サケノミ
ふぁさぁっと、草が夜風に揺られる。月の優しい光が、辺りをうっすらと照らしだす。
皆が寝静まる時刻となった博麗神社の境内には、人っ子一人見られないはず……だったのだが。
「……」
今、この境内には一つの人影が、こそこそと動き回っている。もちろん、この神社の巫女には断りなど入れていないだろう。
大きな帽子が特徴的なその人影は、光量が少ない中社殿の方へと手探り気味に進んで行く。
ゆっくりと歩みを進める中、人影はその手に固い感触を得た。ぺたぺたと、確認するように触る。木材の肌触りと、形状から自分の探していた物品だと確信した。
人影が探していたのは、木で出来た長方形の箱。
「……」
彼女は周囲を見回し人が居ないことを確認すると、改めて賽銭箱へと手を伸ばした……
「大変、大変、大変よ!」
私たちが縁側でお茶を飲みながらくつろいでいると、霊夢が鬼のような形相で駆けて来た。
突然のことに私たちは困惑顔になる中、早苗がおずおずと手を挙げる。
「あ、あのぉ…… どうしたんですか? そんなに慌てて」
そう訊ねる早苗も、鼻息を荒くさせている霊夢に若干引き気味である。
「実は、実は……賽銭箱が……」
訊ねられた側の霊夢は不意に顔を伏せた。その声は苦し気で、言葉も途切れ途切れである。
「賽銭箱がどうしたのかしら……?」
咲夜がその先を促す。その顔は何かを察したような表情であった。
私たちは霊夢の次の言葉を待つ。しかし、霊夢は顔を伏せたままで一向に喋り出さない。
「あぁ、もう!」
そんな霊夢に業を煮やしたのか、早苗は考えていた最悪の事態を口に出した。
「も、もしかしてですけど、賽銭箱が盗まれちゃったんですか!」
「いや、別に盗まれてないけど?」
「へ?」
真顔で返す霊夢。それを受けて、早苗は間の抜けた表情を浮かべた。咲夜も同じような顔をしている。
「ってか、賽銭箱を盗まれるって何のこと? 何処かの同人サークルの同人アニメの話?」
霊夢はむしろ疑問符を浮かべながら、質問を返す。
……夢想○郷の話を持ってくるのだけはやめて欲しいけどなっ!
霊夢は顎に手を当てると、うぅむと唸る。
「……それにしても盗難ねぇ……言われてみると心配になってきたし、後で対策しとこうかしら? 確か咲夜の伝手で、動体に対して自動的に攻撃をする自立型スタンドを手に入れるルートがあったような……?」
「ノト―リ○ス・B・I・Gは海にずっといてください!」
「えー、良いじゃないノトちゃん。圧倒的防御性能よ、きっと」
「略すな、可愛いみたいに言うな、過剰防衛だ! ……全く、一体に何があったんだ? 盗まれたわけじゃないって言うのなら」
私はげっそりとしながらも、再起不能な感じの二人の代わりに霊夢の話を聴くことにする。コイツの相手は二人には重荷になりそうだからな。
「そうそう、聴いて驚きなさいよ、魔理沙! 何とねぇ、何と、今日賽銭箱を見たらお賽銭が入っていたのよ! それも十数万円もよ、十数万円! 単位が円なのは気にしないでおいて!」
嬉々としながら説明する霊夢。通貨の単位を念押ししていたが、私は深くは気にしないことにした。
「はーん、それは良かったじゃないか」
「……何よ、その返事。ムカつくわねぇ……」
おっと、流石に脱力気味しすぎた返事だったか、霊夢は気を悪くしたように頬を膨らませた。
だがそれも私が「すまん!」と手を合わせながら謝ったら緩和された。ちょろい。
「……今、ちょろいとか思わなかった?」
「ナニモ、オモッテナイゼ」
「変なカタコト使わないでよ…… で、話を戻すけど実は私、コレの使い道をどうしようかな~って迷ってるのよね」
言いながら、十数枚の諭吉をぽんと目の前に置く霊夢。
「使い道ですか? そんなの霊夢さんならすぐに決まりそうですけど……?」
「えぇ、食費とか困ってそうですから」
ここらでようやく再起動できたのか、早苗と咲夜も会話に参加してくる。
早苗はともかく、咲夜。お前の霊夢に持ってるイメージが割と辛辣すぎる気が……
「食費に困ってるって何よ! 別に生活には困ってないわよ別に! 心外ね!」
案の定霊夢は全力で咲夜の言葉を否定する。それを受けた咲夜の方は「あら、そうでしたか。失礼しました」と受け流すように返す。
ぐぬぬと、歯を食いしばる霊夢であったが、これ以上は不毛な論争になると察し、本題を切り出す。
「……まぁ、私が言いたいのは、皆でこのお金の使い道の意見を出し合おうってことなのよ。さっきも言った通り私、別に生活には困ってないからね。こういうときに悩むのよ」
生活には困っていないという点を無駄に強調する。早苗と咲夜はそこらへんをスルーするかのように会話を続けた。
「はぁ、なるほど。私たち皆でこの諭吉さんたちの行くべき場所を示してあげるわけですね……わかりました。導くのは巫女の役目、ならば参加あるのみです! 面白そうですしね!」
「……ふむ、確かに愉快な催しですね……わたくしも混ぜてはくださいませんか?」
笑みを浮かべながら参加を表明する二人。霊夢はそれを見て満足そうな表情をすると、まだ参加意思を見せていない私に訊ねる。
「で、魔理沙、あなたはどうなのよ?」
「―――ん、あぁ。そうだな、私も混ぜてくれよ、霊夢」
しばしの間逡巡した後、私は首を縦に振った。
「……分かったわ。よし、これで面子は揃った! 中でゆっくりと会議よ!」
言いながら霊夢は私たちを、ちゃぶ台のある居間へと誘う。
早苗、咲夜、私の順に座り、そして残り空いている場所へと、戸棚に諭吉たちを仕舞ってきた霊夢が腰を落ち着けた。
「……では順次意見を挙げていきましょ。じゃあ、まず言い出しっぺの私からね」
「期待だぜ」
「えぇ、任せなさい。今さっき思いついたばっかりの出来立て、ほやほやの案よ」
おうおう、一気に不安になって来たぜ!
