「見てごらん。フランドール」
お姉様に言われるまま見上げ、息をするのも忘れかけた。
濃紺に薄っすらとかかる白雲が、それ自体が宙飛ぶ生き物であるかのように、流れ流れ翔んでゆく。
だけど、それすら届かない、遥か遥かの空高くにそれらは煌めいている。
星。満面に散りばめられた星の世界が、夜の黒に光り輝いている。
「……ン。――フランドール」
お姉様の何度目かの呼び掛けに、ハッと現実に引き戻された。
「ゴメン、お姉様。よく聞こえなかった」
「まったく。まさか口を開けたまま見惚れるとは思ってなかったよ」
苦笑混じりの言葉に、顔がかあっと熱を持った。
「でも、姉冥利だ。ここまで喜んでくれると、わざわざ連れ出した甲斐がある」
夜遅くの紅魔館。その時計塔の一番高い場所で星を見ている。
咲夜も、パチュリーも、美鈴たちも眠りについた、二人だけの星空観測。
ヒュウ、ヒュウウと、冷たい夜風が身を切るが、それさえも気にならない程に心が昂っている。
「凄い眺めだろ?」
予め咲夜に持たされていたポッドからお茶を注ぎ、お姉様はそれを手渡してくれた。
受け取って一口啜ると、スッと柑橘系の香りがして、上品な甘さが口の中に広がる。
「ここは、私のお気に入りの場所なんだ」
自分の分のお茶を注ぎながら、お姉様は笑って言った。
「仕事が煮詰まったり、何かしら思い悩んだ時はここでただ空を見つめて、ぼうっと過ごしてみる。そうすると不思議と考えが冴えてくるんだ」
確かに、辺り一面を一望できるこの塔の上で、風に当たって空を見ていれば、色々良い考えが纏まりそうだ。
屋根の縁に腰を下ろし、少し身体を傾ける。
仰ぐような姿勢になると、首の辺りが楽になる。ただ、そうしてみても一面に広がる星を全て見る事は出来ない。
「凄い数だねー」
「そうだなあ」
「一体、どれくらいあるんだろうね」
昔読んだ本の中には、恒星だけでも10の22乗は少なくともあるだろうと書かれてあったが、それはもう実感としての数ではない。
「……これは前に、パチェから聞いた話なんだがな」
紅茶のカップに口を付けつつ、ポツリポツリとお姉様が語りだした。
「星自体は文字通り天文学的な数字なんだが、その中でこの世界にまで届けられるだけの光を発せられる星となると、途端にその数が激減する。今こうして私達の目に見える星になると、たったの8600個ぐらいにしかならないそうだ」
「……それでも、多すぎるよ」
10の22乗分の8600。無意識に頭で計算しようとしたが、すぐにやめた。
「おまけにこの星は丸いから、こうして満天の星空でも半分以下。約4000個が今こうして目に見る事が可能な選ばれたモノたちという訳だ」
更に掛ける2分の1以下。
「私には想像もできない数だよ」
たぶんその10分の1、100分の1にしたとしても多すぎるだろう。
「想像できないとしても、間違いなく存在する。今こうして確かに輝いてるよ」
――まあ尤も、とっくの昔に爆発して無くなっているヤツらもいるんだろうけどな。
そう朗らかそうに笑うお姉様の言葉には、敢えて何も言わなかった。
目に見える星と見えない星。今もある星と、今はもうない星。
ただでさえ途方もない話なのに、それをさらに突き詰めていくと頭が痛くなりかねない。
……その代わり、熱いマグカップを持っている指先がチリチリと痛んだ。
「折角、地球の丸みについても触れたんだ。もう一つ面白い話をしよっか」
マグカップの中身を空けるぐらいの間があった後、お姉様が再び話し出した。
「例えば、ガリレオは“それでも地球は回ってる”なんて言っていない。とか?」
「それも有名だな。でも、かつては地動説を唱えただけで異端審問に呼び出されていたのに、その一方で不吉の予兆とされてきた、皆既日食の原理を堂々と解き明かした男がいたっていう話は知らないんじゃないか?」
