ロングロングアゴーだぜ霊夢!
ちょっと、待って魔理沙。不思議の~何某って言ったらアリスの業じゃない?
そのカルマを霊夢が替わりに背負うんだぜ!
どういう事?
夫、時間だ。早く行かなくちゃ
『魔理沙は、腕に巻いたハムに文字盤を書いて時間を気にしてどっかに走り出した』
「うぃーdaze」
魔理沙は風を背に受け加速していくその動きに擬音をつけて居る。
何それ、どういう状況?って思った?……まだまだこれから。これから。
「ちょっと、魔理沙? どこへ?」
「……オムスビころりんのすけだぜ! コーリンはここで、さとりにナンパしてたんだ」
最初居た神社からやく東に600m位の所、徒歩で約7分半、加速していった魔理沙と一緒なら三下り半位の所だ。
『ぼ、僕のオムスビ、縁結びして、ほ、欲しいんだな』
『怖い、彼方の考えているそのオムスビは怖すぎる』
さとり妖怪を落とすのであればまず、商を殷とすればまず馬賊を討つべしである。
周の武王は、父親に文王を送り名したのだった。
それとは別件で、釣り人に擦れてますかとお問合せした霧雨の親父さんはダンディだったライオン。
『ぼ、僕
これ以上は危険だったので、筆が折れちまうやめたまえ。
「いや、魔理沙? これをって説明なの? それとも私が見ている回想なの?」
「うふふ、うふふ??」
「え?」
魔理沙はどっか行っちまった。
ちくしょうめ、これで霊夢は孤立無援である。一人ではこの幻想郷がどれだけ熾烈極まるものか思い知ることになる。
「ちょ? え?」
霊夢の前に、俺を喰えと書かれたサバが3匹現れた!
新鮮なようなのでまあいいかと、霊夢がサバを食べようとした。ところがサバはみるみる鬱になっていき妖精になった。
「霊夢さん、アタイ食べても美味しくないよ。寄生虫でお腹が破れちゃうよ」
しくしく泣きながら、サバの一人がそういう。
「……俺を食べろって」
「家畜さん達だって死にたくなかったんだ。せめて美味しく食べることが供養になんてならない」
魚は涙を流すのだろうか?
その涙は、いつの間にか移動していた西に300m地点の盆地を満たそうとしている。
まみぞう親分は素敵に笑う。
そこは忍城のようであった。石田堤が短期間で出来上がったように、霊夢の胸元まで涙が溜まって居たのである。
「ちょっと? これ、私が悪いの? サバを食べようとしたことは謝るから。もう泣かないで」
「謝ってももう遅い、アタイ、アタイ達のスピリットの叫びを思い知るが良い!」
その場のすべてのものが一斉に泣き出して水嵩はいよいよもって有頂天に上り詰めたのだ。
天子は素敵に笑う。
「ちょ、おぼれ!」
いよいよ、霊夢が危険が危ないの時だった。水を支えて居た盆地の一部が決壊して一気にすべてを流したのだった。
「これで! アタイ達自由だ!」
霊夢はそれを聞いた辺りで意識が飛んでった。
目を覚ますとそこには、バグパイプを吹くリグル君がいて霊夢に興味無さげなふりしてりゅ
そのバグパイプの音は耳障りな金切り声の音を出しているからただただ不快極まりなさい。夏の夜に鳴くセミのよう。
「リグル、うるさい。引っ叩くわよ」
「ごめんなさん。霊夢さんごめんさん。この一曲だけゆるしてさん。雌の気を引いてるんだ」
楽曲を一時停止してリグル君は、霊夢に懇願して来た。熱い夏の夜をホットに過ごす為にリグル君はツガイニなる鴛鴦を探しているのである。
幸せの青い鳥、ブルーバードはすぐ近くに居るんじゃないか?
「ねえ。こんな駄音で雌が寄ってくるわけないわ」
「霊夢さんも雌ですよね」
パーンと乾いた音と共に、そのキチン質の皮膚には霊夢の熱いbeatが籠った魂の叫び!