そんな私の不安もお構いなく、霊夢は語り始める。
「……お金って使えばすぐなくなっちゃうわよね?」
「まぁ、そうだな」
「で、私今回のお金を元手に何かしようと考えたの。そして、ここからが本題。その何をするかについて私なりに考えたんだけど……」
霊夢はそこで言葉を区切る。そして大きく息を吸いこんだ後、その先を続けた。
「……私たちで東方の同人アニメを作って、同人イベントで頒布してみるってのはどうかしら!」
「……いやいやいや! どこからその発想来たんだだよ! 流れ考えて!」
「え、さっき魔理沙と話してる時に出た夢○夏郷からだけど?」
「え、そこ! そこから!」
私が霊夢の言葉に愕然とするのにもお構いなく彼女は説明する。
「だって考えてもみなさい? キャラ本人たちがアニメを作るのよ、売れないわけないじゃない。それに沢城み○きさんの声の魔理沙や、田中○恵さんの声の咲夜なのよ? 大ヒット間違いなしね!」
「だから、夢○夏郷のネタを引っ張りすぎだって! 別に紫の声が井上喜○子さんとか、霊夢の声が中原○衣さんとか確定して無いから! 同人アニメの数だけ声存在してるから!」
「そうね、確かに魔理沙の言う通りだわ。秘封活動○録を例にとっても私の声は今井○美さんね。あ、そうそう。あの作品と言えばメリーの声が花澤○菜さんだったのはハマリ役だったと思うんだけどあなたはどう思うかし……」
「待て! 止まれ! ステイ! 頼むから秘封活○記録のネタも突っ込まないでくれ! 混乱するから!」
「えぇ、そうね。話が脱線してたわ。でもね、これだけは覚えておいて? この小説内での声は夢想夏○基準になってるの。今私たちは、中○麻衣さんと沢○みゆきさんの声で話しているわけ。オーケイ?」
「いやいあいあ! 小説って媒体じゃ読者さんには全く伝わって無いから! 私すら今初めて知ったから! ってかこんなくだらない会話お二方に失礼だろ!」
「魔理沙、ちょっと落ち着きなさいよ。焦りすぎて、最初の部分がクトゥルーの呪文みたいになってたわよ?」
やれやれだぜ、と言った風に首を振る霊夢。はっきり言ってむかつく。
「やかましいぞ! ……それに私たち素人だろ? そう簡単にアニメなんか作れるわけがない!」
腕組みをしながら私は霊夢を諭す。これ以上バカみたいなことをされちゃ、たまらないからな。
「まぁ、そう思うわよね。私もそう考えているわ」
「えぇ……じゃあ、どうするつもりだったんだよ」
割とあっさり認めた霊夢に私は唖然としたが、霊夢の次の言葉で顎が外れそうになってしまった。
「パラパラ漫画を頒布する」
「斬新なアニメだなぁ、オイ!」
「音声は別録りし、CDにして売るわ。購入者はCDを流しながらパラパラ漫画をめくるの。あ、ちなみにCDと漫画は別売ね?」
「鬼畜! 鬼畜がここにいる! ってかそれって
アニメなのか? なぁ、アニメって呼んで良いのか?」
「絵が動いて、音声があるならアニメで良いじゃないの?」
きょとんとした目でそう訊ねる霊夢に私は言葉を詰まらせた。
うっ、そこだけ聴くとアニメって答えそうになってしまう…… でもフタを開けてみたら絶対アニメじゃないぞ、それ!
「キャストのギャラもタダだし、彩色しなきゃもっと安くできるわね。良いことばかりだわ♪ ……ただ一つこの計画に欠点があるとするならばパラパラ漫画の厚さがタウ○ページ十冊でも収まらないボーリュームで、捲ることすらできないことかしら?」
「やっぱりダメじゃないか! 却下だ、却下! それに、もうアニメじゃなくドラマCDで出せばいいだろ、絵の方が無理だってのなら。……おい、そこ「盲点だったわ!」みたいに手を叩くのをやめろ。
……紙に脚本書くのもやめろ。ドラマCDも却下だ!」
私が脚本を書き始めた紙を横から奪い去ると、霊夢は恨めしそうな視線を私に向けながらも、渋々と引き下がった。
ふぅ、とりあえずはバカを阻止できたか……
私がそう思いながら胸を撫で下ろしていると、私の向かいに座っていた早苗が、手を勢いよく挙げた。
「はい! はい! はい! 霊夢さんの番は終わりましたよね? なら次は私の番です!」
ふんす!と鼻息荒く告げる早苗。余程自分の意見に自身があると見える。
「おう、じゃあ次は早苗だな」
多少の心配は残るものの、私は早苗の意見を促した。流石に、霊夢並みの低レベルな内容じゃないと信じて。
私の言葉を受け、早苗は胸に手を当てながら自分の考えを滔々語り出した。
「……この神社は余り人が訪れませんよね? それで私、思ったんです。この神社にはありがたみのあって、人が訪れるような象徴が足りてないんじゃないかと」
ふむふむ、好調な滑り出しだな、ここら辺はさっきの霊夢みたいな心配は全くない。……霊夢が今にも早苗に飛びかかりそうな雰囲気を発しているのはこの際無視で行こう。うん。
「だから、私はあの諭吉さんたちでこの神社の象徴になる物を用意すれば良いのでは無いかと考えました」
「ほう、それで何を用意するかは決まっているのか?」
「えぇ、もちろんです。とびっきりのを考えておいてますよ」
興味深げに身を乗り出す私の肩に、落ち着かせるかの如く早苗は両手を置いた。私はそれに従い座り直す。だが、興奮は収まっていない。
「で、その内容とは……?」
「その内容は……」
躍動する心を抑えながら訊ねる私に、早苗は満を持して答える。
「……神社に巨大ロボットを置くのです!」
「よーし、次行こう、次」
確か次は咲夜だったなー、どんな意見が聴けるのか楽しみだぜ!
「ちょっとナチュラルにスルーしないでくださいよ、魔理沙さん! 話はまだ終わってないんですけど!」
「……チッ!」
「舌打ちまで⁉」
あまりにも私の対応がキツイからか、涙目になる早苗。私は疲れから溜め息をついた。
「はぁぁぁぁぁ。……早苗。お前、考えてもみたか?
ど こ の 世 界 に!
諭 吉 十 数 枚 で!
用 意 が で き る!
巨大ロボットがあるんだ?
数万で用意できるわっきゃねぇだろぉぉぉぉ!」
「ひぅぅぅっ!」
唐突な私の絶叫に身を震わせる早苗。私に怯える様はまるで小動物のようだった。
「なぁ、教えてくれよ早苗? 私は何回お前らのバカみたいな夢物語を否定すればいい? 何回、ツッコミを入れればいい? 霊夢は何も言ってはくれない……」
「……ゆ、夢物語じゃありません! プランだってちゃんとあります!」
「へぇ、どんな?」
早苗は深呼吸をし、気分を落ち着かせると、詳しいプランの説明を始める。
「確かに、ロボットが造れないというのは魔理沙さんの言う通りです。ですので、諭吉さんたちは別のところ、スコップに使います」
早苗の口から出て来たスコップという言葉と、ロボットの結びつけが出来ない私は首を傾げる。
「スコップぅ? 一体何に使うつもりなんだ?」
「ロボットの発掘に使います」
キラキラとした目でそう言いのけやがった、ちくしょう!
