「まーりさー! 起きろこらっ!」
ぽかっ。微睡みの中から叩き起される。なんだよ、家で気持ちよく寝てたのに。
「んあ……なんだれいむ……ねてたのに……」
「あんた今日、甘味処に行くって言ったじゃない!」
私は眠い目を擦りながら、もそりとベッドに座る。
「……なんか約束してたっけ……」
「甘味処で奢ってもらう約束だったじゃない。あんたが宴会の片付けをするって言ったのに潰れた罰よ」
どうにか覚めた頭で考える。……うん。そういえば約束をしていた。一週間前にあった宴会で私が片付けを手伝うと言ったのに飲み潰れて、翌日こてんぱんに怒られて里の甘味処で奢るという約束をしたと言うことを。
「んあー……あー……ごめん忘れてた。今から着替えるから待っててくれ」
ぷんすこと怒るように霊夢は部屋の窓から出ていった。あちゃあ、これは相当怒ってるな。少しでもなだめるように気張らないと行けないと思いつつ、私はさっさと壁にかけてある服を取った。
***
魔法の森の空を飛ぶ。
「今日ちゃんと案内しなさいよ。それとなんであんた起きるの遅いのよ」
隣で風を切る霊夢が話してくる。
「深夜まで実験してたんだよ。そしたら寝るのが遅くなって寝坊した」
霊夢に嘘をついたって仕方がないので本当のことを言う。前に約束していてポカで忘れてしまっていたことがあったのだが、その時に嘘をついて、あとから弾幕ごっこでばちばちにやられたことがある。戦うのはいいのだけれどあの怒り方は異変時の時とは違う怖さがあったのでもうやりたくない。嘘は基本つかないに限る。大図書のは借りてるだけだ。あれは嘘ではない。
「それで約束忘れて寝てたのね。ふーん」
拗ねたような声だったので私は慌ててしまう。
「え、あ、ごめん。奢るのはちゃんとするからさ」
慌てすぎて何故か淡々としたような口調になってしまった。
「それなら、うんと良いやつ頼むわよ。覚悟しなさいよ」
「げえっ、頼むのはいいけど良心的でお願いするぜ……財布が……」
「しーらないっ! 魔理沙が悪いんでしょ」
「それを言われたらぐうの音も出ないぜ……」
とほほ、と思いつつ霊夢を先導しながら里に入った。
***
「へえ、こんな所に新しい甘味処出来てたのね」
鈴奈庵の近くに最近出来た所。霊夢に奢るということになってから里を探していたら見つけた場所だ。見つけた時に入って確認した。
「目玉はあんみつらしいぞ。とても美味しかった」
「入ったことあるのね、行きましょ」
うきうきとしている霊夢に手を引かれて暖簾をくぐった。
「いらっしゃいま……せ」
店員がこちらに来たと思えば声が詰まっている。まあ無理も無いだろう。出てきた店員は赤蛮奇。人里の中で人間と関わる時はあかね、と呼ばせているらしい。天敵の巫女がいきなり目の前に現れればまあ驚くよな。こちらに非難の目が飛んできた。なにか言いたげだな。
「こちらのお席にどうぞ」
お、何事も無かったかのように席に案内したな。案内された席は見晴らしの良い窓の側の四人席だった。里の中を流れる川を見ることのできるとても良い席だ。
「いい店ね」
外の景色を見ながら霊夢は言う。
「だろ? メニュー表を見て決めといてくれ。私は少しだけ席を外すよ。すぐ戻る」
ガタンと席から立って店の外に出た。
「霧雨……お前なにしてくれてんだよ」
後ろから着いてきていた赤蛮奇が私の肩を叩く。
「何って私は霊夢とこの店に来ただけさ。なにも妖怪退治なんぞしようなんか思ってない」
「くっそ……巫女は分かってそうだけど里の中では大人しくしてるから退治しないでよ……働いてるのにされたら困るんだからな……」
怒りが混ざったような低い声でこちらに言う。
「それを私に言われてもなあ。退治するかしないかは霊夢次第だし。逆鱗に触れなかったら大丈夫だと思うが」
「くっそ……覚えとけよ……」
心底悔しそうな顔だった。私は別に退治されようが知らん。
「あかねさんー! お客さんの注文取ってきてくださいな!」
「あ、はーい! 今行きます!」
パタパタと呼ばれて店の中に入っていった。私も席に戻ろうか。
「魔理沙、もう注文したわよ」
