Coolier - 新生・東方創想話

博麗霊夢は弱体化された能力で戦うようです 1

2019/09/11 14:16:13
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「最近、紫が良からぬことを考えているらしいぞ」

 魔理沙の半笑いを抑えた声に私は眉を僅かに動かして答えた。
 私、博麗霊夢はこの神社、挙句には幻想郷という魑魅魍魎がガニ股で闊歩する
小さな世界を見たり観察したり監視する責務を負っている。
 それがどうしたと言われればそれまでだが幻想郷は果てしなく面倒臭い事件が多い。
暇だからという理由で紅霧を垂れ流されたり、自分が贔屓している桜を見るためだけに
春が来なくなったり、実家からの差し金が怖いからという理由でずっと夜が明けないという
異変もあった。自分勝手な上結局何がしたかったのかすら当の本人も分からないという。
 盗んだバイクで走り出す中学生の方ですら目的があったというのに一体ここの連中は何事か。
しかも年齢的には化物クラスばかりだから情状酌量という言葉すら思いつかない。

「へぇ紫がねぇ。この前のジャーマンスープレックスじゃ足りなかったのかしら」

 適当に受け答えながらも頭の中は次に起こるであろう異変で一杯になっていた。
八雲紫、次から次へと面倒事とお茶菓子を持ってくる厄介なような有り難いような
残念な賢者だ。普段は突然お茶を集りにくるだけの金はある乞食という印象だったが
魔理沙の言葉通り何かを企んでいるようならば即座に制裁を加えなければならない。

「ま、私は退屈しのぎが出来ればいいんだけどな」

 魔理沙はポツリと呟きながらお茶をすする。
 霧雨魔理沙、本人曰く普通の魔法使いらしい。だが世間は泥棒、彼女の事をよく知る人物からは
強盗というイメージを植え付けていた。そういえばこの前は紅魔館という吸血鬼が
住む館から自転車のサドルを大量に盗んできた。何故自転車本体を盗まないのかと尋ねたところ
首を傾げられた。「いやそんな実用的なもの盗んで何になるんだよ」と本人の弁。
「逆に非実用的なもの盗んで何になるのよ」と喉まで出かかったが寸でのところで留まった。
魔理沙とは長い付き合いがあるのでこの奇行にも納得がいく理由を思いついたからだ。
『面白そうだから』、どうせこの辺りの訳だろう。気分屋な上その場主義の彼女にとっては
これが当たり前なのだ。そんな彼女とは何故かウマが合うためよく一緒にお茶を啜っている。

「私にとっては何事もない方が嬉しいのだけれど」

「おいおいそう言うなって。お前も何が楽しくて一人で7並べやってるんだよ」

「……暇だからよ」

「だろ?だから何かしら異変が起きるのは喜ばしい事なんだって」

「暇つぶしと面倒事を一緒にしないで欲しいわね」

 軽口を叩きながらも私は次に出すカードを考えていた。うーん、スペードの9が止められてるわね……。

「見ているこっちが辛いからやめて欲しいぜ。つーか私いるのになんで一人でやってるんだよ」

「魔理沙毎回お金賭けようとするじゃない。7並べで賭けるなんて聞いた事ないわよ」

「いいじゃないか。勝負事は熱くならないと面白みも半減するんだぜ」

 そう言いながら激アツ勝負だった7並べのカードが回収されていく。あのままいけば霊夢2の圧勝だったのに……。

「じゃあババ抜きでもやるか。二人でも十分面白いだろ」

「しょうがないわね。魔理沙がどうしてもと言うのなら私の秘技を見せてあげるわ」

「お前の秘技ってアレだろ?ババを手札からちょっと目立つように出すやつだろ。
今時筆子でも引っかからないぜ」

 博麗家が代々受け継いできた秘伝の技をディスった魔理沙はカードをシャッフルして配り出す。
手際良くババを含んだカードが三人分に分けられた。……三人?

