其の一 -投我以桃、報之以李-
其の二 -妖怪の山大決戦!-
其の三 -光の降る夜-
よしこれでばっちり準備オッケーね。
せっかく紫さんと遊びに行くんですから、綺麗にしませんとね。
うん、でも衣玖はこっちに残るのよね、一緒に来ればよかったのに。
まさか、紫さんに蹴られる趣味はありませんよ。
あはは、いくら紫のやつでもそんなことしないって。
さてどうだか。
……お父様が、あんまり嬉しそうじゃないのが残念だけどね。
仕方がないことですよ、誰も彼もが恨みから自由になれるものではない。天子様が紫さんを好きだと思えるだけでも奇跡みたいな話です。
そうよね……紫と一緒にいることを認めてもらえただけでも、ありがたいと思わなくちゃね。
……それにしても、なんだか最近、昔の天子様を思い出します。
昔って?。
あなたが紫さんと出会ってすぐのころですよ。
ああ、あの頃か……あの頃のことを思い出すと、ちょっと恥ずかしいわね。
当時の天子様は、紫さんのこととなると辛そうな顔で走っていました。でも今は……。
今は?
優しい顔をしてらっしゃいます。
そっか……えへへ、よかった。
わずか数年ですが、天子様はあの頃とは随分変わられた。
そう……かしら、あんまり実感ないな。私はあの時から変わった気がしない、今でもずっと紫のことを恨んでばっかで、時たま思うの、私なんかがあいつの傍にいていいんだろうかって。
そんなことありませんよ。だって天子様はもう、紫さんのことを憎んでいませんから。
えっ?
天子様が、紫さんのことを許してはいないと思います、そしてそれはこの先も変わらないでしょう。
でもきっと、もう憎しみは抱いてません。
そうなのかな……だったら、よかったわ、とても。もしそうなら、紫のおかげね。
それだけじゃありません、天子様が頑張り続けなければ辿り着けなかった結果ですよ。
……ありがと、時間だしもう行くわ。
ええ、素敵なデートになるといいですね。
うん! もちろんよ!
――先進国の日本、どこぞの有り触れた繁華街。
年がら年中光り輝く街の照明は、夏の夜もやかましいくらいの光量を目に叩きつけてくる。
明るく照らされながら普段より大勢の人々が行き交う中、辺りを見回しながら一人でうろつく女性の姿があった。
「もう、蓮子ったら何処行っちゃったのよ」
彼女の名前はマエリベリー・ハーン、秘封倶楽部という構成員二名からなる胡散臭いサークルの片割れだ。
今日はあるイベントのついでに、ネットで見つけたオカルト話が本物かを友人と確かめに来て、見事に空振りに終わった後だ。
それからしばらく二人で暇をつぶそうとしていたのだが、今日は街の中が人でごった返しているせいで友人とはぐれてしまった。
運の悪いことに自分のスマホは電池が切れてしまっていた、どうやら運が悪く充電池が壊れていて充電できていなかったらしいと朝起きた時に気がついた。
仕方なくこの科学が進んだ良き時代に、メリーはわざわざ足と目を使ったアナログな方法で友人を探し回っていた。
彼女が持つ特殊な目も、こんな時には役に立ってくれない。
まったく時間がないのにと独り言ちて急いでいたメリーは、人混みの中から飛び出してきた別の人影とぶつかってしまった。
柔らかな身体に弾かれて足を一歩下げる。
「あっ、ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ」
メリーに声を掛けてくれたのは、紫色のドレスを着た金色の髪の毛が闇に輝く、美しい女性だった。
胸元を緋色の首飾りで彩ったその女性に、メリーは一瞬見惚れてしまい、すぐに正気に戻った。
同性愛がどうのという話とは違う、何故かこの女性には気が惹かれるものがあった。
「……どうしたのかしら、そんなに見つめて?」
「えっ!? あ、いや、ごめんなさい、ボーッとしちゃって」
不思議そうに見つめ返され、メリーがしどろもどろに言葉を返す。
視たところ『境界』に乱れはない、ならば普通の人間のはずだ。
だが、なんだろうか、逆に整いすぎている感じは。
妙な違和感にメリーが頭を悩ませていると、女性が穏やかな口調で話しかけてきた。
「何かお探しのようだけど、あなたも誰かとはぐれてしまったの?」
「あっ、はい、そうなんです。友達と……」
「私も連れがいたんだけど先に行かれてしまったの。良ければ一緒に探しませんか? 目は二人あったほうが探しやすいわ」
「は、はい、そうですね」
いきなりの申し出に、反射的かメリーは頷いてしまった。
どうして自分はイエスと答えてしまったのだろうと、後から疑問に思う。
この謎の女性が醸し出す妖美な雰囲気に、飲まれてしまっているというのもある。しかしそれ以上に、なんというか、親近感を感じるのだ。自分と髪の毛や服装の色合いが似ているからだろうか。