出されたお冷を片手に持ちながら嬉しそうに言う。
「お、何にしたんだ?」
霊夢の前に置いてあるメニュー表を手に取る。
「まずは目玉のあんみつでしょ、三色団子でしょ、あんだんごに……」
「ちょっ、ちょっと待て。どれだけ頼んだんだ?」
メニュー表を指さしながら頼んだものを言っていくのが止まらないので困惑して聞いてしまう。
「あんみつ二つとお団子三種類一つづつ、それと羊羹」
うわぁっ、やられた。私がいない間に頼むもの頼んでいたのか。……お金あったかな。
「やられたって顔してるけど頼んでいいって言ったのは魔理沙よ?それに忘れた罰もあるからね。美味しいもの沢山食べたいじゃない」
あまり見せないような笑顔でとても眩しい。くそっ、その顔だけで許してもいいかな、みたいなことを思った。我ながら甘いな。
***
届いたあんみつを食べながら霊夢を見る。普段、あまり表情に出ないのに好きな物を食べる時なんかにちらりと見れたりする嬉しそうな顔がたまらない。まあ今回は自業自得なんだけどさ。
「甘いのはほんと久々のように思うわ」
ふと考えたかのようにそう言う霊夢。
「そりゃあ、そもそも霊夢はあんまり食べてないだろ? 普段からせんべいだし」
ズズ……と私はお茶を飲む。ここのは美味しいけれどなんか霊夢が入れてくれる出涸らしが、少し恋しいと思う。舌がおかしくなってるのか?
「そもそも甘いのはあまり買わないもの。神社にいるならせんべいでいいのよ」
三色団子を手に取り、くるくると眺めながら話している。
「そういうものか? せんべいも美味しいから食べるけどな」
「そういうものよ。普段と違う場所とかで食べるから美味しいのよ。神社であんみつ食べたとしても美味しいでしょうけど、そこに合うものがあるから」
そう言い切ると団子を頬張った。そういうものなのか。勝手に納得した。
戸がガラガラと開く音で霊夢と一緒に入口見ると入ってきたのは早苗だった。
「こんにちは〜お二人じゃないですかぁ」
ニヤニヤとした顔でこちらに近づいてくるのがとても鬱陶しいように思う。後ろの方に咲夜もいる。少し呆れたような様子だった。霊夢に関しては二つ目のお団子に手を伸ばしながら様子を見ている。
「なんだよ早苗。そんなにニヤニヤして」
「いえなんでも。咲夜さん、ここに座りましょう?」
こいつ、話を聞いてるのにほぼ流して昨夜に声をかけやがったな。答える気もないんだろう、もういいか。
「霊夢の隣に失礼するわ。大事な荷物もある事だし、シーフに盗まれたくないわ」
「おまえ……」
しれっとそんなことを言うのでキレそうになった。
「ははは、それは魔理沙さんの普段の行いからですね」
「魔理沙、あんたが図書館から奪わなかったらそんなこと言われないのに」
早苗が笑い、霊夢がまともな事を言ってくる。
「くそ、なんだよ……とりあえず二人もなんか頼んだらどうなんだ?」
「そうしますかね。すみませーん、あんみつ二つ」
話をそらすことが出来た。もう墓穴なんかは掘らないだろう。
「そういえばなんで二人で出かけてるの?」
咲夜が聞いてくる。私は半分ほど食べたあんみつの皿を置いて咲夜を見た。
「それね、宴会で魔理沙が後片付け手伝うって言ったくせに、寝こけたから甘いものを奢ってもらうことになったの」
三本目のみたらし団子を眺めながら霊夢は言う。なんでお団子見てから食べてるんだろう。
「なるほどね。確かにあの時の霊夢は怒っていたわね」
「あー、あれですか。霊夢さんがカンカンに怒ってたやつ」
私が潰れている間に霊夢はものすごく怒っていたんだな……ああ、怖っ。
「美味しいものを食べられたら霊夢は許すの?」
「そう言う約束だから。美味しいのは、いいわよ」
許されなかったら何されるんだ本当。私はあんみつを食べかける。
「ふーん。それじゃあ霊夢さんと魔理沙さん、デートしてるんですね!」
ごっふぉ!? 口の中に入れた白玉団子を吐きかける。噛み砕いた欠片が喉の奥に詰まった。
「ゴホッ、ごホッ!!」
「焦りましたね?というか大丈夫ですかー?」
くっそ、お前の爆弾発言のせいだろ。喉の奥に詰まったものが苦しい。
「ちょっと背中叩きますよー」
バシィ!