「私を無視しないで欲しいわね霊夢。八雲の秘術を見せてあげるわ」

そう言いながら手札を手元に手繰り寄せて整理し始める紫。

「……いつからいたの?」

「ついさっきだぜ。私がカードを混ぜているときにデロンと出てきた」

「デロンって何よ私は袋包装の羊羹じゃないんだけど」

 ヤイヤイ言いながら魔理沙と談笑を始めた売春婦みたいな服装の女は八雲紫。
先の話で話題に上がっていた張本人だ。相変わらず神出鬼没な妖怪だ。
突如現れた主に胸部の露出が激しい女、ホワイトブリムさえあればメイドにも見える服装の金髪少女、
そして袖があるのか無いのかよく分からない巫女服に身を包んだ私でカードを囲む。
参拝客が見たらちょっとしたカオスで混乱するだろう。まぁ良くも悪くも来訪人は
そういったカオスに耐性を持った奴らばかりなのだが。

「じゃあ一抜けが総取りって事で。始めるぜー」

 しれっと賭け金を置いた魔理沙が早速スタートの音頭をとる。
魔理沙と紫の足元には500円玉が置かれていた。私も合わせて同じ金額を財布から取り出す。

「でだ、紫。お前一体何を企んでいるんだ?」

 ゲームを進めながらも魔理沙はいきなり核心に迫る問いを投げかけた。
単刀直入にも程がある、が煙に巻いて逃げにくい質問にも紫は動じずに言葉を紡いだ。

「別に大した事じゃ無いわよ。私の思惑……まぁ魔法使いさんと同じく暇つぶしね」

「どうやって暇を潰すのか聞いてるんだ。七並べ大会でも開くのか?」

「貴方達どんだけ七並べ好きなのよ。そんなしょぼいものじゃ無いわよ」

「そうなの。じゃあ大富豪大会?」

「トランプから離れて欲しいわね。異変って言葉が一番似合うかもしれないわ」

「異変ねぇ。有害なやつは勘弁してくれよ。私は至って普通の人間なんだからな」

「そんな物騒なものじゃ無いわよ。多分」

「その多分が私達の不安を煽っていることを自覚して頂戴」

 そう言いながら私は苛立ちつつ紫の手札からカードを引いた。
ジョーカーだった。目の前の紫は不敵に微笑んでいる。

「でも本当に物騒になるのかならないのか分からないのよ」

「何でよ。問題起こしたらそこに有象無象が集まってドンパチするに決まっているじゃない」

「確かに問題は起こすわよ。でも今まで通り平和に暮らすなら全く問題ないのよね」

「言葉遊びしてんじゃねえよ。あ、私ウノな」

「魔理沙、それ違うゲームよ」

 魔理沙は残り一枚になった手札をヒラヒラとさせながらにやけている。
遊びとはいえ勝負だ。負けたくない。決して賭け金に目が眩んだわけではない。
私の手札は残り三枚。上手くいけば出し抜けるかもしれない。勝てば1000円……!

「はい、上がり。トラッシュトークに翻弄されているようじゃまだまだね」

 勝ち誇った顔で紫は二枚のペアカードを場に捨てた。それと入れ替わるように
私と魔理沙の手元にあった硬貨に手を伸ばす。

「おいおい、いつの間に手札減らしてたんだよ。全然気づかなかったぜ」

「ふふふ。貴方達私の起こした異変に興味津々だったから利用させて貰ったわ」

「私のお金……」

 どうやら紫は話の全容をちらつかせながら私達の気を引いていたらしい。
上手いものだ。年の功ってやつだろうか。

「霊夢失礼なこと考えてない?」

「いや何も」

 まるで心を見透かしたような言葉にドキリとしつつ平静を装った。
トーク以前に相手の考えていることを手に取るように分かる紫ならそんな小細工せずとも
勝っていたのではないだろうか。まぁ負けたという結果は変わらないのだけれど。
私はモヤモヤしたまま手札を床に置いた。この頭に霧がかかった感じはなんだろうか。
やっぱり貧乏な私にとって500円はそこそこ痛い……。いや多分金銭の問題ではないだろう。

「なぁ紫。お前さっき『私が起こした異変』って言わなかったか?」

 ふと漏らした魔理沙の言葉に私の頭のモヤモヤに光が刺した。そうだ。彼女は既に準備段階は
終わったかのような口ぶりだったのだ。これから起こすのではない、始まっているような。

「あら鋭いじゃない。その通り。数日前に始めたばっかりだけどね」

 トランプの時のような不気味な笑みではない。これから起こる出来事が楽しみで仕方がない少女のような
裏表のない笑みだった。うわキモ。

「本当か?当の本人に確認するのはおかしな話だが特に何も起きてないぜ?」

 魔理沙が訝しげに紫に尋ねる。異変は起きたが起こってない。矛盾しているようだが
実際そうなのだ。私達の周りに何も変化はない。いつも通り茶を飲んでダベっているだけだ。