メリーは自分でもよくわからないまま、女性と肩を並べて歩き出した。まるで白昼夢でも見ているかのように現実味がない。
「どんな見た目なのですか?」
「白いリボンを巻いた黒い帽子が目印です、髪の毛は茶色で、全体的にモノクロっぽい服装をしてます」
「あら、私の友達も黒い帽子なのよ、でも桃の飾りが付いてるからあなたのお友達よりわかりやすいわ」
「桃、ですか?」
女性の友人は、なんともエキセントリックなセンスをお持ちのようだ。
それなら詳しい容姿を知らないメリーでも見れば一発でわかるだろう。
「こんな日に連れ添っているのだから、その子とは仲が良いのですね」
「はい、大学で同じサークルをやってるんですけど、一緒にあちこち調べに行ったりして」
「へえ、どんな内容なの?」
「秘封倶楽部っていう、オカルトサークルなんです。おかしな情報があったら、実際にその場に行って結界を暴いて」
「あら、面白そうね」
気が付いたら喉の奥から言葉が滑り出してくる。会ったばかりの名も知らぬ女性が、まるで朋友のようにすら感じられる。
世間一般には頭がおかしいと思われるだろう話の内容に、女性は心底興味深げに頷き、メリーもまたこの反応を当然のように受け取る。
「大切なお友達なのかしら?」
「……はい、そうです。ずっと一緒にいたい」
だからこの問いかけにも、心からの答えを返した。
それを聞いて女性は笑みを深め、温かい目でメリーを見つめる。
「あなたが境界を踏み外してしまわないのは、その友達のお陰なのですね」
「えっ?」
そこに来てようやくメリーはこの状況の異常さに気が付き始めた。
どっと押し寄せる得体の知れない不安に、足を止めて隣りにいる女性を怯えた目で見上げる。
「あなたは特別なモノが視えるようですが、もしも道に迷ってしまったらその友達のことを思い出しなさい。その絆が本物なら、きっとその人のもとに帰ってこれる」
「……あなたは」
核心を掴む言葉を前に、何者なのか、と問おうとして声が出なかった。
「――メリー探したわよ!」
聞こえてきた懐かしい声に、メリーは恐れを振り切って弾かれたように振り向いた。
人混みをかき分けて、探していた友達が目の前に現れる。
「れ、蓮子!」
「どうしたのよ、こんなところに突っ立って」
「い、今この人が……」
メリーが指を差しながら視線を元に戻したが、そこには通り過ぎる普通のカップルしかなかった。
仰天して辺りを見回すが、今しがた話していた女性は影も形も見つからない。
「いない……」
「何? また視えたの?」
「う、うん! 今ヘンな人が……いや、もしかしたらそもそも人じゃないのかも!」
「ストップ! 興味深いけど、歩きながらにしましょ。博麗神社で見たいって言ったのはメリーだし」
興奮するメリーに、蓮子もすぐさまその話を聞きたくなったが、鋼の自制心で抑え込んだ。
いつもならメリーの不思議話に飛び付くところだが、今日ばかりは仕方ない。
これから目的地を目指しても九時までには間に合わないだろうが、遅れてもいいから今日の演出はできるだけいい場所で楽しみたい。
「今日は何百年に一度あるかないかって日なんだからさ」
蓮子が取り出したスマホには、今夜の天気予報について表示されていた。
◇ ◆ ◇
「で、あなたはここで何してるわけ?」
「ほえ?」
腕を組んで仁王だつ紫の厳しい視線の先には、口周りをクリームで汚した天子がいた。
胸元に紫水晶の首飾りを揺らす天子は、右手に持ったクレープの他にもそこらへんの店で片っ端から買い漁ったのだろう、左手に持つ大きなレジ袋には他にもパン屋のシュークリームだとかハンバーガーの包みだとかが見えた。
紫に睨みつけられながら天子は手に持ったクレープを平らげ、口周りをペロッと出した舌で拭うと、空になった片手を紫に突き出した。
「紫、お金使い切っちゃったから新しいのちょーだい!」
「人に探させといていい度胸ねこの不良娘」
可愛くおねだりされるものだから奮発して一番高いお札を渡してしまった紫であったが、貪欲な天子を前にその時の行動を後悔していた。
「道草食ってないで、ほら行くわよ」
「あーん、あの店でスペシャルジャンボパフェとかいうの食べたーい!」
「そんな時間ないでしょ、さっさと来るの! こっち来る前に散々食べさせてあげたのに、どこにそんなに入るのよもう」
名残惜しむ天子の手を引っ張って行く。
二人が目指したのは街から離れたところにある、山の上にある少し寂れた神社。
境内の隅に設置されていたベンチの上に食べ物を置いた天子は、跳び跳ねて境内の中心に出ると周囲を見渡した。
他に人影も見えず栄えているようには感じられないが、雑草などは一本も生えておらず綺麗に整えられている。
「ふーん、こっちが外側の博麗神社? 案外整備されてるわね」
「私が暇を見て弄ってるの。予想通り人気もないし穴場みたいね」
