Coolier - 新生・東方創想話

門前小話

2017/05/20 18:00:27
最終更新
サイズ
3.11KB
ページ数
1
閲覧数
1323
評価数
2/4
POINT
180
Rate
8.20

分類タグ




「こんばんわ、美鈴」
「おや。こんばんわ、妹様」
「うん、ひさしぶり」
「珍しいですね、外に出てくるなんて」
「あんまりにも蒸し暑くてさぁ。眠れないから出てきちゃった」
「地下も暑いんですか?」
「クソ暑いね。ファッキンホットだね。一生分の汗をかいた気分だわ」
「曇りですからねぇ。ジメジメするのも仕方ないです」
「……ところで」
「はい」
「わたしはいま、団扇を持っています」
「はあ」
「扇いでほしいなー、なんて」
「私の勤務時間はもう過ぎてますよ」
「むう。あたまの固いやつめ」
「交互に扇ぐならいいですけど」
「……美鈴が先に扇いでよね」




「ああぁぁぁぁあぁぁ、すぅずぅしぃいぃぃ」
「私は汗だくで手を動かしてますけどね」
「いいじゃない。あとで飽きるまで扇いであげるよ」
「ほんとかなぁ」
「あぁ、めちゃめちゃすずしい。文明の利器は素晴らしいわ」
「技術レベルの低い文明ですね……」
「もっと強く扇いでもいいのよ」
「片腕が駄目になりそうなんですけど」
「腕は二本あるじゃない」
「鬼だ……」
「腕が駄目なら、足で扇げばいいのよ」
「そうなる前に交代してくれませんかね」
「こんなにも月が紅いから、本気で扇ぐわよ。はい、復唱」
「そんなかっこ悪いお嬢様なんて見たくないですよ……」
「あいつはもとからかっこ悪いのよ」
「ひっでぇ」
「ほらほら、月が紅いわよ。もっと扇ぎなさいな」
「今日は曇りですよ」
「大切なものは見えないものなのよ」
「妹様にはなにが見えたんですか…」
「サン=テグジュペリも扇げと言っているわ」
「でまかせにもほどがある」
「つまり美鈴はわたしの王子様というわけね。星の王子様だけに」
「うまくない」
「ちっ、だめか」




「あー、すずしいですねぇ。きもちいぃ」
「ね、ねぇ。もうそろそろ交代してほしいなー、なんて」
「なにいってんですか。まだ5分もたってませんよ」
「腕がしびれてきたわ」
「私は片腕がダメになりましたよ」
「そんなおおげさな。筋肉痛なだけじゃない」
「一時間続けて扇いでから言ってください」
「……10分じゃだめ?」
「だめです」
「ケチ。優しさというものがないのかしら」
「月も紅いですからね、本気で扇いでください」
「曇りじゃねえか」
「見えないものなんですよ」
「どっかでみたぞこの流れ」
「王子様よろしく扇いでくださいね」
「星の王子様は団扇すらもってねえよ」
「ほら、あれですよ。従者と親睦を深めるんですよ。団扇をきっかけに」
「いやよ」
「つれないですねぇ」




「――――もう、おわりっ。つかれたっ。しゅーりょー」
「もうですかぁ?飽きるの早いんだからまったく」
「思ってたより疲れるのよ、これ」
「だから言ったじゃないですか」
「このままだと疲労でわたしが星になるところだったわ」
「曇っているから見つけれませんね」
「……ずいぶんな皮肉じゃない」
「腕がパンパンになりましたから。筋肉痛はやだなぁ」
「わたしも筋肉痛よ。ちぎって再生した方がはやいかしら」
「エグイこと言わんでください。狂人の発想ですよそれ」
「吸血鬼の利点よ。ねぇ、明日の夜も来てもいい?」
「……もう扇ぎませんからね」
「善は急げだよ。はやく明日にならないかしら」
「ずいぶん独善的ですね……。まぁ、お待ちしてますよ。おしゃべりは楽しいですし」
「でしょう。そうでしょう。親睦を深めに来てあげるね」
「嫌って言ったじゃないですか」
「涼めるならそれもやぶさかではないわ」
「団扇にまけた……」
「つぎは力尽きるまで扇いでね」
「冗談でなく星になりそうですよ、ほんと」
「見つけてあげるから安心して」
「曇りだっていってるじゃないですか」
「ふふっ。それじゃあ、おやすみなさい」
「ええ、また明日。おやすみなさい」
 
 
 
暑いので書きました。

サン=テグジュペリは正直すまんかった
ノノノ
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.20簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
まとめたら?
3.80名前が無い程度の能力削除
言い張らなくても十分メイフラですよこれは…(満足)
5.80沙門削除
まごうことなきメイフラです。