博麗霊夢は博麗神社の境内に散らばった落ち葉を掃き集め、焼き芋で作ろうとしたが火はともかく火種が見つからない。
なにか都合の良いものは……蔵に溜めてある文々。新聞を思い出した。
そのためにこの新聞はあるのだ。
蔵からマッチと山積みの文々。新聞を一部手に取る。
マッチを擦り文々。新聞に火を付ける。空気が乾燥していることもあって勢いよく燃えた。火の勢いが安定したのを見計らい、お芋を放り込む。
先日、人里で安売りしていたのでつい買ってしまった。
さて、誰か来ないだろうか、この時間になれば魔理沙か気まぐれな妖怪共が1人か2人来る時間、それを見込んでさつまいもは3つ放り込んだ。
そろそろ食べごろの時間、誰も来なければ昼飯がてら3つ食べてしまうかと考えていた頃、少し強めの風が吹いた。今日はあいつか。
濡れ羽色の髪と紅葉を連想させてくれる変な柄の入ったYシャツに黒のスカートに真っ赤な下駄。
焚き火で暖を取っている横に降り立った射命丸文は「清く正しい」から始まる胡散臭い挨拶をするなり文々。新聞を取り出した。
ちょうど良かった。焼き芋を包む紙が欲しかったのだ。蔵まで歩くのは面倒だ。
文から差し出された文々。新聞を受け取り、手袋をはめて、焼けた焚き火をお祓い棒で突っつき放り込んだ芋を押し出した。芋をすばやく掴み新聞に包み、文に新聞を返す。
「焼き芋だけど食べる?」
文は何か言いたげだったがお芋が包まれた文々。新聞を受け取った。
自分の分の芋も同じ要領で包んだ。
「さ、食べましょ」
井戸から予め桶に汲んでいた水で火を消し神社の縁側へ腰を掛ける。
文も自分の横へ腰掛けたが焼き芋を受け取ってからずっと沈黙している。
はて、何か文の機嫌でも損ねることをしたのだろうか、よくよく考えたらお茶を忘れていた。焼き芋を食べるのだからお茶ぐらいは淹れてあげよう。喉にでも詰まらせたら大変だ。有害なクズ紙を発行する文だが現に火種にしたり焼き芋を包んだり新聞も生活に欠かせない。それくらいは労ってあげよう。
戸棚から茶筒を取り出しお茶っ葉をさじですくい急須へいれる。
マッチを擦り、火を付けてさきほどの自分の行為を思い出す。
何も文々。新聞の新刊を包むことは無かった。あのようなことをすれば文だって気分を損ねるのは明白だ、けれどもしてしまった。いつからだろうか、文に対して好きという感情が生まれたのは、そして好かれるよりも嫌われるような行動ばかりしてしまうのも。
自分の正直な気持ちを伝えたい。しかしそんなことはできるわけがない。文はいつだって何を考えているか分からなければのらりくらりと身を隠す。気まぐれ鴉天狗、私のことだってどうでもいいに違い無い。
いつかきっとこの想いを伝えることがあるかもしれない。そして結果はわかっている。
性別だって種族だって、当たり前のことだ。
いつの間にかやかんから水蒸気が上がっていた。急須にお湯を注いでお盆に載せて文の腰掛けている縁側へ向かう。
文は私がお茶を用意してくれるのを待っていたのかまだ焼き芋には手を付けていない。
「はい、出涸らしのお茶で良ければどうぞ」
「おお、ありがとうございます。霊夢が淹れてくれるお茶なら出涸らしだろうか何だって美味しいですよ」
「はいはい」
いつものやり取りを済ませる。何で自分の気持ちに正直になれないのだろうか、こんなことを言いながらお茶だって文が好む茶葉を用意しているのに、自分が嫌になってくる。
そんな私の気持ちなんていざ知らず、文は焼き芋をふうふうと冷ましながら食べている。
自分もふうふうと冷ましながら芋にかじりく。
こんな扱いだが、幸いにも文は定期的に博麗神社に訪れる。文の考えていることはつくづく分からない。人間で、いつまでたっても正直になれないどころとか邪険に扱う私の元へ時たま顔を見せてくれる。
お芋に夢中の文をチラりと見る。
ごめんね文、馬鹿な私で、いつかいつか絶対自分の気持ちに正直になります。
だからお願いします。
きっと叶わぬ恋だから、時間の許す限り貴方の隣に居させてください。
私は文のことが好きだから。
◆
私が文々。新聞を差し出すといつも「要らない」と言いながら受け取るのに今日は言わず手に取るから今日こそは目を通してくれるかと思えば焚き火をお祓い棒でつっつき出てきたお芋を文々。新聞に包んだ。霊夢がまともに新聞を読んでくれないことは重々承知だがこうも目の前で本来以外の使い方をされるとは、思わず言葉を失った。霊夢は「焼き芋だけど食べる?」と新刊ほかほかの文々。新聞でほかほかのお芋を包んで私にくれた。