神社からは山の下に広がる街の様子が一望できた、キラキラ光る照明が境内まで照らしてくれている。
天気は今のところ快晴、予報通り雲の一つもない。
紫はベンチの前でかがむと、レジ袋の中身を見て呆れた溜息をつく。
「まったくもう、こんなにいっぱい買っちゃって」
「だって二人で見ながら美味しいの食べたいじゃない?」
「だったらもうちょっとお酒の肴になるもの買いなさいな。スイーツとジャンクフードばっかりじゃない」
「こんなの食べる機会そうそうないしー」
紫はベンチに腰を下ろすと、開いたスキマから酒瓶と盃を取り出す。
天子が買い込んだお菓子を並べて、いそいそと宴の準備を始めていると、天子がお尻からベンチに飛び乗って、紫の肩に顔を寄せてきた。
「ねえねえ! それで時間はいつなの!?」
「慌てなくてももうすぐよ」
優しくたしなめた紫はスキマに手を差し込むと、中から懐中時計を引き出した。
現時刻は夜の九時に近い頃合い、それなりに遅い時間だが街の方は相変わらず賑やかだ。
だが長針が五十五分を超えたところで、街並みに変化が現れた。
街の一角にそびえ立つ大きなビルが、天辺にある航空障害灯と呼ばれる赤いランプを残していきなり消灯した。
それを追いかけるかのように、街の至る所でぽつぽつと明かりが消えていく。
まだ店じまいには早い居酒屋も、休まず営業しているはずのコンビニも光を絶ち、道路を走っている車も殆どが脇に寄せて停車すると、ハザードランプだけを付けてエンジンを止める。
行政が設置した照明などは道を照らし続けているものの、街を構成していた輝きの半分以上が暗闇に身を沈めてしまった。
道行く人々も足を止め、声を小さくして隣りにいる友達や恋人と囁き合う。
大勢の人から同じ意思を感じる奇妙な光景であったが、天子はそこから目を離し空を見つめ、その隣で懐中時計を見ていた紫が口を開いた。
「後十秒……三、二、一……」
カウントダウンが終わり時計が音を立てて九時丁度を示した時、空に緩やかな光が伸びてきた。
街の方からは、空を見上げる人々の歓声が聞こえてくる。
空に現れた緩やかな光は段々と横に広がり始め、夜の空に緋色のヴェールをかぶせた。
一秒ごとに揺らめいて広がる一枚の光の幕は、天子達がいる街を超えて日本中に広がっていき、幻想的な輝きで大地を照らし出した。
「ああ、もう始まっちゃった!」
メリーの手を引いて道を歩いていた蓮子が声を上げた、本当なら博麗神社で眺めるはずが間に合わず、神社へ続く階段の前に差し掛かったところで時間が来てしまった。
天気予報通り、不思議な輝きを作る空を見上げてから、隣のメリーに視線を向ける。
「どう、メリー? 境界は視える?」
「……ううん、おかしなものは何も視えない。これはオカルトなんかじゃないわ。正真正銘、ただの自然現象よ」
「そっか……」
この空模様に何らかの面白い外的要因があることを期待していた蓮子だが、それを否定されて少し残念そうに肩を下ろす。
「残念ね、もしかしたらまた何かあるかもと思ったのに」
「うん……でも、綺麗よ蓮子」
メリーに言われ、蓮子がもう一度空を見上げる。
その輝きをまじまじと見つめていると、肩透かしを食らって落ち込んだ心に変化が現れた。
確かにこれには誰の力でもないのだろう。でもだからこそというか、そこにこそこの光景の真髄がある気がする。
あらゆる思惑をあずかり知らぬところに置き、泰然と空に輝く緋色のオーロラ。
その純粋の輝きは、二人の心を包み込んでくれていた。
「メリー……」
「うん……もう少し見てから行きましょう」
光の端は視えない、予報通りなら千キロメートル以上にもまたがって緋色の輝きが灯っているはずだ。
博麗神社でこれを見ていた天子は、揺らめく輝きに目一杯の感動で胸を焦がし、その輝きと同じ緋色の瞳をまん丸に開いていた。
「これが混じり気のない極光、本物の緋想天……!」
天子の隣では、空の光景に見惚れた紫が「素敵ね」と溜息を吐いて、天子と手を重ね合わせた。
今までにも幻想郷で天子が何度か発現させた極光とは違う、これはまったくの自然的な現象だ。
古くには赤気という名で日本書紀にも書かれ、江戸時代などにも観測されたことがある、日本では珍しいオーロラである。
発達した外界の天気予報は、この天候が現れることをドンピシャで言い当てた。
その為、人々の間ではSNSなどを通じてこの時間帯だけ電灯を消そうという呼び掛けが行われ、多くの人がこれに同調した。
彼ら彼女らは普段より暗くなった地上から、いつになく明るい夜空を頭上に恋人と語り合ったり、友達と一緒にカメラのレンズを向けたりしている。
このことを知った紫はすぐさま天子を誘って、誰の邪魔もない外界でオーロラを肴に宴会を開くことにしたのだ。