私が呆れたような顔で見ているのも構わずに、早苗はその先を続ける。
「魔理沙さん、今やロボットは造るものではなく発掘するものなんです! きっと妖怪の山には白いひげのお人形さんや、緑の一つ目ロボットとかが埋まってたりするんですよ! ロマン百パーセントですね!」
「いや、待て。それはおかしい」
「それに! それに! 月には朽ち果てた社があって、そこには巨大ロボットが眠ってるらしいんですよ! もしかしたら月の都の中にあるかもしれませんね!」
「無いから! 多分月の都の人もそんな社知らないし! 太陽の巫女も月の巫女もオロチ衆もこの世界には居ないからな!」
「後ですね! きっと旧地獄にロボット探しに行ったら崩落事故に巻き込まれ、そこで巨大な顔の形をしたロボットを見つけちゃって、最終的には宇宙を又にかけた対戦を経験するに至ったりしちゃって!」
「よし、よ~く分かったぞ。お前は既に常識を天元突破しちゃったんだな……」
「そして極めつけには、ある日女性型アンドロイドと知り合って『お姉さま』とか慕われた後、宇宙から突然とやって来た怪獣によって地球がピンチに! 私たちが怪獣に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったその時、女性型アンドロイドが覚醒する! 実は女性型アンドロイドは『地球帝国宇宙軍太陽系直掩部隊直属うんたらかんたら』だったという展開に……!」
「おい、どんどん発掘って方向から遠ざかってるぞ。それとガイ○ックスが多い!」
ぜぇはぁ……とツッコミに疲れた私は、荒く息をする。相対して早苗の方は生き生きとしていた。
「ふぅ~、満足しましたよ、魔理沙さん。ご静聴ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる早苗。……私がいつ静かに話を聴いたのだろうか?
「それで、この案なんですけど……」
疑問符を浮かべていた私に、早苗がもじもじと上目遣いに訊ねる。
私はそれに対し明るい口調で一言、告げてやった。
「却下♪」
「ですよね~ ……本当にダメです?」
「しつこい、イナズマキック欲しいのか?」
「それは遠慮しときますね。……って魔理沙さんもガイナッ○スネタ使ってるじゃないですか……」
口では不満を言いながらも、満足そうな顔をしながら早苗は引き下がる。
はぁと、私はまた一つ溜め息をついた。二人連続でこれでは次も心配である。このまま先に進めるのは正直言って私の中の本能が警鐘を鳴らしていた。
「……次、咲夜だな」
だが、進めないわけにも行かず私は最後の一人へと話題を振る。
「霊夢~お金~」
と、水を向けられた咲夜が口を開こうとしたその時、部屋の奥のふすまが開いた。
「なぁに、萃香。私たち、今重要な話をしてるんだけど?」
「ごめん、ごめん。実は、お酒が欲しいからお金かして欲しいんだぁ」
ふすまを開けて現れた人物は、頭に大きくて立派な二つの角を持っていた。鬼の伊吹萃香だ。
「じゃあ、そこの戸棚に幾らか入ってるから持っていきなさい」
「おー、ありがとう霊夢」
早速萃香はがさごそと戸棚を漁り、目当てのものを見つけると「じゃあねぇ」と一言挨拶し部屋を後にした。
「……妖怪に金をかしてるのもどうかと思うが、アイツ、酒無限に出せなかったっけ?」
萃香が去った後、私は霊夢にそう訊ねる。
「……まぁ、あれよ。細かいこと気にしてると禿げるわよ」
霊夢は遠い目をしながらそう呟いた。
「答えになってないんだが……良いか。咲夜、頼んだぞ」
私は霊夢の答えに納得出来ず首を傾げたものの、考えても仕方ないことと悟り、話を戻した。
「やっと、わたくしの出番が参りましたか……長かったですね」
「期待は……してないから」
「そこは期待しておいて頂きたいものですね……」
咲夜は私の疲れた声に、少々落胆をしたが、気を取り直すように咳ばらいを一つする。
「んんっ! ではわたくしの案を説明させて頂きます。……実はわたくしの案は大まかに言うと霊夢の案とほとんど同じです」
「は? 霊夢と同じって、アニメ作って売るつもりなのか?」
「いえ、『ほとんど』と言ったように類似点はありますが決定的に違う点もございます」
……ふむ、その違う点とやらがアニメの代わりの代替意見となるのか? これは少し希望が持てそうだ。
「で、その違う点って何なんだ?」
一縷の望みを懸けた私の問いに、咲夜は頬を赤く染めながら答えた。
「わたくしがお嬢様と妹様の百合本を描いて、同人誌即売会に出すという案ですね……!」
『却下!』
「まさかの皆さま完全否定!」
気付けば私たち三人は息ぴったりに咲夜の意見を否定した。咲夜が案を口にしてからその間コンマ数秒と言ったところだろうか。速い。
「待ってください! 魔理沙はともかく、何故、霊夢と早苗が口を出してくるのでしょうか? 今はわたくしのターンですよね! 今までは魔理沙しかツッコミをしていなかったですのに!」
狼狽える咲夜に、霊夢は頬をかきながら、早苗は手をもじもじさせながら、それぞれ答える。
「いや~だってねぇ? ただ性癖を晒しているだけだし」
「絶対、霊夢さんのこと考えてなさそうですしね」
「別にお金はいりませんわ! ただ、出版費さえ出して頂ければ原稿はわたくしのがございますので! 売上は霊夢の懐に納めれば大丈夫ですし!」
「やっぱり本を出したいだけじゃない! 嫌よ、そんなヤツに金をかすなんてね!」
ぷいっとそっぽを向く霊夢。咲夜はそれを見て顔を引き攣らせた。
「……霊夢、あなたは今とても有意義な商談を蹴ったのよ。後悔しないことね」
「別に後悔なんてしないわよ。アンタが描いた本なんてたかが知れてるし」
「……流石に頭に来ましたわ。わたくしがイギリスで出会った殺人鬼でもけしかけましょうかしら?」
「ふん! それなら私にだって最近「おかあさん!」って呼んでしたってくれる少女がいるわよ! その子に任せるわ!」
……霊夢、今度はフェ○トでの中○麻衣さんのネタを引っ張ってくるのか……後、お前ら。それ両方ともジャック・ザ・リッパーだぞ。
「でしたら、私はそこに怪しい中国人のゾンビを付けたさせて頂きます。太陽の力以外では倒せない不死身の存在の恐ろしさを味わえばとよろしいかと」
「何よ、その程度なの? うちの子なんかそんな奴ら二人纏めて細切れよ! シンメーカイホーだったっけ? それでね!」
「知ってますか霊夢? モンキーが人間に追いつけるはずが無いんですよ……」
「誰が猿よ! 誰が! ちょっ、無言で指さすのはやめなさ……」
「いい加減にしろよ、お前ら!」
霊夢が咲夜に飛びかかろうとしたところで私の怒りは頂点に達した。
突然の私の大声に二人は萎縮してしまう。
「だ、だって魔理沙……」
「うっさい! クラレント投げつけんぞ!」
「ひゃ……モーさん怖い……!」
「魔理沙、悪いのは霊夢なの……」
「口答えするな! ジャンクにすっぞ!」
「それ、わたくしの台詞ですわ……○紅」
私は未だに口を開こうとする二人を威嚇する。……両方とも意図してない方向でショックを受けていたが。
……まぁ、確かに咲夜のネタだったからな。すまん咲夜。と心の中で謝っておくことにした。
「……私はな、もうちっとまともな案が出てくると思ったんだよ。三人も居るんだから。でもな、フタを開けてみればどうだ? 誰一人として真面目な案を出そうとしない!」
『うっ……』
私の叱責を受けて気まずそうな顔を浮かべる三人。私はそれを見て、嘆息した。
「はぁ……もう少しな、現実味のあって真面目で有意義な使い方は無いのか」
「ろ、ロボットはともかく、私と咲夜の即売会で出すってのは現実的でしょ!」
霊夢がどもりながらも反論する。そんな彼女に私は残酷な現実を突きつけてやった。
「あのな、霊夢。幻想郷に同人誌即売会は無いんだよぉ!」
「そ、そうだったぁ!」「そ、そうでしたわぁ!」
「今、気づいたのかよ!」
まるで、世界滅亡の予言を聴いてしまったかのような驚愕の表情を浮かべる二人。
私はその二人を呆れたような目つきでみつめる。
「……はぁ、せっかく珍しく誰かがお賽銭を入れてくれたのになぁ……当の本人はこのザマかよ」