確かにそれは初耳だ。
「エドモンド・ハレーという天文学者なんだが、その男は二週間も前から日食が起こる事を予言して、それがただの自然現象にすぎないと主張した。だけども、その男は異端審問どころか周囲から称賛を送られた。何故だか分かるか?」
「……そうだね」
少し考え込む。
「……たとえば、教会や王様とその人が血縁で後ろ盾があった」
考えながらポツポツ思い浮かんだ事を呟く。
「それとも、神様や王様の正しさを証明するためと謳った、とか」
「何だ。知っていたのか」
どうやら正解だったようで、少し残念そうに眉を下げたお姉様に、首を横に振った。
「初歩的な事だよ」
今まで頑なだったであろう相手が急に態度を軟化させたとすれば、自然と選択肢は絞れる。
「フフ。そう言われれば、確かに単純な事だったな」
そうお姉様は微かに笑った、
「……ハレーはこう言ったそうだ。――“神に守護されし我らが君主とその治世に凶事が訪れる等という醜聞を糺す為に”日食はただの一現象にすぎないと証明したい。そう言われれば王族も教会も、素直に頷くしかないだろ?」
「頭がよかったんだね」
「ああ、本当に頭がよかったんだ。だからこそソイツは天文を神秘から科学に引き摺り下ろす事が出来た」
そしてそれこそが、人間を真の意味で宇宙(ソラ)へと踏み出せる大きな一歩になったのだという。
「まるで、星を掴むみたいな話だね」
「みたいじゃなくて、実際に星を掴んだんだ。何しろ、自分の名前を彗星の一つに刻み込んだからな」
どこか羨んだ口調でそう零した後、ズズッとお茶を啜る音が響いた。
「……そっか」
夜空を振り仰ぐ。
その名前を冠した彗星は目に見えないけれど、それでも宇宙(ソラ)では無数の星が今も行きかっているのだろう。
「――これは、魔理沙から聞いた話なんだけどさ」
以前印象に残った話を、お姉様にする。
「星は、旅人なんだって」
「ほう」
「暗く寒い宇宙の中、常に孤独(ひとり)で行くアテもない。あるものは自分以上の隕石に砕かれてしまうし、あるものは道半ばで燃え尽きてしまう」
それはこの世界が生まれる以前から、延々と続き続けた。
「それでも星々は、何処か自分の終着地(こたえ)に辿り着くために、命を燃やしながら、進み続けるんだって」
「……ロマンチストだな。アイツは」
「ロマンチストなんだよ。あの子は」
普段がさつで子供っぽくて、男口調な割には、こういう時彼女は乙女でポエマーな一面を覗かせる。
そのギャップが少しおかしくて、少しの間二人で笑った。
「――その話に少し絡むが、今度は人形遣いが話していた事だ。人間は空を飛び、月や火星にまで行けるだけの技術を手に入れた。にも拘らず、地上の海に関してはほとんど分からない事の方が多いらしい」
「え、そうなの?」
それも初耳だ。
てっきり、外の地上にはもう分からない事など残ってないとばかり思っていた。
「アイツはこうも言ってたよ。人間は近くの神秘よりも、遠くの浪漫に憧れる。遠く遠くの海へと乗り出してしまう、生き物なんだろうなって」
「そう言われると、確かに解る気がする」
「でも、そんな見果てぬ夢にどこまでも邁進できる旅人達が、どうしようもなく好ましい。そうとも言っていたよ」
「アリスらしいね」
「アリスの言を借りるのなら、人は方舟からヴァイキング、大航海を経て、今度は星の海原へと旅立ちだしたというわけか」
「……お姉様も」
本の少しだけ、唇を尖らせた。
「その旅人とやらに、含まれているんだろうね」
「フラン?」
「月にロケットを飛ばすって時、私は置いてったよね」
頬をわざと膨らませてそう言うと、少しバツが悪そうにお姉様が頬を掻いた。
