祭りの日の夜が明けた。
外は昨日の熱量がまるで嘘だったかの様にいつもの光景に戻っている。
私は出かける準備をして、簡単な食事を済ませる。
どんどんと、戸を叩く音がした。
「誰だ?」
「私です。上白沢です。昨日の異変の事は知っていますか?妹紅さんなら何か知っているのではないかと思って。」
「ああ、慧音か。すまない。今日は用事があってね。また今度にしてくれるか?」
私は鍵を開けて慧音と顔を合わせる。
慧音は少し驚いた様子だった。
「妹紅さんに用事があるなんて珍しいですね。一体どうしたのですか?」
「あー。60年越しの再会って奴かな。」
私は適当にはぐらかして、目的地に行こうとして
「ああそうだ。この花の名前って分かるかな?」
造花を慧音に見せて尋ねてみた。
「それは...硝子の造花ですか?とても綺麗ですね。 多分、ムギワラギクだと思います。」
「ああ、ありがとう。それだけわかればいいや。すまないね、せっかく来てもらったのに。」
「いえ、突然押しかけたのはこちらですから。」
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向かうのは竹林のさらに奥深く。
魔力が濃く、慣れた者でもすぐに場所がわからなくなってしまう幻想郷の僻地だ。
そこに私の秘密の隠れ家がある。
隠れ家に行くのは60年振りになる。
しばらくの間竹林を彷徨って、しばらくすると少しひらけた場所に出る。
そこには私の沢山のコレクションが飾ってあった。
細かな装飾がされた剣。
50cmくらいの家の模型。
龍神を模った像。
色々な動物-猫や犬や兎、鷹、果てはカエルまで。細部まで再現されている。
中にはフェニックスや、私を模った物もある。
その全てが氷で出来ていた。
私は造花を家の模型の煙突に刺して、周りの物を見つめる。
それらを受け取った時の情景は全て昨日のことの様に思い出せた。
『なんだこりゃ?』
『ふふん。かっこいいだろ? 氷の剣だ。』
『これ、私か?』
『そうそう。うまく出来てるだろ。』
『似てねぇよ。』
『なんだと!』
『カエルの氷漬けを模した氷だ。』
『バカかお前。』
60年に一度、彼女はいつも決まった様に同じ発想をして、同じ様に物を送ってくる。
しかし、同じ物をモチーフにした事は一度も無かった。
私と違って彼女は繰り返している様で、少しづつ変わっていく。
ここにある氷細工は全て温度を感じ取れない。
まるでこの場所が幻想だと伝えているかの様に。
しかし希薄なこれらは確かに私の永遠を慰めてくれている。
『妹紅〜?』
陽気な氷精の声が聞こえた気がした。
氷細工のコレクションが象徴的で素敵でした。次の60年も、きっと二人は親友になるんでしょうね
ぐーやとはまた違う心の支えがあるという創作美しいです。
何度忘れても何度でも妹紅のために趣向を凝らしたプレゼントを残すチルノに熱いものがこみ上げてきました
60年周期のリセットって、公式設定でありながらどうにも扱いづらい感があるのですが、とてもうまく使われていて兜を脱ぎました。