「さっき言ったじゃないの。平和に過ごす分には何も問題がないって」

「詳しく説明しなさいよ。それとも実力行使がお望みかしら」

 魔理沙はワクワクしながら紫の言葉を待っているが私はそういった気分にはなれない。
紫はなんだかんだで強大な力を持っているのだ。本気で異変を起こそうとしたら
何が起こってもおかしくはない。だから今すぐにでも詳細を聞き出す必要がある。
一体何をしたのだろうか。幻想郷をかき乱すようなレベルの異変でもおかしくは無い……。

「実力行使、それよ。私達、妖怪と一部の人間その他諸々は平和とは程遠い力を持っているわよね」

「そうね。残念ながら」

「だから安寧に過ごすなら良し、そうならないなら被害が少ない異変にしようと思ったのよ」

「へぇ。紫にしちゃ割とまともな考えだな」

「あらありがと。で、結論から話すと持ちすぎた力を弱めようと思ったのよ」

 力を弱める、そんなことが可能なのだろうか。確かに一部の連中は持ちすぎた力と
有り余った時間をもとに異変を起こしている。その力を抑えられるのであれば確かに平和に
繋がるのかもしれない。いくら私が出動して鉄拳制裁を加えたところで懲りない連中は懲りないのだ。
こうするのもアリかもしれない。

「でも私の力にも限界があってね。幻想郷中を巻き込んで見たのだけれど調整が上手くいかなかったのよ」

「…………は?」

「いや、その、ね。理想としては本気でぶつかってもせいぜい擦り傷がつく程度の、弾幕飛ばしても
ちょっと痛いなーくらいに抑えようとしたのよ。でも流石にそこまでのゆかりんパワーはなくて……」

「………」

「ぶっちゃけちゃうと『個々が持っている能力が下方修正された』
……いや、拡大解釈された上でショボくなったというか……」

「つまり私と魔理沙の能力は?」

「弱くなった、いえ、よく分からない能力になっちゃった」

 そう言いながら私達に一枚ずつ封筒を差し出す。中に紙切れが一枚入っているようだった。
紫曰くこの中に私達の新能力、もとい『〜〜程度の能力』が記載されているようだった。

「その、私が去った後に開けてくれると嬉しいのだけれど……」

「いやいやこんな面白そうな異変そうそう無いからな。今すぐにでも開けて確かめたいんだが」

「私は魔理沙とは違う理由だけど答えは同じよ。なんで隠そうとするのよ」

「……貴方達は自分の能力がどうなっていると思う?」

 紫は楽しむ気持ち半分、報復を恐れる気持ち半分で尋ねてきた。
私の能力……『空を飛ぶ程度の能力』だったかしらね。誰かが書いた本によれば。
それが弱まったとすると……『宙に浮く程度の能力』、いやあの紫の口調からしたら
『跳躍力が凄い程度の能力』にまで落ちているかもしれない。そう考えたら封筒の口を
破る手が止まった。知りたいような知らずに過ごしたいような。

「私は魔法だろ?せいぜい『黒魔術を扱う程度の能力』みたいな感じじゃ無いか?
パチュリーみたいに怪しげな材料を釜で煮込むのは御免被るがな」

「……そう。私の今の能力を教えたら卒倒するんじゃないかしら」

「お前自分の能力まで弱体化したのか……」

 魔理沙が呆れた声を零す。コイツは一体何をやっているのだろうか。せめて自分の能力くらいは
保持しておけよと思う。まぁ調整に失敗したのは本当だったってことが分かった。
でも紫の能力、『境界を操る程度の能力』がどうなったのかは気になる。
自分の能力を確かめるのに少し怖気付いてしまったし、彼女の今の能力を聞けば
覚悟が出来るんじゃないだろうか。大して変わってなかったら良し。そうでなければ……
……この先は考えないようにしよう。

「紫、アンタの能力は……?」

「見てもらった方が早いわ」

 そう呟きながら紫は床に散らばったトランプに手を伸ばす。
一体どんな能力になっているのか。紫と初めて敵対したときのような緊張感が私を包む。
私と魔理沙が固唾を呑んで見守る中、紫の手がトランプに触れる。
 すると瞬きを一回する間に床に散乱したトランプがケースに収まっていた。