「あー。あの頃はちょうどお前は情緒不安定だったから、様子を見ておきたかったんだ」
しどろもどろになった様子が、少し面白い。
「怒ってないよ。いつもの事だから」
「うぐっ」
実際、怒ってはいない。ただ、咲夜やメイド達、霊夢と魔理沙を引き連れて、本当に月へ行ってしまったのだからその開発精神には恐れ入る。
「いつもお姉様は、一人で先へ先へ行っちゃうから、その分私や咲夜が振り回されっぱなし」
「……それは違うよ。フラン」
「え?」
「お前や咲夜が、しっかりと足元を見据えてくれている。だから私は空を見上げていられるんだ」
「…………」
突拍子のない一言に、ポカンとなってそれから赤くなった。
――正直、今のは予測していなかった。
「……ズルイや」
ゆっくりと苦笑を浮かべた。お姉様も、取り澄ました表情になった。
――――ゴーン
――ゴーン
―ゴーン
不意に時計塔の鐘が鳴り響いた。
「……さて。そろそろいい時間だな」
バサリと漆黒の翼が羽ばたき、お姉様が宙に舞いあがる。
自然、見上げるような形になる。
「うん。……そうだね」
同じようにして立ち上がる。少し靴紐が緩んでいたので締め直した。
「どうだい、フランドール。――――初めて星空の下に翔び出す感想は」
「……うん。少し怖くて、でも悪くない」
仰ぎ見えるは、星の大海。
果てしなく、底知れない夜の闇。なのにどこまでも惹きつけてやまない幾星霜の未知の海空。
「フランドール」
お姉様が、夜の王が、手を差し伸べてくれる。
……たったそれだけで、竦んでいた筈の足がスッと楽になる。
初めての旅路が定まった。
「大丈夫。それじゃあ、行こっか――」
伸ばされた手を握り締め、最初の一歩を踏み出した。
Fin
お姉様に言われるまま見上げ、息をするのも忘れかけた。
濃紺に薄っすらとかかる白雲が、それ自体が宙飛ぶ生き物であるかのように、流れ流れ翔んでゆく。
だけど、それすら届かない、遥か遥かの空高くにそれらは煌めいている。
星。満面に散りばめられた星の世界が、夜の黒に光り輝いている。
「……ン。――フランドール」
お姉様の何度目かの呼び掛けに、ハッと現実に引き戻された。
「ゴメン、お姉様。よく聞こえなかった」
「まったく。まさか口を開けたまま見惚れるとは思ってなかったよ」
苦笑混じりの言葉に、顔がかあっと熱を持った。
「でも、姉冥利だ。ここまで喜んでくれると、わざわざ連れ出した甲斐がある」
夜遅くの紅魔館。その時計塔の一番高い場所で星を見ている。
咲夜も、パチュリーも、美鈴たちも眠りについた、二人だけの星空観測。
ヒュウ、ヒュウウと、冷たい夜風が身を切るが、それさえも気にならない程に心が昂っている。
「凄い眺めだろ?」
予め咲夜に持たされていたポッドからお茶を注ぎ、お姉様はそれを手渡してくれた。
受け取って一口啜ると、スッと柑橘系の香りがして、上品な甘さが口の中に広がる。
「ここは、私のお気に入りの場所なんだ」
自分の分のお茶を注ぎながら、お姉様は笑って言った。
「仕事が煮詰まったり、何かしら思い悩んだ時はここでただ空を見つめて、ぼうっと過ごしてみる。そうすると不思議と考えが冴えてくるんだ」
確かに、辺り一面を一望できるこの塔の上で、風に当たって空を見ていれば、色々良い考えが纏まりそうだ。
屋根の縁に腰を下ろし、少し身体を傾ける。
仰ぐような姿勢になると、首の辺りが楽になる。ただ、そうしてみても一面に広がる星を全て見る事は出来ない。
「凄い数だねー」
「そうだなあ」
「一体、どれくらいあるんだろうね」
昔読んだ本の中には、恒星だけでも10の22乗は少なくともあるだろうと書かれてあったが、それはもう実感としての数ではない。
「……これは前に、パチェから聞いた話なんだがな」
紅茶のカップに口を付けつつ、ポツリポツリとお姉様が語りだした。