「うっ……ごめんなさい」
申し訳なさのあまりか霊夢は肩をすぼめる。
……全く。
「―――ほら、あまり悲しそうな顔をするなよ。怒ってないんだからさ」
さっきまでいかつい顔をしていた私は、霊夢のその様子を見て、表情を和らげる。
私の意外な言葉に霊夢は目を点にする。
「あ、あれ? 怒ってないの……?」
「そりゃ、全く怒ってないって言ったら嘘になるさ。けれどさ、分かってくれれば良いんだ。それだけで私は十分」
言い終えた後、私は軽く微笑む。私の言葉を聴いた霊夢はぱぁっと、次第に顔を輝かせていった。
「あ、ありがとう魔理沙!」
「れ、礼なんて要らないさ……」
「私、魔理沙の言った通り、お賽銭を入れてくれた人のことを考えて決めるわ! ……今、思ったけどさっきから出ていた意見って自分たちの利益ばっかり求めていたわよね?」
「言われてみれば……」
「確かにそうですわね」
霊夢の言葉に激しく同意する二人。だから、気づくの遅いっての。
「でね、私、あのお金を使って宴会を開いたらどうかなぁ……なんて考えたのよ。皆で楽しく駄弁って、それで終わり。もちろん、参加費も参加資格もいらないわ」
「ほう……?」
私は目を細め、感嘆の声を漏らす。
霊夢のヤツ、思ってたよりも良い案出せるじゃねぇか……
「わぁ、それ素敵な案ですね!」
「霊夢にしては普通ですね。……ですがそれが良い」
二人の反応も好感触だ。霊夢は二人の言葉を聴くと立ち上がり、生き生きとした顔で戸棚の方へと向かった。
「じゃあ、早速買い出しをしなきゃね! 早苗、あなたは参加しそうな人を呼んで来て! 咲夜は私の料理の手つだ……」
「ん? どうしたんだ霊夢、何かあったのか?」
言葉は最後まで続けられることなく途切れた。諭吉が入っている棚を開けた姿勢で固まる霊夢。その顔は真っ青だ。
私たちは訝しみながら霊夢の側に行き、その手もとを覗き込んだ。そして、私たちは揃って霊夢と同じような顔色になった。何故ならば……
さっきまで戸棚に入っていたはずの諭吉たちが姿形も無くなっていたからなのだ!
『……って、えぇぇぇぇぇぇぇ!』
私たちは一斉に叫び声を上げた。今年、一番叫んだかもしれないぐらいの大きさで。
「えっ、えっ、なんで? さっきまでここに入れておいたはずなのに何で無くなってるのよ! ……魔理沙ぁ!」
怒りっ狂ったように、私をキッと睨みつける霊夢。……って私は何もしてないんだが!
私がぶんぶんと必死に首を振って否定していると、咲夜が閃いたかのように口を開く。
「わたくしたちに知られることなく消えた諭吉様……はっ! もしかして―――」
「さ、咲夜さん何か分かったんですか!」
「もしかして、わたくしたちは今、スタンド攻撃を受けているのではないでしょうか……!」
『遊んどる場合かぁぁぁぁぁぁ!』
この期に及んでマイペースな咲夜に私たちが息ぴったりな盛大なツッコミを決めた時、再び部屋の戸が開いた。
「あれぇ、騒がしいけどどうしたの、皆?」
入って来たのはやはりと言うか萃香だった。ただ、さっきと違って両脇にはたっぷり酒が入っていると思わしき瓶を抱えている。
「あ、あぁ、萃香おかえりなさい。ねぇ、帰って来ていきなりだけど、ここに入っていたお金知らないかしら……ん?」
挨拶もそこそこに霊夢は萃香にも情報を求めようとする……ところで霊夢は何かに気づいたように目を細めた。彼女の視線は、萃香の両脇に抱えられている瓶に向けられている。
「……ねぇ、萃香。何でそんなにお酒買ってるのかしら? 私、それだけ買えるほどのお金入れておいたつもりないんだけど?」
「え? 私、霊夢の言った通り、そこに入っていたお金で買える量買ったんだよ?」
首を傾げながら萃香は、霊夢の話とかみ合わない会話をする。そんな二人の間に、焦れた私は割り込んだ。
「な、なぁ、萃香。もしかしてだけどさっき持っていたお金ってこの段から取ったか?」
さっき、霊夢が諭吉を仕舞った段を指しながら私は訊ねる。そこで萃香は決定的な一言を発した。
「うん! いつもその段から取ってけって言うからねっ、今回もそこからとったぞ!」
―――諭吉たちは、大量の酒へと姿を変えた。
「す、萃香ぁ……!」
霊夢が萃香に掴みかかりそうな形相で迫る。その顔はまさに鬼神と言ったようである。
さて、咲夜たちも霊夢と同じように萃香へとにじり寄っているかと言えば……それは違った。
「霊夢ぅ……!」「霊夢さぁん……!」
じりじりと霊夢へと詰め寄っていく二人。霊夢はそんな二人を見て首を傾げる。
「え、何で私? 悪いのは萃香でしょう?」
その一言で彼女たちの噴火寸前の怒りは爆発した。
『もとは言えばあなたがお金を入れた場所が悪かったんでしょうがぁぁぁぁぁぁ!』
「えぇぇぇぇぇ! って言われてみれば確かにその通り……い、痛い! 掴みかからないでよ! わ、ちょっ、引っ張らないで早苗! 咲夜、なんでナイフを構えてるのよ!」
早苗に押さえ付けられて動けない霊夢の前に咲夜がゆらりと立つ。今の咲夜の体からは黒っぽいオーラが立ちのぼってるように見えた。
「本物の暴力を教えて差し上げましょう……!」
「こ、怖いっ! 早苗、放して! 避けられないじゃない! 魔理沙も見てないで助けてよ! あの目はヤバいわ、やると言ったらやる凄みがあるものぉ!」
「一人でそのお酒全部に呑むのか?」
「いやぁ、皆で分けて呑みたいねぇ」
「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!」
霊夢が必死に助けを求める中、私は我関せずといった風に萃香と話していた。もとより悪いのは霊夢なのだから仕方ないしな。
「皆でかぁ、まぁ元々そういう風に使おうと思ってたし丁度良いか。―――やっぱ、そういう風な使い方が一番、賽銭入れた奴にとっての使い方になるな」
「え? なんで分かるんだぁ、魔理沙?」
「なーんとなく、だぜ」
帽子に手をかけながら私は萃香に、ニカッと微笑んだ。
……はぁ、今月は無駄遣い出来ないから、困ったもんだぜ。
その夜、宴会は盛況の後に幕を閉じましたとさ、めでたしめでたし。
ふぁさぁっと、草が夜風に揺られる。月の優しい光が、辺りをうっすらと照らしだす。
皆が寝静まる時刻となった博麗神社の境内には、人っ子一人見られないはず……だったのだが。
「……」
今、この境内には一つの人影が、こそこそと動き回っている。もちろん、この神社の巫女には断りなど入れていないだろう。
大きな帽子が特徴的なその人影は、光量が少ない中社殿の方へと手探り気味に進んで行く。
ゆっくりと歩みを進める中、人影はその手に固い感触を得た。ぺたぺたと、確認するように触る。木材の肌触りと、形状から自分の探していた物品だと確信した。
人影が探していたのは、木で出来た長方形の箱。
「……」
彼女は周囲を見回し人が居ないことを確認すると、改めて賽銭箱へと手を伸ばした……
「大変、大変、大変よ!」
私たちが縁側でお茶を飲みながらくつろいでいると、霊夢が鬼のような形相で駆けて来た。
突然のことに私たちは困惑顔になる中、早苗がおずおずと手を挙げる。
「あ、あのぉ…… どうしたんですか? そんなに慌てて」
そう訊ねる早苗も、鼻息を荒くさせている霊夢に若干引き気味である。
「実は、実は……賽銭箱が……」
訊ねられた側の霊夢は不意に顔を伏せた。その声は苦し気で、言葉も途切れ途切れである。
「賽銭箱がどうしたのかしら……?」
咲夜がその先を促す。その顔は何かを察したような表情であった。
私たちは霊夢の次の言葉を待つ。しかし、霊夢は顔を伏せたままで一向に喋り出さない。
「あぁ、もう!」
そんな霊夢に業を煮やしたのか、早苗は考えていた最悪の事態を口に出した。
「も、もしかしてですけど、賽銭箱が盗まれちゃったんですか!」
「いや、別に盗まれてないけど?」
「へ?」
真顔で返す霊夢。それを受けて、早苗は間の抜けた表情を浮かべた。咲夜も同じような顔をしている。
「ってか、賽銭箱を盗まれるって何のこと? 何処かの同人サークルの同人アニメの話?」
霊夢はむしろ疑問符を浮かべながら、質問を返す。
……夢想○郷の話を持ってくるのだけはやめて欲しいけどなっ!