そんなことは気にならないのか、霊夢は自分の分のお芋をサッと包み、火を消して博麗神社の縁側に腰掛けた。
私も続いて腰掛けたが焼き芋に手をつけず、機嫌を損ねてだんまりしたフリをした。
私の機嫌がよろしくないことに気づいたのか、それともお茶を出すぐらいの優しさはまだあるのか「お茶、淹れてくるわね」と立ち上がり奥へ消えた。
しばらくすると霊夢はお盆に載せた湯のみを私の横に起き「出涸らしのお茶で良ければあるけど」とお茶を差し出した。
「おお、ありがとうございます。霊夢が淹れてくれるお茶なら出涸らしだろうか何だって美味しいですよ」とお礼とお世辞を言うといつもどおり、「はいはい」と流された。
お芋を食べる前にお茶を口にする。霊夢は「出涸らし」と言っていたが味は薄く無くしっかり茶葉から淹れたであろう甘めの味、いつからだっただろうか、霊夢の淹れるお茶はお湯の親戚のような出涸らしでは無くなった。それどころか何処から情報を仕入れたのか私好みの甘めの茶葉で淹れてくる。
そしていつも「買いすぎたから」とお茶請けのお菓子もつくようになった。それに伴ってカラス避けにと境内や鳥居にいつも吊されていたコンパクトディスクもいつの間にか撤去されていた。もっとも私には効果は無いのだが。
さて、冷めないうちにお芋を食べなければ、お芋を真っ二つに割りかじりつく。
霊夢も私に沿うようにかじりつく。
そんな霊夢の横顔をチラりと見る。
もう彼女の気持ちには気づいている。霊夢よりもずっと長く生きているのだからそれくらいは分かる。最初は気まぐれ巫女とばかり思っていたが霊夢は意外にも感情が出るタイプ。私と二人きりだと頬を赤くするし私と喋るときだけ妙に緊張している。
ごめんね霊夢、素直じゃない鴉天狗で、いつかいつか貴方を迎えに行きますから。
だからお願いします。
きっと叶う恋だから、霊夢には申し訳ないけれどこの甘酸っぱくてもどかしい距離をもう少しだけ楽しませてください。
私は霊夢のことが大好きですから。
なにか都合の良いものは……蔵に溜めてある文々。新聞を思い出した。
そのためにこの新聞はあるのだ。
蔵からマッチと山積みの文々。新聞を一部手に取る。
マッチを擦り文々。新聞に火を付ける。空気が乾燥していることもあって勢いよく燃えた。火の勢いが安定したのを見計らい、お芋を放り込む。
先日、人里で安売りしていたのでつい買ってしまった。
さて、誰か来ないだろうか、この時間になれば魔理沙か気まぐれな妖怪共が1人か2人来る時間、それを見込んでさつまいもは3つ放り込んだ。
そろそろ食べごろの時間、誰も来なければ昼飯がてら3つ食べてしまうかと考えていた頃、少し強めの風が吹いた。今日はあいつか。
濡れ羽色の髪と紅葉を連想させてくれる変な柄の入ったYシャツに黒のスカートに真っ赤な下駄。
焚き火で暖を取っている横に降り立った射命丸文は「清く正しい」から始まる胡散臭い挨拶をするなり文々。新聞を取り出した。
ちょうど良かった。焼き芋を包む紙が欲しかったのだ。蔵まで歩くのは面倒だ。
文から差し出された文々。新聞を受け取り、手袋をはめて、焼けた焚き火をお祓い棒で突っつき放り込んだ芋を押し出した。芋をすばやく掴み新聞に包み、文に新聞を返す。
「焼き芋だけど食べる?」
文は何か言いたげだったがお芋が包まれた文々。新聞を受け取った。
自分の分の芋も同じ要領で包んだ。
「さ、食べましょ」
井戸から予め桶に汲んでいた水で火を消し神社の縁側へ腰を掛ける。
文も自分の横へ腰掛けたが焼き芋を受け取ってからずっと沈黙している。
はて、何か文の機嫌でも損ねることをしたのだろうか、よくよく考えたらお茶を忘れていた。焼き芋を食べるのだからお茶ぐらいは淹れてあげよう。喉にでも詰まらせたら大変だ。有害なクズ紙を発行する文だが現に火種にしたり焼き芋を包んだり新聞も生活に欠かせない。それくらいは労ってあげよう。
戸棚から茶筒を取り出しお茶っ葉をさじですくい急須へいれる。
マッチを擦り、火を付けてさきほどの自分の行為を思い出す。