今頃は博麗大結界を挟んだ幻想郷側でも、本物の極光を前にして妖怪たちが騒いでいることだろう。
「すっごいなぁ、私が作ったのよりおっきい!」
「自然の規模には天子も敵わないわね」
天子がかつて緋想の剣で作り出した極光はこれよりも強い輝きを持っていたが、あくまで一地方を覆い尽くすのみだ。
これは静かな輝きながらもどこまでも雄大で、日本列島を横断して広がっている。
地球という存在が持つ底の知れない力を前に、紫はこの思い出を天子と共有できる喜びで胸がいっぱいだった。
生きていてよかったと、心の底からそう思える。
「天子、ところで気質の充填をお願いできる?」
「おっと、もうそんな時間だっけ」
この光景を楽しむのは重要だが、これも大事なことだ。
天子は紫と向き合って、紫の胸元で光る緋色の宝石を両手で包み込む。
安らかな呼吸で目を閉じると、お揃いの首飾りに想いを込めた。
「紫が明日も、笑っていられますように――」
閉じた指の隙間から緋色の輝きが漏れて、紫の胸を熱くさせる。
長らく紫は境界の隙間に引きずり戻される現象に悩んできたが、その原因がわからないために何の解決策も見出だせなかった。
しかし天子が境界を渡り、知り得た真実を持ち帰ったことで、そこに変化が現れた。
境界が崩れて影が溢れた際に藍が観測した情報を元にして、紫を引き戻そうとする怨念に対抗する気質の変換術式を組み上げたのだ。
その術式は天子がプレゼントした緋色エメラルドの首飾りに付与されており、天性の激情を持った天子が気質を与えることで、怨念を打ち消している。
天子の愛が紫を護っている。
きっとこれが自分に与えられた使命なのだと、天子は感じていた。
熱い想いを受け取った紫は、瞳を開いた天子と見つめ合う。
母を奪った罪、倒すための血族、人と妖怪、相反してしかるべきな二人。
それでもその全てを乗り越えて、二人はここまで来た。
永遠に許されないものもある、けれどきっと気持ちは一つだと、お互いの手を重ね合わせて、想いを分け与えた。
一つ残った謎がある、そもそも紫が境界を超えてこちらにやってきた最初の理由はなんなのか。
その能力があるだけで超えられるものではない、紫本人にその意思がなければならないが、幽々子を始めとしたかけがえのない友人と出会った後ならいざしらず、辛い思いしかしなかったそれ以前は何がトリガーとなっていたのか。
これについて紫はとても不合理な、けれどロマンチックな、一つの結論を得ていた。
「私は紫を助けるために生まれてきた」
「私はあなたに出会うために生きてきた」
己の命題を探し当てた二人が、これから沢山の思い出を作るために手を取り合う。
そのどれもが失くすべきではない、輝かしい力として二人を支えてくれることだろう。
幸せな結末に辿り着き、なおも歩いて行く二人を、一夜の奇蹟が照らし出し、永劫を祝福してくれていた。
其の二 -妖怪の山大決戦!-
其の三 -光の降る夜-
よしこれでばっちり準備オッケーね。
せっかく紫さんと遊びに行くんですから、綺麗にしませんとね。
うん、でも衣玖はこっちに残るのよね、一緒に来ればよかったのに。
まさか、紫さんに蹴られる趣味はありませんよ。
あはは、いくら紫のやつでもそんなことしないって。
さてどうだか。
……お父様が、あんまり嬉しそうじゃないのが残念だけどね。
仕方がないことですよ、誰も彼もが恨みから自由になれるものではない。天子様が紫さんを好きだと思えるだけでも奇跡みたいな話です。
そうよね……紫と一緒にいることを認めてもらえただけでも、ありがたいと思わなくちゃね。
……それにしても、なんだか最近、昔の天子様を思い出します。
昔って?。
あなたが紫さんと出会ってすぐのころですよ。
ああ、あの頃か……あの頃のことを思い出すと、ちょっと恥ずかしいわね。
当時の天子様は、紫さんのこととなると辛そうな顔で走っていました。でも今は……。
今は?
優しい顔をしてらっしゃいます。
そっか……えへへ、よかった。
わずか数年ですが、天子様はあの頃とは随分変わられた。
そう……かしら、あんまり実感ないな。私はあの時から変わった気がしない、今でもずっと紫のことを恨んでばっかで、時たま思うの、私なんかがあいつの傍にいていいんだろうかって。
そんなことありませんよ。だって天子様はもう、紫さんのことを憎んでいませんから。
えっ?
天子様が、紫さんのことを許してはいないと思います、そしてそれはこの先も変わらないでしょう。
でもきっと、もう憎しみは抱いてません。
そうなのかな……だったら、よかったわ、とても。もしそうなら、紫のおかげね。
それだけじゃありません、天子様が頑張り続けなければ辿り着けなかった結果ですよ。
……ありがと、時間だしもう行くわ。
ええ、素敵なデートになるといいですね。
うん! もちろんよ!
