヤツらに”貰った”鶏肉、新鮮なうちに食べたいからな。」
鶏むね肉を1枚、まな板の上に取り出す。
薄いピンク色で、ハリがよく、プリっとしている。
「最近霊夢にお腹の肉を指摘されたし、脂肪の多い皮は捨てちゃおう」
指摘をされた時は本気で落ち込んだが、実際鏡の前に立ってみると明らかに数ヶ月前より太っている。
それもこの狂った生活習慣が招いた弊害なのかもしれない。
まあでも趣味を持つことはいいだし、と自分に言い聞かせ、
料理に集中する。
鶏肉の繊維を断ち切るように、斜めに包丁を入れてそぎ切りにしていくと、固くなりやすいむね肉でも柔らかく仕上げることが出来るとかなんとか。
密閉できる袋に切ったむね肉を入れ、醤油とみりんと料理酒を大さじ1杯入れていく。優しく揉みこんで15分ほど寝かしておく。
鉄の鍋に油をなみなみと注ぎ、小型の八卦炉で熱していく。
箸を油に入れて細かい泡がふつふつと浮き上がってくるようになったら、卵液にくぐらせて片栗粉をまぶしたむね肉を入れていく。
じゃあああっと、油の弾ける音が部屋を満たす。
虫も寝しずまる深夜、まるでこの世界に自分しかいないのではと錯覚するような静寂と寂しさを、むね肉と油が心を満たしてくれる。
「お、そろそろかな。」
むね肉の色が薄く色づいてきたら、1度油から引き上げ、
揚げていた時間と同じだけ休ませてやる。
八卦炉の火力を強くし、油の温度を上げていく。
箸を油に入れて大きな泡がパチパチと弾けるようになったら休ませていたむね肉を入れていく。
さっきよりも大きな音が、私の世界を満たしていく。
15秒ほど揚げたら引っくり返して更に15秒。
むね肉が茶色くなったら引き上げ時だ。
一回目でむね肉に火を通し、
二回目で衣をより高い温度で揚げていく。
“二度揚げ”というのだと、以前咲夜から教わったことがある。
「咲夜の言うこともたまには役に立つもんだな。」
そう呟きながら、鍋に箸を伸ばす。
引き上げても尚、箸の間でパチパチと油を弾けさせてる唐揚げを皿へ盛り付けていく。
「唐揚げにはこれがなきゃな。」
檸檬を皮を下にしてふりかけていく。
油の香ばしい匂いの中に柑橘の爽やかさが加わり、
陰鬱な気持ちを完全に吹き飛ばしてくれる。
いつも使っているテーブルに皿を運び、手を合わせる。
「いただきます。」
まだほかほかと湯気の立つ唐揚げを頬張る。
ざくっ、と衣が音を立てて崩れていく。
直後、黄金にも見える肉汁が口の中いっぱいに広がる。
ざくっ、じゅわっ、ざくっ、じゅわっ。
口の中が肉汁で満たされたと思えば、
鼻腔に爽やかな匂いが流れ込む。
美味しさと酸っぱさで涎が止まらない。
一部、衣だけの部分ができてしまっているが、
そこがまた美味しい。
レモンの汁を吸ってしんなりとしている衣を口に運ぶ。
「~~~~っ」
酸っぱい。
カップにお酒を注ぎ一気に飲み干す。
口の中の油っこさを、レモンの匂いとお酒で流し込む。
自然と唐揚げにまた箸が伸びていく。
酔いが完全に回る頃、唐揚げも最後の一つになっていた。、
名残惜しさを感じながら唐揚げを頬張る。
「ごちそうさまでした。」
ぱんっと手を揃え、空になった皿に向かって礼をする。
窓の外を見ると空が白けてきている。
いつの間にそんな時間が経っていたのか。
満足感を感じながらふらふらと布団へと潜り込む。
「ああ、こりゃ明日も夜更かしコースだな。
明日は何を作ろうか。」
おやすみ。
なにもわかっちゃいない
コメントをしないでください うるさいので