そして、霊夢はここに居ても何も解決しないと思い歩き出したのだった。
後には、叩かれた衝撃でバグパイプ諸共諸々悶々悶絶しているリグル君だけが残った。
でも、リグル君は辛せであった。
「あ、魔理沙こんなところに居た!」
「それは、そうだろう。ココア、私の家だからな」
魔理沙の家には定義はない。そこが魔理沙の家だって言えばそうなのである。
たとえ、世界の全てが彼女を否定しようが魔理沙だけはそれを諦めない。
「そうなの? そんな塀の上が魔理沙の家だったなんて」
「夫、ワタシをどっかのタマゴと一緒にしようって策だな? 塀だけに」
何が塀だけなのかは、もはや誰にも分からない。
「どうでも、良いけど平常運転の幻想郷に帰りたいんだけど」
「夫、それはお茶会に出ている紫女王様へ反乱か? 紫は霊夢の事を籠絡したがっているのに?」
トランプの女王様のポジション争いで、紫監督はDFに藍、MFに橙を置いたのだった。そして、勝ち残った。
『フランドールだって、可愛い服着てお姫様ごっこしたかった!』
『ねえ、フランドール? トランプの女王様の服って可愛い?』
『もー、お姉ちゃんたらきゃわいい!! きゃははは……壊れちゃえ!』
「紫がなんで?」
「夫、黒幕がレティじゃなくて紫だってことは内緒だぜ」
実はこれ言っちゃまずかった事、魔理沙は口ヲ滑ラセテシマッタ。
覆水盆に返らず、太公望は離別した妻が復縁を迫って来た時の逸話だ。
数年前『あんまりしつこいと六韜の角でぶつわよ。虎の巻は魔法の効果で噛みつくんだから』とパチュリーは魔理沙に言ったという逸話は今作った。
兎に角、吐いた言葉はもう戻せない、魔理沙はやっちゃった。魔理沙はやっちゃった。
「く、紫め」
「夫、私急いでたんだぜ。ピューンだぜ!」
魔理沙はハムを食べた後、普通に懐中時計を取り出して、塀の上を高速移動してどっか行ってしまった。
「魔理沙、どこへ?」
霊夢の魔理沙への興味は急速に失われて、それよりもこの塀には見覚えが有った。
そう、ここは紫の家だ。
いつの間にか、マヨイガ的な何かに誘われてここにきてしまったに違いない。
「紫様がお前に会いたがって居たぞ」
ふと、藍と思しき声が霊夢の背後からしてきたとたん。身体を抑えられ口元にクロロフィル……クロロホルムがアテガァわれる。
「うー! うー!」
「こら、抵抗するなおとなしく寝て、痛」
藍は霊夢に指先を噛まれた模様である。怯んだ隙に霊夢は抑えられていた身体を解き放つことに成功した。
ただし、右側のあの袖部分を藍に取られてしまった。これはもう、ずっと藍の宝物に違いない。狐憑き。
霊夢の噛んだ小指が痛い。
「ちょっと、藍! 何するのよ」
「なぜ、霊夢は眠らないの? ドラマだったら魚を飢えた水のように一瞬で眠るのに」
テレビ呑みすぎ、最近クロロホルムを悪用する犯人なんてそうそういないけどね。
「藍、あんまりおいたが過ぎると、アンタじゃなくてアンタの身内が酷い目に遭うわよ」
今夜は月のある晩、でもない晩、後ろからね。
「橙に何を!」
「降伏する? それとも、駄目な主人のせいで夢半ばにして朽ち果てるあの子が見たいの?」
霊夢は主人公がしちゃいけないお顔をして藍にすごんでいるよ。
ニターナル、マジ博麗スマイル
「条件降伏を要求する」
勝ち目の無いこの戦いであったが、藍は少しでも有利な条件を引き出して降伏する道を選ぼうとしたのだ。
「良いわ。言ってみなさい」
「1つ、橙には手を出すな」
「下さいでしょう?」
「……橙には手を出さないでください」
「受諾」
元からそんなつもりは、霊夢にはない。