「はい。ついでに番号順に並べておいたわよ」

「あ、ありがとう……」

 能力を説明する上で邪魔だったのだろうか。異常とも言える早さで片付けた紫は、ふぅと息を吐いた。
これから見せられるであろう能力、気を取り直して身構えていると何かに気づいた魔理沙が微かに声を漏らした。

「紫……まさかお前……」

「ええ……そうよ……」

 紫を指差した魔理沙の手が震えている。いや、全身が小刻みに揺れていた。
そこまで観察してやっと理解した。魔理沙は紫の能力に気づいたのだ。
いや、私も実は気づいている。ただ正確には分かってない上、それを否定したい気持ちが邪魔をして
思考が止まっていた。意を決したように紫の口が開く。





「これが私の能力、スキマを操る……『整理整頓が凄い出来る程度の能力』よ」

 



 何かの本やネットで読んだことがある。
八雲紫はおふざけこそするもののやる事はキッチリ行い、その強大な力を
幻想郷のため捧げていると。皆彼女を煙たがっているようで、実は芯では信頼していると。
中には敵対しているが実力を認めている奴もいると。
そんな彼女の能力、意味不明で使い勝手が良い『境界を操る程度の能力』が
まさかトランプを綺麗に片付ける能力になったと知ったら幻想郷住民はどう思うだろうか。
 恐らく今の私と同じ気持ちだろう。『馬鹿じゃねえの』だ。

「あ、このタンスこっちに動かした方が広くなるわね」

 そう言い終える前に高速で動き出した紫の手によって私の部屋がみるみる綺麗になって行く。
ついでに模様替えもされてる。畜生。無駄がない分怒りづらい。馬鹿じゃねえの。

「紫……紫さん!?急にどうしたんだお前!?」

「職業病……この場合は能力病ね。散らかった部屋とか無駄なスキマを見つけたら動かずにはいられないのよ」

 紫が残像を残すレベルで部屋中を動き回っていたがひと段落したらしく、こちらにゆっくりと歩いて
隣に腰掛けた。紫の後ろには家具や雑貨が一片の無駄なく配置され、ついでに掃除もされた。
気持ち悪いくらい快適になった自室を眺めつつ、先ほど紫に渡された封筒に手を伸ばす。
どうやら魔理沙は既に開けていたらしく、自分の能力が書かれた紙を見て驚愕の表情を露わにしている。
私も覚悟を決め、封筒の口を破り捨て中に入った一枚の紙を開いた。
 強大な力を持った妖怪(現在はただのスーパーお掃除おばさん)が書いたとは思えないほど
可愛らしい字で私の能力がそこに記されていた。




『空気的に浮く程度の能力』




「おい霊夢、お前の能力は……ブフォッ!」

 後ろから覗き見してきた魔理沙が吹き出した。唾液やら何やらが私の背中に降りかかる。あとで殴る。
魔理沙は呼吸困難なレベルで大笑いし始めた。そのままあの世へ行ってくれれば私の拳が痛まずに済むのに、
と考える事数分、死の淵から帰ってきた彼女は笑い涙を拭きながら私に問いかける。

「ヒィ……ヒィ……で、お前のこの能力は何だ?」

「私こそ知りたいわよ」

 『空気で浮く程度の能力』なら分かる。スゲー分かる。魔理沙の家の本で読んだロケットと呼ばれる
飛ぶ船のように、地面に向かって空気を噴射することによって浮き上がるのだろう。
だが『空気的に浮く程度の能力』なのだ。的に、ってなんだ。
 私が頭を抱えていると紫が鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌な顔で私の疑問に答えた。

