Coolier - 新生・東方創想話

永遠の氷と自然の輪廻

2019/07/02 18:15:57
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祭りの日の夜が明けた。

外は昨日の熱量がまるで嘘だったかの様にいつもの光景に戻っている。
私は出かける準備をして、簡単な食事を済ませる。


どんどんと、戸を叩く音がした。

「誰だ?」
「私です。上白沢です。昨日の異変の事は知っていますか?妹紅さんなら何か知っているのではないかと思って。」
「ああ、慧音か。すまない。今日は用事があってね。また今度にしてくれるか?」

私は鍵を開けて慧音と顔を合わせる。
慧音は少し驚いた様子だった。

「妹紅さんに用事があるなんて珍しいですね。一体どうしたのですか?」

「あー。60年越しの再会って奴かな。」

私は適当にはぐらかして、目的地に行こうとして

「ああそうだ。この花の名前って分かるかな?」

造花を慧音に見せて尋ねてみた。

「それは...硝子の造花ですか?とても綺麗ですね。 多分、ムギワラギクだと思います。」

「ああ、ありがとう。それだけわかればいいや。すまないね、せっかく来てもらったのに。」
「いえ、突然押しかけたのはこちらですから。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

向かうのは竹林のさらに奥深く。
魔力が濃く、慣れた者でもすぐに場所がわからなくなってしまう幻想郷の僻地だ。

そこに私の秘密の隠れ家がある。
隠れ家に行くのは60年振りになる。

しばらくの間竹林を彷徨って、しばらくすると少しひらけた場所に出る。


そこには私の沢山のコレクションが飾ってあった。

細かな装飾がされた剣。
50cmくらいの家の模型。
龍神を模った像。
色々な動物-猫や犬や兎、鷹、果てはカエルまで。細部まで再現されている。
中にはフェニックスや、私を模った物もある。


その全てが氷で出来ていた。


私は造花を家の模型の煙突に刺して、周りの物を見つめる。

それらを受け取った時の情景は全て昨日のことの様に思い出せた。

『なんだこりゃ?』
『ふふん。かっこいいだろ? 氷の剣だ。』

『これ、私か?』
『そうそう。うまく出来てるだろ。』
『似てねぇよ。』
『なんだと!』

『カエルの氷漬けを模した氷だ。』
『バカかお前。』

60年に一度、彼女はいつも決まった様に同じ発想をして、同じ様に物を送ってくる。
しかし、同じ物をモチーフにした事は一度も無かった。

私と違って彼女は繰り返している様で、少しづつ変わっていく。


ここにある氷細工は全て温度を感じ取れない。
まるでこの場所が幻想だと伝えているかの様に。


しかし希薄なこれらは確かに私の永遠を慰めてくれている。










『妹紅〜?』

陽気な氷精の声が聞こえた気がした。
ムギワラギクの花言葉は「永遠の思い出」
綺麗な花なので見てみては如何でしょうか。



閲覧いただきありがとうございました。
雪月楓
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コメント



0.380点簡易評価
1.90点奇声を発する程度の能力 削除
良いですね、面白かったです
2.100点ヘンプ 削除
何度も同じようで違う繰り返しでも妹紅にとっての思い出は消えないんだろうと思いました。チルノのひたむきさがとても好き。良かったです……!
4.100点サク_ウマ 削除
非常に素敵な世界解釈だと感じました。変わらないのに変わっていくチルノと変わらない、変われない妹紅の対比構造が見事でした。とても良かったです。
7.90点名前が無い程度の能力 削除
60年毎の生まれ変わり周期の設定を活かした作品というだけでも好みなのですが、繰り返しながら少しずつ変わっていきつつ、その軌跡を永遠の形見に残していくという筋書きがとても素敵でした。
8.100点大豆まめ 削除
繰り返しのようでいて少しずつ変わっていく。
氷細工のコレクションが象徴的で素敵でした。次の60年も、きっと二人は親友になるんでしょうね
9.100点イド 削除
二人の関係がどストライクでした
10.100点とらねこ 削除
同じじゃないけど、何かが確実に受け継がれていく永遠のパートナーがいる。
ぐーやとはまた違う心の支えがあるという創作美しいです。
12.100点モブ 削除
円環ではなく螺旋なのだという言葉を思い出しました。胸が痛く、面白かったです
13.100点上条怜祇 削除
妹紅にとってチルノは割といいパートナーなのかもしれないと思いました
14.100点名前が無い程度の能力 削除
良かったです、好きでした
15.100点いなんず 削除
このお話スキです
16.90点名前が無い程度の能力 削除
よさ……
17.100点南条 削除
とても面白かったです
何度忘れても何度でも妹紅のために趣向を凝らしたプレゼントを残すチルノに熱いものがこみ上げてきました
20.90点N 削除
ええ話や....
21.100点終身 削除
自分と対照的な寿命が尽きる死だけじゃなくて記憶が失われることもある意味の死として割り切らずにまっすぐに捉えながら見守る視点に途方もない愛が詰まっててよかったです 変わるものと変わらないものがどちらも美しく描かれていたと思います
22.100点名前が無い程度の能力 削除
二人の関係性が良いですねぇ
24.100点名前が無い程度の能力 削除
チルノと妹紅、いいなぁ
25.100点名前が無い程度の能力 削除
妖精と不老不死は何かと相性良さそう
26.70点Ren 削除
穏やかな繰り返しの波を味わえた、よい一篇でした。
60年周期のリセットって、公式設定でありながらどうにも扱いづらい感があるのですが、とてもうまく使われていて兜を脱ぎました。