「一つ、降伏後、私の命は保証しろ。してください」
「受諾」
元から藍の命をどうこうする気もない。
「一つ」
「多いわね。まだあるの?」
ただし、条件降伏の項目があまりにも多いと怒っちゃうかも。
「このままでは、私の面目丸つぶれなので、紫様と有って下さい」
「そうね。私も紫に用があるわ」
「ありがとうございます。さあ、こちらへ」
あれれれ最初から普通に家の中にご招待すれば良かったんじゃないの気持ちが、藍に芽生えた。
もう、クロロホルムは紫様以外には使わないぞと藍はこの敗戦から学んだのだった。
後代それが、あの暴君との馴れ初めエピソードにつながったは不明である。
藍に案内されると、1人お茶会をしている紫と目が合ってしまったことに、霊夢は特に感慨も無かった。
「もう霊夢、待ってたわけじゃないけど。待ってたんだからね」
今日の紫は意味不明なツンデレ路線便で行くつもりだ。
「そう、どうでも良いけど。普通の幻想郷に戻して欲しいのだけど。黒幕アンタなんでしょ?」
「ちょ、そうだけど。霊夢を籠絡してユカレイするために不思議にしたんじゃないんだからね」
なにやら、紫はプンプン怒りながらそんなこと言っている。持ってたティーカップから熱いほうじ茶がこぼれて……
「熱い」
紫の手に掛かった。
「……紫、アンタさっきから1人で何やって」
霊夢はその様子を呆れて眺めている。
「こんなの、妖怪の私……女王の私だった直ぐなおっちゃうんだからね」
どうやら、紫は火傷をしたらしい。ただし、そこは女王様の効果発動ですぐなおっちゃうんだからね。
「でしょうね」
「心配しなくて良いんだからね」
「うん」
火傷が痛いのは可哀想だとは思うけど、紫相手に心配の文字は無かった。
まあ、付き合いも長いしこの程度だったら大丈夫でしょうという信頼関係が二人の間を邪魔していた。
「心配してよ~!」
「うん」
もはや、返事は形骸化して居るのであるが、これは周の国末期でもあったことである。
「……紫ちゃん。女の子だから火傷の後が残っちゃうかも。女の子だからこれじゃあ! お嫁に行けなかったらどうしよう」
紫は霊夢の方をチラチラ見ながら、そんなことを言い始めた。『じゃあ、その時は私が貰ってあげるわ』と言ってもらえると思っていることに相違ない。
古今東西ありとあらゆる叡知がそれを示している。
「お嫁に行けないのだったら、行かなければ良いじゃない?」
仕方なく霊夢はそう答えた。文字通り、行かなきゃ良いじゃないってつもりだった。
「キャー! 霊夢! それって、霊夢がここに嫁いで来るってこと?」
人によって解釈は違いますね。紫は都合よく解釈して、霊夢に迫って・・・・
迫りくるものから霊夢は逃げだした。紫に捕まったら婚姻届けに判を押されるに違いない。
「待って~霊夢! 待ってー」
「やだ、やだ! こないで」
霊夢は逃げたがソコは紫の家だ。ついぞ、家の隅の淋しいところに追い詰められてしまった。
「ふふふ、霊夢ったら。シャイなんだから」
「もはやここまでなの?」
紫にこのまま捕まる位ないら、いっそ舌を噛み切ってと思うピンチの霊夢。
「でも、霊夢、年貢は収めてもらわないとね。怖い代官が来るかもしれないわ」
紫は、婚姻を迫る女であった。もはや、これまでなのか?
「夫、ぴゅーんとそこまでだ。紫!」
「え? 魔理沙!」
「魔理沙、ワタシの恋路を邪魔する気?」
ピンチの時に魔理沙がそこに駆け付けたのだった。紫の恋路に登場するのはいつだってお邪魔虫の魔理沙って相場がきまってんだなこれが。
よっしゃ、ちょっと、邪魔するぜ!