――先進国の日本、どこぞの有り触れた繁華街。
年がら年中光り輝く街の照明は、夏の夜もやかましいくらいの光量を目に叩きつけてくる。
明るく照らされながら普段より大勢の人々が行き交う中、辺りを見回しながら一人でうろつく女性の姿があった。
「もう、蓮子ったら何処行っちゃったのよ」
彼女の名前はマエリベリー・ハーン、秘封倶楽部という構成員二名からなる胡散臭いサークルの片割れだ。
今日はあるイベントのついでに、ネットで見つけたオカルト話が本物かを友人と確かめに来て、見事に空振りに終わった後だ。
それからしばらく二人で暇をつぶそうとしていたのだが、今日は街の中が人でごった返しているせいで友人とはぐれてしまった。
運の悪いことに自分のスマホは電池が切れてしまっていた、どうやら運が悪く充電池が壊れていて充電できていなかったらしいと朝起きた時に気がついた。
仕方なくこの科学が進んだ良き時代に、メリーはわざわざ足と目を使ったアナログな方法で友人を探し回っていた。
彼女が持つ特殊な目も、こんな時には役に立ってくれない。
まったく時間がないのにと独り言ちて急いでいたメリーは、人混みの中から飛び出してきた別の人影とぶつかってしまった。
柔らかな身体に弾かれて足を一歩下げる。
「あっ、ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ」
メリーに声を掛けてくれたのは、紫色のドレスを着た金色の髪の毛が闇に輝く、美しい女性だった。
胸元を緋色の首飾りで彩ったその女性に、メリーは一瞬見惚れてしまい、すぐに正気に戻った。
同性愛がどうのという話とは違う、何故かこの女性には気が惹かれるものがあった。
「……どうしたのかしら、そんなに見つめて?」
「えっ!? あ、いや、ごめんなさい、ボーッとしちゃって」
不思議そうに見つめ返され、メリーがしどろもどろに言葉を返す。
視たところ『境界』に乱れはない、ならば普通の人間のはずだ。
だが、なんだろうか、逆に整いすぎている感じは。
妙な違和感にメリーが頭を悩ませていると、女性が穏やかな口調で話しかけてきた。
「何かお探しのようだけど、あなたも誰かとはぐれてしまったの?」
「あっ、はい、そうなんです。友達と……」
「私も連れがいたんだけど先に行かれてしまったの。良ければ一緒に探しませんか? 目は二人あったほうが探しやすいわ」
「は、はい、そうですね」
いきなりの申し出に、反射的かメリーは頷いてしまった。
どうして自分はイエスと答えてしまったのだろうと、後から疑問に思う。
この謎の女性が醸し出す妖美な雰囲気に、飲まれてしまっているというのもある。しかしそれ以上に、なんというか、親近感を感じるのだ。自分と髪の毛や服装の色合いが似ているからだろうか。
メリーは自分でもよくわからないまま、女性と肩を並べて歩き出した。まるで白昼夢でも見ているかのように現実味がない。
「どんな見た目なのですか?」
「白いリボンを巻いた黒い帽子が目印です、髪の毛は茶色で、全体的にモノクロっぽい服装をしてます」
「あら、私の友達も黒い帽子なのよ、でも桃の飾りが付いてるからあなたのお友達よりわかりやすいわ」
「桃、ですか?」
女性の友人は、なんともエキセントリックなセンスをお持ちのようだ。
それなら詳しい容姿を知らないメリーでも見れば一発でわかるだろう。
「こんな日に連れ添っているのだから、その子とは仲が良いのですね」
「はい、大学で同じサークルをやってるんですけど、一緒にあちこち調べに行ったりして」
「へえ、どんな内容なの?」
「秘封倶楽部っていう、オカルトサークルなんです。おかしな情報があったら、実際にその場に行って結界を暴いて」
「あら、面白そうね」
気が付いたら喉の奥から言葉が滑り出してくる。会ったばかりの名も知らぬ女性が、まるで朋友のようにすら感じられる。
世間一般には頭がおかしいと思われるだろう話の内容に、女性は心底興味深げに頷き、メリーもまたこの反応を当然のように受け取る。
「大切なお友達なのかしら?」
「……はい、そうです。ずっと一緒にいたい」
だからこの問いかけにも、心からの答えを返した。
それを聞いて女性は笑みを深め、温かい目でメリーを見つめる。
「あなたが境界を踏み外してしまわないのは、その友達のお陰なのですね」
「えっ?」
そこに来てようやくメリーはこの状況の異常さに気が付き始めた。
どっと押し寄せる得体の知れない不安に、足を止めて隣りにいる女性を怯えた目で見上げる。
「あなたは特別なモノが視えるようですが、もしも道に迷ってしまったらその友達のことを思い出しなさい。その絆が本物なら、きっとその人のもとに帰ってこれる」
「……あなたは」
核心を掴む言葉を前に、何者なのか、と問おうとして声が出なかった。
「――メリー探したわよ!」
聞こえてきた懐かしい声に、メリーは恐れを振り切って弾かれたように振り向いた。
人混みをかき分けて、探していた友達が目の前に現れる。
「れ、蓮子!」
「どうしたのよ、こんなところに突っ立って」
「い、今この人が……」
メリーが指を差しながら視線を元に戻したが、そこには通り過ぎる普通のカップルしかなかった。