私が頷く間もなく思い切り叩かれたので椅子から飛び上がりそうになった。
「痛てぇ!!!」
カハッっと詰まったものが出たらしく少しマシになった。
「魔理沙さん大丈夫ですか?」
「早苗、お前なぁ!? 痛いっての!」
「治まってよかったですね! 痛いのは知りませんよ!」
ぶっ叩いた癖にめちゃめちゃいい笑顔で言い切る早苗。ムカつくな。
「まあ、ありがとう早苗。イラってしたから違う日にまた弾幕勝負な?」
「えぇーそれって魔理沙さんの私怨じゃないですか」
「お客様……お静かに願います」
あかねが、いいや、赤蛮奇がおずおずと言ってきた。
「あ、はい。すみません」
呆けたように早苗は言った。
「そんなにうるさくするからよ」
冷めたお茶を飲みながら霊夢はそういった。
***
なんやかんやで頼んだものを食べて支払いをして私達は店の外に出る。
もう、私の財布はすっからかんだ。霊夢の分と私の会計をしようとした所で早苗が「奢ってくださいよー」とか言われて、そしたら咲夜がそれに便乗してか、「魔理沙の家の本、後から取りに行こうかしら」なんて言って。しまいに霊夢も「奢ってあげなさいよ、私が魔理沙の面倒見るし」とか。いやどう言う事だよ?
この店いい所なんだぞ!? 値段も少し高いんだぞ!?ヒイヒイ言いながらお金を払った。……里で少し手伝いしようかな。それか家にあるもの何が売れれば……
「おーい魔理沙? どうしたの?」
「どうしたじゃないぜ……お金が無い……さすがにこれはきつい……」
心が半泣きになりながら私は答える。
「神社に少し来なさいよ、泊まるところぐらいなら貸すから」
おお、天使よ!
「助かるぜ……少しだけ泊まらせてくれ……」
「ありがとうございます、美味しかったですよ」
「強硬手段に出なくてよかったわ」
こ、この……弾幕勝負がいつか出来ればこの2人はマスタースパークでぶっ飛ばしてやろうと心に誓った。
ぽかっ。微睡みの中から叩き起される。なんだよ、家で気持ちよく寝てたのに。
「んあ……なんだれいむ……ねてたのに……」
「あんた今日、甘味処に行くって言ったじゃない!」
私は眠い目を擦りながら、もそりとベッドに座る。
「……なんか約束してたっけ……」
「甘味処で奢ってもらう約束だったじゃない。あんたが宴会の片付けをするって言ったのに潰れた罰よ」
どうにか覚めた頭で考える。……うん。そういえば約束をしていた。一週間前にあった宴会で私が片付けを手伝うと言ったのに飲み潰れて、翌日こてんぱんに怒られて里の甘味処で奢るという約束をしたと言うことを。
「んあー……あー……ごめん忘れてた。今から着替えるから待っててくれ」
ぷんすこと怒るように霊夢は部屋の窓から出ていった。あちゃあ、これは相当怒ってるな。少しでもなだめるように気張らないと行けないと思いつつ、私はさっさと壁にかけてある服を取った。
***
魔法の森の空を飛ぶ。
「今日ちゃんと案内しなさいよ。それとなんであんた起きるの遅いのよ」
隣で風を切る霊夢が話してくる。
「深夜まで実験してたんだよ。そしたら寝るのが遅くなって寝坊した」
霊夢に嘘をついたって仕方がないので本当のことを言う。前に約束していてポカで忘れてしまっていたことがあったのだが、その時に嘘をついて、あとから弾幕ごっこでばちばちにやられたことがある。戦うのはいいのだけれどあの怒り方は異変時の時とは違う怖さがあったのでもうやりたくない。嘘は基本つかないに限る。大図書のは借りてるだけだ。あれは嘘ではない。
「それで約束忘れて寝てたのね。ふーん」
拗ねたような声だったので私は慌ててしまう。
「え、あ、ごめん。奢るのはちゃんとするからさ」