「星自体は文字通り天文学的な数字なんだが、その中でこの世界にまで届けられるだけの光を発せられる星となると、途端にその数が激減する。今こうして私達の目に見える星になると、たったの8600個ぐらいにしかならないそうだ」
「……それでも、多すぎるよ」
10の22乗分の8600。無意識に頭で計算しようとしたが、すぐにやめた。
「おまけにこの星は丸いから、こうして満天の星空でも半分以下。約4000個が今こうして目に見る事が可能な選ばれたモノたちという訳だ」
更に掛ける2分の1以下。
「私には想像もできない数だよ」
たぶんその10分の1、100分の1にしたとしても多すぎるだろう。
「想像できないとしても、間違いなく存在する。今こうして確かに輝いてるよ」
――まあ尤も、とっくの昔に爆発して無くなっているヤツらもいるんだろうけどな。
そう朗らかそうに笑うお姉様の言葉には、敢えて何も言わなかった。
目に見える星と見えない星。今もある星と、今はもうない星。
ただでさえ途方もない話なのに、それをさらに突き詰めていくと頭が痛くなりかねない。
……その代わり、熱いマグカップを持っている指先がチリチリと痛んだ。
「折角、地球の丸みについても触れたんだ。もう一つ面白い話をしよっか」
マグカップの中身を空けるぐらいの間があった後、お姉様が再び話し出した。
「例えば、ガリレオは“それでも地球は回ってる”なんて言っていない。とか?」
「それも有名だな。でも、かつては地動説を唱えただけで異端審問に呼び出されていたのに、その一方で不吉の予兆とされてきた、皆既日食の原理を堂々と解き明かした男がいたっていう話は知らないんじゃないか?」
確かにそれは初耳だ。
「エドモンド・ハレーという天文学者なんだが、その男は二週間も前から日食が起こる事を予言して、それがただの自然現象にすぎないと主張した。だけども、その男は異端審問どころか周囲から称賛を送られた。何故だか分かるか?」
「……そうだね」
少し考え込む。
「……たとえば、教会や王様とその人が血縁で後ろ盾があった」
考えながらポツポツ思い浮かんだ事を呟く。
「それとも、神様や王様の正しさを証明するためと謳った、とか」
「何だ。知っていたのか」
どうやら正解だったようで、少し残念そうに眉を下げたお姉様に、首を横に振った。
「初歩的な事だよ」
今まで頑なだったであろう相手が急に態度を軟化させたとすれば、自然と選択肢は絞れる。
「フフ。そう言われれば、確かに単純な事だったな」
そうお姉様は微かに笑った、
「……ハレーはこう言ったそうだ。――“神に守護されし我らが君主とその治世に凶事が訪れる等という醜聞を糺す為に”日食はただの一現象にすぎないと証明したい。そう言われれば王族も教会も、素直に頷くしかないだろ?」
「頭がよかったんだね」
「ああ、本当に頭がよかったんだ。だからこそソイツは天文を神秘から科学に引き摺り下ろす事が出来た」
そしてそれこそが、人間を真の意味で宇宙(ソラ)へと踏み出せる大きな一歩になったのだという。
「まるで、星を掴むみたいな話だね」
「みたいじゃなくて、実際に星を掴んだんだ。何しろ、自分の名前を彗星の一つに刻み込んだからな」
どこか羨んだ口調でそう零した後、ズズッとお茶を啜る音が響いた。
「……そっか」
夜空を振り仰ぐ。
その名前を冠した彗星は目に見えないけれど、それでも宇宙(ソラ)では無数の星が今も行きかっているのだろう。
「――これは、魔理沙から聞いた話なんだけどさ」
以前印象に残った話を、お姉様にする。
「星は、旅人なんだって」
「ほう」
「暗く寒い宇宙の中、常に孤独(ひとり)で行くアテもない。あるものは自分以上の隕石に砕かれてしまうし、あるものは道半ばで燃え尽きてしまう」