「夫、その恋路には霊夢は居ないぜ!」
「何ですって! だったら、誰が私の恋路にいるっていうの?」
何処か遠くで、バグパイプの音がした気がした。悪癖だ。
「お前の恋路には、聖命蓮ぶつけてやるぜ!」
「え?」
何処から持って来たのか、魔理沙は何も知らないいたいけな聖命蓮を紫にぶつけたのだった。
ぶっつけ本番の一回限りの菖蒲湯だった。
「命蓮も悪くないかも?」
紫は2枚目の婚姻届けを出そうとしている。聖命蓮の効果はいがいと絶大だったのであった。
「紫が気を取られているうちに、霊夢こっちだ。このバカげた話から抜け出す道を私はこの幻想郷を見て回る事で見つけたんだ」
ピューンと魔理沙は高速で探し回っていた出口を見つけていたのである。
魔理沙はその道案内の為に、霊夢の手をとろうと手を差し出す。霊夢もそれに答えて手を差し出した。
「魔理沙……」
霊夢は一度出した手を引っ込めてしまった。
「霊夢? どうした?」
「魔理沙もしかして、魔理沙もなの?」
「私がどうかしたか?」
「助けた褒美に、レイマリを要求する気なんじゃ無い?」
霊夢は疑っていたことが有る。そう、これもしかしてレイマリ展開でこのあとレイマリさせられんじゃないかって懸念事項だ。
「安心しろ、霊夢! この話は別にレイマリってわけでもないぜ! 何せ私には夫がいるからな」
この話の魔理沙は既婚者だったという。魔理沙は夫一筋で時々夫を思い出して『夫』と言ってしまう伏線を仕込んどいた。
「アンタに夫が居たなんて。でも、わかった。魔理沙を信頼するわ」
「よし、行くぜ」
魔理沙に手を引かれ、走り出したその先には光の柱が伸びていてそこに2人は吸い込まれて行った。
次に意識を知覚した時は、いつもの見慣れた天井、霊夢は夢を見ていた気がしたけれど、右手の袖が無い喪失感を覚えて、アレが現実だったんだね理解した。
そして、しばらく紫が話しかけてきても返事してあげないと心に誓ったのだった。
ちょっと、待って魔理沙。不思議の~何某って言ったらアリスの業じゃない?
そのカルマを霊夢が替わりに背負うんだぜ!
どういう事?
夫、時間だ。早く行かなくちゃ
『魔理沙は、腕に巻いたハムに文字盤を書いて時間を気にしてどっかに走り出した』
「うぃーdaze」
魔理沙は風を背に受け加速していくその動きに擬音をつけて居る。
何それ、どういう状況?って思った?……まだまだこれから。これから。
「ちょっと、魔理沙? どこへ?」
「……オムスビころりんのすけだぜ! コーリンはここで、さとりにナンパしてたんだ」
最初居た神社からやく東に600m位の所、徒歩で約7分半、加速していった魔理沙と一緒なら三下り半位の所だ。
『ぼ、僕のオムスビ、縁結びして、ほ、欲しいんだな』
『怖い、彼方の考えているそのオムスビは怖すぎる』
さとり妖怪を落とすのであればまず、商を殷とすればまず馬賊を討つべしである。
周の武王は、父親に文王を送り名したのだった。
それとは別件で、釣り人に擦れてますかとお問合せした霧雨の親父さんはダンディだったライオン。
『ぼ、僕
これ以上は危険だったので、筆が折れちまうやめたまえ。
「いや、魔理沙? これをって説明なの? それとも私が見ている回想なの?」
「うふふ、うふふ??」
「え?」
魔理沙はどっか行っちまった。
ちくしょうめ、これで霊夢は孤立無援である。一人ではこの幻想郷がどれだけ熾烈極まるものか思い知ることになる。
「ちょ? え?」
霊夢の前に、俺を喰えと書かれたサバが3匹現れた!
新鮮なようなのでまあいいかと、霊夢がサバを食べようとした。ところがサバはみるみる鬱になっていき妖精になった。
「霊夢さん、アタイ食べても美味しくないよ。寄生虫でお腹が破れちゃうよ」
しくしく泣きながら、サバの一人がそういう。
「……俺を食べろって」
「家畜さん達だって死にたくなかったんだ。せめて美味しく食べることが供養になんてならない」
魚は涙を流すのだろうか?