慌てすぎて何故か淡々としたような口調になってしまった。
「それなら、うんと良いやつ頼むわよ。覚悟しなさいよ」
「げえっ、頼むのはいいけど良心的でお願いするぜ……財布が……」
「しーらないっ! 魔理沙が悪いんでしょ」
「それを言われたらぐうの音も出ないぜ……」
とほほ、と思いつつ霊夢を先導しながら里に入った。
***
「へえ、こんな所に新しい甘味処出来てたのね」
鈴奈庵の近くに最近出来た所。霊夢に奢るということになってから里を探していたら見つけた場所だ。見つけた時に入って確認した。
「目玉はあんみつらしいぞ。とても美味しかった」
「入ったことあるのね、行きましょ」
うきうきとしている霊夢に手を引かれて暖簾をくぐった。
「いらっしゃいま……せ」
店員がこちらに来たと思えば声が詰まっている。まあ無理も無いだろう。出てきた店員は赤蛮奇。人里の中で人間と関わる時はあかね、と呼ばせているらしい。天敵の巫女がいきなり目の前に現れればまあ驚くよな。こちらに非難の目が飛んできた。なにか言いたげだな。
「こちらのお席にどうぞ」
お、何事も無かったかのように席に案内したな。案内された席は見晴らしの良い窓の側の四人席だった。里の中を流れる川を見ることのできるとても良い席だ。
「いい店ね」
外の景色を見ながら霊夢は言う。
「だろ? メニュー表を見て決めといてくれ。私は少しだけ席を外すよ。すぐ戻る」
ガタンと席から立って店の外に出た。
「霧雨……お前なにしてくれてんだよ」
後ろから着いてきていた赤蛮奇が私の肩を叩く。
「何って私は霊夢とこの店に来ただけさ。なにも妖怪退治なんぞしようなんか思ってない」
「くっそ……巫女は分かってそうだけど里の中では大人しくしてるから退治しないでよ……働いてるのにされたら困るんだからな……」
怒りが混ざったような低い声でこちらに言う。
「それを私に言われてもなあ。退治するかしないかは霊夢次第だし。逆鱗に触れなかったら大丈夫だと思うが」
「くっそ……覚えとけよ……」
心底悔しそうな顔だった。私は別に退治されようが知らん。
「あかねさんー! お客さんの注文取ってきてくださいな!」
「あ、はーい! 今行きます!」
パタパタと呼ばれて店の中に入っていった。私も席に戻ろうか。
「魔理沙、もう注文したわよ」
出されたお冷を片手に持ちながら嬉しそうに言う。
「お、何にしたんだ?」
霊夢の前に置いてあるメニュー表を手に取る。
「まずは目玉のあんみつでしょ、三色団子でしょ、あんだんごに……」
「ちょっ、ちょっと待て。どれだけ頼んだんだ?」
メニュー表を指さしながら頼んだものを言っていくのが止まらないので困惑して聞いてしまう。
「あんみつ二つとお団子三種類一つづつ、それと羊羹」
うわぁっ、やられた。私がいない間に頼むもの頼んでいたのか。……お金あったかな。
「やられたって顔してるけど頼んでいいって言ったのは魔理沙よ?それに忘れた罰もあるからね。美味しいもの沢山食べたいじゃない」
あまり見せないような笑顔でとても眩しい。くそっ、その顔だけで許してもいいかな、みたいなことを思った。我ながら甘いな。
***
届いたあんみつを食べながら霊夢を見る。普段、あまり表情に出ないのに好きな物を食べる時なんかにちらりと見れたりする嬉しそうな顔がたまらない。まあ今回は自業自得なんだけどさ。
「甘いのはほんと久々のように思うわ」
ふと考えたかのようにそう言う霊夢。
「そりゃあ、そもそも霊夢はあんまり食べてないだろ? 普段からせんべいだし」
ズズ……と私はお茶を飲む。ここのは美味しいけれどなんか霊夢が入れてくれる出涸らしが、少し恋しいと思う。舌がおかしくなってるのか?