それはこの世界が生まれる以前から、延々と続き続けた。
「それでも星々は、何処か自分の終着地(こたえ)に辿り着くために、命を燃やしながら、進み続けるんだって」
「……ロマンチストだな。アイツは」
「ロマンチストなんだよ。あの子は」
普段がさつで子供っぽくて、男口調な割には、こういう時彼女は乙女でポエマーな一面を覗かせる。
そのギャップが少しおかしくて、少しの間二人で笑った。
「――その話に少し絡むが、今度は人形遣いが話していた事だ。人間は空を飛び、月や火星にまで行けるだけの技術を手に入れた。にも拘らず、地上の海に関してはほとんど分からない事の方が多いらしい」
「え、そうなの?」
それも初耳だ。
てっきり、外の地上にはもう分からない事など残ってないとばかり思っていた。
「アイツはこうも言ってたよ。人間は近くの神秘よりも、遠くの浪漫に憧れる。遠く遠くの海へと乗り出してしまう、生き物なんだろうなって」
「そう言われると、確かに解る気がする」
「でも、そんな見果てぬ夢にどこまでも邁進できる旅人達が、どうしようもなく好ましい。そうとも言っていたよ」
「アリスらしいね」
「アリスの言を借りるのなら、人は方舟からヴァイキング、大航海を経て、今度は星の海原へと旅立ちだしたというわけか」
「……お姉様も」
本の少しだけ、唇を尖らせた。
「その旅人とやらに、含まれているんだろうね」
「フラン?」
「月にロケットを飛ばすって時、私は置いてったよね」
頬をわざと膨らませてそう言うと、少しバツが悪そうにお姉様が頬を掻いた。
「あー。あの頃はちょうどお前は情緒不安定だったから、様子を見ておきたかったんだ」
しどろもどろになった様子が、少し面白い。
「怒ってないよ。いつもの事だから」
「うぐっ」
実際、怒ってはいない。ただ、咲夜やメイド達、霊夢と魔理沙を引き連れて、本当に月へ行ってしまったのだからその開発精神には恐れ入る。
「いつもお姉様は、一人で先へ先へ行っちゃうから、その分私や咲夜が振り回されっぱなし」
「……それは違うよ。フラン」
「え?」
「お前や咲夜が、しっかりと足元を見据えてくれている。だから私は空を見上げていられるんだ」
「…………」
突拍子のない一言に、ポカンとなってそれから赤くなった。
――正直、今のは予測していなかった。
「……ズルイや」
ゆっくりと苦笑を浮かべた。お姉様も、取り澄ました表情になった。
――――ゴーン
――ゴーン
―ゴーン
不意に時計塔の鐘が鳴り響いた。
「……さて。そろそろいい時間だな」
バサリと漆黒の翼が羽ばたき、お姉様が宙に舞いあがる。
自然、見上げるような形になる。
「うん。……そうだね」
同じようにして立ち上がる。少し靴紐が緩んでいたので締め直した。
「どうだい、フランドール。――――初めて星空の下に翔び出す感想は」
「……うん。少し怖くて、でも悪くない」
仰ぎ見えるは、星の大海。
果てしなく、底知れない夜の闇。なのにどこまでも惹きつけてやまない幾星霜の未知の海空。
「フランドール」
お姉様が、夜の王が、手を差し伸べてくれる。
……たったそれだけで、竦んでいた筈の足がスッと楽になる。
初めての旅路が定まった。
「大丈夫。それじゃあ、行こっか――」
伸ばされた手を握り締め、最初の一歩を踏み出した。
Fin
星空の散歩はいいものですね
前回の話もそうでしたが、テーマがはっきりと決まっていて話が頭に入ってきやすかったです
幽閉から解き放たれたフランがレミリアにエスコートされる姿が様になっていました
しっかりと自分の考えを持っているレミリアが素晴らしかったです
大変に絵になる情景の作り方が上手い気が致します
とても良い雰囲気でロマンチックなお話でした