その涙は、いつの間にか移動していた西に300m地点の盆地を満たそうとしている。
まみぞう親分は素敵に笑う。
そこは忍城のようであった。石田堤が短期間で出来上がったように、霊夢の胸元まで涙が溜まって居たのである。
「ちょっと? これ、私が悪いの? サバを食べようとしたことは謝るから。もう泣かないで」
「謝ってももう遅い、アタイ、アタイ達のスピリットの叫びを思い知るが良い!」
その場のすべてのものが一斉に泣き出して水嵩はいよいよもって有頂天に上り詰めたのだ。
天子は素敵に笑う。
「ちょ、おぼれ!」
いよいよ、霊夢が危険が危ないの時だった。水を支えて居た盆地の一部が決壊して一気にすべてを流したのだった。
「これで! アタイ達自由だ!」
霊夢はそれを聞いた辺りで意識が飛んでった。
目を覚ますとそこには、バグパイプを吹くリグル君がいて霊夢に興味無さげなふりしてりゅ
そのバグパイプの音は耳障りな金切り声の音を出しているからただただ不快極まりなさい。夏の夜に鳴くセミのよう。
「リグル、うるさい。引っ叩くわよ」
「ごめんなさん。霊夢さんごめんさん。この一曲だけゆるしてさん。雌の気を引いてるんだ」
楽曲を一時停止してリグル君は、霊夢に懇願して来た。熱い夏の夜をホットに過ごす為にリグル君はツガイニなる鴛鴦を探しているのである。
幸せの青い鳥、ブルーバードはすぐ近くに居るんじゃないか?
「ねえ。こんな駄音で雌が寄ってくるわけないわ」
「霊夢さんも雌ですよね」
パーンと乾いた音と共に、そのキチン質の皮膚には霊夢の熱いbeatが籠った魂の叫び!
そして、霊夢はここに居ても何も解決しないと思い歩き出したのだった。
後には、叩かれた衝撃でバグパイプ諸共諸々悶々悶絶しているリグル君だけが残った。
でも、リグル君は辛せであった。
「あ、魔理沙こんなところに居た!」
「それは、そうだろう。ココア、私の家だからな」
魔理沙の家には定義はない。そこが魔理沙の家だって言えばそうなのである。
たとえ、世界の全てが彼女を否定しようが魔理沙だけはそれを諦めない。
「そうなの? そんな塀の上が魔理沙の家だったなんて」
「夫、ワタシをどっかのタマゴと一緒にしようって策だな? 塀だけに」
何が塀だけなのかは、もはや誰にも分からない。
「どうでも、良いけど平常運転の幻想郷に帰りたいんだけど」
「夫、それはお茶会に出ている紫女王様へ反乱か? 紫は霊夢の事を籠絡したがっているのに?」
トランプの女王様のポジション争いで、紫監督はDFに藍、MFに橙を置いたのだった。そして、勝ち残った。
『フランドールだって、可愛い服着てお姫様ごっこしたかった!』
『ねえ、フランドール? トランプの女王様の服って可愛い?』
『もー、お姉ちゃんたらきゃわいい!! きゃははは……壊れちゃえ!』
「紫がなんで?」
「夫、黒幕がレティじゃなくて紫だってことは内緒だぜ」
実はこれ言っちゃまずかった事、魔理沙は口ヲ滑ラセテシマッタ。
覆水盆に返らず、太公望は離別した妻が復縁を迫って来た時の逸話だ。
数年前『あんまりしつこいと六韜の角でぶつわよ。虎の巻は魔法の効果で噛みつくんだから』とパチュリーは魔理沙に言ったという逸話は今作った。
兎に角、吐いた言葉はもう戻せない、魔理沙はやっちゃった。魔理沙はやっちゃった。
「く、紫め」
「夫、私急いでたんだぜ。ピューンだぜ!」
魔理沙はハムを食べた後、普通に懐中時計を取り出して、塀の上を高速移動してどっか行ってしまった。
「魔理沙、どこへ?」
霊夢の魔理沙への興味は急速に失われて、それよりもこの塀には見覚えが有った。
