「ーーねぇ魔理沙。こんな夜中に、山奥で何するって言うの?危険じゃない。」
博麗霊夢は、自分の手を引いている魔法使いに声をかける。
「大丈夫さ。まあ妖怪の山だから危険だけど…。」
その魔法使いーー霧雨魔理沙は答える。
いきなり、ついてこいと言われて手を引かれるがままに従っている。いったい何をするのか。霊夢には理解出来ない。
しかし、嫌な予感はしない。と言うより、いい予感がするのは何故だろう?
まず、山ならば飛んで移動すれば良い話だろうが、木々が生い茂り、一人二人通るのがやっとだ。霊夢達は山道を走り続ける。
霊夢は不安そうに、魔理沙の手を握る力を入れた。
「ーーもうすぐ着くぜ!」
魔理沙は言った。
光が見えてきて、やがて、霊夢はその光に飲み込まれていった…。
「ーーうわッ!!?」
霊夢は思わず答えをあげた。
いきなり生い茂っていた木々が消えて、そこはーー
落ちたら即死だろう、大きな崖だった。
魔理沙が立ち止まった。霊夢も合わせて止まる。
「…なあ霊夢。」
魔理沙が口を開いた。
「ーーちょっと。拉致してきて、この崖なんかに連れてきて。いったい何するーー」
霊夢が抗議の声をあげるが魔理沙は遮り、笑顔で言葉を紡ぐ。
「空を見てみろよ。」
「………は?」
彼女につられ、霊夢は空を見上げる。
………と、その夜空には。
大きな十六夜の月。
ーーその少し欠けた緋色の月が、自分の物足りない心のようで。
霊夢は思わず手を伸ばす。
勿論届くわけがない。霊夢の手は空を切るだけで、触れることは出来るはずはなかった。
今は幼い霊夢。だがいくら成長しても届くことはないだろう。………しかし、
(いつか、あの月に手が届くようになったら…。また、魔理沙とここに来よう。)
そう誓った。
***
「ーーよお霊夢。」
あれから何年も経った今でも、いつも騒がしい白黒がやってくる。
「…ああ、いらっしゃい、魔理沙。」
抑揚のない声で、霊夢は言う。
霊夢は体だけでなく、心も成長した。
子供の頃のように、ずっと何かを求めて色々なところに出かけていた、あの霊夢はもういない。15になった今は、もう大人だった。
一方で魔理沙は、体だけ成長している。つまり性格はまだ子供だ。
そんなでこぼこな二人だが、未だに関係が続いている。
「…はい、お茶。」
霊夢は静かにお茶を出す。魔理沙は無言で受け取り、お茶をすする。
「………」
「………」
沈黙が続く。しかし、違和感はない。気持ちのいい沈黙だ。
「ーー霊夢。そういえば、あの異変はどうなった?」
魔理沙が口を開いた。
「ん。ああ、あのことね。」
ポツポツと会話が始まり、やがて二人の口が動くようになってきた。
「………それじゃ。」
しばらくして、魔理沙が腰を上げる。
「ん。じゃあね。」
霊夢はひらひらと手を振った。
…魔理沙の姿が見えなくなって、霊夢は はぁ、とため息をつく。
思わず胸を押さえる。何故だろう、心が温かいのだ。
ーーそう。霊夢には密かな悩みがあった。
恋煩いだ。
***
実は魔理沙も同じく、霊夢に恋心を抱いていた。
博麗神社を出て、家への道を辿って行く。
(…恋、百合、同性愛。)
そんな単語が浮かんでくる。
ーー馬鹿か私は。
すぐその考えを消すが、魔理沙の心には、霊夢しかいない。まあつまりこれが恋である。
道ばたに、小さな赤い花が咲いていた。魔理沙には、その花が霊夢に見えた。つい手に取る。
花弁を一枚ずつちぎって。
好き、嫌い、好き、嫌い…。花占いをする。………が、結果は。
『嫌い』。
魔理沙は花を捨てた。
家に帰って、魔理沙は頭を抱えた。
ーー告白するか、しないか。
考える。もし告白して振られたら、もうこの関係は築けないだろう。ずっと大切にしてきた、この縁が…。
ーーでもこの恋が実ったら?
そう考えると、嬉しくなる。
迷った。ものすごく迷った。
………そして。出た答えは。
「告白するかーー。」
***
霊夢がいつもと同じく、縁側が茶を飲んでいると、
「……………よ。」
魔理沙が、静かに博麗神社に入ってきた。
霊夢は違和感をおぼえる。
ーーいつもの魔理沙と違う。
そう感じた。
魔理沙は、霊夢の隣に腰を下ろし、ただ俯く。声をかけられるのを、全力で拒否しているような姿。口を開くのをためらう。
…………と。
「ーーなあ霊夢…。」
魔理沙から声をかけてきた。しかし、元気のない声だった。
「何よ。」
霊夢は返す。
ーーいきなり言うのもなんだしな…。
そう思った魔理沙は、遠回しに(したつもりだがわかりやすい)質問をした。
「ーー同性愛ってどう思う?」
「…………………はあッッ!!!?」
霊夢の声が裏返る。
あの大人っぽい霊夢のキャラが壊れた瞬間だ。
「魔理沙っっっ?どうしたの…?」
顔を赤くして、霊夢はそっと魔理沙に尋ねる。
「同性愛ってどう思う?」
霊夢が答えないので魔理沙は繰り返す。
「………」
霊夢は俯いて、顔を真っ赤にして、固まってしまった。
ーーこれじゃあ何も進まない。
そう判断した魔理沙は、腰を上げた。
縁側に座り俯いている、霊夢の前に立ち、
「ーーあなたのことが好きです。」
…………………と、つい、言ってしまった。
「………い、いやぁっ」
霊夢がドン引きしたように呟く。震える足で立ち上がり、ふらふらと神社の部屋に逃げて行ってしまった。
魔理沙は、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなった。
ーーしまった。つい言ってしまったが、いきなりすぎたようだ。
一人残された魔理沙は、仕方なく神社を出て行った。
***
ーー振られた。
その現実を、魔理沙は認められなかった。
部屋で、一人すすり泣く。
後悔した。行動したまでは良かったが、悪い結果になろうとはーー。
その泣き声は、ただ部屋に響くだけだった。
***
あれから数週間経った。
魔理沙はふと思う。
このまま、終わってしまうのだろうか。このまま、この感情は消えていってしまうのだろうか。
ーーずっと思ってきた霊夢との縁が、切れてしまうのだろうか?