何も文々。新聞の新刊を包むことは無かった。あのようなことをすれば文だって気分を損ねるのは明白だ、けれどもしてしまった。いつからだろうか、文に対して好きという感情が生まれたのは、そして好かれるよりも嫌われるような行動ばかりしてしまうのも。
自分の正直な気持ちを伝えたい。しかしそんなことはできるわけがない。文はいつだって何を考えているか分からなければのらりくらりと身を隠す。気まぐれ鴉天狗、私のことだってどうでもいいに違い無い。
いつかきっとこの想いを伝えることがあるかもしれない。そして結果はわかっている。
性別だって種族だって、当たり前のことだ。
いつの間にかやかんから水蒸気が上がっていた。急須にお湯を注いでお盆に載せて文の腰掛けている縁側へ向かう。
文は私がお茶を用意してくれるのを待っていたのかまだ焼き芋には手を付けていない。
「はい、出涸らしのお茶で良ければどうぞ」
「おお、ありがとうございます。霊夢が淹れてくれるお茶なら出涸らしだろうか何だって美味しいですよ」
「はいはい」
いつものやり取りを済ませる。何で自分の気持ちに正直になれないのだろうか、こんなことを言いながらお茶だって文が好む茶葉を用意しているのに、自分が嫌になってくる。
そんな私の気持ちなんていざ知らず、文は焼き芋をふうふうと冷ましながら食べている。
自分もふうふうと冷ましながら芋にかじりく。
こんな扱いだが、幸いにも文は定期的に博麗神社に訪れる。文の考えていることはつくづく分からない。人間で、いつまでたっても正直になれないどころとか邪険に扱う私の元へ時たま顔を見せてくれる。
お芋に夢中の文をチラりと見る。
ごめんね文、馬鹿な私で、いつかいつか絶対自分の気持ちに正直になります。
だからお願いします。
きっと叶わぬ恋だから、時間の許す限り貴方の隣に居させてください。
私は文のことが好きだから。
◆
私が文々。新聞を差し出すといつも「要らない」と言いながら受け取るのに今日は言わず手に取るから今日こそは目を通してくれるかと思えば焚き火をお祓い棒でつっつき出てきたお芋を文々。新聞に包んだ。霊夢がまともに新聞を読んでくれないことは重々承知だがこうも目の前で本来以外の使い方をされるとは、思わず言葉を失った。霊夢は「焼き芋だけど食べる?」と新刊ほかほかの文々。新聞でほかほかのお芋を包んで私にくれた。
そんなことは気にならないのか、霊夢は自分の分のお芋をサッと包み、火を消して博麗神社の縁側に腰掛けた。
私も続いて腰掛けたが焼き芋に手をつけず、機嫌を損ねてだんまりしたフリをした。
私の機嫌がよろしくないことに気づいたのか、それともお茶を出すぐらいの優しさはまだあるのか「お茶、淹れてくるわね」と立ち上がり奥へ消えた。
しばらくすると霊夢はお盆に載せた湯のみを私の横に起き「出涸らしのお茶で良ければあるけど」とお茶を差し出した。
「おお、ありがとうございます。霊夢が淹れてくれるお茶なら出涸らしだろうか何だって美味しいですよ」とお礼とお世辞を言うといつもどおり、「はいはい」と流された。
お芋を食べる前にお茶を口にする。霊夢は「出涸らし」と言っていたが味は薄く無くしっかり茶葉から淹れたであろう甘めの味、いつからだっただろうか、霊夢の淹れるお茶はお湯の親戚のような出涸らしでは無くなった。それどころか何処から情報を仕入れたのか私好みの甘めの茶葉で淹れてくる。
そしていつも「買いすぎたから」とお茶請けのお菓子もつくようになった。それに伴ってカラス避けにと境内や鳥居にいつも吊されていたコンパクトディスクもいつの間にか撤去されていた。もっとも私には効果は無いのだが。
さて、冷めないうちにお芋を食べなければ、お芋を真っ二つに割りかじりつく。
霊夢も私に沿うようにかじりつく。
そんな霊夢の横顔をチラりと見る。
もう彼女の気持ちには気づいている。霊夢よりもずっと長く生きているのだからそれくらいは分かる。最初は気まぐれ巫女とばかり思っていたが霊夢は意外にも感情が出るタイプ。私と二人きりだと頬を赤くするし私と喋るときだけ妙に緊張している。
ごめんね霊夢、素直じゃない鴉天狗で、いつかいつか貴方を迎えに行きますから。
だからお願いします。
きっと叶う恋だから、霊夢には申し訳ないけれどこの甘酸っぱくてもどかしい距離をもう少しだけ楽しませてください。
私は霊夢のことが大好きですから。
もらったばかりの新聞で焼き芋をくるんで渡すシーンが特に面白かったです
甘酸っぱいお話でした