霊夢は顎に手を当てると、うぅむと唸る。
「……それにしても盗難ねぇ……言われてみると心配になってきたし、後で対策しとこうかしら? 確か咲夜の伝手で、動体に対して自動的に攻撃をする自立型スタンドを手に入れるルートがあったような……?」
「ノト―リ○ス・B・I・Gは海にずっといてください!」
「えー、良いじゃないノトちゃん。圧倒的防御性能よ、きっと」
「略すな、可愛いみたいに言うな、過剰防衛だ! ……全く、一体に何があったんだ? 盗まれたわけじゃないって言うのなら」
私はげっそりとしながらも、再起不能な感じの二人の代わりに霊夢の話を聴くことにする。コイツの相手は二人には重荷になりそうだからな。
「そうそう、聴いて驚きなさいよ、魔理沙! 何とねぇ、何と、今日賽銭箱を見たらお賽銭が入っていたのよ! それも十数万円もよ、十数万円! 単位が円なのは気にしないでおいて!」
嬉々としながら説明する霊夢。通貨の単位を念押ししていたが、私は深くは気にしないことにした。
「はーん、それは良かったじゃないか」
「……何よ、その返事。ムカつくわねぇ……」
おっと、流石に脱力気味しすぎた返事だったか、霊夢は気を悪くしたように頬を膨らませた。
だがそれも私が「すまん!」と手を合わせながら謝ったら緩和された。ちょろい。
「……今、ちょろいとか思わなかった?」
「ナニモ、オモッテナイゼ」
「変なカタコト使わないでよ…… で、話を戻すけど実は私、コレの使い道をどうしようかな~って迷ってるのよね」
言いながら、十数枚の諭吉をぽんと目の前に置く霊夢。
「使い道ですか? そんなの霊夢さんならすぐに決まりそうですけど……?」
「えぇ、食費とか困ってそうですから」
ここらでようやく再起動できたのか、早苗と咲夜も会話に参加してくる。
早苗はともかく、咲夜。お前の霊夢に持ってるイメージが割と辛辣すぎる気が……
「食費に困ってるって何よ! 別に生活には困ってないわよ別に! 心外ね!」
案の定霊夢は全力で咲夜の言葉を否定する。それを受けた咲夜の方は「あら、そうでしたか。失礼しました」と受け流すように返す。
ぐぬぬと、歯を食いしばる霊夢であったが、これ以上は不毛な論争になると察し、本題を切り出す。
「……まぁ、私が言いたいのは、皆でこのお金の使い道の意見を出し合おうってことなのよ。さっきも言った通り私、別に生活には困ってないからね。こういうときに悩むのよ」
生活には困っていないという点を無駄に強調する。早苗と咲夜はそこらへんをスルーするかのように会話を続けた。
「はぁ、なるほど。私たち皆でこの諭吉さんたちの行くべき場所を示してあげるわけですね……わかりました。導くのは巫女の役目、ならば参加あるのみです! 面白そうですしね!」
「……ふむ、確かに愉快な催しですね……わたくしも混ぜてはくださいませんか?」
笑みを浮かべながら参加を表明する二人。霊夢はそれを見て満足そうな表情をすると、まだ参加意思を見せていない私に訊ねる。
「で、魔理沙、あなたはどうなのよ?」
「―――ん、あぁ。そうだな、私も混ぜてくれよ、霊夢」
しばしの間逡巡した後、私は首を縦に振った。
「……分かったわ。よし、これで面子は揃った! 中でゆっくりと会議よ!」
言いながら霊夢は私たちを、ちゃぶ台のある居間へと誘う。
早苗、咲夜、私の順に座り、そして残り空いている場所へと、戸棚に諭吉たちを仕舞ってきた霊夢が腰を落ち着けた。
「……では順次意見を挙げていきましょ。じゃあ、まず言い出しっぺの私からね」
「期待だぜ」
「えぇ、任せなさい。今さっき思いついたばっかりの出来立て、ほやほやの案よ」
おうおう、一気に不安になって来たぜ!