「そもそも甘いのはあまり買わないもの。神社にいるならせんべいでいいのよ」
三色団子を手に取り、くるくると眺めながら話している。
「そういうものか? せんべいも美味しいから食べるけどな」
「そういうものよ。普段と違う場所とかで食べるから美味しいのよ。神社であんみつ食べたとしても美味しいでしょうけど、そこに合うものがあるから」
そう言い切ると団子を頬張った。そういうものなのか。勝手に納得した。
戸がガラガラと開く音で霊夢と一緒に入口見ると入ってきたのは早苗だった。
「こんにちは〜お二人じゃないですかぁ」
ニヤニヤとした顔でこちらに近づいてくるのがとても鬱陶しいように思う。後ろの方に咲夜もいる。少し呆れたような様子だった。霊夢に関しては二つ目のお団子に手を伸ばしながら様子を見ている。
「なんだよ早苗。そんなにニヤニヤして」
「いえなんでも。咲夜さん、ここに座りましょう?」
こいつ、話を聞いてるのにほぼ流して昨夜に声をかけやがったな。答える気もないんだろう、もういいか。
「霊夢の隣に失礼するわ。大事な荷物もある事だし、シーフに盗まれたくないわ」
「おまえ……」
しれっとそんなことを言うのでキレそうになった。
「ははは、それは魔理沙さんの普段の行いからですね」
「魔理沙、あんたが図書館から奪わなかったらそんなこと言われないのに」
早苗が笑い、霊夢がまともな事を言ってくる。
「くそ、なんだよ……とりあえず二人もなんか頼んだらどうなんだ?」
「そうしますかね。すみませーん、あんみつ二つ」
話をそらすことが出来た。もう墓穴なんかは掘らないだろう。
「そういえばなんで二人で出かけてるの?」
咲夜が聞いてくる。私は半分ほど食べたあんみつの皿を置いて咲夜を見た。
「それね、宴会で魔理沙が後片付け手伝うって言ったくせに、寝こけたから甘いものを奢ってもらうことになったの」
三本目のみたらし団子を眺めながら霊夢は言う。なんでお団子見てから食べてるんだろう。
「なるほどね。確かにあの時の霊夢は怒っていたわね」
「あー、あれですか。霊夢さんがカンカンに怒ってたやつ」
私が潰れている間に霊夢はものすごく怒っていたんだな……ああ、怖っ。
「美味しいものを食べられたら霊夢は許すの?」
「そう言う約束だから。美味しいのは、いいわよ」
許されなかったら何されるんだ本当。私はあんみつを食べかける。
「ふーん。それじゃあ霊夢さんと魔理沙さん、デートしてるんですね!」
ごっふぉ!? 口の中に入れた白玉団子を吐きかける。噛み砕いた欠片が喉の奥に詰まった。
「ゴホッ、ごホッ!!」
「焦りましたね?というか大丈夫ですかー?」
くっそ、お前の爆弾発言のせいだろ。喉の奥に詰まったものが苦しい。
「ちょっと背中叩きますよー」
バシィ!
私が頷く間もなく思い切り叩かれたので椅子から飛び上がりそうになった。
「痛てぇ!!!」
カハッっと詰まったものが出たらしく少しマシになった。
「魔理沙さん大丈夫ですか?」
「早苗、お前なぁ!? 痛いっての!」
「治まってよかったですね! 痛いのは知りませんよ!」
ぶっ叩いた癖にめちゃめちゃいい笑顔で言い切る早苗。ムカつくな。
「まあ、ありがとう早苗。イラってしたから違う日にまた弾幕勝負な?」
「えぇーそれって魔理沙さんの私怨じゃないですか」
「お客様……お静かに願います」
あかねが、いいや、赤蛮奇がおずおずと言ってきた。
「あ、はい。すみません」
呆けたように早苗は言った。
「そんなにうるさくするからよ」
冷めたお茶を飲みながら霊夢はそういった。
***
なんやかんやで頼んだものを食べて支払いをして私達は店の外に出る。
もう、私の財布はすっからかんだ。霊夢の分と私の会計をしようとした所で早苗が「奢ってくださいよー」とか言われて、そしたら咲夜がそれに便乗してか、「魔理沙の家の本、後から取りに行こうかしら」なんて言って。しまいに霊夢も「奢ってあげなさいよ、私が魔理沙の面倒見るし」とか。いやどう言う事だよ?
この店いい所なんだぞ!? 値段も少し高いんだぞ!?ヒイヒイ言いながらお金を払った。……里で少し手伝いしようかな。それか家にあるもの何が売れれば……
「おーい魔理沙? どうしたの?」
「どうしたじゃないぜ……お金が無い……さすがにこれはきつい……」
心が半泣きになりながら私は答える。
「神社に少し来なさいよ、泊まるところぐらいなら貸すから」
おお、天使よ!
「助かるぜ……少しだけ泊まらせてくれ……」
「ありがとうございます、美味しかったですよ」
「強硬手段に出なくてよかったわ」
こ、この……弾幕勝負がいつか出来ればこの2人はマスタースパークでぶっ飛ばしてやろうと心に誓った。
美味しいもの食べて幸せな霊夢もいっぱいいじられて涙目な魔理沙も可愛かったです。