そう考えると、落ち着いていられなくなった。
(ーー霊夢は、私のこと、どう思っている?)
聞いてやろう。
魔理沙は立ち上がる。
***
霊夢は今日も、縁側に座り、待つ。
彼女ーー霧雨魔理沙を。
あのとき…。
魔理沙の告白に驚いて、逃げてしまった。
ーーほんとは、私も好きなのに。
霊夢は、逃げてしまった自分を恨んだ。きっと魔理沙は、振られたと勘違いして、ショックを受けただろう。きっと、引きこもっているだろう。
だから霊夢は、
魔理沙が立ち上がり、またここにきてくれるのを、毎日毎日待っている…。
しかし。
魔理沙は一向に来ない。
霊夢は不安を感じた。
まさか魔理沙、立ち上がれなくなったのだろうか?相当なショックを受けたのか?
考えても、考えても。
魔理沙は来ない…。
***
「…………………?」
しばらくして、私ーー博麗霊夢は気づく。私の足元に、何かがあることに。
その物を拾いあげる。
「ーー手紙…?」
ーーいつの間に?
私は嫌な予感がした。手紙を開く。差出人はーー?
“霊夢ヘ
今日の夜、月が綺麗なあの場所で、待ってます。
魔理沙”
私の予感は当たった。
手紙に書いてある、『あの場所』はーー。
私は走り出す。
妖怪の山を、登る。全速力で、ただただ走る。
月が綺麗な、あの場所………。
そんなところ、私は1つしか知らない。妖怪の山のてっぺんの、あの崖!!
私はあの崖を目指し、走る。
袖が木の枝に引っかかる。私は力ずくで袖を破った。 足元が湿っていて、滑って転んだ。怪我なんて構わない…!
はぁはぁ息を切らしながら、私はーー見覚えのある、あの道に来た。 遠くに光が見える。魔理沙と手を繋いで走った、あのときを思い出す。
ーーあと少し!
力を振り絞って、全速力で、光の中に、突っ込んだ。
生い茂っていた木々がなくなり、目の前は崖になっている、『あの場所』。
さあッと、風が通り過ぎた。私の黒髪が揺れる。
と、私の前では、金色の髪も、揺れていて。
「魔理沙………。」
私は彼女の名を呼んだ。
魔理沙が、そっと振り向く。
「来てくれたのか。…霊夢。」
微笑む魔理沙。しかし、その笑顔にいつもの明るさは感じられず、儚さで染まっていた。
その表情を見た私は、我慢しきれず。
ズカズカと魔理沙に歩みより、手を握った。
「ーーえ?れ、霊夢…?」
戸惑ったように、魔理沙が尋ねる。
私は、ふんっと鼻をならしながら言った。
「ほんと鈍いわね、馬鹿魔理沙!…あのとき、私、あんたのこと嫌いって言った?」
魔理沙はポツリと答える。
「…え、だって、お前は私のことを引いてたんじゃないのか…?」
「引いてないわよ!恥かしかったのよ!」
思わず叫ぶ私。
そして、顔を赤らめた。
魔理沙の瞳に、光が灯り、
「じゃあ霊夢…。」
と、そっと、言葉を発する。
「私のこと、好き…なのか…?」
そう、尋ねてきた。
ーーそうよ、“あいらぶゆー”よ!
私はそう言おうとしたが……、やめた。
だって私、プライド高いから。そんな簡単に、告白できる勇気ないから。あいらぶゆー なんて、恥ずかしいからーー!!
だから、だから!
「ーーほら魔理沙!月を見て!」
私は、緋色に満たされた、満月を指差す。
息を吸って、私は、魔理沙に言った。
これが私の、精一杯の、告白!!
「“月が綺麗ですね”!!」
できれば、もちょっと文章が多ければなぁ~と思ったりして。
他の読んで見聞広めてくれよ。ほんとセンスが中坊だわ恥ずかしい……
霊夢に似てるっつった花をちぎっていく魔理沙がもうサイコパスにしか見えねぇよ。相手が気になってる、という行動を無造作に詰め込みすぎ。
今まで読んだレイマリの中で一番好き。
霊夢の告白、次はもう一ひねり入れると評価は僕の中では上がるよ。
ファイト!
ただ、告白シーンの月は緋色じゃ無い方が綺麗かなと思いました。
あなた方は仲間内での意見のみに応え、他に見てくれている人達の意見には耳を塞いでいるようにも見受けられます。
ここの人達は辛口ですが的確な評価・感想を残してくれます。
そういった人達の意見も聞き、これが非常に低レベルな作品であるという現実にきちんと向き合うべきですよ。
でも前回よりは良いのでガンバ!
後書きが内輪向けですから意味ないかと。
その後の二人がどうなったか気になる。
次も楽しみにしてるよー。