そんな私の不安もお構いなく、霊夢は語り始める。
「……お金って使えばすぐなくなっちゃうわよね?」
「まぁ、そうだな」
「で、私今回のお金を元手に何かしようと考えたの。そして、ここからが本題。その何をするかについて私なりに考えたんだけど……」
霊夢はそこで言葉を区切る。そして大きく息を吸いこんだ後、その先を続けた。
「……私たちで東方の同人アニメを作って、同人イベントで頒布してみるってのはどうかしら!」
「……いやいやいや! どこからその発想来たんだだよ! 流れ考えて!」
「え、さっき魔理沙と話してる時に出た夢○夏郷からだけど?」
「え、そこ! そこから!」
私が霊夢の言葉に愕然とするのにもお構いなく彼女は説明する。
「だって考えてもみなさい? キャラ本人たちがアニメを作るのよ、売れないわけないじゃない。それに沢城み○きさんの声の魔理沙や、田中○恵さんの声の咲夜なのよ? 大ヒット間違いなしね!」
「だから、夢○夏郷のネタを引っ張りすぎだって! 別に紫の声が井上喜○子さんとか、霊夢の声が中原○衣さんとか確定して無いから! 同人アニメの数だけ声存在してるから!」
「そうね、確かに魔理沙の言う通りだわ。秘封活動○録を例にとっても私の声は今井○美さんね。あ、そうそう。あの作品と言えばメリーの声が花澤○菜さんだったのはハマリ役だったと思うんだけどあなたはどう思うかし……」
「待て! 止まれ! ステイ! 頼むから秘封活○記録のネタも突っ込まないでくれ! 混乱するから!」
「えぇ、そうね。話が脱線してたわ。でもね、これだけは覚えておいて? この小説内での声は夢想夏○基準になってるの。今私たちは、中○麻衣さんと沢○みゆきさんの声で話しているわけ。オーケイ?」
「いやいあいあ! 小説って媒体じゃ読者さんには全く伝わって無いから! 私すら今初めて知ったから! ってかこんなくだらない会話お二方に失礼だろ!」
「魔理沙、ちょっと落ち着きなさいよ。焦りすぎて、最初の部分がクトゥルーの呪文みたいになってたわよ?」
やれやれだぜ、と言った風に首を振る霊夢。はっきり言ってむかつく。
「やかましいぞ! ……それに私たち素人だろ? そう簡単にアニメなんか作れるわけがない!」
腕組みをしながら私は霊夢を諭す。これ以上バカみたいなことをされちゃ、たまらないからな。
「まぁ、そう思うわよね。私もそう考えているわ」
「えぇ……じゃあ、どうするつもりだったんだよ」
割とあっさり認めた霊夢に私は唖然としたが、霊夢の次の言葉で顎が外れそうになってしまった。
「パラパラ漫画を頒布する」
「斬新なアニメだなぁ、オイ!」
「音声は別録りし、CDにして売るわ。購入者はCDを流しながらパラパラ漫画をめくるの。あ、ちなみにCDと漫画は別売ね?」
「鬼畜! 鬼畜がここにいる! ってかそれって
アニメなのか? なぁ、アニメって呼んで良いのか?」
「絵が動いて、音声があるならアニメで良いじゃないの?」
きょとんとした目でそう訊ねる霊夢に私は言葉を詰まらせた。
うっ、そこだけ聴くとアニメって答えそうになってしまう…… でもフタを開けてみたら絶対アニメじゃないぞ、それ!
「キャストのギャラもタダだし、彩色しなきゃもっと安くできるわね。良いことばかりだわ♪ ……ただ一つこの計画に欠点があるとするならばパラパラ漫画の厚さがタウ○ページ十冊でも収まらないボーリュームで、捲ることすらできないことかしら?」
「やっぱりダメじゃないか! 却下だ、却下! それに、もうアニメじゃなくドラマCDで出せばいいだろ、絵の方が無理だってのなら。……おい、そこ「盲点だったわ!」みたいに手を叩くのをやめろ。
……紙に脚本書くのもやめろ。ドラマCDも却下だ!」
私が脚本を書き始めた紙を横から奪い去ると、霊夢は恨めしそうな視線を私に向けながらも、渋々と引き下がった。
ふぅ、とりあえずはバカを阻止できたか……
私がそう思いながら胸を撫で下ろしていると、私の向かいに座っていた早苗が、手を勢いよく挙げた。
「はい! はい! はい! 霊夢さんの番は終わりましたよね? なら次は私の番です!」
ふんす!と鼻息荒く告げる早苗。余程自分の意見に自身があると見える。
「おう、じゃあ次は早苗だな」
多少の心配は残るものの、私は早苗の意見を促した。流石に、霊夢並みの低レベルな内容じゃないと信じて。
私の言葉を受け、早苗は胸に手を当てながら自分の考えを滔々語り出した。
「……この神社は余り人が訪れませんよね? それで私、思ったんです。この神社にはありがたみのあって、人が訪れるような象徴が足りてないんじゃないかと」
ふむふむ、好調な滑り出しだな、ここら辺はさっきの霊夢みたいな心配は全くない。……霊夢が今にも早苗に飛びかかりそうな雰囲気を発しているのはこの際無視で行こう。うん。
「だから、私はあの諭吉さんたちでこの神社の象徴になる物を用意すれば良いのでは無いかと考えました」
「ほう、それで何を用意するかは決まっているのか?」
「えぇ、もちろんです。とびっきりのを考えておいてますよ」
興味深げに身を乗り出す私の肩に、落ち着かせるかの如く早苗は両手を置いた。私はそれに従い座り直す。だが、興奮は収まっていない。
「で、その内容とは……?」
「その内容は……」
躍動する心を抑えながら訊ねる私に、早苗は満を持して答える。
「……神社に巨大ロボットを置くのです!」
「よーし、次行こう、次」
確か次は咲夜だったなー、どんな意見が聴けるのか楽しみだぜ!
「ちょっとナチュラルにスルーしないでくださいよ、魔理沙さん! 話はまだ終わってないんですけど!」
「……チッ!」
「舌打ちまで⁉」
あまりにも私の対応がキツイからか、涙目になる早苗。私は疲れから溜め息をついた。
「はぁぁぁぁぁ。……早苗。お前、考えてもみたか?
ど こ の 世 界 に!
諭 吉 十 数 枚 で!
用 意 が で き る!
巨大ロボットがあるんだ?
数万で用意できるわっきゃねぇだろぉぉぉぉ!」
「ひぅぅぅっ!」
唐突な私の絶叫に身を震わせる早苗。私に怯える様はまるで小動物のようだった。
「なぁ、教えてくれよ早苗? 私は何回お前らのバカみたいな夢物語を否定すればいい? 何回、ツッコミを入れればいい? 霊夢は何も言ってはくれない……」
「……ゆ、夢物語じゃありません! プランだってちゃんとあります!」
「へぇ、どんな?」
早苗は深呼吸をし、気分を落ち着かせると、詳しいプランの説明を始める。
「確かに、ロボットが造れないというのは魔理沙さんの言う通りです。ですので、諭吉さんたちは別のところ、スコップに使います」
早苗の口から出て来たスコップという言葉と、ロボットの結びつけが出来ない私は首を傾げる。
「スコップぅ? 一体何に使うつもりなんだ?」
「ロボットの発掘に使います」
キラキラとした目でそう言いのけやがった、ちくしょう!
私が呆れたような顔で見ているのも構わずに、早苗はその先を続ける。
「魔理沙さん、今やロボットは造るものではなく発掘するものなんです! きっと妖怪の山には白いひげのお人形さんや、緑の一つ目ロボットとかが埋まってたりするんですよ! ロマン百パーセントですね!」
「いや、待て。それはおかしい」
「それに! それに! 月には朽ち果てた社があって、そこには巨大ロボットが眠ってるらしいんですよ! もしかしたら月の都の中にあるかもしれませんね!」
「無いから! 多分月の都の人もそんな社知らないし! 太陽の巫女も月の巫女もオロチ衆もこの世界には居ないからな!」
「後ですね! きっと旧地獄にロボット探しに行ったら崩落事故に巻き込まれ、そこで巨大な顔の形をしたロボットを見つけちゃって、最終的には宇宙を又にかけた対戦を経験するに至ったりしちゃって!」
「よし、よ~く分かったぞ。お前は既に常識を天元突破しちゃったんだな……」
「そして極めつけには、ある日女性型アンドロイドと知り合って『お姉さま』とか慕われた後、宇宙から突然とやって来た怪獣によって地球がピンチに! 私たちが怪獣に襲われ、絶体絶命の危機に陥ったその時、女性型アンドロイドが覚醒する! 実は女性型アンドロイドは『地球帝国宇宙軍太陽系直掩部隊直属うんたらかんたら』だったという展開に……!」
「おい、どんどん発掘って方向から遠ざかってるぞ。それとガイ○ックスが多い!」
ぜぇはぁ……とツッコミに疲れた私は、荒く息をする。相対して早苗の方は生き生きとしていた。
「ふぅ~、満足しましたよ、魔理沙さん。ご静聴ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる早苗。……私がいつ静かに話を聴いたのだろうか?