仰天して辺りを見回すが、今しがた話していた女性は影も形も見つからない。
「いない……」
「何? また視えたの?」
「う、うん! 今ヘンな人が……いや、もしかしたらそもそも人じゃないのかも!」
「ストップ! 興味深いけど、歩きながらにしましょ。博麗神社で見たいって言ったのはメリーだし」
興奮するメリーに、蓮子もすぐさまその話を聞きたくなったが、鋼の自制心で抑え込んだ。
いつもならメリーの不思議話に飛び付くところだが、今日ばかりは仕方ない。
これから目的地を目指しても九時までには間に合わないだろうが、遅れてもいいから今日の演出はできるだけいい場所で楽しみたい。
「今日は何百年に一度あるかないかって日なんだからさ」
蓮子が取り出したスマホには、今夜の天気予報について表示されていた。
◇ ◆ ◇
「で、あなたはここで何してるわけ?」
「ほえ?」
腕を組んで仁王だつ紫の厳しい視線の先には、口周りをクリームで汚した天子がいた。
胸元に紫水晶の首飾りを揺らす天子は、右手に持ったクレープの他にもそこらへんの店で片っ端から買い漁ったのだろう、左手に持つ大きなレジ袋には他にもパン屋のシュークリームだとかハンバーガーの包みだとかが見えた。
紫に睨みつけられながら天子は手に持ったクレープを平らげ、口周りをペロッと出した舌で拭うと、空になった片手を紫に突き出した。
「紫、お金使い切っちゃったから新しいのちょーだい!」
「人に探させといていい度胸ねこの不良娘」
可愛くおねだりされるものだから奮発して一番高いお札を渡してしまった紫であったが、貪欲な天子を前にその時の行動を後悔していた。
「道草食ってないで、ほら行くわよ」
「あーん、あの店でスペシャルジャンボパフェとかいうの食べたーい!」
「そんな時間ないでしょ、さっさと来るの! こっち来る前に散々食べさせてあげたのに、どこにそんなに入るのよもう」
名残惜しむ天子の手を引っ張って行く。
二人が目指したのは街から離れたところにある、山の上にある少し寂れた神社。
境内の隅に設置されていたベンチの上に食べ物を置いた天子は、跳び跳ねて境内の中心に出ると周囲を見渡した。
他に人影も見えず栄えているようには感じられないが、雑草などは一本も生えておらず綺麗に整えられている。
「ふーん、こっちが外側の博麗神社? 案外整備されてるわね」
「私が暇を見て弄ってるの。予想通り人気もないし穴場みたいね」
神社からは山の下に広がる街の様子が一望できた、キラキラ光る照明が境内まで照らしてくれている。
天気は今のところ快晴、予報通り雲の一つもない。
紫はベンチの前でかがむと、レジ袋の中身を見て呆れた溜息をつく。
「まったくもう、こんなにいっぱい買っちゃって」
「だって二人で見ながら美味しいの食べたいじゃない?」
「だったらもうちょっとお酒の肴になるもの買いなさいな。スイーツとジャンクフードばっかりじゃない」
「こんなの食べる機会そうそうないしー」
紫はベンチに腰を下ろすと、開いたスキマから酒瓶と盃を取り出す。
天子が買い込んだお菓子を並べて、いそいそと宴の準備を始めていると、天子がお尻からベンチに飛び乗って、紫の肩に顔を寄せてきた。
「ねえねえ! それで時間はいつなの!?」
「慌てなくてももうすぐよ」
優しくたしなめた紫はスキマに手を差し込むと、中から懐中時計を引き出した。
現時刻は夜の九時に近い頃合い、それなりに遅い時間だが街の方は相変わらず賑やかだ。
だが長針が五十五分を超えたところで、街並みに変化が現れた。
街の一角にそびえ立つ大きなビルが、天辺にある航空障害灯と呼ばれる赤いランプを残していきなり消灯した。
それを追いかけるかのように、街の至る所でぽつぽつと明かりが消えていく。
まだ店じまいには早い居酒屋も、休まず営業しているはずのコンビニも光を絶ち、道路を走っている車も殆どが脇に寄せて停車すると、ハザードランプだけを付けてエンジンを止める。
行政が設置した照明などは道を照らし続けているものの、街を構成していた輝きの半分以上が暗闇に身を沈めてしまった。
道行く人々も足を止め、声を小さくして隣りにいる友達や恋人と囁き合う。
大勢の人から同じ意思を感じる奇妙な光景であったが、天子はそこから目を離し空を見つめ、その隣で懐中時計を見ていた紫が口を開いた。
「後十秒……三、二、一……」
カウントダウンが終わり時計が音を立てて九時丁度を示した時、空に緩やかな光が伸びてきた。
街の方からは、空を見上げる人々の歓声が聞こえてくる。
空に現れた緩やかな光は段々と横に広がり始め、夜の空に緋色のヴェールをかぶせた。
一秒ごとに揺らめいて広がる一枚の光の幕は、天子達がいる街を超えて日本中に広がっていき、幻想的な輝きで大地を照らし出した。
「ああ、もう始まっちゃった!」
メリーの手を引いて道を歩いていた蓮子が声を上げた、本当なら博麗神社で眺めるはずが間に合わず、神社へ続く階段の前に差し掛かったところで時間が来てしまった。
天気予報通り、不思議な輝きを作る空を見上げてから、隣のメリーに視線を向ける。
「どう、メリー? 境界は視える?」