「私の個人的な推察だから合ってるか分からないけど……所謂KYってやつじゃないかしら」

「アレか。平皿に盛られた唐揚げにレモン汁満遍なくかけたり、皆生中頼んでるのに一人だけカシオレ頼むやつか」

「なんで居酒屋限定なのか分からないけど私が言いたい事は伝わったようね」

 紫がドヤ顔でお茶を啜る。いやそれ私のお茶なんだけど。

「なぁ霊夢、例えば飲み会で唐揚げが一個余ってたとするだろ?皆ほろ酔い状態でラスト一個の唐揚げを巡って
ジャンケン大会をするとするだろ?お前ならどうする?」

「お腹いっぱいなら食欲がないって言って辞退するわ。食べたかったらそういう状況になる前に食べてるし」

「おお……場の空気も読めてないし私の質問の意図すら跳ね除ける回答……能力完璧に使いこなしてるな」

 魔理沙が何故か感動しながら私の顔を見つめてくる。今の答えに何か問題があっただろうか。
飲み会は楽しんだ者勝ちなんだから自分がしたいようにすればいいのよ。

「そういう魔理沙は何の能力なのよ。どうせショボい奴でしょ」

「うーん私もさっきまでショボいって思ってたけどお前の能力見たらマシだと気づいたぜ」

 答えながら魔理沙は帽子を脱いだ。彼女のトレードマークとも言えるそれは見慣れたもので
特に変わりはない。……と思った矢先に帽子から鳩が出てきた。なにこれ。

「私の能力、『手品が凄い出来る程度になる能力』だぜ」

 うわショボ。と思ったが自分の能力を思い出したためその言葉は口から出る事はなかった。
代わりに涙が出そうになったが驚異的な精神力で堪える。
 私が唇を噛み締めている間魔理沙は帽子から大量の鳩や妖精や自転車のサドルを出していた。
 紫は初めて魔法を見た少女みたいに喜んでいた。いや確かに凄いけども。

「うーん地味に凄いなこの能力。いや戦闘には全く役に立たないと思うけど」

「宴会にはうってつけだと思うわ」

「まぁお前のリアクションを見たら誰でもそう思うだろうな」

 まとも(?)な能力だった二人は談笑を始めたが私はそこに混ざる勇気がない。
 いや空気読めって言われても普通に無理だから。

「で、この異変いつまで続けるんだ?私としてはこのままでもいいけど。あ、ミカン食う?」

 絶望していた私が先ほど思いついた質問を魔理沙が代弁してくれた。あとマジで帽子の中どうなってんの。

「いつまで?知らないわよ。だってこの異変のために張った術式とか結界、今の私に制御出来ると思ってるのかしら?」

「うーん大賢者様に失礼だとは思うが言わせてもらうぜ。お前馬鹿じゃねえの」

 魔理沙が笑顔を貼り付けたままマジトーンで紫を罵倒した。うん。思ったことをすぐ言う魔理沙にしてはよく耐えたと思う。
当の大賢者様(笑)は若干落ち込みながら「私だって好きでこんな能力になった訳じゃないわよ……」と呟いた。
自業自得という言葉を考えた昔の人は天才だなと思った。

「じゃあ結界を適当に壊してくるから場所教えなさいよ!」

 半分キレ気味、半分焦りながら紫の肩を揺さぶった。彼女は前後に揺れながら目を回している。
 今の私はただのKY女だ。間違いなく巫女としての能力は無いに等しいが行けば何とかなるだろう。
……うん、なんとかなる筈だ。希望を捨てるな。
 しかし紫は今日一番の笑顔を見せながら私の希望を叩き割った。

「場所忘れちゃった。テヘッ☆」

「ふざけてんじゃねええええええ!!」

「あと結界だけど無駄に強力なやつにしたから。自衛機能もあるわ」

「そこだけちゃんとすんなやあああああ!!!」

「痛い!平均的な少女のパンチだけど痛いものは痛い!ゆかりん痛い!」

「おいコラ動くな!!!巻き込んだ家具を元の位置に戻すな!!!」

「なあ霊夢、このカードの中から一枚選んでくれよ」

「やかましいぃぃぃぃぃ!!!!これ!!!!」

「霊夢が選んだカードはハートのキン……ちょ!待て!顔はやめろ!」

「うるせええええ!!!!カメラ止めろおおおおお!!!!」

 こうして幻想郷史上最大規模のしょうもない異変が始まったのだった。


尖った能力を使ったバトル物にするつもりだったのですが、いつの間にかギャグテイストになってました。
SSなどの文章を書くのが初めてだったので不安しかないです。
投稿する場所もここでいいのか……と悩んでいるので「このゴミはここに捨てたほうがいいよ!」等
コメントにて指摘してくださると幸いです。
長々と失礼致しました。問題なさそうなら続きを書くつもりです。よろしくお願い致します。

2話更新しました。
さんまま
[email protected]
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コメント



0.130簡易評価
3.100モブ削除
紫ェ……少し懐かしい空気を感じました。ありがとうございました。
5.100終身削除
やり取りにキレがあって面白かったです 気を使う程度の能力は気遣う程度の能力とかになってそうですね この空気なら多分何とかなるだろうしならなくてもなんだか普通に順応していきそうな気がします