Coolier - 新生・東方創想話

2019/03/03 18:04:36
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 恋したい。
 突如、
 脳内に電気がはしった。
 何かしらの神経から、
 脳に、
 恋をせよ、と、
 命令がくだされる。
 恋せねば、
 フランドールは、
 重たい体を、
 むくり、
 持ちあげた。

 恋とはなんぞ。
 フランドールは、
 恋を知らない。
 495年、生きてきて、
 恋をしたことなど、
 なかったからだ。
 恋とはなんぞや。
 調べるために、
 図書館へとむかった。
 図書館。
 図書館には、
 魔女がいる。
 魔女は、
 物知りだ。
 物知りな魔女は言う。
『恋とは、好きだという感情、
 大切に思ったり、一緒にいたいと思う感情、
 と、あるわ』
『好き』
『そう、好き』
『好き』
『えっ、あ、うん、好きよ』
『好き』
『……まあ、そういうことよ』
 好き、
 という感情が、
 フランドールには、
 理解ができなかった。
 理解はできなかったが、
 パチュリーは、
 フランドールを好きだという。
 そういう感情のことを、
 好きだといった。
 フランドールは、
 どうなんだろう。
 ふにゃりとした頭で、
 図書館をあとにした。

 門。
 門の前には、
 門番。
 晴れた日も、
 雨の日も、
 そこには、
 彼女がいる。
『美鈴、恋したい』
『恋、ですか?』
『好き』
『好きですよ、フランドールお嬢さまのこと』
『好き』
『はい、好きです』
『……好き』
『なるほど。好きを知りたいんですね』
『そう、知らない』
『それなら、ぎゅうっとしてあげましょう』
 美鈴は、
 フランドールを、
 ぎゅうっと抱きしめた。
 大きくて、あたたかい、
 まるで、
 お布団にくるまれているような、
 そんな気持ちに、
 フランドールはなった。
『あったかい』
『はい、これが私の好きの気持ちです』
『好き』
『はい、好きですよ』
『ありがとう?』
『どういたしまして』
 フランドールは、
 なにか、
 ぽかぽかした体で、
 門をあとにした。

 好きとは、
 あたたかいんだなあ、
 フランドールは、
 好きを少し、
 理解できた気がした。
 館の、
 廊下を、
 ぽとぽとと歩く。
『あら、フランドールお嬢さま、どちらへ?』
『好き、探してたの』
『見つかりましたか?』
『うん、ううん、少しだけ』
『少しだけ? ですか』
『見せる』
 フランドールは、
 咲夜を、
 ぎゅっとした。
『あらまあ、可愛らしい好きですこと』
『あったかい?』
『暖かいですわ、お嬢さま』
『これが、好き、だって。美鈴が』
『そうですね、これは好きだと思います』
『好き』
『でも、もうちょっと好きを増やしましょう』
 咲夜は、
 フランドールの、
 髪をくしゃくしゃと撫でた。
 髪を撫で、
 頬を撫で、
 あごをさすった。
 なんだか、
 こそばゆい。
『これも、好き』
『そういうことです』
『なんだか、気持ちいい』
『好きとは、気持ちの良いものです』
 咲夜に可愛がられるままに、
 フランドールは、
 なんだか、
 頭が、
 ふわふわとして、
 咲夜とわかれた。

 こんこん。
 ノック。
 こんこん。
『だれー、開いてるわよ』
 レミリアの声。
 がちゃり、
 扉をひらく。
『おや、フランドール。めずらしいわね、どうしたの』
『恋をしたいの』
『恋』
『好きをしりたいの』
『好き』
『みんなから、教えてもらったけれど、
 それでも、まだ、わからない』
『……ふむ』
 レミリアは、
 一度頷くと、
 フランドールの、
 頭を撫でた、
『知ってる、好き、咲夜がした』
『んー』
 レミリアは、
 フランドールを、
 ぎゅっと抱きしめた。
『知ってる、好き、美鈴がした』
『んんー』
 レミリアは、
 頭をかかえた。
 かかえた頭から、
 ぴこん、と、
 思い浮かぶ。
『フランドール、こっちきなさい』
『あい』
 手まねきのままに、
 フランドールは、
 頬を染めた、
 レミリアの、
 そばに行った。
『目をつむりなさい』
『あい』
 言われるままに、
 目をつむった。
 瞬間、
 むにゅりと、
 唇にやわらかい感触。
 それは、
 キスだと、
 フランドールは認識した。
『キスも、好き?』
『私からあなたへの、精一杯の好きよ』
『私も、好き』
 今度は、
 フランドールから、
 レミリアへの、
 キス。
 唇が、
 あたたかくて、
 頭がどくんどくんと、
 高鳴る。
 なんだか、
 いけないことを、
 しているような、
 そんな気もして、
 でも、
 心が、
 ほかほかとした。
 フランドールは、
 これが恋なんだろうか、
 思った。

 夜、
 自室にて、
 フランドールは、
 思いかえす。
 恋とは、
 好きとは。
 みんなそれぞれ、
 好きがあった。
 でも、
 全部、
 あたたたかった。
 気持ちがよくて、
 心がぼうっとして、
 なんだか、
 不思議なもので、
 フランドールは、
 みんな、
 好きだった。
 好きだったから、
 今度は、
 自分から、
 みんなに、
 好き、を、
 プレゼントしよう、
 そう、思った。
 小悪魔『フランドールお嬢さまがキス魔になった』
arca
http://twitter.com/torah_3
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コメント



0.610簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
雰囲気も良くて良かったです
2.100名前が無い程度の能力削除
これは良いものだ
3.100評価する程度の能力削除
ほのぼのする良い話だなぁとか思ってたらあとがきでダメだった
4.100サク_ウマ削除
今度こそいい話で終わると思ったけど全然そんなことはありませんでしたね とても良かったです
5.100名前が無い程度の能力削除
ちゅっちゅ特化吸血鬼の誕生だ
7.100cascades削除
無垢なフランドールのお話は大好きです。
8.100ひとなつ削除
「なんだか、
 いけないことを、
 しているような、
 そんな気もして、」
ってちょっとドキッとしました。
好きです。
9.90名前が無い程度の能力削除
「あい」って返事が可愛い
チュー血鬼フランとなった今後の生活が気になりますね…
11.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい雰囲気でした。
13.100名前が無い程度の能力削除
いやあ、やはりいいテンポですね
あなたの作品好きです
14.100名前が無い程度の能力削除
好き…
17.100ヘンプ削除
好きという感情を、求めて歩く姿はとても良かったです。
誰しも好きという感情は違いますから。それが本当に良かったです。
19.100南条削除
素晴らしかったです
なんてあったけぇ紅魔館なんだ
20.100モブ削除
猫みたいなイメージを感じました
21.100仲村アペンド削除
可愛さの究極! 愛情たっぷりでとても微笑ましい紅魔館でした。
23.90名前が無い程度の能力削除
素晴らしいと思います。
26.100終身名誉なんちゃら削除
他にない感触でとても引きこまれました!
パチュリーとのどっちも不器用な手探りのやりとり大好き
28.100イド削除
最高です
31.100kaz削除
こういう雰囲気もいいですね!
心がほんわかしました!