「……ううん、おかしなものは何も視えない。これはオカルトなんかじゃないわ。正真正銘、ただの自然現象よ」
「そっか……」
この空模様に何らかの面白い外的要因があることを期待していた蓮子だが、それを否定されて少し残念そうに肩を下ろす。
「残念ね、もしかしたらまた何かあるかもと思ったのに」
「うん……でも、綺麗よ蓮子」
メリーに言われ、蓮子がもう一度空を見上げる。
その輝きをまじまじと見つめていると、肩透かしを食らって落ち込んだ心に変化が現れた。
確かにこれには誰の力でもないのだろう。でもだからこそというか、そこにこそこの光景の真髄がある気がする。
あらゆる思惑をあずかり知らぬところに置き、泰然と空に輝く緋色のオーロラ。
その純粋の輝きは、二人の心を包み込んでくれていた。
「メリー……」
「うん……もう少し見てから行きましょう」
光の端は視えない、予報通りなら千キロメートル以上にもまたがって緋色の輝きが灯っているはずだ。
博麗神社でこれを見ていた天子は、揺らめく輝きに目一杯の感動で胸を焦がし、その輝きと同じ緋色の瞳をまん丸に開いていた。
「これが混じり気のない極光、本物の緋想天……!」
天子の隣では、空の光景に見惚れた紫が「素敵ね」と溜息を吐いて、天子と手を重ね合わせた。
今までにも幻想郷で天子が何度か発現させた極光とは違う、これはまったくの自然的な現象だ。
古くには赤気という名で日本書紀にも書かれ、江戸時代などにも観測されたことがある、日本では珍しいオーロラである。
発達した外界の天気予報は、この天候が現れることをドンピシャで言い当てた。
その為、人々の間ではSNSなどを通じてこの時間帯だけ電灯を消そうという呼び掛けが行われ、多くの人がこれに同調した。
彼ら彼女らは普段より暗くなった地上から、いつになく明るい夜空を頭上に恋人と語り合ったり、友達と一緒にカメラのレンズを向けたりしている。
このことを知った紫はすぐさま天子を誘って、誰の邪魔もない外界でオーロラを肴に宴会を開くことにしたのだ。
今頃は博麗大結界を挟んだ幻想郷側でも、本物の極光を前にして妖怪たちが騒いでいることだろう。
「すっごいなぁ、私が作ったのよりおっきい!」
「自然の規模には天子も敵わないわね」
天子がかつて緋想の剣で作り出した極光はこれよりも強い輝きを持っていたが、あくまで一地方を覆い尽くすのみだ。
これは静かな輝きながらもどこまでも雄大で、日本列島を横断して広がっている。
地球という存在が持つ底の知れない力を前に、紫はこの思い出を天子と共有できる喜びで胸がいっぱいだった。
生きていてよかったと、心の底からそう思える。
「天子、ところで気質の充填をお願いできる?」
「おっと、もうそんな時間だっけ」
この光景を楽しむのは重要だが、これも大事なことだ。
天子は紫と向き合って、紫の胸元で光る緋色の宝石を両手で包み込む。
安らかな呼吸で目を閉じると、お揃いの首飾りに想いを込めた。
「紫が明日も、笑っていられますように――」
閉じた指の隙間から緋色の輝きが漏れて、紫の胸を熱くさせる。
長らく紫は境界の隙間に引きずり戻される現象に悩んできたが、その原因がわからないために何の解決策も見出だせなかった。
しかし天子が境界を渡り、知り得た真実を持ち帰ったことで、そこに変化が現れた。
境界が崩れて影が溢れた際に藍が観測した情報を元にして、紫を引き戻そうとする怨念に対抗する気質の変換術式を組み上げたのだ。
その術式は天子がプレゼントした緋色エメラルドの首飾りに付与されており、天性の激情を持った天子が気質を与えることで、怨念を打ち消している。
天子の愛が紫を護っている。
きっとこれが自分に与えられた使命なのだと、天子は感じていた。
熱い想いを受け取った紫は、瞳を開いた天子と見つめ合う。
母を奪った罪、倒すための血族、人と妖怪、相反してしかるべきな二人。
それでもその全てを乗り越えて、二人はここまで来た。
永遠に許されないものもある、けれどきっと気持ちは一つだと、お互いの手を重ね合わせて、想いを分け与えた。
一つ残った謎がある、そもそも紫が境界を超えてこちらにやってきた最初の理由はなんなのか。
その能力があるだけで超えられるものではない、紫本人にその意思がなければならないが、幽々子を始めとしたかけがえのない友人と出会った後ならいざしらず、辛い思いしかしなかったそれ以前は何がトリガーとなっていたのか。
これについて紫はとても不合理な、けれどロマンチックな、一つの結論を得ていた。
「私は紫を助けるために生まれてきた」
「私はあなたに出会うために生きてきた」
己の命題を探し当てた二人が、これから沢山の思い出を作るために手を取り合う。
そのどれもが失くすべきではない、輝かしい力として二人を支えてくれることだろう。
幸せな結末に辿り着き、なおも歩いて行く二人を、一夜の奇蹟が照らし出し、永劫を祝福してくれていた。
頭のおかしいゆかてんばっか書いてた人がいつしかシリアスをこなすようになり、ついにはこのような大作まで生み出すとはなかなか感慨深いものがあります。
でもあとがきを見るにやっぱ作者ご自身の頭はおかs
容量を見た時正直ビビりましたが、ここまで勢いにのって物語を楽しむことが出来ました!