「それで、この案なんですけど……」
疑問符を浮かべていた私に、早苗がもじもじと上目遣いに訊ねる。
私はそれに対し明るい口調で一言、告げてやった。
「却下♪」
「ですよね~ ……本当にダメです?」
「しつこい、イナズマキック欲しいのか?」
「それは遠慮しときますね。……って魔理沙さんもガイナッ○スネタ使ってるじゃないですか……」
口では不満を言いながらも、満足そうな顔をしながら早苗は引き下がる。
はぁと、私はまた一つ溜め息をついた。二人連続でこれでは次も心配である。このまま先に進めるのは正直言って私の中の本能が警鐘を鳴らしていた。
「……次、咲夜だな」
だが、進めないわけにも行かず私は最後の一人へと話題を振る。
「霊夢~お金~」
と、水を向けられた咲夜が口を開こうとしたその時、部屋の奥のふすまが開いた。
「なぁに、萃香。私たち、今重要な話をしてるんだけど?」
「ごめん、ごめん。実は、お酒が欲しいからお金かして欲しいんだぁ」
ふすまを開けて現れた人物は、頭に大きくて立派な二つの角を持っていた。鬼の伊吹萃香だ。
「じゃあ、そこの戸棚に幾らか入ってるから持っていきなさい」
「おー、ありがとう霊夢」
早速萃香はがさごそと戸棚を漁り、目当てのものを見つけると「じゃあねぇ」と一言挨拶し部屋を後にした。
「……妖怪に金をかしてるのもどうかと思うが、アイツ、酒無限に出せなかったっけ?」
萃香が去った後、私は霊夢にそう訊ねる。
「……まぁ、あれよ。細かいこと気にしてると禿げるわよ」
霊夢は遠い目をしながらそう呟いた。
「答えになってないんだが……良いか。咲夜、頼んだぞ」
私は霊夢の答えに納得出来ず首を傾げたものの、考えても仕方ないことと悟り、話を戻した。
「やっと、わたくしの出番が参りましたか……長かったですね」
「期待は……してないから」
「そこは期待しておいて頂きたいものですね……」
咲夜は私の疲れた声に、少々落胆をしたが、気を取り直すように咳ばらいを一つする。
「んんっ! ではわたくしの案を説明させて頂きます。……実はわたくしの案は大まかに言うと霊夢の案とほとんど同じです」
「は? 霊夢と同じって、アニメ作って売るつもりなのか?」
「いえ、『ほとんど』と言ったように類似点はありますが決定的に違う点もございます」
……ふむ、その違う点とやらがアニメの代わりの代替意見となるのか? これは少し希望が持てそうだ。
「で、その違う点って何なんだ?」
一縷の望みを懸けた私の問いに、咲夜は頬を赤く染めながら答えた。
「わたくしがお嬢様と妹様の百合本を描いて、同人誌即売会に出すという案ですね……!」
『却下!』
「まさかの皆さま完全否定!」
気付けば私たち三人は息ぴったりに咲夜の意見を否定した。咲夜が案を口にしてからその間コンマ数秒と言ったところだろうか。速い。
「待ってください! 魔理沙はともかく、何故、霊夢と早苗が口を出してくるのでしょうか? 今はわたくしのターンですよね! 今までは魔理沙しかツッコミをしていなかったですのに!」
狼狽える咲夜に、霊夢は頬をかきながら、早苗は手をもじもじさせながら、それぞれ答える。
「いや~だってねぇ? ただ性癖を晒しているだけだし」
「絶対、霊夢さんのこと考えてなさそうですしね」
「別にお金はいりませんわ! ただ、出版費さえ出して頂ければ原稿はわたくしのがございますので! 売上は霊夢の懐に納めれば大丈夫ですし!」
「やっぱり本を出したいだけじゃない! 嫌よ、そんなヤツに金をかすなんてね!」
ぷいっとそっぽを向く霊夢。咲夜はそれを見て顔を引き攣らせた。
「……霊夢、あなたは今とても有意義な商談を蹴ったのよ。後悔しないことね」
「別に後悔なんてしないわよ。アンタが描いた本なんてたかが知れてるし」
「……流石に頭に来ましたわ。わたくしがイギリスで出会った殺人鬼でもけしかけましょうかしら?」
「ふん! それなら私にだって最近「おかあさん!」って呼んでしたってくれる少女がいるわよ! その子に任せるわ!」
……霊夢、今度はフェ○トでの中○麻衣さんのネタを引っ張ってくるのか……後、お前ら。それ両方ともジャック・ザ・リッパーだぞ。
「でしたら、私はそこに怪しい中国人のゾンビを付けたさせて頂きます。太陽の力以外では倒せない不死身の存在の恐ろしさを味わえばとよろしいかと」
「何よ、その程度なの? うちの子なんかそんな奴ら二人纏めて細切れよ! シンメーカイホーだったっけ? それでね!」
「知ってますか霊夢? モンキーが人間に追いつけるはずが無いんですよ……」
「誰が猿よ! 誰が! ちょっ、無言で指さすのはやめなさ……」
「いい加減にしろよ、お前ら!」
霊夢が咲夜に飛びかかろうとしたところで私の怒りは頂点に達した。
突然の私の大声に二人は萎縮してしまう。
「だ、だって魔理沙……」
「うっさい! クラレント投げつけんぞ!」
「ひゃ……モーさん怖い……!」
「魔理沙、悪いのは霊夢なの……」
「口答えするな! ジャンクにすっぞ!」
「それ、わたくしの台詞ですわ……○紅」
私は未だに口を開こうとする二人を威嚇する。……両方とも意図してない方向でショックを受けていたが。
……まぁ、確かに咲夜のネタだったからな。すまん咲夜。と心の中で謝っておくことにした。
「……私はな、もうちっとまともな案が出てくると思ったんだよ。三人も居るんだから。でもな、フタを開けてみればどうだ? 誰一人として真面目な案を出そうとしない!」
『うっ……』
私の叱責を受けて気まずそうな顔を浮かべる三人。私はそれを見て、嘆息した。
「はぁ……もう少しな、現実味のあって真面目で有意義な使い方は無いのか」
「ろ、ロボットはともかく、私と咲夜の即売会で出すってのは現実的でしょ!」
霊夢がどもりながらも反論する。そんな彼女に私は残酷な現実を突きつけてやった。
「あのな、霊夢。幻想郷に同人誌即売会は無いんだよぉ!」
「そ、そうだったぁ!」「そ、そうでしたわぁ!」
「今、気づいたのかよ!」
まるで、世界滅亡の予言を聴いてしまったかのような驚愕の表情を浮かべる二人。
私はその二人を呆れたような目つきでみつめる。
「……はぁ、せっかく珍しく誰かがお賽銭を入れてくれたのになぁ……当の本人はこのザマかよ」
「うっ……ごめんなさい」