そう、ここは紫の家だ。
いつの間にか、マヨイガ的な何かに誘われてここにきてしまったに違いない。
「紫様がお前に会いたがって居たぞ」
ふと、藍と思しき声が霊夢の背後からしてきたとたん。身体を抑えられ口元にクロロフィル……クロロホルムがアテガァわれる。
「うー! うー!」
「こら、抵抗するなおとなしく寝て、痛」
藍は霊夢に指先を噛まれた模様である。怯んだ隙に霊夢は抑えられていた身体を解き放つことに成功した。
ただし、右側のあの袖部分を藍に取られてしまった。これはもう、ずっと藍の宝物に違いない。狐憑き。
霊夢の噛んだ小指が痛い。
「ちょっと、藍! 何するのよ」
「なぜ、霊夢は眠らないの? ドラマだったら魚を飢えた水のように一瞬で眠るのに」
テレビ呑みすぎ、最近クロロホルムを悪用する犯人なんてそうそういないけどね。
「藍、あんまりおいたが過ぎると、アンタじゃなくてアンタの身内が酷い目に遭うわよ」
今夜は月のある晩、でもない晩、後ろからね。
「橙に何を!」
「降伏する? それとも、駄目な主人のせいで夢半ばにして朽ち果てるあの子が見たいの?」
霊夢は主人公がしちゃいけないお顔をして藍にすごんでいるよ。
ニターナル、マジ博麗スマイル
「条件降伏を要求する」
勝ち目の無いこの戦いであったが、藍は少しでも有利な条件を引き出して降伏する道を選ぼうとしたのだ。
「良いわ。言ってみなさい」
「1つ、橙には手を出すな」
「下さいでしょう?」
「……橙には手を出さないでください」
「受諾」
元からそんなつもりは、霊夢にはない。
「一つ、降伏後、私の命は保証しろ。してください」
「受諾」
元から藍の命をどうこうする気もない。
「一つ」
「多いわね。まだあるの?」
ただし、条件降伏の項目があまりにも多いと怒っちゃうかも。
「このままでは、私の面目丸つぶれなので、紫様と有って下さい」
「そうね。私も紫に用があるわ」
「ありがとうございます。さあ、こちらへ」
あれれれ最初から普通に家の中にご招待すれば良かったんじゃないの気持ちが、藍に芽生えた。
もう、クロロホルムは紫様以外には使わないぞと藍はこの敗戦から学んだのだった。
後代それが、あの暴君との馴れ初めエピソードにつながったは不明である。
藍に案内されると、1人お茶会をしている紫と目が合ってしまったことに、霊夢は特に感慨も無かった。
「もう霊夢、待ってたわけじゃないけど。待ってたんだからね」
今日の紫は意味不明なツンデレ路線便で行くつもりだ。
「そう、どうでも良いけど。普通の幻想郷に戻して欲しいのだけど。黒幕アンタなんでしょ?」
「ちょ、そうだけど。霊夢を籠絡してユカレイするために不思議にしたんじゃないんだからね」
なにやら、紫はプンプン怒りながらそんなこと言っている。持ってたティーカップから熱いほうじ茶がこぼれて……
「熱い」
紫の手に掛かった。
「……紫、アンタさっきから1人で何やって」
霊夢はその様子を呆れて眺めている。
「こんなの、妖怪の私……女王の私だった直ぐなおっちゃうんだからね」
どうやら、紫は火傷をしたらしい。ただし、そこは女王様の効果発動ですぐなおっちゃうんだからね。
「でしょうね」
「心配しなくて良いんだからね」
「うん」
火傷が痛いのは可哀想だとは思うけど、紫相手に心配の文字は無かった。
まあ、付き合いも長いしこの程度だったら大丈夫でしょうという信頼関係が二人の間を邪魔していた。
「心配してよ~!」
「うん」
もはや、返事は形骸化して居るのであるが、これは周の国末期でもあったことである。
