時々、霧雨魔理沙の人形を作らないのはなぜかと尋ねられることがある。
それほど愛しているのなら、なぜ手元に置いて愛玩しようとしないのか。と。
そう尋ねてくる彼女らは、大きな誤謬を二つ抱えている。
“霧雨魔理沙の形をした人形”を“愛する”ことに、なんの意味があるだろう。浅慮を嘲りながら表向きにこやかに笑って見せれば、大概の相手は引き下がる。狂気の魔女にも一分の分別はあったのだと安心しながら。
狂っているのはあなたたちの方だ。
これほど用立たない行いがあるだろうか。無為だから作らないのではない。真逆だ。作ることが無為なのだ。
だって、ああ。なぜ。なにゆえ愛する人が目の前にいるというのに、わざわざ形代に愛情を注がねばならない? それは冒涜という行為だ。私と霧雨魔理沙の間に広がる泥濘とした愛の形をひとがたという枠に押し込める窮屈な行為だ。
そのひとがたを、その上"愛する"だなんて。なんのリフレクションもないすすこけた人形に向かって、毎晩夜泣きのさえずりを聞かせて眠るのか。それを諸氏らは良しとするのか、私に期待するのか。この無神経な妄想を狂気と呼ばずしてなんと呼べばいい。私にはその語彙はない。
私に残った一分の理とはそういうことだ。余人が良く誤解することだが、人形には愛を受け止める力はない。ただ黙って受け入れるだけ。
だが、それに対する返礼があってこその心の交歓でしょう。通じ合ったと言うカタルシスでしょう。その歓びこそがあなたを愛したという何よりの証で、報酬で、印で、望んで押された烙印だった。
だったというのに。
「なぁ、お前はなんで、私の人形を作らないんだ?」
しかし、ああ。霧雨魔理沙。よもやあなた自身からその問いが出ようとは。
あなたを愛せと命じたあなたが、何故あなたを手放せと迫るのか。
お互いに通じた赤い糸を無造作に解いて、そこらの樫の枝に巻きつけるような真似をするのか。
まるで真っ赤な絆の紐に首をくくられているかのようだ。
喉をかきむしるような私の煩悶を、どうあなたに伝えたらいい。
あなたに私の愛を、正しく受け止めて結びつける指や首が存在しないと、あなた自身がそういうのなら。
分かっている? 魔理沙。喉を締めて、糸をつないで、だらりと垂れ下がったあなたの躰を夢想すれば。
あなた自身は、私の死蔵するコレクションとは一線を画したものになるのよ。物を言うし優しい目で見つめ返してくれる。なぜなら、私の愛した、あなたは間違いなく"ヒト"だったのだから。
それほど愛しているのなら、なぜ手元に置いて愛玩しようとしないのか。と。
そう尋ねてくる彼女らは、大きな誤謬を二つ抱えている。
“霧雨魔理沙の形をした人形”を“愛する”ことに、なんの意味があるだろう。浅慮を嘲りながら表向きにこやかに笑って見せれば、大概の相手は引き下がる。狂気の魔女にも一分の分別はあったのだと安心しながら。
狂っているのはあなたたちの方だ。
これほど用立たない行いがあるだろうか。無為だから作らないのではない。真逆だ。作ることが無為なのだ。
だって、ああ。なぜ。なにゆえ愛する人が目の前にいるというのに、わざわざ形代に愛情を注がねばならない? それは冒涜という行為だ。私と霧雨魔理沙の間に広がる泥濘とした愛の形をひとがたという枠に押し込める窮屈な行為だ。
そのひとがたを、その上"愛する"だなんて。なんのリフレクションもないすすこけた人形に向かって、毎晩夜泣きのさえずりを聞かせて眠るのか。それを諸氏らは良しとするのか、私に期待するのか。この無神経な妄想を狂気と呼ばずしてなんと呼べばいい。私にはその語彙はない。
私に残った一分の理とはそういうことだ。余人が良く誤解することだが、人形には愛を受け止める力はない。ただ黙って受け入れるだけ。
だが、それに対する返礼があってこその心の交歓でしょう。通じ合ったと言うカタルシスでしょう。その歓びこそがあなたを愛したという何よりの証で、報酬で、印で、望んで押された烙印だった。
だったというのに。
「なぁ、お前はなんで、私の人形を作らないんだ?」
しかし、ああ。霧雨魔理沙。よもやあなた自身からその問いが出ようとは。
あなたを愛せと命じたあなたが、何故あなたを手放せと迫るのか。
お互いに通じた赤い糸を無造作に解いて、そこらの樫の枝に巻きつけるような真似をするのか。
まるで真っ赤な絆の紐に首をくくられているかのようだ。
喉をかきむしるような私の煩悶を、どうあなたに伝えたらいい。
あなたに私の愛を、正しく受け止めて結びつける指や首が存在しないと、あなた自身がそういうのなら。
分かっている? 魔理沙。喉を締めて、糸をつないで、だらりと垂れ下がったあなたの躰を夢想すれば。
あなた自身は、私の死蔵するコレクションとは一線を画したものになるのよ。物を言うし優しい目で見つめ返してくれる。なぜなら、私の愛した、あなたは間違いなく"ヒト"だったのだから。
人と違う価値観のいいアリスでした
大変面白かったです
ただ心の交歓がない愛に何の意味があるか、というアリスの主張を、二次創作の場所で発表しようとするのは、その勇気を称賛したい気持ちもありますが、やはり興冷めがあったような気がします
逆にすがすがしいですね
あとはもっと物語性があるとより良かったと思いました