申し訳なさのあまりか霊夢は肩をすぼめる。
……全く。
「―――ほら、あまり悲しそうな顔をするなよ。怒ってないんだからさ」
さっきまでいかつい顔をしていた私は、霊夢のその様子を見て、表情を和らげる。
私の意外な言葉に霊夢は目を点にする。
「あ、あれ? 怒ってないの……?」
「そりゃ、全く怒ってないって言ったら嘘になるさ。けれどさ、分かってくれれば良いんだ。それだけで私は十分」
言い終えた後、私は軽く微笑む。私の言葉を聴いた霊夢はぱぁっと、次第に顔を輝かせていった。
「あ、ありがとう魔理沙!」
「れ、礼なんて要らないさ……」
「私、魔理沙の言った通り、お賽銭を入れてくれた人のことを考えて決めるわ! ……今、思ったけどさっきから出ていた意見って自分たちの利益ばっかり求めていたわよね?」
「言われてみれば……」
「確かにそうですわね」
霊夢の言葉に激しく同意する二人。だから、気づくの遅いっての。
「でね、私、あのお金を使って宴会を開いたらどうかなぁ……なんて考えたのよ。皆で楽しく駄弁って、それで終わり。もちろん、参加費も参加資格もいらないわ」
「ほう……?」
私は目を細め、感嘆の声を漏らす。
霊夢のヤツ、思ってたよりも良い案出せるじゃねぇか……
「わぁ、それ素敵な案ですね!」
「霊夢にしては普通ですね。……ですがそれが良い」
二人の反応も好感触だ。霊夢は二人の言葉を聴くと立ち上がり、生き生きとした顔で戸棚の方へと向かった。
「じゃあ、早速買い出しをしなきゃね! 早苗、あなたは参加しそうな人を呼んで来て! 咲夜は私の料理の手つだ……」
「ん? どうしたんだ霊夢、何かあったのか?」
言葉は最後まで続けられることなく途切れた。諭吉が入っている棚を開けた姿勢で固まる霊夢。その顔は真っ青だ。
私たちは訝しみながら霊夢の側に行き、その手もとを覗き込んだ。そして、私たちは揃って霊夢と同じような顔色になった。何故ならば……
さっきまで戸棚に入っていたはずの諭吉たちが姿形も無くなっていたからなのだ!
『……って、えぇぇぇぇぇぇぇ!』
私たちは一斉に叫び声を上げた。今年、一番叫んだかもしれないぐらいの大きさで。
「えっ、えっ、なんで? さっきまでここに入れておいたはずなのに何で無くなってるのよ! ……魔理沙ぁ!」
怒りっ狂ったように、私をキッと睨みつける霊夢。……って私は何もしてないんだが!
私がぶんぶんと必死に首を振って否定していると、咲夜が閃いたかのように口を開く。
「わたくしたちに知られることなく消えた諭吉様……はっ! もしかして―――」
「さ、咲夜さん何か分かったんですか!」
「もしかして、わたくしたちは今、スタンド攻撃を受けているのではないでしょうか……!」
『遊んどる場合かぁぁぁぁぁぁ!』
この期に及んでマイペースな咲夜に私たちが息ぴったりな盛大なツッコミを決めた時、再び部屋の戸が開いた。
「あれぇ、騒がしいけどどうしたの、皆?」
入って来たのはやはりと言うか萃香だった。ただ、さっきと違って両脇にはたっぷり酒が入っていると思わしき瓶を抱えている。
「あ、あぁ、萃香おかえりなさい。ねぇ、帰って来ていきなりだけど、ここに入っていたお金知らないかしら……ん?」
挨拶もそこそこに霊夢は萃香にも情報を求めようとする……ところで霊夢は何かに気づいたように目を細めた。彼女の視線は、萃香の両脇に抱えられている瓶に向けられている。
「……ねぇ、萃香。何でそんなにお酒買ってるのかしら? 私、それだけ買えるほどのお金入れておいたつもりないんだけど?」
「え? 私、霊夢の言った通り、そこに入っていたお金で買える量買ったんだよ?」
首を傾げながら萃香は、霊夢の話とかみ合わない会話をする。そんな二人の間に、焦れた私は割り込んだ。
「な、なぁ、萃香。もしかしてだけどさっき持っていたお金ってこの段から取ったか?」
さっき、霊夢が諭吉を仕舞った段を指しながら私は訊ねる。そこで萃香は決定的な一言を発した。
「うん! いつもその段から取ってけって言うからねっ、今回もそこからとったぞ!」
―――諭吉たちは、大量の酒へと姿を変えた。
「す、萃香ぁ……!」
霊夢が萃香に掴みかかりそうな形相で迫る。その顔はまさに鬼神と言ったようである。
さて、咲夜たちも霊夢と同じように萃香へとにじり寄っているかと言えば……それは違った。
「霊夢ぅ……!」「霊夢さぁん……!」
じりじりと霊夢へと詰め寄っていく二人。霊夢はそんな二人を見て首を傾げる。
「え、何で私? 悪いのは萃香でしょう?」
その一言で彼女たちの噴火寸前の怒りは爆発した。
『もとは言えばあなたがお金を入れた場所が悪かったんでしょうがぁぁぁぁぁぁ!』
「えぇぇぇぇぇ! って言われてみれば確かにその通り……い、痛い! 掴みかからないでよ! わ、ちょっ、引っ張らないで早苗! 咲夜、なんでナイフを構えてるのよ!」
早苗に押さえ付けられて動けない霊夢の前に咲夜がゆらりと立つ。今の咲夜の体からは黒っぽいオーラが立ちのぼってるように見えた。
「本物の暴力を教えて差し上げましょう……!」
「こ、怖いっ! 早苗、放して! 避けられないじゃない! 魔理沙も見てないで助けてよ! あの目はヤバいわ、やると言ったらやる凄みがあるものぉ!」
「一人でそのお酒全部に呑むのか?」
「いやぁ、皆で分けて呑みたいねぇ」
「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!」
霊夢が必死に助けを求める中、私は我関せずといった風に萃香と話していた。もとより悪いのは霊夢なのだから仕方ないしな。
「皆でかぁ、まぁ元々そういう風に使おうと思ってたし丁度良いか。―――やっぱ、そういう風な使い方が一番、賽銭入れた奴にとっての使い方になるな」
「え? なんで分かるんだぁ、魔理沙?」
「なーんとなく、だぜ」
帽子に手をかけながら私は萃香に、ニカッと微笑んだ。
……はぁ、今月は無駄遣い出来ないから、困ったもんだぜ。
その夜、宴会は盛況の後に幕を閉じましたとさ、めでたしめでたし。
読んでる最中は苦々しい笑いしか出ませんでした。
パロディネタやメタネタに関しては
過ぎたるは猶及ばざるが如し、ということで。
私自身はその手のネタが好きな方なのですが
序盤の途中でお腹一杯になってしまいました。