少女が目を覚ますと、そこは大きな裁判所だった。少女を見下ろす高さに一つの席があり、そこには、荘厳な服装の笏を持った小柄な女性が座っている。
「お気づきかもしれませんが、ここは地獄の裁判所で、私はこの裁判所の閻魔です。これから貴方の罪を裁かせていただきます」
そういうと、その閻魔を名乗った女性は、おもむろに手鏡を取り出して、少女の姿を映し出す。しかし、そこには本来映るはずの少女の姿はなく、代わりに、絶壁のふちで立ちすくむ、少女の姿が映っていた。
その自身の思い詰めた表情をみて、少女はやっと、自分が死んだことを思い出した。
何という事はない、その少女は昔から人との距離を測るのが苦手で、そのせいで陰湿ないじめを受けていた。そして、自身の生に意味を見出せなくなった少女は、崖から身を投げたのだった。
今まさにその瞬間が、鏡に映しだされている。
鏡の中の少女の瞳には気力が感じられず、虚ろな視線で自らの終りを待っているようで。その自身の姿を見た少女の瞳からは、自然と涙があふれていた。
未練なんてないと思っていたのに。
これで楽になれると思っていたのに。
その涙が、死んだことへの後悔からなのか、生きることを諦めた情けなさなのかは、少女自身にもわからなかった。
「貴女の罪は、自らを殺した罪。生前の人間にはあまり知られていませんが、とても重い罪です」
少女を見下ろしていた女性が、ゆっくりと語りだした。
「貴女は地獄へと落ちることになります。本来ならば、の話ですが」
そう言って、再び鏡に少女の姿を映す。そこには、道端の地蔵に供え物をする、生前の少女の姿が映っていた。
「貴女のこの小さな信仰が、誰にも見向きもされなかったこの地蔵を救ったのです。この生前の善行を考慮して、貴女に機会をあたえます」
その閻魔は、少女の瞳を見据えたまま、続けた。
「私の元で、死神として働きなさい。貴女がここで、一所懸命に努力したのなら、この判決を覆し、浄土へと送り届けてあげます」
少女は、こくんと頷いた。
「お気づきかもしれませんが、ここは地獄の裁判所で、私はこの裁判所の閻魔です。これから貴方の罪を裁かせていただきます」
そういうと、その閻魔を名乗った女性は、おもむろに手鏡を取り出して、少女の姿を映し出す。しかし、そこには本来映るはずの少女の姿はなく、代わりに、絶壁のふちで立ちすくむ、少女の姿が映っていた。
その自身の思い詰めた表情をみて、少女はやっと、自分が死んだことを思い出した。
何という事はない、その少女は昔から人との距離を測るのが苦手で、そのせいで陰湿ないじめを受けていた。そして、自身の生に意味を見出せなくなった少女は、崖から身を投げたのだった。
今まさにその瞬間が、鏡に映しだされている。
鏡の中の少女の瞳には気力が感じられず、虚ろな視線で自らの終りを待っているようで。その自身の姿を見た少女の瞳からは、自然と涙があふれていた。
未練なんてないと思っていたのに。
これで楽になれると思っていたのに。
その涙が、死んだことへの後悔からなのか、生きることを諦めた情けなさなのかは、少女自身にもわからなかった。
「貴女の罪は、自らを殺した罪。生前の人間にはあまり知られていませんが、とても重い罪です」
少女を見下ろしていた女性が、ゆっくりと語りだした。
「貴女は地獄へと落ちることになります。本来ならば、の話ですが」
そう言って、再び鏡に少女の姿を映す。そこには、道端の地蔵に供え物をする、生前の少女の姿が映っていた。
「貴女のこの小さな信仰が、誰にも見向きもされなかったこの地蔵を救ったのです。この生前の善行を考慮して、貴女に機会をあたえます」
その閻魔は、少女の瞳を見据えたまま、続けた。
「私の元で、死神として働きなさい。貴女がここで、一所懸命に努力したのなら、この判決を覆し、浄土へと送り届けてあげます」
少女は、こくんと頷いた。