「……紫ちゃん。女の子だから火傷の後が残っちゃうかも。女の子だからこれじゃあ! お嫁に行けなかったらどうしよう」
紫は霊夢の方をチラチラ見ながら、そんなことを言い始めた。『じゃあ、その時は私が貰ってあげるわ』と言ってもらえると思っていることに相違ない。
古今東西ありとあらゆる叡知がそれを示している。
「お嫁に行けないのだったら、行かなければ良いじゃない?」
仕方なく霊夢はそう答えた。文字通り、行かなきゃ良いじゃないってつもりだった。
「キャー! 霊夢! それって、霊夢がここに嫁いで来るってこと?」
人によって解釈は違いますね。紫は都合よく解釈して、霊夢に迫って・・・・
迫りくるものから霊夢は逃げだした。紫に捕まったら婚姻届けに判を押されるに違いない。
「待って~霊夢! 待ってー」
「やだ、やだ! こないで」
霊夢は逃げたがソコは紫の家だ。ついぞ、家の隅の淋しいところに追い詰められてしまった。
「ふふふ、霊夢ったら。シャイなんだから」
「もはやここまでなの?」
紫にこのまま捕まる位ないら、いっそ舌を噛み切ってと思うピンチの霊夢。
「でも、霊夢、年貢は収めてもらわないとね。怖い代官が来るかもしれないわ」
紫は、婚姻を迫る女であった。もはや、これまでなのか?
「夫、ぴゅーんとそこまでだ。紫!」
「え? 魔理沙!」
「魔理沙、ワタシの恋路を邪魔する気?」
ピンチの時に魔理沙がそこに駆け付けたのだった。紫の恋路に登場するのはいつだってお邪魔虫の魔理沙って相場がきまってんだなこれが。
よっしゃ、ちょっと、邪魔するぜ!
「夫、その恋路には霊夢は居ないぜ!」
「何ですって! だったら、誰が私の恋路にいるっていうの?」
何処か遠くで、バグパイプの音がした気がした。悪癖だ。
「お前の恋路には、聖命蓮ぶつけてやるぜ!」
「え?」
何処から持って来たのか、魔理沙は何も知らないいたいけな聖命蓮を紫にぶつけたのだった。
ぶっつけ本番の一回限りの菖蒲湯だった。
「命蓮も悪くないかも?」
紫は2枚目の婚姻届けを出そうとしている。聖命蓮の効果はいがいと絶大だったのであった。
「紫が気を取られているうちに、霊夢こっちだ。このバカげた話から抜け出す道を私はこの幻想郷を見て回る事で見つけたんだ」
ピューンと魔理沙は高速で探し回っていた出口を見つけていたのである。
魔理沙はその道案内の為に、霊夢の手をとろうと手を差し出す。霊夢もそれに答えて手を差し出した。
「魔理沙……」
霊夢は一度出した手を引っ込めてしまった。
「霊夢? どうした?」
「魔理沙もしかして、魔理沙もなの?」
「私がどうかしたか?」
「助けた褒美に、レイマリを要求する気なんじゃ無い?」
霊夢は疑っていたことが有る。そう、これもしかしてレイマリ展開でこのあとレイマリさせられんじゃないかって懸念事項だ。
「安心しろ、霊夢! この話は別にレイマリってわけでもないぜ! 何せ私には夫がいるからな」
この話の魔理沙は既婚者だったという。魔理沙は夫一筋で時々夫を思い出して『夫』と言ってしまう伏線を仕込んどいた。
「アンタに夫が居たなんて。でも、わかった。魔理沙を信頼するわ」
「よし、行くぜ」
魔理沙に手を引かれ、走り出したその先には光の柱が伸びていてそこに2人は吸い込まれて行った。
次に意識を知覚した時は、いつもの見慣れた天井、霊夢は夢を見ていた気がしたけれど、右手の袖が無い喪失感を覚えて、アレが現実だったんだね理解した。
そして、しばらく紫が話しかけてきても返事してあげないと心に誓ったのだった。
あっ。なんでバグパイプなのかってリグルだからか。
リグルとの会話で笑いました やっぱり男のこじゃないか…