ほんとゆかてんが全てを救っており、なんというかほんと凄い作品でした。
やっぱり過去シリーズ意識してあったんですね、途中を見ながらいろいろ思い出しました!
そしてハッピーエンドは最高っすね!
終始圧倒されておりました…
真面目な天子ちゃんとその葛藤…みたいなのすっごい好きです
今後も楽しみにしてます!
とても読み応えがあり楽しめました
ハッピーエンドで終わって良かったです
紫と天子だけでなく周りの面々もとても魅力的で良かったです
いくてんが一番、それは変わらないけどありがとう、ゆかてんの良さを教えてくれて。
どこまでも人間で在り続けたひとりと、世界に焦がれたひとりがたどり着いた結末に胸がすく思いでした。
幻想郷は不器用な紫の愛の体現で、そこに腰を下ろす住人も大概不器用で、とても暖かい気持ちにさせられました。
光の降る夜編で語れなかった血に縛られた霊夢や、式であろうと我を抑えていた藍も最後はしがらみを取っ払って、色々な人物たちが殻を破っていく姿になんども心を打たれました
感動はやはり言葉として出し尽くせないのですが、この物語に出会えてとても幸せでした
素晴らしきゆかてんに感謝!
のどが渇いて息が切れています。息もつかせぬって言うのはこのことでしょうか。
やっぱり、ピンチと援軍の連続っていうのは、古典的ながらこみ上げてくるものがありますね。個人的には紫を慕う藍と橙のキャラ付けが好みでした。特に橙、がんばった。えらい。
天子と紫についてですが、お互いが知らず因縁を抱き、物語がすすむうちにそれが明かされ、何度も別離と衝突がありと、カップルとして申し分ない試練が与えられて、ハラハラしていました。ハッピーエンドに落ち着いて、よかったです。初めて知ったのですが、紫の気質は天気雨なんですね。二人の気質が混じり合った幻想郷全土を覆う極光の天気雨っていうのは、それはもう二人の愛が幻想郷全土に降り注いだって言うことなんじゃないでしょうか。
感想が長くなっても仕方がないので、このあたりで。いい物語を、ありがとうございました。
世界の闇すら手出し不可能な二人の道はこれからも、どこまでも。
徹夜で読んだ事を後悔する気の無い、一生物の感動をありがとうございます。
最ッ高に面白かったです!
ゆかてん萌え!
素晴らしい作品を、本当にありがとうございました。
ゆかてん素晴らしい。
長大な大作、堪能させていただきました!
4分割されたうえでこの分量、どれだけの内容なのかとちょっぴりびくびくしながら読み始めたのですが……
一度読み始めると、正直途中で止められないくらい、するすると読むことができました。
とにかく、次が気になって仕方がない。
電動ドリルさんは、これまでにも実にさまざまなアプローチでゆかてんを表現されています。
ゆかてんの始まりから終わりまで……いや、始まる前から終わった後まで、濃密に描かれたこの作品は、まさしく当時の集大成といえる作品なのでしょう。
いつものようなノリのバトル、コメディ、シリアス、ロマンス、そういった表現を織り交ぜつつも、ホラー要素や、果てはセカイ系に至るまで。いろんな表現が本当に面白くて、読み進めていくのが止まりませんでした。
それと、他の作品でもそうですが、この作品は特に他のキャラたちの躍動感がすごいです。。
衣玖さんや八雲の式たちをはじめ、みんあがみんな、それぞれの役割を果たすべく全力で動き、物語を豊かにしてくれていると感じました。
そして、その物語の随所にちりばめられた伏線と、その回収っぷりの鮮やかさ。
読み進めていくうちに「そうか、あの時の表現がここにつながってくるのか!」と気づいた時の楽しさ。何度途中で読み返しに戻ったわかりません。
一番最後まで読み切った後の読後感と爽快感は、なかなか他では味わうことができないもののように思います。映画の大作を鑑賞しきった後のような、そんな感覚でした。
時間をおいてまた読み返すことで、おそらく一回では気づかなかった新たな発見が出てくるでしょう。
2回、3回と読み返す時を、また楽しみにしたいと思います。
なんか他にも書こうとしたことがあった気がしますが、文章に起こしきれなさそうなのでここいらで止めにしておきます。
ただ、電動ドリルさんは、本当にゆかてんが大好きな方なんだなあっていうのを、改めて認識しました。
素敵な素敵なゆかてんのお話を、本当にありがとうございました。